第3回GCR C【レッドスフィンクス】

■ショートシナリオ


担当:マレーア1

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:05月10日〜05月15日

リプレイ公開日:2006年05月17日

●オープニング

●凱旋パレード トルク城
 華々しいファンファーレと共に、トルク城の重厚な城門がゆっくりと開かれてゆく。
 この瞬間を今か今かと待ち受けていた人々は、歓声と共に花びらを力いっぱい空に撒き散らした。
「レッドスフィンクス!!」
「レッドスフィンクス!!」
 それに混じり、騎士達の名が連呼される。

「うわぁ〜、これは凄いわ」
 先頭に立つ豊満なバニーガールは、満面の笑顔でバッチリ完全武装。肩には鮮やかな飾り紐がいっぱい付いた黒豚革のベスト。長柄の棒の先に吊るされた、鮮やかに彩られたトルク王家の獅子の旗を高々と、真っ赤なハイヒールでゆっくりとその一歩を記す。
「みんな〜! 行ってらっしゃ〜い!」
「うん☆ 行って来るよ〜♪ まった後でね〜☆」
 ニパッと笑い、小さな体一杯に手を振って名コーディネーターに送り出されるピンクのシフールとその一行。ププリン子爵と、イッチー男爵の乗った儀礼用のゴーレムチャリオットが続き、更にその後に第1走組、第2走組とが乗るゴーレムチャリオットが、先頭を歩むバニーガールの歩調に合わせゆっくりと進み出す。

 整然とした石畳。城門前の広場から大通りへと、人垣で進むべき道が作られていた。
 
 少し照れつつも、第1走の操手は爽やかなドレス姿で操手席からこの歓声に手を振って応えると、さっと人垣から、街の代表に選ばれたのだろう、真新しい服を着た小さな子供達が何人も駆け寄り、その小さな手に持つ色とりどりの花輪を差し出した。
「騎士様、おめでとうございます!」
「まぁ、可愛らしい子達だこと‥‥。はい、ありがとう」
 第1操手は、そう言って微笑みかけ、一時だけチャリオットを降着させた。

 子供たちは少し大きな花輪の冠を被り、たどたどしい言葉で騎士一人一人に祝いの言葉を述べる。
「ほら、ブスッとしてないで、少しは笑いなさいよ!」
「今回はどこかテンションあがらないんだわこれが」
「何言ってるのよ! 可愛そうじゃないの!」
 後部席でゴーレムマスターに身を包む見目麗しい男女。乗り気でない男を、女が叱責する。
「ステキな騎士のお姉さま。おめでとう御座います」
「は〜い、ありがとね」
 その長い金髪が前に垂れない様に抑えつつ前屈みになり、シルクのスカーフの上から、香り高い花輪をかけて貰う。少女はちょっと頬を赤らめ、ペコリとお辞儀をするとトトトと親元へ軽やかな足取りで舞い戻る。

 片や、遠視用眼鏡の奥から冷徹な眼差しを向ける美麗な男に、たじたじとする少女。
「どうした?」
 びくりと涙目になる少女。
「早くしたらどうだ?」
 憮然とした面持ちで、一歩前に出る男。少女はおびえて一歩後ろに下がった。

「なぁ〜にやってるのかしら?」
 苦笑しながら一瞥し、第2走の操手はその艶やかな黒髪に花輪を通して貰う。
「はい、ありがとう」
 腰まである黒髪を、手繰る様に花輪から抜いて後ろに垂らし、にっこりと目の前の少年に微笑みかけると、耳まで真っ赤になって口ごもり、パッと逃げる様に走り出してしまった。
「うふふ‥‥さ・て・と‥‥」

 第1走目と対照的に、第2走目は華やいだドレス姿の女性陣が集う。
 
「騎士様、おめでと〜ございまぁす!」
「おう、ありがとうな」
 シルクのドレスにそのほっそりとした体を包んだ赤毛の女騎士は、ポンと頭に置いた掌の下、少年の青い瞳がくるくると輝いているのを認め、気恥ずかしさを隠す事も無く微笑む。

