第3回GCR O みんな観戦しようよ☆
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■ショートシナリオ
担当:マレーア1
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:9人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月12日〜05月15日
リプレイ公開日:2006年05月19日
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●オープニング
●第3回GCR開催ス!
ウィルの街を出てすぐの所、かつてスラム街があった場所にその競技場はある。
フォロ王の許しを得て建設された、巨大な石と焼きレンガの建造物、それがマーカス商会の運営するレース場である。
ここを馬や馬車で訪ねた貴族は、競技場の横に設けられた広場に馬車を停め、御者や従者に見張らせる。
馬で一人来る騎士や天界人はと言うと、待ち構えていたにわか従者候補の子供らが、僅かな駄賃で馬の番をする。才の多少ある者は、徒党を組んでより多くの馬を預かったりもする。
そんな子供連中を束ねるのが、マーカス商会の若い衆の仕事でもある。
派手な色彩で『第3回ゴーレム・チャリオット・レース』の文字が幾本もはためいていた。
そこかしこで大道芸を披露する者達が、無論許可を得ての事だろう、人々の歓声を集めている。
「いらっしゃいませ! レース観戦のお客様で、こちらへどうぞ!」
入場口に近付くと、まるごとばがんに身を包んだ係員の男が、力いっぱいの笑顔で出迎える。
競技場の入り口は、今回より平民用と貴族用の二箇所に別けられる事となっていた。
平民は、これまで同様に長蛇の列を作り、少しづつ入場をする事となるが、貴族用の入場口はちょっとしたカフェテラスの様な造りになっている。
「旦那ぁ〜、これ土産にどうだい!?」
「こっち買って!」
「買ってよ!!」
「どけどけっ!! ここで勝手に物を売るんじゃねぇっ!!」
ワッと集まる物売りを、すぐさま警備担当の者達が追い払う。
そして、係員に導かれ貴族用の入場口へ入ると、室内には穏やかな音楽が流れ、カウンターテーブルや奥のテーブルなどでゆったりと談笑を交わす身なりの良い人々が目に付いた。
「如何なさいますか? まだ開会までお時間が御座います。こちらで、何かお飲み物でも? お知り合いの方とご歓談など楽しまれては如何でしょう? 席の方はより良いお席の方を幾つもご用意させて戴いております」
入店するや、にこやかな紳士が恭しく一礼し、出迎えてくれる。
「それとで御座いますが、今回、場内には幾つもの屋台をご用意させて戴いております。主に天界のレシピより生み出された品々、簡単なものばかりで御座いますが、お話の種にお幾つかお楽しみなされては如何かと存じます。もし宜しければ、お土産にお持ち帰りもご用意出来ますので、その時にはお申し付け下さいませ」
そう言って、新メニューの一覧を見せられた。
【軽食】
・天界風お好み焼き
・天界風マーカスバーガー
・天界風サンドイッチ
【甘味】
・天界風パンケーキサンド
・天界風あんぱん
・天界風りんご飴
「今回は、お試し価格と致しまして、1品分のお値段1Gで、もう1品お楽しみになれます。お求めの際に、この中からお選び下さいませ。交換用のチケットをお渡し致ししております」
●入場料を改訂致します
騎士位、もしくはそれに準ずる有徳の方 ‥‥2G
男爵位以上のお方(お供の方1名まで無料) ‥‥5G
※お供の方は、士分の方として数えさせて戴きます。
●入場すると‥‥
カウンターでワインを楽しみながら、吟遊詩人の演奏を楽しみ、そろそろという時を迎える。
