第２回ＧＣＲ Ｏ〜競技観戦
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：フリーｌｖ 難易度：易しい 成功報酬：4 参加人数：9人 サポート参加人数：1人 冒険期間：04月10日〜04月13日 リプレイ公開日：2006年04月17日 |
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●オープニング
●第２回ＧＣＲを観戦しよう！！入場口では係員のだみ声が響いていた。
「はい、順番だよ！！ ゆっくり進んで〜！！ 順番だよ！！」
「走らないで下さ〜いっ！！ 危ないので、走らないで下さ〜いっ！！」
競技会当日、入場を済ませると大急ぎで目当ての観戦席へと向かった。
会場は人々の興奮した声で、満ちている。
親子連れ、家族連れ、恋人同士。
ここには、笑顔が満ちている。
一般の人にとって、決して安い入場料ではない。
しかし、それを払ってもなお、ここへ足を運ぼうとする人々の動きは、これまでにない娯楽への人々の素直な気持ちの表れだろう。
案内板の右へ曲がる矢印には、応援席が大間かに『第１直線』『第１カーブ』『第２カーブ』『第２直線』と記されている。
スタートしてからすぐの『第１直線』。上には貴賓席があり、競技者のスタートの瞬間が見れ、想い人に貴婦人が、スカーフなどを贈るなら、この席をおいて他には無い。
最初の９０度カーブである『第１カーブ』。競技者に声援を贈るには、絶好のポイント。
続く『第２カーブ』。滑る様に走る爽快感を目にするには、ここが一番ではなかろうか。
そして、前回ではチャージングゾーンが目の前にあった『第２直線』。今回は、最初の水溜りゾーンがある。
薄暗い階段を昇り、観戦席へ出ると、風がぶわっと吹き付けてきた。
売り子が肩から箱をかけ、声をあげている。
「お水〜にワイン〜！ いらんかえ〜！ 蜂蜜酒〜！ いらんかえ〜！ パンに〜ビスケット〜！ いらんかえ〜！」
「や〜きとり〜！ 美味しいよ〜！ や〜きとり〜！」
「貸し座布団あるよ〜！ 貸し座布団〜！ お尻が痛くなるよ〜！」
売り子も様々。若い娘から、老人まで。
競技場の全景がここからも見渡せる。そういう設計になっているのだ。
段々になっている、吹きさらしの石の観戦席。
胸をドキドキさせながら、一歩、また一歩と足を運んだ。
●今回の参加者
ea0324 ティアイエル・エルトファーム（20歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ノルマン王国）ea1135 アルカード・ガイスト（29歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国）
ea1643 セシリア・カータ（30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国）
ea5929 スニア・ロランド（35歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国）
ea7400 リセット・マーベリック（22歳・♀・レンジャー・エルフ・ロシア王国）
ea8928 マリーナ・アルミランテ（26歳・♀・クレリック・エルフ・イスパニア王国）
eb4072 桜桃 真治（40歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
eb4086 吾妻 虎徹（36歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4242 ベアルファレス・ジスハート（45歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
●サポート参加者
ゲオルグ・マジマ（eb2330）●リプレイ本文
競技場の表では何台もの馬車が行き交い、大変な賑わいになっていた。勝手に出店を出す者。勝手に記念品を作って売る者。様々な馬車が出店を開く。
「朝９：００に待ち合わせだが、さすがに早いか」
黒のロングコートとブーツ、黒のズボンと黒で決めた吾妻虎徹（eb4086）は、腕時計に目をやった。
馬車が跳ね上げる土誇りや馬糞の臭気に目を細める。
「しかし、凄い馬車の数だ」
その日は、前回の数倍にも増して馬車が行き交った。
「ごめん虎徹遅くなった！」
