討伐に行こう〜エーロン王子の気晴しＢ補給
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：難しい 成功報酬：6 G 22 C 参加人数：10人 サポート参加人数：2人 冒険期間：07月21日〜07月31日 リプレイ公開日：2006年07月29日 |
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●オープニング
「聞けウィルの民たちよ。エーロン王子暗殺を企んだベーメ卿の討伐を行う」王都ウィルに布告の声が鳴り響いた。庶民には文字を読めない人が多いため、布告が日に数回行われる。ウィルにおけるマスメディアということになるだろう。
「相手は王子を暗殺しようとした謀反人である」
ベーメ卿討伐は、ベーメ卿を生死を問わずつかまえてその領地をフォロ家に合併する。ベーメ卿が領地を捨て去って国外に逃亡すれば、それまでだ。国境の外まで軍勢を率いて追うわけにもいかない。しかしベーメ卿側では、戦う準備をしているらしい。
「戦いを長引かせて、北部の領主たちを味方につけて挟み打ちというのが狙いでしょう」
セレとの間にあるベーメ卿の領地に攻めかかる。以前山賊処分で火種を抱えている北部領主たちの地域からなら、王都との間を簡単に分断できる位置に進出することは可能だ。今のところ北部領主たちは平穏状態にあるが、ベーメ卿からの誘い次第ではどう動くかわからない。
「フォロ領内部の問題で片づけるか、エーロン王子暗殺を重点的に出してウィル王国そのものへの反逆とするか」
前者なら今までいくつかあったように、フォロ家が難癖つけて領地を奪い取る印象を持たれる。後者なら悪評は和らぐが、他の分国王に軍事奉仕を求めることになる。
「殿下、一つ提案があります」
ウィルカップの開催のための調整役として首都に滞在していたロッド・グロウリングが、エーロン王子のもとを訪れていた。地方領主討伐が行われるのでは、ウィルカップの開催も危ぶまれる。そのための無事に開催するための助言をしに来たと言ったところ。口実には事欠かなくなった。
「討伐軍は殿下自らが率いるとして。ある人物を副官として任命して１隊を持って外交上のことを任せれば、多少は懸念事項が減ると思われます」
「ほう。推挙したいというわけか」
「別にそういうわけではありません。転ばぬ先の杖、殿下の父君が嫌っている人物です」
「トルクの王弟か。力を貸してくれるかだろうか？」
エーロンとは、ほとんど交流がない。
「弟君カーロン殿下とは仲が良いようですので、カーロン殿下に間に立ってもらえば何とかなるかと」
「そちはどうする？」
「殿下が必要とお思いなら」
「必要だ」
「では別動隊としてまいりましょう。砦の修復を行っていた冒険者が助力してくれれば、影からの攻略も可能でしょう」
「試作品の実戦投入テストか？」
「そのようなところです。殿下の隊とは最終目的地での合流となりましょう。途中でも十分にお気をつけて」
「実戦なれした冒険者なら途中でも油断はしないと思いたいところだ。ルーケイではしくじったようだが」
数日後、所変わって竜のねぐら。
「ウィルの発展に」
「互いの友情と健康に」
一気にワインを飲み干す二人。
「急に訪ねてすまない。実は、兄上に頼まれた。ベーメ卿の一件知っているだろう」
「君の兄上を暗殺しようとしたとか。しかも逃げ出さずに防戦の準備をしている」
「そこで、討伐に加わってほしい。といっても戦いの条件を良くするだけらしい」
「北部の領主たちがベーメ卿に利用されないようにしろということか。誰の入れ知恵やら。あいつどこにでもスパイを忍ばせているようだ。ルシアンの修行にもなるか」
最近騎士見習いに任命した者を眺めた。腕力的にはまだまだ難しいが、交渉事を覚え込ませるにはいい機会かも知れない。
「しかし、妙ではありませんか」
ルシアンがワインを注ぐ。
「ルシアンもそう思うか？」
「はい、今回の騒動はヴァンパ相続が元凶。エーロン王子を今更暗殺するなど」
「いくらベーメ卿が強引、傲慢な性格でもそれはやらない。誰かのシナリオに踊らされたのだろう」