そうなると、みな談笑やカード遊びを止め、ゆっくりと入場口へ歩き出す。
そんな穏やかな人の波と共に歩み、入場料金を払うと、入場章が渡される。それから競技場の廊下を進むと、傍らをドッと市井の人々が走り抜ける。少しでも良い席を取ろうというのだろう。
廊下の両脇には、マーカス商会の土産物屋が軒を連ねている。
プ〜ンと香ばしく食欲をそそる良い臭いが、鼻腔をくすぐって来た。
廊下は突き当りで左右に別れる。そこに既に行列が出来た屋台が一軒。天界風、お好み焼きだ。
じゅ〜じゅ〜と騒がしく唸る大きな鉄板に、チャリオットの形をしたそれが幾つも並んでいる。それに、店員がサッとホワイトソースをはけで塗って回ると、滴るソースが鉄板に触れるや、じゅわわわわ〜っと濃厚な甘辛い香りを一気に廊下へ解き放つ。
それを見、順番待ちの者達は目を血走らせながらどよどよとため息やら何やらを漏らした。
右へ向かうと案内板に、貴族用の観客席は、スタート地点のある第1直線、そして第1カーブ、第2カーブ、更には第2直線と記されている。この廊下を更に歩むと、ぐるりと一周出来る形だ。
暫く廊下を歩いて行くと、また別の美味しそうな香りが。
そして観客席への階段を登ると、ふわっと人々の熱気交じりの空気が頬を撫でる。
眼下には、観客席の向こう、上り坂に下り坂、起伏に富んだコースが広がっていた。
●リプレイ本文
●屋台
今回、はっきりと区別された一般用と貴族用の入場口。その入場券の羽の色も違う。
その入場料も驚くほど違うのだが、それも貴族であるという栄誉と責務が込められている。
今回は入場口をくぐると、得も言われぬ香ばしい香りがぷ〜んと漂って来る。
「ぬわーっはっはぁ! どうでぇどうでぇ! よお、坊主! レースは楽しみか!?」
「うん!」
「そっかそっかぁ〜! ぬわーはっはぁ!」
ひょうたん片手、派手な旅装束を片肌脱いだジャイアント、御多々良岩鉄斎(eb4598)は豪快な笑いと共に意気揚揚と、一般用の入り口から入ってくる庶民の群に声を掛けながら、この突き当たりにある屋台へと向かった。
『天界風お好み焼き』
その昇り旗に目を細め、その前にぎっしりと並ぶ人の波に関心した様に大きく頷いた。買う為に並ぶ者は少なく、興味本位でその様子を眺めている者が大多数。その様な中を、貴族の侍従らしき者や冒険者らしき者達が本当の列を作っている。
岩鉄斎は己の手がけた鉄板が、今まさに目の前で美味そうな煙を上げ、ジュージューと唸りながら人々の感心を集めている。そしてその前には額に汗して焼き場と売子を真剣に担当する者が居る。
「ふむ‥‥」
鼻の穴も大きく、深く息を吸って吐く。そしてニヤリと笑む。
「こいつは、我が輩の取り越し苦労であったかのう‥‥ぬわーはっはぁ!」
ぼりぼりと顎を掻き、岩鉄斎は人の流れに乗って廊下を右へと曲がって行った。
●ちいさな花嫁
喧噪の中。人混みを縫うようにエデン・アフナ・ワルヤ(eb4375)はすし詰めの一般自由席を見て回る。騎士階級である冒険者達とは異なり、肩と肩とが密着するベンチ。そこへ詰め込めるだけ詰め込んでいる。水で割ったすっぱいワインや気の抜けきったエールを売り歩く子供達も、小さな身体を窮屈そうに抜けて行く。
異様な熱気の中、まごまごするククスを連れてエデンはそのまま自分の席へと向かう。
「さ、ククスぼっちゃま」
エデンはこわばった表情のまま、為すがままに席に座る。隣の席は、ぱこぱこ子爵こと山下博士(eb4096)の席である。
「こんにちは」
眼鏡の奥の目を細めにっこりと笑う、自分と変わらぬ年の少年から声を掛けられ、少しだけ表情が和らぐククス。売り子からマーカスバーガーとサンドイッチを受け取りながら、
「ガレット親分とテルによろしく」
「そっか、おめぇー。テル兄ぃと親分の知り合いか」
親指を立てる売り子の声が親密度を上げる。
その頃。
