第2回GCR Z〜応援合戦

■ショートシナリオ


担当:マレーア1

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 49 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月10日〜04月13日

リプレイ公開日:2006年04月17日

●オープニング

●ササン分国公爵応援団チームZ
 ウィルの貴族街。
 その日も、応援団チームの練習が行われている。そこへ、パンパンと手を叩き、一人のパラが現れた。
「ハイ注目!」
 ササン分国の公爵より、その運営を任されているチップス・アイアンハンド男爵。
 集まった応援団のメンバーを前に、いつもの赤ら顔のチップス男爵は良く通る声で呼びかけた。
「皆も聞いていると思うが、先日、全チームのディレクターを前に開かれたプレゼンテーションの結果、レースの中休みに応援合戦が行われる事となったぞ! 本決まりだ!」
 ワッと喜びの声があがる。
 それをチップス男爵は両手で制し、更に話を続けた。
「どういう内容にするかきっちり打ち合わせてくれや。お前達の魅力で観衆を魅了してやれ! 構成はもちろん、衣装も自分達で自由に決めて構わない! 当然、チームYも全力で事に当たって来ると思う! どちらの華がより美しい華か、証明してやれ!」
「はいっ!!!」
 その返事にチップス男爵はにっかり笑うと、ぶんと腕を振るった。
「よ〜っし! その意気だ、お前達! お前達は最高に美しい!」
「はいっ!!!」
「負ける筈が無い!」
「はいっ!!!」
「よ〜っし! レッツゴー!!」
「いぇ〜っ!!!」

●今回の参加者

 ea3747 リスフィア・マーセナル(31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea8147 白 銀麗(53歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb0420 キュイス・デズィール(54歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 eb1158 ルディ・リトル(15歳・♂・バード・シフール・イギリス王国)
 eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4288 加藤 瑠璃(33歳・♀・鎧騎士・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●入場行進開始!
 オープニングセレモニーがそこそこの盛り上がりを見せる中、いよいよプラカードやバトンを手に応援団Zチームは集まった。真紅のバニースーツも色鮮やか。6人はくるりと円陣を組む。
「さあ〜ちゃっちゃといっちまうか!?」
 ぼりぼりとけつを掻くキュイス・デズィール(eb0420)は、獲物を狙うハンターの目で、彼等の後ろに立ち並ぶ列国の騎士達の顔ぶれを眺めた。
「な〜んか、どっかで見た事のある奴も参加者に混じっちゃいるが、まぁ関係ねぇな!」
 くっくっくとアイアンナックルをカチ鳴らすキュイス。
 ぽろろ〜んと、小さな竪琴をかき鳴らし、シフールのルディ・リトル(eb1158)はふわふわとキュイスの頭の上に着地する。
「いぇ〜い、キュイス君、のりのりだねぇ〜い♪」
「おい大丈夫かよ? まだ寝ぼけてんじゃねぇのか?」
「大丈夫大丈夫〜♪ 一休み一休み♪」
「ちっ、しゃあねぇな」
 べろりと舌なめずりするキュイス。そのつんつん頭の上、うさ耳の間にちょこんと腰掛居眠りするルディ。
「まぁまぁ〜。キュイスさん、あなたルディ君を落としちゃ駄目ですよ」
 ころころと笑う白銀麗(ea8147)。既にその肢体は一見、若者のそれに化けている。
 そんな一同を仮面の下から眺め、ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)は四本のプラカードを一本ずつ手渡してゆく。
「リスフィア様。先頭のフォレストラビッツとソードフィッシュです」
「はい。承りましたわ、ジョーカーさん」
 クスリと微笑み、それを受け取るリスフィア・マーセナル(ea3747)。そのプラカードには、白地に二つのチーム名が左右に記されている。
「では、第3走のゴートメンバーズと第4走のブルーゲイルは白様」
「はい。任せて下さいね」
 白はプラカードを受け取ると、それを確認する。
「第5走のライトニングナイツ、第6走のチームFは私。そして、第7走の月下の黒猫と、第8走のレッドスフィンクスは、貴方の希望通り」
 差し出されたそれを、加藤瑠璃(eb4288)は嬉しそうに抱きしめた。
「え〜、しょうがないなぁ〜」
「けっ、本当は嬉しいくせに」
「い〜じゃん!」
 鼻をほじりながら見下ろすキュイスに、瑠璃はぷうっと頬を膨らませた。