いきなり頭から飛びついて来た人影を、虎徹はそっと抱き留めた。
「大した事ないさ。それより走って大丈夫か？」
虎徹の開いた胸元からパッと顔を上げた桜桃真治（eb4072）は、瞳を潤ませどうにもたまらないと言った眼差しで見つめる。それを、見つめ返す虎徹。
二人の時は、そこで数刻止まった。
●開会式直前
表では観客達がざわめき、早くも会場は熱気の渦に包まれている。
それを見下ろす貴賓席傍の廊下に、ベアルファレス・ジスハート（eb4242）男爵の姿があった。
壁は白い漆喰が塗られ、明り取りの小窓から差し込む陽光がぼんやりと。その床には、真紅の絨毯が敷き詰められていた。
カチャカチャという鎧のこすれる金属音にハッと息を呑み、ベルファレストは恭しく頭を垂れると、護衛の衛士数名に護られる主の主、この大会の主催者であり、偉大なるウィルの大王、エーガン・フォロ王陛下の足が行き過ぎる。傍らにはマリーネの愛くるしい気配。
それを慌てて追う様に、そのままの姿勢でベアルファレスは小走りで歩き出した。
「御久しぶりでございます、国王陛下。マリーネ様もご機嫌麗しく」
「誰か？」
エーガン王は、立ち止まる事も無く衛士を手で制し、ベルファレストに話を続けさせた。
「はっ、ルーケイ伯の与力、ベアルファレス・ジスハートにて御座います」
「ほお、早くも報告出来る成果を挙げたのか？」
「い、いえ‥‥これは私個人の考えですが、今回の山賊の件を省みてルーケイの賊については完全に駆逐してしまいたいと思っております」
「そうか」
「害を成す敵への同情などという愚かな感情は排除していきませんとな」
「励むが良い」
「ははぁっ」
そこでベルファレストの行く先を衛士が遮った。
その向こう、紅いカーテンが戸口と廊下を分かつ。
エーガン王はマリーネと共にその向こうに消えた。
すると、ほんの一拍置いて、ドッと人々の歓声が沸き起こった。
●第１直線
開会のセレモニーが終わり、いよいよ競技開始となる。
第１直線の観客席。
そこからの眺めは、正に出走直前の緊張感が、びんびんに伝わって来る。
その様に瞳を輝かせ、エルフのティアイエル・エルトファーム（ea0324）はペットのクルルを、その殻ごと抱え、ちょこんと座っていた。
「わ〜、すご〜い熱気だよ♪ 第１走目ってどこのチームかな、わくわく☆」
「フォレストラビッツですわ」
その柔らかな声に隣を見ると、うら若い人間の女性が微笑んでいた。
貸し座布団を敷き、売子から購入した蜂蜜酒と鳥の串焼きからは甘い香りが漂ってくる。
セシリア・カータ（ea1643）は悪戯めいた笑みを浮かべ、それを一口。甘辛い濃厚な味が、カリっと焼けた肉の香ばしさとあいまって美味であった。
「頑張れ、フォレストラビッツー！」
「うわお☆ 頑張れ、フォレストラビッツー♪」
ティアイエルも一緒になって声援を送る。
その声は競技場を満たす歓声と一体となり、チャリオット上の騎士達もこれに応えて胸を張った。
「ＧＯ！ ＧＯ！ フォレストラビッツ！」
「ＧＯ！ ＧＯ！ フォレストラビッツ！」
応援団のバニーガールと一緒に手を叩き応援する。
操手のマサトシウス卿がぐっと前に屈み込み、後部に乗り込んだ三名は係員が設置した敵兵人形に武器を持ったままに組み付く。誰もが真剣な表情で、スタート合図のフラグを睨む。
そして次第に会場も静まりゆく。
ワッと唸る歓声の中、ゴーレムチャリオットはガラガラと人形を振り落とし、凄まじい速度で走り出した。
手を振って見送るセシリアとティアイエル。そこへ人影がスッと射した。
「こちら、宜しいかしら？」
聞き覚えのある声にセシリアが見上げると、そこにはショア城の依頼で一緒になったスニア・ロランド（ea5929）やマリーナ・アルミランテ（ea8928）が笑いながら立っていた。
「こんにちは、セシリアさん」
「マリーナさんたら、廊下でうろうろしているから声をかけてみたら、こんな所で迷ってるんですよ」
「ちょ、ちょっとスニアさん！」
ころころ笑うスニアは、ワッと盛り上がる歓声にすぐさま目を取られる。はるか向こうの第２直線でチャリオットが各座している。
「そんな！？ フォレストラビッツーっ！！」
思わず立ち上がり声援を送るセシリア。ティアイエルも一緒になって立ち上がった。
「まったくも〜。あ、すいませ〜ん！」
頬を少し赤らめたマリーナは、売子を呼び止めた。
「お水とビスケットを戴けます？」
「ありがとうございます！ ご一緒に、串焼きは如何ですか？」