「さ、見てご覧なさい? とっても似合うわよ」
会場へ続く貴族専用の部屋で、丹精した女の子を大きな鏡の前に立たせる華岡紅子(eb4412)。質素でありながら品のある組み合わせ。セットした髪も服の色も、その子、ミミルの可愛らしさを醸し出す。ユパウル卿の刺繍した大きな付け襟。野の花で編んだティアラ。一度きっちりと纏めた後に、自然に着崩した感じにアクセントを付ける。基調の色は白。光を着るような目映さに、ミミルは瞳を見開いた。
♪春は 羽根を持つ妖精 全ての 物の上に羽を休ませ
光の 魔法を 掛けて行く♪
ほっかりと、紅子は微笑み
「さぁ。行きましょう」
ミミルの手を曳いた。
高価なりんご飴を手に持ったカルナックス・レイヴ(eb2448)が会釈する傍を、ミミルは雲の上を歩くような気持ちで歩いて行く。
「ねえちゃん!」
喧噪の中に響く声。エデンと博士はククスの臨む方を見る。
「エデンさん? あの子が‥‥」
博士の問いに頷くエデン。姉弟の再会が落ち着いた頃。
「大変でしょうけれど、頑張ってくださいね」
言って、ロマンスガードと口紅を渡すエデン。
「若いお嫁さんにぼくからも‥‥はい」
野ばらのコサージュを渡す博士。ぽっと頬を赤らめるミミルの姿に、
「山下子爵。や、そう言う訳では‥‥」
紅子の業の冴えは、エデンの心臓を強打した。不覚にも二無き愛おしさを覚えたのだ。その後の不自然さと言えば、傍目にも判る狼狽ぶり。
「‥‥わ、私はミミルお嬢様の気持ちを無視して無理強いをしたくありません」
博士にでさえバレパレなエデンの心。しかしミミルは泣きそうな顔で
「やっぱり、私なんかじゃ‥‥」
「や、そう言うわけでは‥‥」
ククスは博士の腕を引きその場から離れるつつ、弾んだ声で言った。
「おいらたち、おじゃまみたいだ」
「みたいですね」
その時、世界は二人の他に誰もいなくなった。
●怪獣騒ぎの張本人
アリル・カーチルト(eb4245)は大きな籠いっぱいに香ばしい香りの立ち昇るお好み焼きを抱え、観客席の最上部にある通りを急ぐと、反対側から着物の裾もひらひらと白い髪のエルフ、サクラ・スノゥフラゥズ(eb3490)が駆けて来る。
「お、そっちはオッケ〜?」
「えっと‥‥サンドイッチ」
左右両手に二つずつ掴んだバスケットを差し出しにっこり微笑むサクラ。その背後にスッと影を落とす巨漢に、アリルは緩みかけた表情を硬直させた。
「スー‥‥」
サクラの腰程もあろう二の腕に、ミミナー商会の用心棒、スーはマーカスバーガーをいっぱいに抱え音も無く歩く。頭一つ分の高みから鋭い眼光でアリルを見下ろす。
「早く行ク、ヨロシ」
「ちっ、何でお前等が‥‥」
「あ、どうもすいません」
振り返りペコリと頭を下げるサクラに、アリルは首を左右に振って促した。
「いいっていいって、さ、行こう」
「はい」
目の前に巨大なダミーバガンが立っている。
たんたんと階段状の観客席を駆け下りるアリル。全体で見ると、観客席は競技場を中心にすり鉢状になっている。その下の方に陣取るショアの一行へ。すると、その中でアリルが一番顔を合わせたく無い男が、ピッと1本指を立て満面の笑みで出迎えてくれた。
「おっと、ご苦労様ですアリル様。さささ、私がお持ちしましょう。皆さ〜ん、アリル様が天界風お好み焼きを買って来て下さいましたよ〜!」
そう言ってアリルの手から掠め取る様に籠を持ち去ったナガオ・カーンは、一人一人にそれを差し出して回る。
「さささ、伯爵様」
「うむ」
デカール・メンヤード伯爵が熱々の天界風お好み焼きを、パンの皿ごと手に取る。すると、その横にいた片目の海戦騎士団騎士団長ギル・カラス子爵が無造作に一つ掴む。
「これもまた天界の食い物か」
「紀子殿のたこ焼きとは、似てまた違う物ですな」
するとその一段後ろに居る鬼島紀子が、二人の乳飲み子を抱えながらそっと口を挟む。