「そろそろ入場で〜す! お願いしま〜す!」
 タイムスケジュールを管理する担当は、前回とは違うらしい。
 表では楽の音が止み、オープニングセレモニーの終わりを告げる。
 そして入場の行進を知らせるホルンが、高らかに響き渡った。
「さて、行きますわ!」
 リスフィアが軽やかに先頭に立つ。そして、その前にキュイスの巨体が立ちふさがる。
 巨大なバトン。それをブンと軽く振り、ニヤリとする。
「さあ、みんな俺様に付いて来やがれ!!」
 すね毛いっぱいの筋骨たくましい足を高々と振り上げ、キュイスは大股に一歩、コースへと進み出るのであった。

 入場行進は、2チームずつ2列になって行進した。

●応援合戦
 前半の競技が終わり、集計を行っている間の時間、それは応援団同士の応援合戦の時間。
 瑠璃は、相手側の演技が始まると同時に着替えを済ませ、入場門の袖へ飛び出していた。
「うわ〜っ! 凄い事になってる!」
 競技場、一面の霧に覆われ、ワンワンと響くアナウンスの声。それはY卿のものでは無い。
 そして程なくそれは掻き消え、後には興奮に満ちた観客が残った。
「こう来ましたか‥‥」
 いつの間に背後に立つジョーカー。
「わっ!? びっくりした〜!」
 振り向くとこちら側の面子は、リスフィアを除く全員チアガール姿で集まっていた。
「あははは‥‥まさかデパートの屋上でやってる様な、ヒーローショーもどきを持ってこられるとは‥‥」
「デパート? ヒーローショー?」
 不思議そうにするアトランティスやジ・アースの人々。
 そんな事はお構いなしに、燃える瑠璃。
「よぉ〜しっ!! 負けちゃらんないわっ!! みんな、行きましょう!!」
「「「おお〜っ!!!」」」

 だだっと駆け出す5人は、それぞれの手にボンボンを持ち、競技場の中央へと進み出る。
 その上を一足先にと、ルディが飛び抜け、その手にした竪琴をボロロ〜ンと掻き鳴らした。
「いぇ〜い、れでぃすあんどじぇんとるめぇ〜ん!」
 シフールの小さな声は、たちまちに観客の大歓声に掻き消されてしまう。
 その様を笑い飛ばし、キュイスの野太い声が響き渡る。
「がっはっはっはっは! さあ、行くぜ!!」
 この音頭に瑠璃、リスフィア、ジョーカー、白は互いに目線を交わし、唯一バニー姿のリスフィアがリズムをとる。
「ワン!! ツゥー!! ワン、ツゥー、スリー、フォー!!」
「「「いぇー!!」」」
 一斉に黄色い声が、競技場に響く。
 ボンボンをしゃらしゃらと振りかざし、5つの魂が1つに燃える。
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、フォレストラビッツ!!」
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、ソードフィッシュ!!」
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、ゴートメンバーズ!!」
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、ブルーゲイル!!」
 鮮やかに横一列、縦一列、四角とフォーメーションを決め、そこから一気に集まると、キュイスを中心に白、ジョーカー、リスフィアが腕を重ねる。
「「「いぇーっ!!!」」」
 すかさず飛び込む瑠璃の身体を、一気に上空へ放り上げる。
「きゃっほ〜っ!!」
 沸き起こる拍手と歓声に、思いっきり手足を伸ばし、満面の笑顔を振り撒く瑠璃。
 そして、それを受け止める四人。パッと腕の中から跳び下りる瑠璃は、瞳を輝かせた。
「まだまだ行くわよ!」
 更にもう一度、空高く飛び上がり、空中一回転。
「よ〜し、次は‥‥みんないいわよね!?」
「「「ok!!」」」
「わ〜っ!?」
 むんずと掴まれたルディ。
「大丈夫、大丈夫!」
「え? 私も?」
 何をするのかと、一瞬静まる観客。
「「「せぇ〜の〜、それ〜っ!!!」」」
「きゃぁ〜っ!!?」
 ぽ〜んと大空に舞う白。
 思いっきり目を瞑り、両の手に握らされたルディを放り上げると、まるで2段ロケットの様にぽ〜んと小さな身体が宙を舞った。
「は〜れ〜っ!?」
 いきなり高みに放り出されたルディは、くるくると舞いながら竪琴を奏でる。
 その眼下で、精一杯の汗と笑顔を振り撒き、5人が踊る。
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、ライトニングナイツ!!」
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、チームフォーミュラ!!」
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、月下の黒猫!!」
「ゴー、ゴー、レッツゴー、レッツゴー、レッドスフィンクス!!」
「わ〜っ!!」