売子の少年はにっこりと、勧めて来るのを断り、マリーナは貸し座布団を敷いて、セシリアの右隣に、スニアの場所を空けて座った。
ようやく走り出したチャリオットに、競技場内はざわざわとその走りを見守っている。
「今日はディアーナ様はいらっしゃらないみたいね」
「何でも、ショア湾でもレガッタが、ボートレースがあるみたいですわ」
「まぁ、それでは準備にお忙しいのですね」
残念そうにするマリーナ。
ワッと歓声に沸く会場。ダブルチャージングゾーンで、見事に１０体が大地に転がる。
噂話に華を咲かせる者。チャリオットの動き一つ一つを注視する者。それぞれである。
●第２カーブ
「今の凄かったね〜☆ はい、私の作った蜂蜜クッキーだよ☆」
満面の笑顔でクッキーを配って回る真治。
「おお、すまない」
受け取ったアルカード・ガイスト（ea1135）は、それをしげしげと眺めた。
「これが天界人の料理ですか‥‥ありがとう」
香りを嗅いでみると、蜂蜜のかかった焼き菓子の香り。うんうんと頷き礼を言う。
「とても美味しそうですわね」
隣に座るリセット・マーベリック（ea7400）も、この様子ににっこり。
真治は幸せ一杯と言った風情で、くるりと一回転。慌ててスリットの入った黒いミニスカートを押えた。ぺろりと舌を出し、我ながら浮かれ気分に苦笑する。
「えへへ‥‥じゃあ、失礼しま〜す♪」
虎徹の所へときびすを返す真治を見送り、ふとリセットは思案を切り替えた。
「可愛い人‥‥やはりロングボウ程度では装甲を撃ち抜けそうにありませんね。狙うなら乗り手。とはいえ真っ当な会戦なら騎士道によって、後部座席の者のみを狙うしかありませんか‥‥」
「上の方ではゴーレムライダーの訓練を兼ねて、チャリオットを前線に投入した場合の戦術考察もしているのでしょうか？」
静かな声でアルカードも貴賓席に目をやる。そしてパクリ。
「ほう‥‥甘い。甘くて美味しい‥‥」
「うふふ‥‥そうですね。それにしても、チャリオットが競技限定の道具になるような情勢にしたいものですね」
そんな言葉を交えながら、少し考えると貴賓席でチームを率いる各国名代の男爵や子爵達への見方も当然変わって来る。そして、この競技を開くエーガン王の考えも。
それは、同時にどの様な人物を送り込んで来るかに、各国のゴーレム機器への姿勢も伺い知る事が出来るというもの。ただ、それを額面通りに受け取って良いかという話もある。
「ただいま〜♪」
軽いステップで行き交う人をかいくぐり、虎徹の所へと戻った真治は、大事そうに抱えたバスケットを席の傍らに置くと、顔を真っ赤にさせて少しもじもじとする。
露出度高めの洒落た白いシャツが、その匂い立つ様な女性らしさを引き立てている。
思わず胸の鼓動が早まる虎徹。僅かに声が裏返る。
瞳が問うより先に答えを告げている。
「真治、どうした？」
「こ、虎徹‥‥座らせて？」
おいでと、その腕が開かれる。
それだけで、真治は春風の様に軽やかに、その膝の上に滑り込む。そして虎徹は肩にかけていたコートで、そっと真治の身体をくるんだ。
「まったく、目の毒だ‥‥いろいろと」
風が吹く。
強い風が。
「あはは‥‥暖かいよ、虎徹」
目を細め、膝の上で甘える様に丸くなる真治。そっと、両の腕を組み、全身で虎徹を感じる。
既に世界は二人だけのもの。
その二人を見下ろす存在が現れるまでは。
サングラスをかけた長身の男が一人、そこに立っていた。
ベアルファレスは、そのバカップルぶりに臆する事無く、慇懃にその二人の様を眺めた。
「おまえはジニール号に乗船していた冒険者か。ほう‥‥その顔、戦い慣れした兵士の面構えだな」
「誰だか知らないが消えな」
虎徹はジロリと見返すだけ。
「ん？ 誰？」
夢から醒めた様に、見上げる真治。だが、とりあえず無視する事にした。
「あ、そうだ〜♪ 虎徹の好きなあのサンドイッチと安い材料で美味しいもの作ってきたからな」
傍らのバスケットを引き寄せ、手早く自分では飛び切りの一品を取り出した。
「はい、あーん」
「おお、あーん」
「きゃ〜幸せ〜☆ 美味しい？ ねぇ美味しい？」
虎徹の膝の上で思いっきりはしゃぐ真治。頬を赤らめ虎徹も答える。
「美味いに決まってる」
「きゃ〜☆」
足をばたつかせ甘える真治。
「えへへへ。大成功〜☆ ねぇ、あなたもぽっと突っ立ってないで、お一つ如何？」
「ふむ。この菓子、一ついただいていくぞ」
差し出されたバスケットから焼き菓子を一つつまむと、ベアルファレスはその場から立ち去る事にした。
●再び第１直線
