第4回GCR 王国華劇団で応援Z
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■ショートシナリオ
担当:マレーア1
対応レベル:8〜14lv
難易度:易しい
成功報酬:2 G 98 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月17日〜07月20日
リプレイ公開日:2006年07月25日
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●オープニング
●マーカスランド2.5〜応援で宣伝しようぜ!
「よ〜し! じゃあ、今度やるGCRの中休み! 応援合戦に、この宣伝をしようと想うがどうだ!?」
「「「え、ええええええ〜っ!!?」」」
マーカスランドのサロンを震わせた翌日から、その歌声は競技場に木霊した。
天界〜ロマンス〜♪ 天界〜ロマンス〜♪
心は〜ときめき〜星空〜飛びさる〜♪
天界〜ロマンス〜♪ 天界〜ロマンス〜♪
あ〜あ〜ふるさと〜はる〜かに〜遠〜く〜♪
そんなこんなの練習風景の片隅、着々と準備が進んでいる。
配役は未定のまま、それっぽいキャストの衣裳が次々と用意され、天界人のボビーにかかれば、飾り気の無い一枚の板が、たちまち騎士や魔法使い、その辺の樹木や水車へと変化する。
汗を流した仮入団中の劇団員達が集まって来ると、それらをどんどん披露してゆく。
「はっはっは〜☆ 何でもどんどん言ってネ〜! ミーがプシューっとやっつけちゃうネ〜ん」
妖しげな言葉を使い、くっちゃくっちゃと何かを噛み続けるボビーは、サングラスの下、ニヤニヤと笑う。例の街中あちこちブルーゲイル事件の張本人が、こんな所で雇われているのだ。
「イエ〜イ!」
そしてボビーは妖しげな踊りを踊った。
「ちょ、ちょっとそこ! 不謹慎だわ!」
ツンツンオデコのお嬢チャンがプ〜っとほっぺを赤くして突っかかる。
その横、コケティッシュな笑みを浮かべながらもセクシーな青い瞳のお姉さんが、次々と衣裳を並べていた。
「さて! 悪の魔法使いから、正義の騎士まで! これなんかきわどいわよ〜☆ ほ〜ら、こっちはひらひらいっぱいで可愛いでしょ〜♪ 天界で言う所のゴスロリよ! ゴスロリ!! 配役はまだ未定なんだから、ここで好きなのをやらなきゃ損よ! 損っ! 損っ!」
「セリフも自分達で決めて良いんですよね!?」
「ストーリーに沿ったものなら構わないで御座る!」
「沙羅影さん!?」
ふらりと黒子姿の沙羅影が、馬車のカキワリから姿を現した。
「落ちて来た主人公の男女二人と、デコーノ姫、モヤッシー、ノーキンの凸凹三人組みと、それに対立するヤルタ家の美形三人組みで御座る。となると天界人の男の子はデコーノ姫側、女の子側は美形三人組みとなるで御座るが‥‥アレンジは任せるで御座る」
「それと狂言回し役の全身タイツ変態野郎は希望者がいればって事でな!」
苦笑しながら天界の少年風の衣裳を身に纏った、チップス・アイアンハンド男爵が、ひょいと横合いから姿を現す。無理に押し込んだから、シャツやズボンがぱっつんぱっつんだ!