「スケープゴートにされるのなら、大げさにやるつもりでしょうね。主役を演じたい性格ですから」
エルフの吟遊詩人が勝手に同席してきた。
「誰かと思えば、イムンで行方不明になっていたエストゥーラ。無事でなにより」
「ドレニック卿の船に置いていかれれて難渋しました。ララエちゃんは相変わらず綺麗な、って今日はそのことではなく、ベーメ卿のこと。けっこうな戦力を集めているようです」
イムンで置いていかれてから、ササン→ウィエ→チ→セレと回って、ウィルに戻ってきた。 首都ウィルまでくる途中でベーメ卿の領地を通過してきたという。簡単ではなかっただろう。
「ハンのウスとハランの紛争でかなりの難民が発生しました。そのうち力のありそうなのは傭兵になって紛争に加わっていましたが、このところ紛争そのものが下火。解雇された傭兵たちがベーメ卿に雇われ始めている。しかも・・・」
「ベーメ卿はゴーレムについても、かなりの知識があるらしい」
ルーベン・セクテが、しかもの後を続けた。
「トルク分国のゴーレム工房で幾度か見かけた。バガンはもっていないにしても、チャリオットやグライダーを所持している可能性はある。いやバガンとてないとは言い切れまい。ベーメ卿がああなった以上、ゴーレム整備に派遣していたゴーレムニストたちは引き上げただろうが」
ゴーレムは持っているだけでなく、整備調整を行うゴーレムニストや専門の職人たちがいなければ能力を発揮しえない。そしてウィル国内では、その専門職人集団を握っているのはトルク分国王のみ。
「それはそれは、赤備は動くのか？」
「ザモエ様なら首都残留だそうだ」
エーガン王の意向らしい。
●補給部隊
「補給物資を運ぶ人足は、知り合いの商人に依頼するとして」
問題は、補給部隊の役割を遂行人員だ。
「北部に限らず、周辺の領主たちが軽挙妄動しないように押さえなければならない」
とはいえ、ルーベン・セクテの身は一つ。名声が高くて人望のある冒険者なら交渉をうまくいかせることができるかも。
「交渉に失敗すれば、逆に刺激してしまうかも。後は実際に補給物資を守る者も必要だ」
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【討伐軍の編成】
本隊 エーロン・フォロ直率に、冒険者１０名を募集。
左翼部隊 指揮官未定（参加冒険者の中から）冒険者１０名。
右翼部隊 指揮官未定（参加冒険者の中から）冒険者１０名。
補給部隊 ルーベン・セクテ指揮、冒険者１０名募集。
別動隊 ロッド・グロウリング指揮、冒険者１０名募集。
本隊、左翼部隊、右翼部隊は、首都ウィルより分進合撃態勢でベーメ卿の領地に移動する。索敵および連絡を緊密に行う必要あり。敵地に接近するにつれて夜襲を受ける可能性が高くなる。別動隊は、別ルートから接近する。補給部隊は、首都と攻撃隊の中間付近に待機して周辺への外交交渉や後方支援を行う。
【敵の情報】
ベーメ卿はチャリオットやグライダーを所持している可能性が高い。バガンあるいはもっと旧式のゴーレムを所持している可能性もある。ベーメ卿の雇った傭兵の中には、ウィザードもいる可能性もある。実戦なれした者が多いため指揮官不在でも（成功の可能性がある限り）独自の判断で与えられた任務を遂行するだろう。
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●今回の参加者
ea0439 アリオス・エルスリード（35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国）ea4844 ジーン・グレイ（57歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国）
ea8600 カルヴァン・マーベリック（38歳・♂・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国）
eb0420 キュイス・デズィール（54歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国）