 その傍らで、天界人のルーケイ伯の与力は、微笑みも忘れてトルク王の城下町と、フォロ王の城下町の荒んだ様と比べていた。
「街並みはトルクの方が綺麗だし、建物も大きい物が多い気がするわ。治安も良さそうだし、街の人々の身なりも良さそう‥‥国が違うだけでこうも変わるのは、やはり王制の良くも悪くもある所ね」
 きゅっと唇を結び、ゴーレム工房の視察が許されなかった悔しさか、自然と遠くを見る。
 すると、ポンと軽く頭を叩かれた。
「気にしちゃ駄目だ。先ずそれなりに交流を深め、信任を得てからだ。ゴーレムはそれだけ大きな力だ。何の後ろ盾も無い者ならいざ知らず、おまえはトルク王と比肩するフォロ王の直接配下の更に部下。ショア伯の一行が別格扱いなのは、爵位もあるがゴーレムグライダー購入のお客様だからだ」
 振り向くと、鮮やかな色彩の花の冠と、貰ったばかりの花輪にアメジストの輝きを身に付けた、いつもはクールなチームメイトが妙に雄弁だ。
 ほうとため息一つ。
「止めましょう! 今はパレードを楽しむ事にするわ」
「ああ‥‥そら、市井の者達に手を振って応えてやろう!」
 気持ちを切り替え、パッと表情を明るくする二人。振り返ると、群集に向かいとびっきりの笑顔で手を振り出した。

●ゴーレムチャリオットレース第三回ルール

1.このレースは、偉大なるウィルの大王、エーガン・フォロ王陛下が開催するものであり、ウィルの栄えある騎士達のゴーレム兵器への熟達と、士気高揚を目的としたものである。故に参加者は、ウィルの鎧騎士であれば誰でも参加する事が出来る。また、その協力者として如何なる者もチームに参加する事が出来る。

2.この度の競技は、ゴーレムチャリオットによる『戦線突破』である。
 1台のゴーレムチャリオットが、競技場を一周する間に、如何に速く、如何に多数の敵を撃破するか、という武功を競うものである。
 今回はコースに凹凸を設ける。これは、凹凸のある戦場での走行を考慮に入れての事である。

3.各チーム、チャレンジは2回。その合計得点で優勝を決定する。
 得点は、タイムレコードによるものと、ターゲット撃破数、それぞれに算出する。
 1位は100点、それ以下は10点づつ得点が下がる。最下位はマイナス50点。ブービーは0点とする。同率位のチームはトータルの平均点とする。
 第一走と第二走、その合計得点で優勝チームを決する(「最高得点は400点満点」)。
 同点の場合は決勝戦を行う。この搭乗者は次の禁止事項を免除する。

4.乗員は、操手1名、後部座席4名までとする。但し、第一走と第二走における同一人物の搭乗を禁ずる。

5.使用する武器は、天界人が持ち込んだ特殊な物を禁止とし、それ以外の武器であれば何を使用しても構わない。また、レースに影響を与える魔法アイテムは、賭の前に観客に説明される。

6.各チームは、メンバー表を大会運営本部に提出しなければならない。登録可能なメンバーは1チーム、最低6名、最大10名までとする。

7.参加チームは10Gの参加料を支払う事。

8.優勝チームは偉大なる陛下の名の元に、偉大なる栄誉と賞金を手にするだろう。
 これとは別に敢闘賞を設ける。扱いは優勝に準じ、栄誉と賞金を与えるものとする。
 尚、最低の記録を残したチームは偉大なる陛下の名の元に、不名誉と、懲罰を公衆の面前で与えられるであろう。

9.前回優勝チームは自らハンデを宣言し負うことが出来る。

●ププリン子爵
「みんな〜狙うは三連続優勝よ〜☆ ゴーゴーレッドスフィンクス〜☆」
「ゴーゴーレッドスフィンクス!!」
 獅子は一丸となって吼えた。

●今回の参加者

 eb3536 ディアドラ・シュウェリーン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb4035 ミシエル・パルス・ガロー(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4085 冥王 オリエ(33歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4097 時雨 蒼威(29歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4153 リディリア・ザハリアーシュ(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4155 シュバルツ・バルト(27歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4197 リューズ・ザジ(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4299 皇 竜志(25歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4578 越野 春陽(37歳・♀・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb4651 オードリー・サイン(59歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)