「ああっ!? それは僕だと思ったのに!」
「え‥‥」
「あ〜あ、男爵。それのびちゃって、ぶよぶよになるよ」
「ぶよぶよなのは、男爵のおなかだよ」
「男爵はこのまるごとどらごんでも被ってなよ!」
「い、いや、そのおぢさんはね‥‥あひゃ〜っ!?」
わっと飛び掛られて、たちまちまるごとどらごんに。
「ああ、これこれ。そのまるごとどらごんはドラゴストーンの守護者で使うから手荒に扱ってはいかんで御座るよ」
「ねぇ沙羅影さん?」
「ん? 何で御座るか?」
「あのね。当然全部は無理よね。メインのシーンをやっても不味いでしょうけど、いきなりハイライトシーン、なんて感じで構わないのかしら?」
沙羅影はちょっと首を傾げてから、何度も頷いてみせた。
「続きや前後を観てみたくなる、そんな盛り上がる処を披露するで御座る。だから、ストーリー全体から細かく刻んで、二三箇所をぴっくあっぷしても構わないで御座ろう」
「そ、そうそう‥‥、今回は天界ロマンスのさわりだけ見せるんだから。でも忘れちゃいけないぜ。俺達はその衣裳で応援も表彰もするんだからな」
大地にねじ伏せられたまるごとどらごんが、ぱくぱくと口を開く。
「あ、そうか‥‥そうですわね」
出るからには当然各チームの応援もするのだ。
「応援の衣裳はバニーでもこの天界ロマンスの衣裳でも、そうでなくても何でもOK。要は盛り上げればいいのさ。まぁ、各コースに最低一人は着いてくれると良いんだが、この中には競技に出る奴もいるだろうから、まぁどっちをとるかは好きにしな。その時は代役を呼んでくれると嬉しいな。ああ、それと急に決まった狙撃兵役も各コースに一人ずつ配置されるから、邪魔しちゃいかんよ。裏方に怒られちゃうからな〜♪」
ごろごろ子供達に転がされながら、男爵はどこかへ運ばれて行った。
●クアハウスで一汗流して
かこ〜ん‥‥
ぽんでらいおんな湯口からお湯が流れ出る。
いよいよ数日後にGCRが開催だ。それに向け、皆で練習後の憩いの一時を過ごしていた。
女性陣に遠慮して、奥の洞穴の様な足湯で、腰布一枚でぽかぽかになる幼顔の少年。
するとその目の前ならぬ足元を、人間大の黒い生き物がすい〜っと。
「うわっわわわわっ!?」
慌ててお湯から跳び退る少年は、ぎょっとしてそれを見つめた。
するとプクリ水中から黒い生き物が。良く見ると全身黒ずくめ、黒子姿の沙羅影であった。
「すまんで御座る。驚かす気はなかったで御座る」
「お、泳ぐんですか?」
くるり水中で一回転。
「里を思い出すで御座る‥‥」
すい〜っと、人間離れした見事な平泳ぎ水路を泳ぎ行く。
「沙羅影さん。服、脱げば良いのに‥‥」
呆然と見送ると、遠くで悲鳴が。
「また誰かが被害者に!?」
苦笑しながら水路を走った。膝上くらいの湯をざぶざぶ蹴り、サウナ室の前を抜け、大きなホールへ出る。すると人だかりが。
「ど、どうしたんですか!?
慌てて駆け寄ると、思わず頬が赤らんだ。クイッと顔を横に向け、直視しないようにする。
「ふふふ、大丈夫よ。この子、ちょっとのぼせちゃったみたいなの」
迫力の女性軍団の中から、褐色の肌を大きなバスタオルで隠した妙齢の女性が、掌でパタパタと扇ぎながらにっこり。
「ふぅ〜、大丈夫れすぅ〜‥‥」
タイルの床に、眼鏡を曇らせた金髪の美少女がぐったりと横たわっていた。
「もう大丈夫れすぅ〜‥‥」
起き上がろうとして、へたり込み、みんなに支えられる。
「ほらほら、ボウヤはあっちに行って行って」
「あ‥‥は、はい! 失礼します!」
背にクスクス囁く様な笑い声。今日もウィルは平和である。
●パンに塗る物が欲しくって
「あんこ‥‥」
「そうあんこ‥‥」
「あの、パンに塗る物が欲しかったのですけど‥‥」
窯を前、目の前で次々とビー玉サイズのあんぱんが作られてゆく。
「だからあんこ‥‥」
「だぁ〜、ここにはあんこしか無いの!?」
目の前には巨大なあんこの山。遙々サンの国から輸入した超贅沢品。
次にサロンのカウンター裏に潜り込むと、よく冷えたバターや、はちみつ、ラズベリーやブルーベリー、オレンジ等多彩なフルーツジャムソース、生クリーム、クリームチーズ、ヨーグルトなどがぞろぞろ出て来る出て来る♪
「これって食べて良いのかしら?」
余りのお宝ぶりに、指を咥え逆にう〜んと唸ってしまう。なにせ月道貿易でしか手に入らぬ贅沢品だ。あんこもオレンジも夥しい金貨の山に見えてくる。誰かが忍び込んで盗み食いしたら、縛り首にしても非難されないほどのお宝だ。
「ねえねえ、こっちの冷えたフルーツ、切ろうかしら?」
「あ、それも挟むと美味しいかも☆ 私やります!」
「じゃ、私はお茶の準備をするわね」
「お願いしま〜す☆」
にっこり。にっこり。
二人は鼻歌を合わせ、楽しく跳び回った。
●リプレイ本文
●入場行進!
