第2回GCR C〜レッドスフィンクス

■ショートシナリオ


担当:マレーア1

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 49 C

参加人数:9人

サポート参加人数:1人

冒険期間:04月10日〜04月13日

リプレイ公開日:2006年04月17日

●オープニング

●凱旋シーンより(一ヶ月前)
 国威の象徴である巨大な国旗を真っ青な大空へと吹流しにし、フロートシップ『レッドインパルス』号は艦載機、ゴーレムグライダー隊と共にダイヤモンド陣形をとり、いよいよトルク分国の王都を見下ろす位置へと差し掛かる。

 数刻の後には、次々と炸裂する祝砲が晴やかな空へ打ち放たれ、都は人々の興奮した歓声に満ちていた。城へ横付けされたフロートシップは、ゆったりとセッションする様、城のエレメンタルキャノンと合奏する。
 砕け散る赤い炎。
 それは炎のエレメント。
 収集管より集められた精霊力が、目に見える形を与えられ、他を侵食する破壊力を持ってトルクの青空へ舞い上がり、拘束力を失うや四散する。
 その崩壊の美しさと破裂音は、勇者の帰還をあまねく天と地と四方の精霊へと知らしめた。

 謁見の広間では貴族達の見守る中、玉座でジーザム・トルク王が一行の帰還を待っていた。その為に、フロートシップ一艦を差し向けたのだ。
 ホルンが吹き鳴らされ、衛士がその名を読み上げるや、ざわめきの中、ププリン・コーダ男爵を始めとする『レッドスフィンクス』の鎧騎士達が、礼装をチャリチャリさざめかせ現れる。
「きゃははははっ! ただいま〜王様っ!」
 アゲハチョウの如き鮮やかな翼をはためかせ、真っ先に飛び込んで来たププリン。にっこりと鮮やかな満面の笑み、ピンクの残像を残し、くるりと空中で数回転。ちょこんと王の膝に舞い降りるや、駆け上る様その胸へ飛び込んだ。
「うむ」
「えへへへ、優勝しちゃった〜!」
 ジーザム王は余裕の笑みでこれを迎え入れ、大きな掌でその頭を優しく撫でる。
 それから一行を見やるや、静かに頷いた。
 数歩前に進み出、鎧騎士のイッチー・ゲール卿は片膝を着く。声が緊張で少し裏返る。
「ププリン・コーダ男爵様以下『レッドスフィンクス』!! ゴーレムチャリオットレースより只今、陛下の御許へ帰還いたしました!!」
 するとジーザム王はすっくと立ち上がり、威厳に満ちた声で、この大広間の隅々までに届けとばかりに手を大きく広げその胸を張った。ププリンはその肩にちょこんと乗り、王と同じ目線になる。
「お前達の帰還を皆で心待ちにしていた!! 栄えあるトルクの騎士達よ!! 武勇に優れたトルクの騎士達よ!! 優勝、大儀であった!!」「であった〜!」
「ははぁっ!!!」
 平伏する一同は、それより賞金と優勝賞品の数々を、ジーザム王より手ずから授けられるのであった。

●ゴーレムチャリオットレース第二回ルール

1.このレースは、偉大なるウィルの大王、エーガン・フォロ王陛下が開催するものであり、ウィルの栄えある騎士達のゴーレム兵器への熟達と、士気高揚を目的としたものである。故に参加者は、ウィルの鎧騎士であれば誰でも参加する事が出来る。また、その協力者として如何なる者もチームに参加する事が出来る。

2.この度の競技は、ゴーレムチャリオットによる『戦線突破』である。
 1台のゴーレムチャリオットが、競技場を一周する間に、如何に速く、如何に多数の敵を撃破するか、という武功を競うものである。
 今回はコースに、深さの違う水溜りゾーンを加える。これは、凹凸のある戦場での走行を考慮に入れての事である。

3.各チーム、チャレンジは2回。その合計得点で優勝を決定する。
 得点は、タイムレコードによるものと、ターゲット撃破数、それぞれに算出する。
 1位は100点、それ以下は10点づつ得点が下がる。最下位はマイナス50点。ブービーは0点とする。同率位のチームはトータルの平均点とする。
 第一走と第二走、その合計得点で優勝チームを決する(「最高得点は400点満点」)。
 同点の場合は決勝戦を行う。この搭乗者は次の禁止事項を免除する。

4.乗員は、操手1名、後部座席4名までとする。但し、第一走と第二走における同一人物の搭乗を禁ずる。

5.使用する武器は、天界人が持ち込んだ特殊な物を禁止とし、それ以外の武器であれば何を使用しても構わない。

6.各チームは、メンバーの募集を開催の二週間前より行い、一週間前にはメンバー表を大会運営本部に提出しなければならない。登録可能なメンバーは1チーム、最低6名、最大10名までとする。