●サポート参加者

メリーアン・ゴールドルヴィ(eb2582)/ サクラ・スノゥフラゥズ(eb3490)/ メレディス・イスファハーン(eb4863

●リプレイ本文

●【レッドスフィンクス】第1走目
【月下の黒猫】の走りに、まだ場内は騒然としていた。
 そして唐突に割れんばかりの大歓声。Z卿のだみ声も掻き消されんばかりだ。
「さあ! いよいよです! 前回、前々回と二連続優勝! 今回も優勝候補筆頭の【レッドスフィンクス】の搭乗です!」
「自ら架した8.1秒のハンデを克服出来るのか、見物で御座る! しかも、あのダミーバガンを撃破出来るのか、そこが勝負の分かれ目で御座るよ!!」
 Y卿も観客を大いに煽る。そこへ、更に歓声が膨れ上がった。

 わんわんと響くレッドスフィンクスコール。
「さ、頑張ってらっしゃい!」
 名コーディネーターと第2走組に背中を押され、その中へ颯爽と歩み出すオードリー・サイン(eb4651)を始めとする、第1走者達。
「さあ、参ろうか」
 その拝領したばかりの豪華なシルクのマントをキラキラとたなびかせ、オードリーは上品な足取りで湧き上がるオードリーコールに応えながら操手席へと脚をかけた。
「目指すは三連覇よ!」
 雄叫びも高らかにロングスピアを振りかざし、シュバルツ・バルト(eb4155)は後部席へ駆け上る。
「もう、シュバルツったら‥‥」
 微笑みながら後に続くミシエル・パルス・ガロー(eb4035)は、ハッと息を飲んだ。
「む!? あいつ、まだ懲りてない!」
 キッと向き直り、貴賓席の下、各分国王家や侯爵家の家紋が大きくたなびく下に位置する、秘密の解説席に居る小太りで赤ら顔のパラを、ジロリと睨む。するとペロリと赤い舌を出して、あっかんべーをしてくるZ卿。
「ひどいわ!」
 と泣く振りをしてみせるミシエルに、後ろから続き乗り込んで来る時雨蒼威(eb4097)がぼそり。
「なにあの小デブとじゃれあってんだ?」
 サッと漆黒のサーコートを羽ばたかせ、蒼威はそれを観客席に投げ込むや、颯爽と騎乗。ガツガツと靴底の釘が、チャリオットの床に当たり乾いた音を発てる。蒼威は黄色い声援に、前髪をサッと撫でながら、手に持つライトショートボウをかざして見せた。
「そ、そんな事はありませんわ」
 頬を膨らませぷいと横を向くミシエル。
「うふふ、皆さん流石に余裕ですわ」
 最後に乗り込むディアドラ・シュウェリーン(eb3536)は緊張半分、ワクワク半分。青い瞳を輝かせ、松脂の匂う機体上の空気を肺一杯に吸い込んだ。

 チームの旗を、鋲で機体の両舷に貼り付ける。可愛らしく丸にデフォルメされた、ぽんでらいおんなフラッグ。

 全員が定位置に着くと、一斉に貴賓席の最頂部を向く。そこには各家の家紋を従える様に、フォロ家の家紋がタペストリーとなって下げられている。その貴賓席から、エーガン・フォロ王の威厳に満ちた姿が、寵愛するマリーネ姫と共に姿を見せ、おごそかに頷く。
 これに一礼し敬意を示すと、次に一段下の貴賓席よりトルク王名代のシフールのププリン・コーダ子爵が淡いピンクの軌跡を残し、ぽ〜んと飛び出して来る。ププリンはシルク地のハイレグ水着の様な衣裳に半透明のコサージュ。
「きゃははは! みんな、頑張ってね♪」
 ピンクの瞳を輝かせ、見る間に舞い降りると頭上をくるくると舞い、一人一人と軽やかにハイタッチ。係員が機体に金属のフックで敵兵人形を左右2体ずつ設置すると、ププリンはアゲハチョウの様な羽根を羽ばたかせ、心配気に見下ろすイッチー男爵の方へ舞い戻る。