「こ、これは!?」
「落ちて来たっていう天界の楽器ダス。マーカスの旦那がこの日の為に押えておいたんでゲス」
係員の説明に目を見張るドロシー・ミルトン(eb4310)
そこには黒塗りのグランドピアノが置かれていた。
ドロシーは、サッと鍵盤に指を這わせた。
(「調律が少し‥‥でも‥‥」)
「じゃあ、ドロシー様はこちらで‥‥」
こくりと頷き、ドロシーは傍らの椅子を引き寄せた。それから、目を瞑りスッと息を吸う。
「よっし! 張り切って行こー♪ 」
パッと目を見開き、鍵盤へと置いた指にそっと力を込めた。
ホルン鳴り響く後、聞き慣れぬ、涼やかで弾む様な楽の音が競技場全体に響き出す。
競技場第4カーブに続く入場口。そこには、並び立つ各チームの前には、先導をするバニーガール達がプラカードを手に待ち構えていた。
「みんな、頑張って! 応援しているから!」
「ありがと、なっちゃん☆」
「ナッキー!」
「あまのっち♪」
ライトニングナイツのエレやリーザ、まぶい等手近なメンバーに声をかけるバニーガール、天野夏樹(eb4344)。互いに手を握り合ってキャッキャとはしゃいでいた。
そこへタイムキーパーの係員が、指を数えてカウントする。
「3! 2! 1! お願いします!」
「あわわわ!」
慌ててプラカードを持ち直す夏樹。
「さあ! 行きましょう!」
マスカレードで素顔を見せぬバニー、ジョーカーことジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)はフォレストラビッツのプラカードを掲げ、胸を大きく反らし歩き出す。
「よ〜し! みんな行こう!」
「ええ!」
続く夏樹は、ライトニングナイツのメンバーと共に歩き出す。
「では、皆さん‥‥」
そして、それに続くはレッドスフィンクスとそれを引率する殺陣静(eb4434)。
「さあさ、皆様参りましょう!」
陽気にルシール・ハーキンス(eb0751)が月下の黒猫のプラカードを振りかざした。
ワンと空気を打ち震えさせる歓喜の声、次々と入場するチームに、観客は熱いエールを贈る。
それに応える各チームの先頭に立つバニーガール。中にはそうでも無い者。
ぷっくりとしたパラの女性に化けた白銀麗(ea8147)は、ぱっつんぱっつんのバニースーツに笑顔を押し込め、コミカルなステップで前回優勝チーム【ブルーゲイル】を引率する。
次に【チームF(ふぉーみゅら)】はミリランシェル・ガブリエル(ea1782)だ。両脇をがっちりホールドされ、悲鳴を上げながら連行される男に背を向け、意気揚揚と観衆にアピール。
「さあ! 観念しな! お楽しみはこれからだわよ!」
「ひぃぃぃぃぃっ!? え、遠慮しますぅ〜‥‥」
「あ〜っはっはっは! それはそれ! これはこれだぁぁぁ! 」
「みゅ〜♪ 凄い騒ぎなの」
恥ずかしさに頬染めて、一歩競技場に踏み出すと、ビリビリと声援が耳を打ち、ちょっとクラクラ。
「チ、チカちゃん、だいじょうぶ?」