 ピタリと全員の動きが止まる。
 一拍置いて、割れんばかりの拍手。そして歓喜の声援が6人へと降り注がれた。


●第1走結果発表
《タイム》
1位 52.4秒 【ソードフィッシュ】
2位 57秒 【ゴートメンバーズ】
3位 72.3秒 【ライトニングナイツ】
4位 75秒 【レッドスフィンクス】
5位 80.8秒 【ブルーゲイル】
6位 88.2秒 【チームF】
7位 93.7秒 【フォレストラビッツ】
8位 95秒 【月下の黒猫】

《撃破数》
1位 39体 【フォレストラビッツ】
2位 29体 【ソードフィッシュ】
3位 28体 【ライトニングナイツ】
4位 22体 【レッドスフィンクス】
4位 22体 【ブルーゲイル】
6位 19体 【月下の黒猫】
7位 17体 【ゴートメンバーズ】
8位 9体 【チームF】


●応援合戦結果発表
「さて! 今回、中休みに応援合戦を行いましたが、その結果を発表して行きましょう!」
「どちらもなかなか熱が入っていたで御座る」
「これは、貴賓席の各チームを代表する方々の投票で決まります!
 さあ! 結果はどうだったのでしょうか!?」
「発表するで御座る! 第一回応援合戦で勝利したのは〜っ!」
「いぇ〜いっ!! 応援団Zの勝利だぜ!!」
 ドッと会場が盛り上がる。
「6人が協力する姿が、素晴らしかったとのコメントも寄せられているで御座る」
「まぁ、そちらの応援団もまぁ頑張ったよな!」
「拙者も、あんな演目とは知らなかったで御座る。あれには驚いたで御座る」
「さあ! そろそろ後半戦の準備も整ったかな!? どっちの応援団も、ばっちり応援してくれよ! もちろん、観客さん達も一緒にとびっきりの応援を頼むぜ!」
「第2走は、前半の成績順に走るで御座るよ! 第1走は【月下の黒猫】、第2走は【チームF】で御座る! どちらも同点で御座るが、こういう順番にするで御座るよ!」

「ひゅ〜っ!! やったね!!」
「おおっ!! まぁ、ちったぁ良くやったんじゃねぇの!! げははははっ!!」
「まぁ、あらあらあら‥‥」
「ふ‥‥こういうのも良いものです」
 このアナウンスに盛り上がったのは、控え室で着替え中の応援団Zこと、こちら側。
 隣の控え室は妙にシーンと静まり返っている。
「あら? おかしいわね‥‥」
 着替える必要の無いリスフィアは、気になりそっと様子を見に行った。
 廊下に出、戸口を塞ぐ黒い垂れ幕を、そっと手で押して中の様子を覗き込む。
「ごめんなさい。誰もいらっしゃらないの?」
「どうしたんだい、リスフィア?」
 その肩にちょこんと立つルディ。二人の目に入ったのは、冷たい石の床の上、バニーガール姿で昏々と寝入る何人もの姿。
「なんだぁ〜、昼寝の最中か。寝かしておいてあげなよ。後はおいらたちが何とかしてあげようよ」
 けらけらと笑うルディ。
 だが、リスフィアは眉をひそませた。そっと部屋の中に踏み入ると、しゃがみこみ、その内の一人に触れる。肌の温度も暖かで、安らかな寝息をたてている。
「生きている‥‥寝ているだけ?」
「だからさぁ〜、寝かせておいて‥‥」
「う〜ん、ルディ。いい子だから係りの人を呼んで来て頂戴」
「だってさぁ〜」
「早くね」
 にっこりと微笑むその迫力に、ルディは慌ててパタパタと飛び去るのであった。

