第４回ＧＣＲ Ｄ【月下の黒猫】
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：2 G 98 C 参加人数：8人 サポート参加人数：-人 冒険期間：07月15日〜07月18日 リプレイ公開日：2006年07月24日 |
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●オープニング
●第４回ゴーレムチャリオットレース開催！街はその噂で持ちきりさ！
ウィルの門をちょっと出れば、笑い溢れるマーカスランド！
歌の溢れるマーカスランド！
恋の溢れるマーカスランド！
いよいよ始まるぞ！
チャリオットレース！
第４回！
ゴーレム！
チャリオット！
レース！
第！
４！
回！
ゴーレム！
チャ！
チャ！
チャ！
チャ！
チャリオット！
レース！
第4回！
ゴーレム！
チャリオット！
レース！
マーカスに雇われた吟遊詩人達が街を練り歩き、このイベントを語って歩く。
そして、人通りの多い街角に建てられた看板には、第4回ＧＣＲのルールが相変わらず張り出され、そこへわらわらと集まる町人達の姿があった。
「おっ！？ 今度は何か変わったか！？」
大多数の者は文字が読めない。
すると、稀に居た文字が読める者が目を凝らし、首を左右に振った。
「大して変わって無いみたいだ。今度は敵に捕まった捕虜がいるらしい。それに命中させると、撃破数が１０ポイントも減らされてしまうんだと。相変わらず、バガンもどきはあるみたいだなぁ〜」
「他には無いのか！？」
「特にはなぁ〜‥‥今度のコースは、平坦なコースらしいぞ。カーブは皿のふちみたいに外側は盛り上がっているみたいだ」
「何だ、この間みたいな派手なダイブは無いのか〜‥‥」
「しかし、でこぼこで何度も止まって動かないって事は無くなるんじゃないか？」
「ふむ‥‥その辺で変えて来たか‥‥」
●ササン分国王チーム【月下の黒猫】
王都ウィルにある貴族街の一画。
ほの暗い一室。そこには第４回ＧＣＲに向けチーム【月下の黒猫】に参加する者達が集っていた。
「皆さん、二ヶ月も時間が開くと、何ともお久しぶりですね。そうでない方も、宜しくお願いします」
落ち着いた口調で、レイ・ケン男爵は一人一人と挨拶を交わした。
この日のレイ男爵は、白い襟足に長い銀の髪を三つ編みにし、アップにしてまとめ、襟の高い落ち着いた雰囲気の茶色いドレスを身に纏っていた。
「今回のコースは、凹凸の無い素直な物だそうですが、あのダミーバガンに加え、撃破するとペナルティになる捕虜ターゲットも存在するそうです。特に後半のカーブは走るたびにコース沿いの配置が入れ替わるそうですので、目の良い方が一人は前の方に居た方が良いかも知れませんね」
「なるほど、つまりはその辺の連携も大切になりますね」
「天界の、地球の戦車では、操縦者、砲手、そして指揮者と役割が別れているそうです。砲は大変大きなモノらしいですが‥‥」
「それでは、今にエレメンタルキャノンを乗せて走らせる事も‥‥」
「まさか」
誰もが想像してみては苦笑する。
その様な物を載せて、何を撃つと言うのか？
「ここはアトランティスです。世界毎に物事の考え方があるとは思います。が、このアトランティスにおいて戦いは騎士の栄誉。破壊の為の力は、その栄えある戦いへと至る為のもの。それを無くしては、獣のそれと変わりません。私達は獣ではないのです」
私達は獣では無い。レイ男爵の言葉は、清廉なる響と共に、それぞれの胸に染み入ってゆく。
「力ある者が騎士なのではありません。騎士である為に強くあり続ける方こそが誠の騎士。それ故に、騎士の方は尊いのではありませんか？」
静かに微笑むレイ。
その瞳は、ふと遠くを見る。その先に何を想うのか‥‥。
●【第２直線】ターゲット１体
→ ＋＋＋＋＋＋＋＋ コース外
→ ○○○○○○○○ ＩＮ
→ ○○○○○○○? →第３直線
→ ○○○○○○○○ ＯＵＴ
→ ＋＋＋＋＋＋＋＋ コース外（観客席寄り）
?ダミーバガン１体
１０Ｐターゲット：撃破にはある一定値以上のダメージが必要
●今回の参加者
ea0941 クレア・クリストファ（40歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国）ea2730 フェイテル・ファウスト（28歳・♂・バード・エルフ・ビザンチン帝国）
ea5066 フェリーナ・フェタ（24歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ロシア王国）
eb2554 セラフィマ・レオーノフ（23歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国）