とんと背を支え、心配そうに覗き込むリールに、笑顔で首を横に振るチカ・ニシムラ(ea1128)
。
「だいじょぶじょぶ☆ ちょっとビックリなのにゃ♪」
小さくガッツポーズ。
「ちょっと、もう少し端っこ持ちなさいよ」
「え〜、エリザさん二人で持つんだから〜☆」
にっこり笑顔のイリア・アドミナル(ea2564)。グッと【ソードフィッシュ】のプラカードを、バニースーツからこぼれんばかりにぷるんぷるんな胸元へと引き寄せる。
「かぁ〜っ!? この娘ったら、ちょっとばかり胸が大きくって可愛くって若く見えるからって、私の倍以上のくせして〜!」
「あらやだ、それってやっかみですか?」
「むっき〜!」
コロコロ微笑むイリアに、ピカリとオデコを光らせながら、エリザ・ブランケンハイム(eb4428)はぐいっと自分の胸元へ引き寄せる。
「もう〜、ちゃんと二人で持ちましょうよ〜♪」
ぐいっとまたもや自分の胸元へたぷんと引き寄せるイリア。
「あなた、言ってる事とやってる事が違うわよ!」
ぐいっと自分の胸元へ引き寄せるエリザ。オデコにキュッと押し付けた。
「あ‥‥眩しい‥‥」
「あ、あ〜た喧嘩売ってるわね!?」
「は〜っはっはっは!」
すると二人の背後に妙な気配。
「は〜っはっはっは! 二人とも、僕の為に争わないでオクレ〜おぅ〜ぼんそわ〜☆」
二人にぎゅっと抱きつくミラクルな薔薇マントの男。
「きゃぁ〜♪」
「へ、変態〜っ!?」
ボクン
バタン
ゴソゴソゴソ‥‥
「どうする?」
「サー‥‥」
「私に任せて☆」
短い詠唱と淡い光。怪人は【ソードフィッシュ】のメンバーの手によりいずこかへしまわれた。
何事も無く、選手が競技場中央へ整列してからのセレモニーダンス。
ドロシーのリズミカルな演奏に乗り、中央ではジョーカーがイリアがアクロバティックなダンスを披露。そしてその周りでバトンやボンボンを持ち、くるくると華やかに演出する。
中にはぽろっと。
「うふっ、サービスサービスぅ♪」
ぺロッと赤い舌を出して、ポージングする。
「ハーイ! ラスト!」
夏樹の掛け声。パッと集まると、皆で一斉に、夏樹を空へ放り上げた。
「第4回!」
すると、次には悲鳴を上げながら、ピカリ。エリザがくるくるっと宙を飛ぶ。
「うきゃぁ〜っ、ごぉ〜れむぅ〜!」
次には一際小柄な影が。ぴょーんと、誰よりも高く飛び上がった静は、目の前に迫る青空を見上げながら静かに‥‥
「ふ‥‥チャリオット!」
ポトンと落ちるのを全員で受け止め、次に飛ばされる生贄がランダムに選ばれる。ガッシと交錯した腕が、その均衡が破られた時、ルシールの身体が宙を舞った。
「レース! 始まるよ! 王国華劇団も、宜しくネ〜っ!!」
空中で妙なポーズを取り、くるくると落下するルシール。
それから全員で、輪になってばっちりポージング。
「「「よろしく、ねっ!!!」」」
割れんばかりの歓声。かくしてオープニングセレモニーは最高潮を迎えた。
●中休みに宣伝しちゃうぞ!