7.参加者は、競技当日に所持する物の中から、最も貴重なる物を参加費として提示しなければならない。それが何であるかを決定するのは、大会運営本部の係りの者が決定する。

8.優勝チームは偉大なる陛下の名の元に、偉大なる栄誉と、素晴らしい褒賞を手にする事が出来る。又、参加費として提示したアイテムは返還される。
 これとは別に敢闘賞を設ける。扱いは優勝に準じ、栄誉と賞金を与えるものとする。
 尚、最低の記録を残したチームは偉大なる陛下の名の元に、不名誉と、懲罰を公衆の面前で与えられるであろう。

9.コース概要(ターゲット配置は当日)
 スタート
 第1直線
 第1カーブ 左90度
 第2カーブ 左90度
 第2直線 水
 第3直線
 第3カーブ 左90度 水
 第4カーブ 左90度
 第4直線(最終) 水
 ゴール

●トルク分国王チーム【レッドスフィンクス】
 ウィルの貴族街。
 良く晴れた日中に、とある館の庭先でピンクのシフール、ププリン男爵が他のシフール達と戯れている。
 そこには、第二回GCR(ゴーレム・チャリオット・レース)に向け、前優勝チーム【レッドスフィンクス】の名の元へ集う者達が、暖かな光が降り注ぐ、緑の庭園へ集っていた。
「ププリン様〜! 皆様、お集まりです! そろそろ、始めませんと!」
「は〜いっ! じゃね〜、みんな〜!」
 イッチー卿の呼ぶ声に、パタパタとププリン男爵が舞い戻る。
「えっと。では、始めさせて戴きます」
 羊皮紙のスクロールにあるリストを確認するイッチー。だが、ププリンはそんな事はお構いなしに皆の頭上を飛び回った。
「きゃははははっ! 今回も狙うは優勝だよ! みんな、宜しくネ☆」
「おおっ!!! 【レッドスフィンクス】!!!」

●今回の参加者

 eb4035 ミシエル・パルス・ガロー(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4085 冥王 オリエ(33歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4097 時雨 蒼威(29歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4153 リディリア・ザハリアーシュ(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4155 シュバルツ・バルト(27歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4197 リューズ・ザジ(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4299 皇 竜志(25歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4578 越野 春陽(37歳・♀・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb4651 オードリー・サイン(59歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)

●サポート参加者

メリーアン・ゴールドルヴィ(eb2582

●リプレイ本文

●Cチーム【レッドスフィンクス】第1走
「さて、第1走目のチームも残り3チームとなりました!
 ここで前回優勝チーム【レッドスフィンクス】の登場です!
 お聞き下さい、この歓声を! お聞き下さい、この拍手を!
 
 先ずは操手のオードリー・サイン(eb4651)卿の搭乗です!
 疾風のオードリー! その呼び名に相応しい走りを期待しましょう!
 続きますは、鎧騎士のシュバルツ・バルト(eb4155)卿です!
 ロングスピアを手に、今、チャリオットの左前に着きます!
 命綱を腰に巻いております!
 次は鎧騎士のミシエル・パルス・ガロー(eb4035)卿です!
 彼女もまた、ロングスピアを手にしております! いやぁ〜、逞しい!」
「ミシエル卿は右前に立つで御座るな」
「そして、最後に地球からの天界人、時雨蒼威(eb4097)卿です!
 ライトショートボウを手に、後ろに着きました! 何やら色々設置しております!
 これで全員です! 1名欠けていますねぇ〜!」
「今回、グリューネ卿は別チームに参加しているで御座るよ」
「成る程! 色々あるで御座るな! お家の事情という奴でしょうか!?
 さあ! 全員が乗り込み、がっちり握手!
 さらに観客の声援に腕を掲げて答えております!
 壮観です! そして一斉に貴賓席へ向かい一礼です!
 偉大なるウィルの大王! エーガン・フォロ王へと一礼致します!
 エーガン王も、これに手を挙げてこれに応えております!
 そして忘れてはいないでしょう! この方です!」