「さぁ! いよいよスタートです!
 旗が、今、振られた〜!! ふわりと機体が浮き上がり、同時に3体の人形が大地に転がった〜!!
 ウィザードのディアドラ卿はアイスブリザードを吹き付けるが、人形が外れな〜い!!」
「あの魔法の使い方は機体が傷付くで御座るよ」
「ガリガリ大地を削って土煙を上げるぞ!!
 振り向いたミシエル卿の豪腕が唸るぞ! 槍の石突きを使って、下から上に跳ね上げる様に弾き飛ば〜す!
 その間も、蒼威卿は矢を番え、カーブ中心の小山山頂のターゲットを〜、射った〜! 当たった! お見事です!」

「インに切り込むわ! ミシエル! 任せるわ!」
 オードリーの掛け声に、左斜めのカーブに飛び込むチャリオット。ミシエルはそのロングスピアを腰だめにし、迫り来るダミーバガンの巨体に備える。
 アイスブリザードがカーブ入り口、アウトコースの1体を巻き込み、涼しい風が観客席に吹き込む。
 矢を番え、蒼威は山頂の残り3体のターゲットへ、斜めに傾斜したチャリオット上から静かに狙いを定め、矢を放った。
 ガラガラと転がり落ちる人形。
 インコース沿いの一体を的確にシュバルツのロングスピアが捕らえ、観客の期待は最高潮。
「は〜‥‥豪腕、言うな〜!!」
 浅く吐く息から裂ぱくの気合、すれ違い様にミシエルが叩き込む穂先は、大きくしなり、ぱ〜んと弾け飛ぶ。上体のけぞる様、吹き飛ばされかかるが、左腕に絡めた命綱がそれを支えた。
 観客席からため息が、どっと漏れた。

●ファンブル
 第3カーブから第4カーブへ。
 そこに立つもう1体のダミーバガンに、シュバルツの一撃も効かず、期待は最後のカーブへ。
 アウトコースいっぱい。難所を避ける様に走るオードリー。
 蒼威が矢を放つと、ほぼ同時に悲鳴が起こり、矢をつがえ振り向くと、ミシエルが目元を押えて片膝を着いていた。
「妨害か!?」
「違うわ! 石突きで自分の目を!」
 魔法の発動に失敗したディアドラが叫ぶ。
 ぽたぽたとミシエルの指の間から鮮血が滴り落ちた。

 そのまま緩やかな坂道をかけぬけ、ターゲットを蹴散らしながらゴールするや、ざわめきの中、救護班にミシエルは運び出された。

●第1走目結果発表〜♪
 謎の解説者、Z卿の声が中休みの競技場に木霊した。
「さ〜て、第1走目の結果が出ました! 皆様! 第2第3直線コース裏の巨大掲示板をご覧下さい!」
 ドラムコールの中、掲示板にかけられていた布が、一部取り除かれてゆく。

《第1走タイム》
1位 (71.3)秒【レッドスフィンクス】 
2位  81.7秒 【チームF】
3位  93.8秒 【フォレストラビッツ】
4位 107.9秒 【月下の黒猫】
5位 112.0秒 【ブルーゲイル】
6位 197.3秒 【ゴートメンバーズ】
7位 リタイア   【ソードフィッシュ】

《第1走撃破数》
1位 30p 【ゴートメンバーズ】
2位 26p 【レッドスフィンクス】【ゴートメンバーズ】
4位 22p 【フォレストラビッツ】【ブルーゲイル】
6位 18p 【月下の黒猫】
7位 リタイア【ソードフィッシュ】

《第1走得点小計》
1位 190点 【チームF】
2位 185点 【レッドスフィンクス】
3位 145点 【フォレストラビッツ】
4位 120点 【ブルーゲイル】
5位  85点 【ゴートメンバーズ】
6位  70点 【月下の黒猫】
7位−100点 【ソードフィッシュ】