「恐れながら伯爵様に子爵様。たこ焼きはちょ〜っと生地のバランスが難し〜いのでありますよ。それと、ソースとマヨネーズ、それに青海苔で、御座います」
「ふむ。これにはそれが無いな。ソースも白い‥‥」
「左様で御座いますな」
ギル子爵の隣には、ディアーナ号の艦長でありショア伯の艦隊指令代行を勤めるアルフレッド・ヒンギス男爵が座り、伯爵の一言に相槌を打った。
この3人はフォロ王に、今回のゴーレム機器や精霊砲を用いた訓練航行の許可を得る為に、ウィルへ立ち寄ったのだが、アリルの提案に少し逗留を伸ばしていた。何しろわずか5隻とは言え、国王の艦隊との共同訓練である。キチンと筋を通しておかなければならない。
ショア伯の娘、ディアーナ嬢は旅行中。マリンを誘えば、とんでもない連中がおまけに付いて来た。当然と言えば当然なのだ。マリンはナガオに金で買われた身。商会の大部屋で他の店子達と同じ様に暮らしてはいるが、れっきとした商会の財産なのだ。
座布団の上に腰を落とし、口をへの字にして腕組みをするアリル。
「はい、どうぞ。アリル様」
「おう、サンキューな」
差し出されたカップを何気なく受け取り仰ぎ見ると、可愛らしい白い前掛けをしたマリンが護衛の巨漢、カーと共に飲み物を配っていた。
青い瞳を無邪気そうに輝かせ、すっかりミミナー商会での暮らしが板についた様子である。
「えっと‥‥サクラ様」
「あ、はい」
「お飲み物はフルーツジュースで宜しいでしょうか?」
サクラは一見おない年くらいのこの女性から不思議な印象を覚えたが、すぐににっこりと微笑み返した。
「ありがとうございます」
「どう致しまして」
サクラが両手でそっと銅製のカップを受け取ると、ペコリとお辞儀するマリン。ふと思い出した様に、その不思議な印象の正体を思い付く。
彼女からほのかに潮の香がしたのだ。
サクラは観客席から見て、初めて貴賓席の前に掛けられた各家の巨大な家紋群を目にした。最上階には、ウィルの王、フォロ家の巨大な家紋がタペストリーとして掛けられている。
そして一段下の貴賓席には、この競技大会のスポンサーであり、チームや応援団を出場させる権利と家紋を掲げる権利を持つ各分国の王家、公爵家のそれが並ぶ。それは正に権威の象徴。まるでフォロ家が全ての家を従えている様に人々の目には映る。実際は、各分国王の支持があって初めてウィルの王と名乗れるのだが。
「あざといな‥‥」
「故にまだウィルの王‥‥」
ゾクっと背筋の凍る響きが、サクラの耳に滑り込む。
それを誰が口にしたのか、サクラには判らなかった。
●スタート地点から
中盤の華、応援合戦も終わると会場は和やかな雰囲気のまま後半戦に突入する。
その準備の為と、観客の休憩時間の間に、セレス・ブリッジ(ea4471)は半券を手に、第2直線裏にある『天界風あんぱん』の屋台へと急いだ。
人々が口々に前半戦や、応援合戦の感想を言い合っている中、ローブが広がらない様に押えながら、つま先だって歩いていると、どこかで聞いた事のある声がした様な気がして、ふとその歩みを止めた。
「あれ? やっぱり、セレスじゃねぇ〜の? ひさしぶりだなあ〜」
「あら、いつぞやの依頼以来ですね」
そこには、3ヶ月ほど前に闇のゲームで一緒になったアリルが飄々と立っていた。やはりウィルの街はせまいな、と思いながらも軽く笑顔で会釈する。
「俺ら、ショア伯様と一緒に、カーブの真ん中に居るんだけど、どうだい?」
「私は第1直線で応援してますので。でもびっくりしましたわ。ソードフィッシュがリタイアしてしまうなんて」
やんわりと断り、セレスはゆっくりと歩き出す。
すると、アリルもあんぱんの半券を掌でちゃらちゃらさせて、共にその行列に並んだ。
「ありゃ、操手が下手なんだよな。上手いところなんてひょいひょい乗り越えて行くのに、頭っから突っ込んじまうんだからよぉ〜」