 一際高い貴賓席より、ぽ〜んとピンクの光が飛び出すと、スタート直前のチャリオットの上をくるくると飛翔した。シフールのププリン・コーダ男爵だ。
「きゃはははは! みんな〜、頑張ってね〜!」
 無邪気に笑いきゅ〜んと青空を舞うププリンへ、ミシエルは胸に手を置き誓いの言葉を告げた。
「ププリン様! 鎧騎士としてジーザム陛下のお力になれた事を嬉しく思います! そして、再び優勝の栄誉を!」
「うん! くるしゅううう無いぞ! きゃはははは!」
 そう言って、ププリンは蒼威やシュバルツの間をポンポンとハイタッチしながら操手席へと。オードリーの目の前でホバリングすると、ニカッと笑った。
「今回のレースも最善を尽くしましょう!」
「うん! 上で応援してるね! でも怪我しちゃ駄目だよ」
「心得ました」
 オードリーが胸に手を置き敬礼すると、ププリンはこくりと頷き、ふわりと舞い上がった。
 ガチャリガチャリと係員が敵兵人形を左右2体ずつ、機体の両側舷に設置する。これは、チャリオットに敵兵が取り付いている、という状況の再現。
 四人は、ふと和んだ気を引き締め、各自の持ち場で身構えた。

「フラッグが振られて一気にスタート!
 それと同時に人形が3体転がり落ちる!
 ガリガリ地面を引っかく左の1体! オードリー卿はインに切る! あまりスピードが乗らないぞ!
 蒼威卿! 矢をつがえて、ああっとどうした!? ファンブルか!? 腕を押えた!
 ここでシュバルツ卿は残る1体を叩き落した〜!」

「蒼威! 右を頼みます!」
「くっ、任せろ!」
 シュバルツの掛け声に、蒼威は痛む腕で矢をつがえなおす。

「第1カーブに突入します! 速度がぐんと上がって来たぞ!
 カーブ入り口、並ぶ2体の内1体を〜っ! 突いた〜! シュバルツ卿が一突き! 撃破です!
 そして〜! 蒼威卿命中! 吼えております! 蒼威卿が吼えております!
 おおっと素早く矢をつがえ、今度はコースより外れたターゲットを狙うぞ!
 狙う! 狙う! 射る! 当たった! 当たった! 蒼威卿、2射連続で撃破です!」

「撃破っ」

「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、レッドスフィンクス!」 
 すり抜け様に、真紅のバニーガール、瑠璃の声が観客の声援と一体になって耳に飛び込んでくる。

「さあカーブを一気に走り抜けるか、疾風のオードリー!
 赤備準団員の肩書きに恥じぬ走りを見せております!
 先ずは順当に〜! 1体撃破! インコース沿いの1体をシュバルツ卿が撃破〜っ!
 更に蒼威卿が矢をつがえた! そして〜っ狙っているぞ! 射った! 当たった! 撃破だ!
 機体はそのまま一気にカーブを走り抜ける〜っ!」

「突っ切るぞ!」
 オードリーの声に、3人はぐっと身構える。
 直線に抜けた瞬間、ぶわっと水しぶきが、まるで薄茶色いカーテンの様、視界いっぱいに広がった。

「ああっともろに水を被った! だぁ〜が速度は落ちないぞ! 速度は落ちない!
 ここでコース中央にバツ字に並ぶターゲットを〜っ!
 ミシエル卿素早い! ミシエル卿素早い!
 ロングスピアを一閃! 更に振り抜く様に、返す穂先でもう一撃! 一気に2体撃破だ〜!」
「蒼威卿も、連射で2体を撃破で御座るぞ!」
「さあ、このまま次のダブルチャージングゾーンに突入だ〜っ!!」

「くっ! このまま突っ切る!」
「「「おうっ!」」」
 機体の行く手には、左右ずらっと10体ずつ、ターゲットが立ち並んでいた。

「シュバルツ卿! 1体! 2体と突き倒す!
 蒼威卿も矢をつがえて〜っ射った〜っ! 当たった! 当たった! 1体撃破だ!
 機体はそのまま第3カーブへ! ここは水溜りゾーンだ! 深みがあるぞ!
 深みがあるが、浅瀬を突っ切って行く! オードリー卿! 良いライン取りだ!
 速度はそこそこ! 速度はそこそこ! 無難に走り抜けております!」
「水しぶきがレースのカーテンの様で御座る!」
「さあ、蒼威卿、この体勢で小山の上の4体のターゲットを狙っているぞ!
 狙った! 狙った! 射った! 当たったぁ〜っ! 当てました! 確実にゲットして行きます!」

「あと残り少しです! 左!」
 オードリーの言葉に、インコース沿いに立つ敵兵の人形を、待ち構えたシュバルツは突く。
 ずんと重い手応えに、柄がしなり、人形はもんどりうって後方へ流れて行く。
「お見事!」
 右前のミシエルは、ぐっとロングスピアを構え直した。
「次は俺だ‥‥」
 凛と背筋を伸ばし、蒼威はターゲットに集中する。そして放った矢は、弧を描いてターゲットに。
「撃破っ!」
 小さく叫ぶと、素早く矢かごから矢を取り出し、つがえる。