eb4163 物輪 試（37歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4246 唐沢 公平（30歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4424 月白 うさぎ（27歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
eb4639 賽 九龍（29歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
●リプレイ本文
●月下の黒猫第１走暗い通路を歩いて進む。
トク、トク、トク。手と足の先が暖かくなる。いつものことだけど、喉が乾く。一足毎に明るくなり、一足毎に歓声が大きくなる。ぱっと目映い光の中。並のように伝わってくる観客の視線。我が月下の黒猫の名が連呼される。
「みんなありがとう」
月白うさぎ（eb4424）は嬉しくなって声援に応えるその傍で、
「（僕の見立てでは‥‥あの忍者の人の中身は…女性と見た！！）」
隣の柴は蒼く見える唐沢公平（eb4246）。随分と鼻の下を長くしている。あ、ショートボゥを掲げてクルリン回しポーズを決める。っとコケそうになって物輪試（eb4163）にしがみつく。黄色い声援が貴族席から沸き上がった。
「え？」
フェイテル・ファウスト（ea2730）の耳に、気のせいか押し倒せと言う声がはっきりと聞こえる。
「うん。気のせいでしょう」
こうして、月下の黒猫の第１走は位置に着いた。全体でも第１走目である。
――――――――――――――――――――――――
【第１走オーダー】
操手：物輪試
前衛：フェイテル・ファウスト
左後：唐沢公平
右後：月白うさぎ
――――――――――――――――――――――――
順にチャリオットに搭乗する。
第１直線。スタート直後にチャリオット擱座。
「少しは腕を上げたつもりだが」
すうっと息を吸い込み深呼吸。よし、無事浮上したチャリオットは滑り出す。位置取りは標的を左に見る。
「スピードを上げろ！」
叫ぶフェイテルがシャドウボムで中央の４体を撃破。同時に公平とうさぎ、それぞれが矢を放つ。
「当たって！」
祈りも空しく外れ。公平は気を取り直し急ぎ矢を装填する。
ようやく走り出すチャリオットは、コースをアウトに採りカーブに備えながら進んで行く。フェイテル、ムーンアローでコース沿い左の弓兵を撃破。公平も同時に狙うが大きくはずれた。
公平が三の矢を装填下した時、ようやくうさぎが二の矢を装填。フェイテルは順調にムーンアローでコース沿い右の弓兵を撃破する。
そして第１カーブ。
「外から内側に切る。くっ膨らむ。位置取り優先する！」
チャリオットはスピードを落とす。うさぎがアーチェリーでアウトコース沿いの１体を狙うが、残念。僅かに横を矢は通過した。
「見えた！」
フェイテルが弓兵を見据え、インコース沿いの２体にシャドウボム、無事に撃破を果たす。公平は同時に、うさぎの外したターゲットを狙うが気が焦りバランスを崩し転倒。命綱を握って転落を防いだ。
「加速するぞ。内側に切り込む。しっかり掴まれ」
第２カーブに入るや、試はぐんと加速した。速度を上げるチャリオット。ぐいと踏ん張り、姿勢を崩さぬよう皆腰を落とす。
「あれですね」
フェイテルは弓兵を見据えて準備。うさぎが矢を装填して居る間に公平は矢を装填し、インコース沿いのターゲットに放つ‥‥が、惜しい！ カーブの影響か横に流れた。
チャリオットは減速しながら第２直線へゆっくりと走行、インに切り、ダミーバガンの脇を抜けるコースをとり、中央を走る。
フェイテルは準備万端。
「前の矢！」
飛来する模擬弾をムーンアローで迎撃、打ち落とされて砕け散る様に、ワッと盛り上がる観客。
「え？ 何！ なんなの？」
うさぎは自分のことに夢中で。何が起きたか判らなかった。
「危ない。あれ命中コースだよ」
流石に公平は感ずいたがそれは砕けた後だった。ぼやきつつ矢を装填する。
「カーブ手前で減速！」
試の声通り、第３直線は当初やや加速するも減速して、カーブへの突入コースを採る。
「次はどこですか？」
フェイテルはカーブ中央の小山の上を凝視する。
「そこの手前の奴！」
ムーンアローが見事に１体撃破する。標的さえ特定できれば、絶対命中のムーンアロー。そんなことも知らぬ観客の怒濤のような歓声。
公平も見敵命中を狙うが、嗚呼無情。うさぎに至っては見えたが動きが追い付かず射つ余裕がなかった。
第３カーブ。
「大事に行く。ターゲット狙いだ！」
試はゆるりとコース中央の傾斜を進む。良い位置取りだ。フェイテルが順当にムーンアローで山の上のターゲットを１体撃破する。
「どこですか？」
一発の命中もなく焦りが出たせいか、敵の姿を見失う。ええい。まよよ。と、撃破されたターゲットの辺りに矢を射込むが、幸運は味方しなかった。
「え？ ええ？」
もじもじする、うさぎはタイミングを失った。焦りと緊張がうさぎの身体を硬くしている。
「スピードを上げるぞ！ コース中央！」
試は徐々にスピードを上げて第４カーブを進む。