「リタイアした【ソードフィッシュ】は残念で御座るが、他はなかなかの接戦で御座る。やはり、今回導入された特別ターゲット、ダミーバガンが撃破時10体分と加算されるのが大きいで御座るな」
「これまで、命中すれば撃破とカウントされていたが、こいつはぶったおさなきゃカウントされないってのがでかい! 今のところ【チームF】のクナード卿だけがこいつの撃破に成功している! 流石は『猛突のクナード』だ! さぁ、後半戦も見逃せないぜ!」
「そろそろ応援合戦の後半戦が始まるで御座る! こちらも見逃せないで御座るよ!」

●【レッドスフィンクス】第2走
「さて、前回はスタートと同時に蒼威卿が自分の腕を痛めるというアクシデントに見舞われましたが、今回はより大きな痛手となった【レッドスフィンクス】。現在、治癒師によりミシエル卿の治療が行われており、命に別状は無いとの事です。逞しい彼女なら、大丈夫でしょう。さあ、そして第二走の騎士達がゴーレムチャリオットへ搭乗します! 操手はご存知、疾風のオリエ〜!!」
 Z卿のアナウンスを静かに聞き入っていた観客達は、大いに湧き上がる。

「ホント、はっきりしないわね!!」
 越野春陽(eb4578)の声が、競技場へと続く廊下に響き渡った。
「あの〜皆さん、ですからミシエルさんは魔法による治療を受けているので、多分、きっと、おそらく‥‥その‥‥大丈夫だと‥‥いま、ププリン様や他の方が付き添ってますので、皆さんはレースに集中して下さいね」
 おどおどしながら、イッチー男爵が皆に説明する。
「これはファンクラブなどと浮かれた事を言ってられないわ!」
 グッと拳を握り、リディリア・ザハリアーシュ(eb4153)が一同を見渡した。
「ええ! ミシエルの分も頑張りましょう!」
 冥王オリエ(eb4085)の呼び掛けに、一同個々の温度差はあるものの、差し出された手に一人、また一人と掌を重ねる。
「おい‥‥」
 キッとリューズ・ザジ(eb4197)に睨まれ、廊下の壁に寄りかかっていた皇竜志(eb4299)がゆっくりと動き出す。
「やれやれ、仕方ないな」
 最後に竜志が手を伸ばすのを待ち、オリエが吼えた。
「レッドスフィンクス〜! ファイト!」
「お〜!!」

 次々と競技場に姿を現すメンバー達。
 そして最後に現れたリューズは、大観衆の見守る中、すっくと手に持った斬馬刀を天に向け、高らかに宣言するのであった。
「彼の剣は天界よりの品! その名には『馬をも斬る』という意味が御座います! つまりは『堂々たる騎士たれ』との陛下の戒めのお言葉と! レッドスフィンクス、騎士として恥じぬ戦いをいたしましょう!」
 前回の賞品、斬馬刀を一振り。大地にザックと突き立て、踵を返すとロングスピアを手に舞い戻る。

「いくわよ〜!!」
 スタートと同時に、春陽以外は機外に敵兵人形を叩き落す。
 ふわり浮き上がったゴーレムチャリオットは、これまで誰も見せた事の無い速度で動き出す。
 緩やかな下り坂をガリガリ土煙を上げながら駆け抜ける。
「まだなの?!」
「もうちょっと!」
 ようやく春陽が叩き落すと、オリエは機体をインに切った。

「竜志!」
「お〜らい!」
 第1カーブに突入すると同時、オリエの呼び掛けにコース中央に立ち塞がるダミーバガンの巨漢に睨みを据える竜志。
「それ!」
 春陽のファイヤーボムが、アウトコース、カーブの入り口に立つ1体を、コースごと丸呑みする程の大火球となり、悲鳴交じりの大歓声。
「こっちも任せて!」
 みるみる迫るインコースのターゲット。リューズはロングスピアを気合と共に叩き込み、ガラガラと転がる人形を背後に、次のターゲットを求めて身構えた。
 オリエは充分狙える様、機体をダミーバガンの真横をすり抜けさせる。
「喰らえ!」
 繰り出した竜志のスピアは一瞬ぐにゃりと大きくしなり、その張力に竜志の上体がぱ〜んと弾き戻される。
「くっ!?」
「大丈夫?」
 命綱片手に、己の身を何とか保持する竜志を、背後の春陽が支えた。
 場内は、微動だにせぬダミーバガンに失望の声を隠さない。