「最後の直線です! 最後の直線です!
 機体はするすると! するすると進んで参ります!
 だが、この人がいます! 蒼威卿、矢を放った! 当たった!
 最後の最後まで手を緩めません! 素早く矢をつがえ〜っ! 放った! 当たった!
 おっと水しぶきです!
 ゴール直前いっぱいの水溜りを突っ切り! たった今、ゴーーール! ゴーーールです!」

「わ〜い!!」
「お、お待ち下さい!」
「あっかんべ〜っ!」
 満場の歓声と拍手が鳴り響く中、ぴゅーんとププリン卿は満面の笑顔で飛び出すのであった。


●第1走結果発表
《タイム》
1位 52.4秒 【ソードフィッシュ】
2位 57秒 【ゴートメンバーズ】
3位 72.3秒 【ライトニングナイツ】
4位 75秒 【レッドスフィンクス】
5位 80.8秒 【ブルーゲイル】
6位 88.2秒 【チームF】
7位 93.7秒 【フォレストラビッツ】
8位 95秒 【月下の黒猫】

《撃破数》
1位 39体 【フォレストラビッツ】
2位 29体 【ソードフィッシュ】
3位 28体 【ライトニングナイツ】
4位 22体 【レッドスフィンクス】
4位 22体 【ブルーゲイル】
6位 19体 【月下の黒猫】
7位 17体 【ゴートメンバーズ】
8位 9体 【チームF】

●Cチーム【レッドスフィンクス】第2走
「さぁ、お聞き下さいこの大歓声!
 いよいよ、優勝の最有力候補!
 【レッドスフィンクス】の第2走が始まろうとしております!」
「2位に25点差、1位には55点と大きく引き離されているで御座るが、まだ判らないで御座る」
「こちらは前回と同様にフルメンバーだ! どんな走りを見せてくれるか楽しみだ!
 出ました〜っ! 妖艶な美貌! 操手の冥王オリエ(eb4085)卿だ〜っ!
 あの美しい肌が、泥水に汚されてしまうのかと思うと〜っ! 私は! 私は〜っ!」
「こらこら! 失礼したで御座る」
「ああ、空気が美味しい。という訳で続くは鎧騎士のリューズ・ザジ(eb4197)卿です!
 大きなランスを手に、今悠然と乗り込みます!
 あれはもしや、陛下より賜った前回の優勝賞品ではありませんか!?
 おっと高々と掲げております。陛下に一礼! 更にぐるんと振り回しドンと大地を突いた!
 華麗且つ力強い! 気合充分、リューズ卿! 左前に着いた〜っ!
 そして続くは天界人、越野春陽(eb4578)卿です!
 現在、ルーケイ伯の与力、男爵としてエーガン王陛下の為に心血を注ぐと共に、トルク分国王チームの一角となる精霊魔法の使い手です!
 勝利の栄光で是非ともあの地の暗雲を払って欲しい!
 お次は鎧騎士のリディリア・ザハリアーシュ(eb4153)卿の搭乗です!
 リディリア卿のほっそりとした姿が、ロングスピアを手に、クールに乗り込みます!
 クール・アンド・ビューティーとは彼女の為の言葉に思えて来ます!」
「今日の【レッドスフィンクス】の女性陣は、一際女性らしく輝いて見えるで御座るよ。
 良いコーディネーターが居るで御座るな」

 この一言に、4人は顔を見合わせ、それから待機所で手を振るメリーアンへ。
 精悍な笑みを浮かべ、頷き、そして5人は貴賓席へと、胸を張って向き直った。
 そしてエーガン王とマリーネ姫の姿に一礼すると、案の定、ププリンが飛び出す。
「きゃはははは! みんな〜、頑張ってね〜!」
「再びレッドスフィンクスに優勝の栄誉を!」
「栄光は我等に輝くだろう!」
 突き出された手と、次々とハイタッチ。たっぷりの笑顔とピンクの光跡を残し、ププリン卿は真っ青な空へと帰ってゆく。それを見送り、5人は決意を新たにする。
「深い水たまりは第3カーブ入り口のアウトと出口の中央」
「ええ‥‥インを抜くわ!」
 リディリアの言葉に頷くオリエ。
 ガチャリ、ガチャリと敵兵の人形が、そのフック付きのアームで機体の左右に2体ずつ。
 スタートのフラグが振られと同時に、機体は素晴らしい速度で飛び出していた。