eb4064 信者 福袋（31歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4099 レネウス・ロートリンゲン（33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4199 ルエラ・ファールヴァルト（29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4313 草薙 麟太郎（32歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4326 レイ・リアンドラ（38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4395 エルシード・カペアドール（34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
●サポート参加者
バルザー・グレイ（eb4244）／ 龍堂 光太（eb4257）●リプレイ本文
●フロートシップ？「これを」
ジーン・グレイ（ea4844）は出発の数日前にルーベン・セクテを訪ねて書簡を渡した。中身はバルザーからの進言。
「今回は難しいな」
２月程も前から準備していれば、日程をやり繰りして借り出すことはできるだろう。あるいは、新型のテストなどで持ち出すことも。しかし、日程が押し迫っている上、総指揮官のエーロン王子がフロートシップを使っていない状況で、ルーベン・セクテが使うとなると、反感を受け
る可能性がある。
「いずれフロートシップも戦場で使う事を基本構想にしたものが必要になることは確かだろう。しかし、それを使うのは、正式な軍事奉仕を行う時だろう。すなわち、エーガン王がトルク分国王に出兵を命じるような場合だ。今回のはカーロン王子からの個人的な依頼の上に自主参加だ。北部領主たちへの責任もあるから受けただけだが」
彼とて個人持ちのフロートシップなど持っていない。
「確かにそう言われれば」
「それから今回は補給部隊という名称だが、実際には囮に近いことになるだろう。そのつもりでいてくれ」
「それは？」
「多分ベーメ卿は、高速偵察可能なグライダーと長距離襲撃可能なチャリオットを使って攻撃してくるだろう。移動力の低いゴーレムのみ手元に残して。目標は多分、私だ」
「それでは？」
「策謀だよ。ロッド・グロウリングの」
今回の討伐は、ベーメ卿側には尋常な方法では勝ち目はない。
「つまり、ベーメ卿に勝つためには不満を募らせる北部領主はもちろん、あちこちで叛意を起こさせねばならない。それには」
「手始めに補給隊に参加しているトルクの者を殺せば、そのような個人的な依頼をしたエーロン王子への反発もあって」
「殺した側よりも、参加した側に責任を求める。簡単にいくでしょうか」
無論、敵は全力を以てそうなるように、行動するのだろう。
●歓声を受けての出発
エーロン王子の本隊および左翼右翼の両隊は誰の見送りもないまま、早朝くらいいつに城門から出撃していった。それに比べると戦場では活躍しない補給隊は、大々的な隊列を組んで昼間になってから城門を出て行く。
「エーガン王の祝福はないようです」
信者福袋（eb4064）はレイザーソニックを傍らにつれてルーベンのところに来ていた。
「天界人はそのような大きな猫を連れ回す習慣でもあるのか？」
レイザーソニックは福袋には慣れているかも知れないが、補給隊で輸送を行う人足たちから大いに苦情が届いていた。
「全員の臭いを覚えさせていますから安全です」
「天界ではそのような習慣があるのか。認識を改める必要がありそうだな」
もちろん、ジ・アースにも地球にもチーターを都会で連れ回す習慣などはない。ましてウィルには存在しないいかにも猛獣のような生き物では、冒険者全体に対する反感が強まるのは当然のことになるだろう。
「人の多いところで猛獣を連れて歩くのが天界人の習慣とはいえ、ウィルでそんなことをされては善良なる一般民衆が困ります。このような輩を放置しては」
レネウス・ロートリンゲン（eb4099）は福袋の行動を批判した。
「言っておくが北部領主たちとの会見にはその猫はつれていけない。交渉をぶち壊すつもりではないだろう？」