ソードフィッシュの大事故に騒然となった会場は、まだその興奮から冷めてはいなかった。
怪我人が運び出された後も、係員がフロートチャリオットの残骸を回収して回っている。
仮面の怪人、ジョーカーが音頭をとった。
「ようし、行くわよ!」
衣裳をガラっと変え、皆で手拍子。
「天界〜ロマンス〜♪ 天界〜ロマンス〜♪」
一斉に歌い出す。黒子姿の沙羅影や、シルクハット姿のチップス男爵、そしてブルーのラメ入り衣裳に、魚や貝と言った木製の飾りをベルトで巻きつけた天界人のボビー。
「おぅーっいぇ〜っ!!」
「はっはぁっ!!」
「我等も行くで御座るよ!!」
皆が飛び出す後ろに、少し大きな布を張りの張りぼて、それを三人で持ちワッと歌いながら続いた。それは一本マストの帆船だ。
競技場の中央へ飛び出した十数名は、観客を前にそれぞれの衣裳で踊った。そして、ジョーカーが競技場の中央へ走りこむと、それっとばかりに集まった。
ジョーカーはその両手にマリオネットをぶら下げ、観客の皆に見えるようくるりと回っては、大きく良く通る声で語り出した。
「そこはこのアトランティスから遠く離れた別世界、地球! そこで、一組の男女が幸せな1日を送ろうとしていた!」
ジョーカーが二体のマリオネットを並ばせて歩かせ、数歩下がる。
すると、ジーンズを履いた少年らしき姿の静と、ひらひらいっぱいの美少女、チカが左右反対がわから踊り出て、腕を組んでくるくると踊り出す。そして、皆で一斉に笑った。
人々の笑いの中、楽しそうに互いの顔を見つめ、跳ねるチカと静。
「はにゃぁ〜、目が回る〜♪」
「ふ‥‥じゃあ、そろそろいこうか‥‥」
静がそう囁くと、チカと組んでいた腕をパッと離した。
「きゃぁ〜っ!!」
「わあああああっ!! 落ちる〜っ!!」
静はこの世界に落ちて来た時、感じたそのままに叫んだ。
そして二人はくるくると回りながら、囲う様に踊る輪の中へ、全く反対側へと飛び込んだ。
ジョーカーは詠う。片方のマリオネットを背に隠し、もう一方、男の子の人形を大地へ横たえた。
「いったい何が起きたのか!? 少年は目覚めると、彼女では無く、見知らぬ女が目の前にいたのです!」
よろよろとよろけ出て、倒れてみせる静。ショーカーはすっと後ろに下がり、入れ替わりに三人組が進み出る。
中央に立つ、お姫様然としたエルザは、ピカリとオデコを光らせ、手に持った白い羽の縁が付いた黒い扇をひらつかせ、胸を張って笑った。
「おほほほほ!! 何やら妖しげな光が落ちたわ!! ノーキン!! モヤッシー!! もしかしたら、精霊か竜が指し示したドラゴストーンの手掛かりかも知れないわ!! お探しなさい!! 探すのよ!!」
「あらほらさっさー!!」
敬礼する二人はそこかしこを探して回る仕草。
「ははははは!!」
高らかに笑うミラクルなノーキン。派手に薔薇のマントをはためかせ、タイトなタイツでひらりひらり、薔薇を咥えてポージング。
モヤッシー役のドロシーは、男の騎士らしき衣裳で、倒れた静の前に大げさな身振りで片膝を付く。
「デコーノ姫様!! デコーノ姫様!! ‥‥見たところ、これは天界人でやんすな!!」
「何!? 誠か!?」
悠然と歩み寄るデコーノ姫。キラリキラキラとオデコを光らせた。それもそのはず、黒子がハンドライトで常に光を照射しているのだ。
「ぐっ‥‥一体‥‥ここは?」
モヤッシーに抱き起こされ、意識を取り戻す少年。頭を振り、そして目の前に立つ女を見た。
「おほほほ!! あなたは運がいいわね!! このデコーノ姫に拾われるなんて!!」
「なんだってんだよ一体!!?」
少年を見下ろすデコーノ姫。パッと手を上げ、この世界を指し示す。
「ここにおわすは、デコーノ姫!! おデコの輝きならこの世界の誰にも負けねぇって評判の姫でやんすよ〜!!」
歌うモヤッシー。そして、デコーノ姫は高らかに宣言した。
「偽善者のヤルタ家に捕まっていたら、きっと一生奴隷だったわよ!! ここはアトランティス!! 貴方の住んでいた世界とは別の世界ね!! 元の世界に帰りたいなら、私に協力しなさい!!」