 土煙を上げて転がる3体の人形。オリエは機体を一気にインへ傾けた。
 春陽は、必死に残る1体を引き剥がす。
 コース沿い、左右に1体ずつ配置されたターゲット。右は春陽が間に合わない。
 リディリアは、リューズの体勢が不十分な事を見て取ると、すれ違い様に槍を突き出した。

「さあ第1カーブに突入だ! 少し速度が落ちるぞ!
 リューズ卿がランスを構えるぞ! そのまま! そのままだ!
 おっと! リディリア卿も続く! 1体ずつ! 1体ずつ仲良く撃破だ!
 うはっ! 春陽卿のファイヤーボム! 2体まとめて丸焦げだ〜!」

「次は最初の水溜りよ!」
 ランスで1体を突き崩す。同時に放つ気合の声に、ふんばる四肢に力が入る。
 片手で結印。充分の距離を確認し、春陽はファイヤーボムを放った。

「凄い! 凄い加速だ! 疾風のオリエだ! 疾風のオリエだ!
 水を物ともしない凄いスピードだ!
 コース中央の5体のターゲット! すれ違い様〜っ! 放った〜っ!
 春陽のファイヤーボムが、コース全体を包み込む! 水蒸気が! 
 派手だ! 派手に次のダブル・チャージング・ゾーンに突入だぁ〜!」

「越野! 右!」
「任せて!」
 オリエはその声を背に舌なめずり。ぐんと更に加速する。
 一気に、コース沿い左右に10体ずつ並ぶこのゾーンへ突入した。
「せいっ!」
 ランスの一突き。重い手ごたえに、ターゲットはガラガラと後ろに転がって行く。どうしても上体が浮いてしまい、そのままの姿勢でターゲット群をいっぺんに突き崩す事が出来ない。
「くっ! くそっ!!」
「任せて!!」
 背後で、リディリアもロングスピアを振るう。
 春陽は一瞬を待った。右ターゲット群の中央が通過するのを。
「そこだわ!」
 すれ違う一瞬。その爆炎に巻き込まれないギリギリの線。高速詠唱と共に、指先に凝縮する炎の精霊の高まりを目標へ向け投げ放った。



「ゴーーール!! ゴーーールです!! 疾風のオリエ健在!! 疾風のオリエは健在です!!」
 割れんばかりの大歓声。水を頭から被った5人は、それに応える様、晴れ晴れとした気持ちで高々と手を挙げた。
「後ろに4人乗せてこのタイムは驚異的で御座る!」
 場内に沸き起こるレッドスフィンクスコール。
 その中を、ぽ〜んと何かが飛んで来て、オリエの頭にぺたりと。
「凄い凄〜い! もしかしてまた優勝しちゃうかも! きゃはははは!」
「プ、ププリン様!?」
 オリエの濡れそぼった頭の上、パタパタと手足をばたつかるププリン。
「ププリン様、参りましょう!」
「うん☆ 行こう、みんな!」
 それはまごう事無きウィニングランとなった。

●第2走結果発表
《タイム》
1位 59.1秒 【レッドスフィンクス】
2位 62.9秒 【ソードフィッシュ】
3位 83秒 【ライトニングナイツ】
4位 83.4秒 【ブルーゲイル】
5位 90秒 【月下の黒猫】
6位 94秒 【チームF】
7位 120.6秒 【ゴートメンバーズ】
8位 145.3秒 【フォレストラビッツ】

《撃破数》
1位 44体 【ブルーゲイル】
2位 40体 【ゴートメンバーズ】
3位 38体 【フォレストラビッツ】
4位 31体 【レッドスフィンクス】
5位 16体 【月下の黒猫】
6位 15体 【チームF】
7位 11体 【ライトニングナイツ】
8位 8体 【ソードフィッシュ】

●総合
1位 305点 【レッドスフィンクス】
2位 295点 【ブルーゲイル】
3位 240点 【ライトニングナイツ】
4位 230点 【ソードフィッシュ】
5位 180点 【ゴートメンバーズ】
6位 130点 【フォレストラビッツ】
7位 120点 【月下の黒猫】
8位 100点 【チームF】

「優勝はレッドスフィンクス! 2回連続優勝だ!
 第2位も2回連続! ブルーゲイル!」
「続いて敢闘賞で御座る」
「敢闘賞は最後まで諦めなかった、フォレストラビッツの第2走目のチーム!
 そして、特別賞だ!」
「これは、個人に特別与えられるで御座る」
「一人で良く頑張った! ゴートメンバーズのケミカ卿に決定した!」

●ピンナップ

シュバルツ・バルト(eb4155


PCシングルピンナップ
Illusted by トーコ