ルエラ・ファールヴァルト（eb4199）もルーベンが口にする前に、言い放った。
「陣中に残すにしても、飼い主がいない状態で安全なのか？」
飼い主には忠実であろうが、余の者に対してもそうである保証は無い。仮令そうだとしても、飼い主の監視無しでは‥‥少なくとも一般人の了解を得ることは難しいだろう。
「猫の世話のために、残るさ」
「それが妥当なところだろう？」
ペットのために福袋は大きく行動を制限されることになった。
●道中
「トルク分国王陛下の信頼厚い分国王王弟がエーロン殿下の陣にいるというだけで、ある程度目端の利くものならあれこれ想像をめぐらすでしょうな。隊長がエーロン殿下を立てた言動を行うだけで、北方領主達は『今エーロン殿下と敵対すればトルクの不興を買うかもしれない』と思うはずです。こちらから北方領主に使者を出すか、逆に使者を呼び寄せるかは適宜判断するとして、説得よりも隊長殿が特定の態度を示すのがよろしいかと。言葉を弄ぶより効果は高いと思いますよ」
カルヴァン・マーベリック（ea8600）は、ルーベンに近寄って献策する。
「誤解があるようだが、私は分国王王弟と言っても母親が違う」
「え？ それは知りませんでした」
「いや良い。信頼厚いように見えて実際どのようなものかは」
ルーベンは意味深なことを言った。
「私がいない間はジーンが指揮を取る。補給物資を焼かれないように十分に注意してくれ。敵は必ずくる」
盛大な見送りはルーベンの人気をたまものだが、同時にそれがこちらの進路をベーメ卿の放ったスパイどもによって見張られることにもなる。
●チャリオットは来ない。
ルエラは時雨蒼威がよこすと言ったチャリオットを待っていたが、出発の時間になっても来ない。
「どうした遅れるぞ」
ルーベンはルエラを呼んだ。わざわざ見せるように出発を遅らせたが、これ以上遅らせると北部領主たちを説得する前に暴走してしまう危険もある。
「チャリオットが到着しない。蒼威がトルク領で動かせるチャリオットがあるから、こちらに遣わせてくれると言ったのに」
「何を言っている。ここはフオロ領だぞ。これから行く先もフオロ領だ。なぜトルク領内で動かせるチャリオットを越境させられる。お前たちはトルク分国王をエーガン陛下に対する反逆者に仕立てるつもりではあるまいな」
ルーベンの鋭い視線がルエラを凍りつかせる。
「時雨蒼威という天界人も存外判断力の無い男だな」
「そんなことは！」
「トルク家男爵の爵位を持つ者の判断としてはあまりにも軽薄すぎる」
もしも、ルーベンがこのとき時雨蒼威が『大きな猫』まで伴って戦場に行ったと知ったら、爵位の取り上げを分国王に進言していたことだろう。
「草薙麟太郎（eb4313）、カルヴァンの二人はともに北部領主の説得に同行しろ」
説得に行くことを希望していた福袋とルエラは同行を許可されなかった。外交交渉に連れて行くのに、状況判断能力に不安があったためだ。それに福袋についてはペット、ルエラについてはあまりにも強行的な交渉に危惧を覚えたためでもある。
「ルシアン。ルーベンはあんなに怖い人なのか？」
麟太郎はルーベンに騎士見習いとしてついているルシアンに話しかけた。
「怖い？ とても優しい方です」
「そりゃ、君からすれば後見人だから」
「あなたも天界人でしたね天界の習慣ではどうか知りませんが、ウィルで大きな猫を連れて歩くのは非常識もいいところです」
「天界にだってそんな習慣はないし、非常識だ」
「だったらあの福袋という人はもちろん、天界人は危険な魔獣や猛獣を町中に連れ出すんですか？」
「それは」
「あなたのエレメンタラーフェアリーだってけっこう危険なものです。少なくとも、あなたの目の前にそう信じる者がいます」
「‥‥」
「天界人は人々を怖がらせて何が楽しいんですか？ 自らの力を誇示したいのですか？ それを許す国王陛下も同じだ。人々の心は離れる一方だ」
「やめておけルシアン」
「しかし」
「ルシアンの失礼はわびる。しかし、この子も少し前まえ天界人はウィルを救う救世主だと思っていた。僅かの間にこのように印象が変化したそのことを天界人の間でも考えてほしい」