「2走目で是非挽回して欲しいですね。こうなったら私、思いっきり応援しちゃいます!」
「そいつはいいや! 俺も思いっきり声出していくぜ!」
カラカラと笑う二人。
「ショアの伯爵様と来ているって本当みたいですね」
「そう言ったろ?」
アリルが籠でアンパンを何個も受け取る様に少し驚いたものの、セレスはお土産用の一個を大切そうに受け取った。
そんな会話を聞いてか聞かずか、間近の応援席ではカルナック・イクス(ea0144)が、サッと脚を組み直し、これで幾つ目だろうか、手にしたパンケーキサンドを試していた。
「ふむ。この組み合わせもなかなか‥‥何だこのフルーツは?」
酸味のキツイ果肉をオレンジソースがキュッと引き締めている。屋台に用意された様々な果物と甘いソースの組み合わせで、何十通りもの味が楽しめる。それが売りのスィーツである。それを薄焼きのパンで包み、そのまま戴くのだ。
「やはり全ての組み合わせを試してみなくては‥‥」
しかし、ソースによっては水気の多いものもあり、それは直ぐに食べた方が良いのである。
「客にその場で選ばせるとは‥‥これは私に対する挑戦だな‥‥」
カルナックの戦いは続く。
「俺ならどんな物を作るかな。以前ジ・アースで作ったパンの中に肉餡を詰めて、油で揚げたパンとかもいいかもしれないな。んー、甘味なら、持って食べようとするなら元は貴族の料理の皿に使ってたショートブレッドを皿にして、リコッタチーズに蜂蜜と煮詰めた葡萄液をかけただけのナチュラルでフレッシュなデザートというのもあるな‥‥」
その目と鼻の先で、カルナックスは貴賓席の様子を眺めながらニヤニヤとしていた。
「さ〜て、後半戦の第1走目はソードフィッシュだからな。また、どんな顔を見せてくれるやら」
ふと目を閉じると、リタイアした時のメーアメーア男爵の様子が脳裏に、ここからだと想像半分鮮やかに甦る。
「ああいう勝気な女性が、悔しがる顔がまた良いんだよなぁ〜。あの悔しさの余り、扇をへし折る所なんかサイコ〜☆」
「やれやれですね‥‥」
その呟きに苦笑する博士。
「でも、今回のレースは参考になりました」
きら〜んとその眼鏡が光る。
「へぇ〜。子爵さんともなると、そ〜ゆう観方をするんだ」
「チャリオットは落とし穴に弱いですね」
「へ〜‥‥」
「歩兵をチャリオットの前に姿をさらすのは愚の骨頂です。でも、不意に車体がはまる程の低い所へ出た時に、操者が姿勢を維持出来ずに、最悪ソードフィッシュの1走目の様に地面のへこみにはまってしまうんです。止まってしまった処を、歩兵で一斉に飛び掛れば、ゴーレムチャリオットなんて怖くはありません。歩兵は予め塹壕を掘っておけば、轢かれる事はないでしょう。バガンと違って、やりようによっては、無力化する事はそんなに難しく無いと思うんです‥‥」
「ふ〜ん」
「‥‥問題はそれをどう防ぐのか‥‥ですね」
言いつつも、博士は遠い所を見ている。
その時、唐突にZ卿の声が競技場全体へわんわんと響き渡った。
「紳士淑女の諸君! 休憩はこれまでだ! これから各チームの第2走目の競技をスタートするぜ〜!」
ワッと歓声が盛り上がり、バニーガール達が黄色い声を張り上げる。
スタート地点にはゴーレムチャリオットが。
そして歌を高らかに歌いながら、搭乗する騎士達。
「トリアさん? トリアさ〜ん! ソードフィッシュ〜! 頑張って〜!」
またも見た顔が出て来た。セレスは精一杯声を張り上げ、大きく手を振り応援する。
「伯爵様! トリア卿ですよ! ほら、マリンちゃんも! あのトリア・サッテレウスだぜ!」
「うむ。流石は天才楽士殿」
「ホントだ〜☆ トリアさ〜ん!!」
その日特別賞を受賞する、トリア・サッテレウス卿の活躍から第2走目はスタートする事となった。
●暗闇の中で
「では商談成立という事で‥‥」
「お互い、がっぽり儲けましょう‥‥」
二人の商人ががっしり手を組んだ。