またしてもフェイテルが山上ターゲットを１体撃破。公平は見失い外れ、うさぎはターゲットを見据えつつも撃つタイミングを掴めない。
「中に寄せるバガンは右だ！」
第４直線に抜けると僅かに速度を落とすが、インに寄せて走り抜ける。バガンを盾にする形になるので、狙撃タイミングが難しくなるはずだ。
「その矢！」
フェイテルは見事発射を捕らえ、またしても矢を打ち落とした。
「フェイテルさん凄い」
「人間パトリオットみたいだ」
うさぎも公平も、お手並みに舌を巻く。
斯くして、無傷のゴールイン。
第一走結果
タイム １２０．６秒 ６位 ５０点
撃破 １１ポイント ３位 ８０点
総合 １３０点 ５位
●月下の黒猫 第２走
月下の黒猫は、第１走が総合５位であった為、第２走は４番目だ。
「あっはっは、まぁ愉しませて貰うわよ」
結構場慣れしているレース初陣のクレア・クリストファ（ea0941）。目を瞑り、ターゲットの位置をおさらいするのはフェリーナ・フェタ（ea5066）。 ロープにダーツをずらっとさして登場。
「おおぅ」
セラフィマ・レオーノフ（eb2554）が姿を現すや、異様なオーラを集める。なんて不思議な目をするんだこの人は。まるで全て、観客の心の全てをお見通し。清楚さとエロチックを二つながら体現する黒のマホウショウジョルック。白いレースのヘッドドレスが妖しく映える。後ろ頭のリボンも黒。
「俺は猛烈に感激してる！」
目が充血するほど気合いの入った賽九龍（eb4639）。
「ようし、今度こそ勝つぞ！」
彼の気合いに皆も拳を突き上げる。
――――――――――――――――――――――――
【第２走オーダー】
操手：賽九龍
左前：フェリーナ・フェタ
右前：セラフィマ・レオーノフ
左後：クレア・クリストファ
――――――――――――――――――――――――
「あちょ、あちょ、はああああぁとう！！」
飛び込むように九龍が乗り込んだのを皮切りに、全員が搭乗するといよいよスタートだ。
「あちゃぁ！ はうぁぁぁぁ！」
第１直線。九龍はスタートと同時に擱座。
「あちょ、あちょ。とぉぉぉりゃ！」
急ぎ再動して動き出すチャリオット。
「そこね」
フェリーナのダーツは、順当に左のコース沿いに立つ１体に命中。撃破！
「ケラケラケラ予定通りね」
すれ違い様にセラフィマが石突きでターゲットの喉を抉る。ソニックブームを飛ばすクレアと競うようにコース中央の４体から１体ずつ撃破する。チャリオットの位置取りと呼吸は最高に噛み合う。
幸先の良いスタート。だが、好事魔多し。第１カーブに入るや否や、即座に擱座。
「でも、当てやすいよ。慌てないで」
フェリーナは九龍を労いつつ。攻撃的だ。静止状態のせいか、フェリーナのダーツは確実に１体を撃破する。ロープから悠々とダーツを抜き取り、また撃破。チームは再起動に手間取りながらも撃破数のレコードを上げて行く。
狙える物が無くなった頃、漸く起動。ゆっくりとカーブに入って行った。
「ケラケラケラ。ほのぼのですわね」
ターゲットは角度的に狙える位置にないクレアは豪快に笑う。ツイテない時もあるもの。第２カーブで即座に擱座したチャリオットで、ソードシールドを掲げて壮んに観客にアピール。セラフィマも声援に応えて歌姫のように愛想を振りまく。ホウショウジョの衣装で。観客のウケは悪くない。
その間フェリーナは手近なターゲットに投げ付け、１体撃破。ロープからダーツを抜き取りさらに撃破。
「あちょ！ あたたたたたたた！ ちょう！」
九龍は再起動に失敗を繰り返し、
（「俺の心のように、赤く、熱く、燃え上がれ！」）
意気込み空しく１分以上を経過。目は充血し、血管が浮き上がり、頭からは湯気が立ち上る。そして、‥‥遂に気力が能力の限界に突き当たった。
ぐらり。と九龍の身体が揺らぐと、崩れるように力尽きた。
（「終わった‥‥何もかも‥‥」）
エーガン王からの競技中止命令が下り、救護班が駆け付ける。
美しき３人の乙女の腕で燃え尽きた九龍は、ミイラの様に思われた。
第２走目結果
タイム リタイア 同率６位 −５０点
撃破 リタイア 同率６位 −５０点
総合結果 ３０点 ６位
●戦い終わって
「あ、気が付いた？」
九龍はベットの上で目を覚ました。気付けのワインを飲み下しつつ、九龍の意識がはっきりしてくる。
「順位は？」
「ケラケラケラ。最下位は免れたわ。根性みせて貰ったわね」
クレアは言葉を選ぶ。限界まで泳いで溺れたようで、格好いいのか悪いのか判らないが、確かに彼はベストを尽くした。
「うちのチームも生き残り成功だよ」
公平が起きるのを手伝いながらほっと一息。
『さかなさかなさかなぁ〜っ！！』
大合唱がここまで聞こえる。
「優勝はソードフィッシュか‥‥」
呟く九龍に、試は苦笑いしながら、
「いや、あそこは最下位だ」
「う、嘘だろ？ だって」
『や〜！！ や〜！！ 食べると身体にいい〜っ！！』
優勝したかのような盛り上がりが、競技場の内外に満ち溢れていた。
エールを送った試としては、実に複雑な心境である。