 どうやらただ眠らされていたらしく、係員が来て一人一人を揺り起こすと皆何事も無かった様に起き上がった。
 どうやら応援合戦の間、何者かに眠らされていたらしい。
 誰一人として何があったのか覚えている者は居なかった。


●エンディング
 ぶわっと音を発て、各分国の旗が風をはらむ。
 ルディ以外は、横に1列。五人が並んで歩を進める。
 その姿が入場門をくぐった途端、ワッと歓声が響き渡った。
 観客達は立ち上がり、口々に国や騎士の名を叫ぶ。
 その中を、向かって右から、リスフィアがササン、ジョーカーがウィエ、瑠璃がトルク、白がセレ、そしてキュイスがイムンの旗を持ち、颯爽とコースを歩いた。

「これで終りね」
 リスフィアは、ハイヒールで軽やかに、それでいて淑やかに歩く。
 自信に満ちた笑みで、観客へと胸を張る。
「でも、あれは何だったのかしら? マーカス商会の人達も様子が変だし」
「今回はおかしな事もあったみたいですが、それでも楽しかった」
 ジョーカーは、マスカレードから覗く紅い瞳で微笑む。
「瑠璃様は、いっぱい飛べてすっかり楽しまれたみたいですね?」
「まぁ、こんな感じかしら? でも、まぁまぁ楽しかったわ」
 そう言って嘯く瑠璃は、晴れ晴れとした笑顔。
「あらあら、私は心臓が止まるかと思いましたわ」
 くすくすと微笑む白は、肘でつんつんと瑠璃の脇を突っついた。
「愛嬌愛嬌☆」
 軽くウィンクを返す瑠璃。
「けっ! まだ終わりじゃねぇ〜っつうの。俺はこれからが本番よ!」
 ぎひひひと舌なめずりするキュイス。
 その周囲を、ぷうっと頬を膨らませたルディがちょこまかと飛び交う。
「よおよお。最後なんだから、おいらの演奏も聞いてくれよ〜」
「げへへへ。お呼びじゃないとさ。おちびちゃん」
「何だよ、でかぶつ〜! 毛が濃いぞ! 全部引っこ抜いてやろうか!?」
 ぷうっとキュイスが息を吹きかけると、その余りの生臭さにくらっとするルディ。思わずケホケホと咳き込んだ。


●総合
1位 305点 【レッドスフィンクス】
2位 295点 【ブルーゲイル】
3位 240点 【ライトニングナイツ】
4位 230点 【ソードフィッシュ】
5位 180点 【ゴートメンバーズ】
6位 130点 【フォレストラビッツ】
7位 120点 【月下の黒猫】
8位 100点 【チームF】

「優勝はレッドスフィンクス! 2回連続優勝だ!
 第2位も2回連続! ブルーゲイル!」
「続いて敢闘賞で御座る」
「敢闘賞は最後まで諦めなかった、フォレストラビッツの第2走目のチーム!
 そして、特別賞だ!」
「これは、個人に特別与えられるで御座る」
「一人で良く頑張った! ゴートメンバーズのケミカ卿に決定した!」


●表彰と罰ゲーム
 またもや優勝は女性ばかりの【レッドスフィンクス】。
「おめでとう御座います!」
「おめでとう〜!」
 瑠璃とリスフィアはスッと駆け寄り、チームを前へと誘った。
 ジョーカーは花輪を人数分係員から受け取り、それを皆で分け合い、それから一人一人の首にかけて周る。
「優勝、おめでとう御座います!」
「ありがとう」
 優雅に微笑む勝者の表情。それは満たされた者のそれだった。

「そして罰ゲームです!」
 Z卿のその一言に、キュイスは果敢に【チームF】のメンバーに襲い掛かった。
「ぎゃ〜っ!!!」
「さぁ! エーガン王は良い王だ! 王様の良い所を10個言って貰おうか!」
 ソーク卿やザナック卿を小脇に抱え、キュイスは鞭を振り回す。
「では、私もお手伝いしましょう」
 白は少年巨人のタイラス卿を跪かせ、目の前でミミックを解いて見せた。
「カ、カツド〜ン!?」
「ほほほ! さぁ10個言って御覧なさい!」
 驚いて目を白黒させる少年巨人を前に、妖艶に微笑む。
 その傍らでルディは物悲しい曲をここぞとばかりに演奏し、その悲鳴に艶をつけた。