ルーベン・セクテはルシアンの監督者として頭を下げると、北部領主たちとの交渉に備えた。
「山賊のことは伏せておけ。山賊助命を願い出た天界人の印象は悪い。やっと落ち着いたところを再び叩き起こすこともない。
●交渉
４人が到着すると、北部領主たちは全員が集まって出迎えた。
「熱烈歓迎か」
「こちらへどうぞ」
一番立派そうな屋敷に通される。
「好意的歓迎ととって良いだろうか？」
「何を言われます。国王陛下の不興を買う危険を侵してまで復興の手を差し伸べてくれた方に対して、敵意を持って応えるようなものはどこにもおりません。
「それは良かった。来る途中に見せてもらったが春小麦の生育は順調なようだ。収穫が楽しみだな」
「はい。ここからなら王都へも出荷可能でしょう」
「多分、ここ数年中に王都の人口は多きく膨らむ。出荷できるように規模を拡大していってほしい」
会話がどういう意味か、カルヴァンは首をかしげながら聞いていた。
「出発は明日の朝で」
「今夜はゆっくり休ませてもらおう」
４人は部屋を与えられて、今夜はここに泊まることになった。
「あの言葉どういう意味だろう？」
「春小麦は順調にというのがフオロ家に対する反感で、王都の人口が増えるのはフオロ家が駄目にしたウィルをトルク家が復興して王都の人口が増えるという意味に聞こえないか？」
「完全に逆にも取れる。フオロ家の信頼が向上して、王都の人口も増えると」
意味深い言葉であった。
●襲撃
「今頃北部領主館に着いただろうか？」
置いていかれた福袋は、北東の方向を眺めた。
しかしのんびりとした雰囲気は夕刻までだった。
その夜最初の襲撃が襲ってきた。
「敵は少数だ。近づけるな」
レイ・リアンドラ（eb4326）はアリオス・エルスリード（ea0439）ととにも防戦にあたっていた。
補給物資を積んだ。馬車を内側に入れて防御を固める。
「襲うのは俺が得意とする所だが、襲われるのは納得いかねぇ」
キュイス・デズィール（eb0420）はそう言って襲撃者とおぼしき相手にホーリーをたたき込んだ。
襲撃は小規模だった。戦闘に参加しない人足たちも消火ならできる。
「チャリオットもグライダーもなかった」
エルシード・カペアドール（eb4395）は脱力したように言った。
「夜はチャリオットもグライダーも出てこないでしょう」
レイは夜間飛行や夜間高速走行ができないだけだろうと思った。
翌日の夜も襲撃され、徐々にだが物資が燃やされて行った。
そして最大規模の昼間の攻撃が行われた。
ゴーレムの接近を最初に感じたのは鎧騎士のルエラだった。キュイスの提案によって見晴らしの良いところに移動してあまり時間がない。敵はゴーレムを使える広さに出てくるのを待っていたようだ。
「敵はグライダー４に、チャリオット４か」
絶望的な戦力差での戦いが始まった。チャリオットが高速で接近してきては火矢を放っていく。幾つかの荷が燃え上がった。
グライダーまで攻撃態勢に入った。その威力はルエラ達がルーケイで実証済みだ。そこに別のゴーレムが姿を現した。
「このうえ人型まできては」
ジーンも覚悟を決める。
「あれはロッド・グロウリング卿の別動隊？」
エルシードは見た事のあるゴーレムが混じっているのが分かった。
そのうち２体が攻撃の間に入って敵の攻撃を身をもって防いだ。ただし、チャリオットで温存しておいた魔法がゴーレムに対して使用された。それでも爆炎が消えたあとには無事なゴーレムが姿を現した。さらにグライダーから投下された砲丸もゴーレムが蹴り返して、逃げに入ったグライダーに命中して翼を半ば破壊した。如何にゴーレムの操縦者が手練れとは言え、こんな芸当が出来たのは、グライダーがなぜかあまりスピードを出して居なかった所為と思われる。
そこにルーベン・セクテを先頭にして北部領主の軍勢が到着した。
「ロッド・グロウリング。急ぎエーロン王子の元へ」
「言われんでも分かっている」
小一時間で出発の準備を整えた別動隊は出発し、補給隊もそれに続いた。ただしし軍勢の数が増えた分移動にも時間がかかる。ベーメ卿の本拠地に到着した時には、ベーメ卿が討たれたあとだった。
「北部領主たち遠路大儀」
エーロン王子はそう労うとベーメ卿の首級を見せた。