３番目に走るのは前回最下位となった【ゴートメンバーズ】。
そこでセシリア、スニア、マリーナは共通の顔見知りを発見し、声をかけた。
「グレナム卿〜！ 頑張れ〜！」
「気合で頑張りなさい！」
「みんなで応援してるわよ〜！」
後ろに乗るのはシフールのケミカ卿ただ一人と言う速度重視の編成に、俄然スニアは声を張り上げた。
これに気付いたのか、出走直前にグレナム卿も拳をぐっとこちらへ突き上げた。
「大丈夫かしら？ あんなに小さいのに‥‥」
ティアイエルの心配そうにする様に、３人はう〜んと唸ってしまう。
ケミカ卿はグッと、自分より遥かに大きな敵兵の人形に組み付いている。
「確かに乗員が少ない方が、軽くて速く走る事が出来るでしょうね。これは、その対策なのかしら？」
スニアの意見に相槌を打ちつつ、みんなでこの出走を見守った。
そして、それは良い方に裏切られた。
その他にも、オラースやタイラスなど、これまでの冒険で出会った顔ぶれをそこかしこに見る事が出来、その度に声を掛ける三人であった。
そしてベアルファレス。
今にも走り出そうとする【月下の黒猫】の第１走目を見に、わざわざ足を運んでいた。
「さて、ゲイザー。どこまでやれるか拝見させてもらおうか」
慇懃に見つめる中、スタートした【月下の黒猫】は第２直線の浅瀬で各座し、大いに失望させる。
ゴールを走りぬけ、ゆっくりと停止させるゲイザーを見下し、ベアルファレスはさもつまらないものを見たかに呟く。
「ふむ、こんなものか」
結局、タイムでは第１走で最下位。得点では６位と芳しくない成績だった。
●応援合戦の珍事
前半の競技が終了しても、観客の熱気は収まる所を知らずにこの会場にざわざわと渦巻いていた。
そして、この休憩を利用した応援合戦が始まる。
人々の見守る中、突然に競技場内にいっぱいに霧が発生した。
この演出に、人々は期待を込めて見入った。そしてそれは始まった。
突如、奇妙な音楽が流れたかと思うと、妙にテンションの高い声が響き渡ったのだ。
「は〜っはっはっはっはっは！！ この会場は、我々『ブラック××（ぺけぺけ）』団が占拠した！！」
黒いローブを頭から被った人影が、会場のそこかしこに現れる。
そして、ポールにするすると黒い大きな旗が。それには白で××と記されている。
「お前達は全員、我々『ブラック××』団の人質なのだ！！ さぁ、我々のセトタ征服の野望の為に、戦闘員として改造してやろう！！ それ！！ 子供を捕まえるのだ！！」
「きゃー！！ 助けてー！！」
子供らしい違う声色が響き渡る。
会場警備の者達は『ブラック××』団の名を耳に即座に動き出すが、大勢が立ち止まってこれを眺めているため、なかなか先へは進めない。
すると突如、稲妻の様に一人の男の声が響き渡った。
「待てぃっ！！！」
「だ、誰だ！？ どこにいる！？」
そして、どこからともなく口笛が響き出す。
「どこだ！？」
「どこにいるんだ！？」
「あそこだ！！」
一斉に、第２直線と第３直線の観客席の向こうにある掲示板を指差す黒いローブの人物達。
その遥か高みには、白いローブで全身を隠す、一人の人物が立っていた。
「多くの民草が飢えに苦しむ中、この様な享楽三昧。人、それを贅沢という！！」
「な、何者だ！！ 名を！！ 名を名乗れ！！」
「貴様等、犬に名乗る名は無い！！ とうっ！！！」
盛大な破裂音が響き渡り、そこかしこに魔法の炎や、電光、氷の嵐等が吹き荒ぶ。
「うわ〜っ！！ や〜ら〜れ〜た〜！！ 覚えていろよ！！」
そして、霧がスッと晴れ、全てが終わっていた。
この寸劇に、会場は割れんばかりの拍手で応え、一部の者以外は大いに盛り上がった。
●全てが終わり‥‥
妙にものものしい警備の中、観客達は家路を急ぐ。
競技は【レッドスフィンクス】の２連続優勝という華々しい結果に終わり幕を閉じた。
帰りの馬車の中、それぞれがそれぞれの思惑を噛み締める。
「やはり技量により、大きく差が出る様だ‥‥トルク分国王‥‥良い手駒を揃えている‥‥」
「術者の安定が確保出来れば、高速移動中で術の行使が可能ですか‥‥」
「無理に動かすと、操手が疲労で昏倒するのは同じか‥‥」
「あの速度で突っ込まれたら‥‥厳しいですね‥‥」
出店でお祭騒ぎの競技場の外。幌馬車の陰で恋人達は睦み会う。
「いい思い出、こうして沢山作っていこうな！ 幸せの数でいっぱいになってはちきれちゃうから覚悟しろ」
「 ふ‥‥任せろ‥‥」
記念のコイン。ぬいぐるみ。木のおもちゃ。様々な売子の売り文句を遠くに、真治と虎徹は唇を重ねた。