「アトランティス!!? ここはアトランティス!!? 俺の他には、俺の他には、誰も居なかったのか!!? ああ、チカよ!! 君はどこに!!? 俺は必ずチカの元へ戻って見せる!!」
「ははははは!!」
「でやんす!!」
デコーノ姫の前、虚空に誓う少年。その少年見守る様に、モヤッシーとノーキンは両脇を固めた。
そしてその場に居る者全員で拍手。サッと全員が歩き出し、交錯するとその中央にはジョーカーが残った。
探す男のマリオネット。それを背に隠し、ジョーカーは女のマリオネットを大地に這わせた。
「その頃、少女も見知らぬ土地に居ました!!」
サッとジョーカーの背後に動く張子の船。そこからは波の音が。
「見守るは美しき三人の騎士!! しかし、そこに彼は居ませんでした!!」
少し下がる船。そしてその後には地に伏した少女、チカ。
ジョーカーと入れ替わる様に、現れる三人。それはルシールと夏樹、そして白が扮する三人の見目麗しい騎士。
ルシールは大ぶりな仕草。
「おお!! あの印は精霊と竜が、我等に示したものに違いあるまい!!」
そして元気な少年騎士といった感じに、夏樹がぴょんと跳ねた。
「あのでこっぱちに見つけられたら大変だね!!?」
そして白は大げさに驚いてみせる。
「見ろ!! ここに倒れている少女を!!」
「見た事も無い衣裳だ!!」
「もしかして、こいつが天界人って奴か!!?」
ルシールと夏樹が走り寄り、驚いてみせる。
「あ、ああ‥‥」
身じろぎして起き上がるチカ。
「ここは一体?」
すると三人の騎士は跪いて見せた。
「何と可憐な救世主か‥‥貴方のお力があれば、邪悪なオデコ魔人とその手下達を成敗して世界の平和を守る事が出来るでしょう!!」
「僕達と一緒に、ドラゴストーンを守り抜こう!」
「何!? 一体何の事なの!?」
すると、白が表を上げてチカの手をとって立たせた。
「あなたは異世界から来られた伝説の救世主!! 当家の危機を救うため竜が遣わされたのでしょう!! どうか、我等に力を貸して下さいませ!!」
そこへ、高らかに紫色の全身タイツ。ボンキュッボンなお姉さんがマスカレードで顔を隠して飛び込んだ。
「あ〜っはっはっはっは!!!」
ワッとそこに居た4人は四方に散る。
腰や胸を激しく振って、淫らなダンスを披露する。と同時に腕を高らかに挙げて叫んだ。
「やり方は三つ!! やり方は三つ!! 正しいやり方!! 間違ったやり方!! そして!! そして残るはお前のやり方だ!!!」
するとまるごとどらごんくんを着こんだ、チップス男爵が何やら光る玉を手にひょこひょこ歩きまわる。
「人はなぜ泣くのか!!? それはきっと、あまりに激しく感情が高ぶって体が追いつかないんだ!! 心を突き動かすうねりに負けて、体が泣くんだ!!」
再び全員が集まった。中心に立つジョーカーは、両の手に持つマリオネットを背中あわせにすると、最後の口上を述べた。
「果たして二人は再び巡り合う事が出来るのでしょうか!!? そしてデコーノ姫とヤルタ家の争いの行方は!!? 『ドラゴストーン』は一体誰の手に収まるのでしょうか!!?」
天界〜ロマンス〜♪ 天界〜ロマンス〜♪
心は〜ときめき〜星空〜飛びさる〜♪
天界〜ロマンス〜♪ 天界〜ロマンス〜♪
あ〜あ〜ふるさと〜はる〜かに〜遠〜く〜♪
フィナーレとばかりに全員で歌い、踊り、そして退場した。
●お疲れ様☆
精一杯の応援をした者。
フィナーレに汗を流した者。
月桂樹の冠を【ゴートメンバーズ】の人々に捧げ、【ソードフィッシュ】のメンバーと共に、このマーカスランドを何週も練り歩いた者。
そんな力一杯満足な1日を過ごした面々が、最後に行き着く先は湯煙の中。
かこ〜ん‥‥
湯気の向こう、くぐもった音が響いた。
「よっし、いっちば〜ん!」
バスタオルでくるっと身を包んだ夏樹。
「は〜っはっはっはっは!」
反対側から駆け込んでくるノーキン役が、例のマント一枚で走りこんで来る!
「ウェスタンラリア〜ット!!」
「は〜っはっはっはっほげ〜っ!!?」
どばっしゃ〜ん!!
派手な水しぶき、もんどり打って湯船に叩き込まれた。
「象をしまえ〜! 馬鹿!」