 第2直線から続く第3直線への大きなうねりを、次々にジャンプする様に走り抜けるゴーレムチャリオット。その凄まじい速度と華麗なダイブに大歓声。
「速い! 速い! 圧倒的な速さだ! 流石は疾風のオリエ! あっという間に第3カーブ!!
 春陽卿のファイヤーボムが、コースごと3体を丸焼きだ!!
 次のカーブは緩やかな起伏!
 だが、その先にはダミーバガン!!
 どうする!? どうするレッドスフィンクス〜!!
 アウトコースそのまま! ああっと、落とした! 竜志卿がスピアを取り落とす!!
 ファイヤーボムがインコースを焼く!!
 そしてどうする!
 ダミーバガンだ!!
 ダミーバガンに、リューズ卿! リディリア卿とロングスピアを続けて叩き込む〜!!
 だがびくりともしな〜い!!
 重い!! 何と言う重厚感だ!!
 速度そのまま! 速度そのままで難所の第4カーブを走り抜けるレッドスフィンクス!!
 疾風のオリエには、このアップダウンは関係ないのか〜っ!?
 爆炎も鮮やかに、一気に直線だ!!
 緩やかな上り坂!
 ゴール前に7体待ち受ける! Vの字に待ち受けるぞ!
 ああっと撃てない! 春陽はファイヤーボムを撃てないぞ!! ここで撃っては自機を巻き込む!!
 そのまま数体を蹴散らしながらゴール!! ゴールです!! 素晴らしいタイムです!!」

●第2走目結果発表!
 粛々とした行進が終わり、フォロ王の訓示が終わると、いよいよ結果発表だ。
 期待と不安が入り混じる中、端の方から巨大掲示板の布が取り払われ、アナウンスの声がそれを読み上げる!

《第2走タイム》
1位 (45.7)秒【レッドスフィンクス】
2位  71.3秒 【ゴートメンバーズ】
3位  88.1秒 【ブルーゲイル】
4位 117.7秒 【ソードフィッシュ】
5位 135.6秒 【月下の黒猫】
6位 181.4秒 【フォレストラビッツ】
7位 228.0秒 【チームF】

《第2走撃破数》
1位 48p 【ブルーゲイル】
2位 36p 【フォレストラビッツ】
3位 32p 【ソードフィッシュ】
4位 24p 【ゴートメンバーズ】
5位 22p 【チームF】
6位 17p 【レッドスフィンクス】
7位 12p 【月下の黒猫】


《総合結果発表》
1位 305点 【ブルーゲイル】
2位 285点 【レッドスフィンクス】
3位 245点 【ゴートメンバーズ】
4位 235点 【フォレストラビッツ】
5位 200点 【チームF】
6位  80点 【月下の黒猫】
7位  50点 【ソードフィッシュ】

 最後の結果を隠す布が取り払われた時、競技場はドッと人々の歓声に沸き立った。
 優勝はチーム【ブルーゲイル】!
 続いて敢闘賞の発表が為された。
「敢闘賞は、前半戦を大いに沸かせてくれた【チームF】の第1走組で御座る! 前半戦1位の組にそれぞれ賞金10Gが贈られるで御座る!」
 Y卿に続き、Z卿が特別賞を発表する。
「今回も、貴賓席の高貴なる方々のご意見により、特別賞を贈る事とあいなりました! これは個人の敢闘に贈られるものです! さあ! これは1人で2体ものダミーバガンを撃破した勇者に贈られます! 惜しくも最下位となった【ソードフィッシュ】のトリア・サッテレウス卿に贈られます! 紳士淑女の皆様! 彼等勇者に盛大なる拍手を〜!!」
 この大歓声に包まれながら、次々と表彰がなされて行く。
 そして、最後に、例の罰ゲームも‥‥。