●リプレイ本文
●花嫁と贈り物
とちのき通りの小さな仕立て屋は、婚礼を控えて、てんやわんやの大騒ぎとなっていた。
「もー、本当にみんな騒ぎ好きなんだから!」
花嫁がそんな顔をするものではないよ、と嗜める祖母の言葉に、だってさー、と膨れっ面。お節介好きのおかみさん達に、花嫁、早くもお疲れ気味。それでも、にこにこと嬉しげにしている祖母の姿に、彼女はすぐに表情を綻ばせた。
「ちょっと、主役がいつまで奥に引っ込んでいるつもり? 来てごらんなさいよ、しふしふ団の人からの贈り物、凄いわよ!」
貰った本人が見る前に、おかみさん達が大はしゃぎ。シャリーア・フォルテライズ(eb4248)からの贈り物、滑らかな光沢が美しいシルクのスカーフと、ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)からのシルクのショールの手触りといったら。アーモンドの花と実に見立てて宝石をあしらったブローチの見事さには息を飲むばかり。ディアッカ・ディアボロス(ea5597)から贈られたラブ・ノットはハート型の銀細工だが、あまりに繊細で壊してしまわないかと皆こわごわ。氷細工の様な銀色のパンプスにはもう、溜息しか出て来ない。ヒールのついた靴など履いたことの無い花嫁には、なかなかの難敵でもあるのだが。
「さ、こちらに来て合わせてみないか?」
にこやかに言葉をかけるエルフの女性が男爵様と聞いて、花嫁、少々緊張気味。気にしないで、と言われて尚更おっかなびっくりな様子に、ユラヴィカとディアッカが苦笑する。
「なんだかもう、お姫様みたいだねぇ」
おかみさん達、うっとりと見惚れるばかり。と、丁度その時、外から賑やかな声が聞こえて来た。
「またとびきり騒がしいのが来たわね」
しふしふ〜と元気に飛び込んで来たのは、長らくこの仕立て屋で修行をしていた裁縫しふ達。
「お手伝いに来たよ〜」
「素敵なお針子技でお嫁さんの魅力も倍増だよ〜」
本当に大丈夫なんでしょうね? と疑わしげな視線を向けた彼女に、裁縫しふ達はもちろんだよ! と胸を叩く。
「まずはドレスをお直ししないとね」
「お嫁さんはちんちくりんだからね!」
「でもお腹のことは詰めちゃだめだね」
「ぽよんぽよんだからね!」
「う、うるさいわね!!」
途端に修行時代に逆戻り。店は笑い声に包まれた。
「もっと感慨に耽ったりするのかなーと思ってたけど、なんだか嵐に巻き込まれたみたいで、そんな暇も無いのね」
苦笑する花嫁に、後になればきっといい思い出になってるよ、とお婆さん。
『みんなが思い出す度に顔をほころばせるような、素晴らしい結婚式にしようアル☆』
孫美星(eb3771)がやって来るなり言った、そんな言葉を思い出す。そうだといいんだけど、と素っ気無く言った彼女の顔には、屈託の無い笑みが浮かんでいた。
通りでは旦那衆が一杯ひっかけながら、テーブルを出したり、ごちそうの下拵えを手伝ったりと、一足先にお祝い気分を味わいながらの準備を進めている。モロゾやオークル達、卒業組も集まって来て、いよいよ賑やかになって来た。
「そうそう、もうちょっと右側アル──わわわ!」
飾り布を取り付けていた美星と画家しふ達、ほろ酔い気分で椅子を運んでいたおじさんに布の端っこを引っ掛けられて、ずるずると引き摺られる。
「さっそく怪我人発生? 気をつけないとね」
覗き込むモニカ・ベイリー(ea6917)の後ろでは、薬しふ達が笑っていた。
「酒蔵に置かせてもらっている酒、運んで来た方がいいか?」
飛天龍(eb0010)に言われ、え? と美星が見回してみれば、あれほど用意してあった酒が既に尽きかけ。
「お願いした方が良さそうね。筋肉痛になったらいらっしゃい、いつでも治療してあげるから」
モニカの軽口に、そうしよう、と天龍は苦笑い。力仕事ならお任せと集まって来た拳法しふ達と共に向かった酒蔵には、しふしふ団が提供した酒が積んである。まずは、美星とシャリーアが用意したシードルにベルモット、ワインにどぶろくを、えっほえっほと運び出す。そして。
「‥‥これだけ積み上がると、壮観だな」
目の前に聳える酒の山を、暫し見上げる天龍と拳法しふ達。
「ま、これも修行だ」
積みも積んだりモニカの発泡酒300瓶。ただ見ていても始まらないと攻略にかかった弟子達に続き、天龍自身も運び手に加わった。
●翅の行方は
しふ食堂では、朝の稼ぎ時を乗り切って一息ついたところ。みんなでまかないを頂きながら、他愛も無い話に花を咲かせていた。日々、着実にお客さんは増えている。次第に忙しさが増して行く実感は、なによりトーソンさんにとっての励みとなっている様だ。そんな父親を見守るニーザも、なんだかとても嬉しそうで。シフール達の賑やかさも相まって醸し出される活気ある空気も、お客を満足させる大切なスパイスになっているに違いない。しくじって落ち込んだりお客さんから褒められて舞い上がったりしながら、料理しふ達は毎日を懸命に働いている。
話題はやがて、結婚式のことになった。
「たくさんお世話になったんだもの、やっぱり、あたい達しふしふ団もお手伝いしなくちゃだね〜☆」
燕桂花(ea3501)の提案に、皆、肉饅頭を頬張りながらうんうんと頷く。
「僕らに出来るお手伝いっていうと、やっぱりごちそう作りかな?」
「そうだね。何を作ろうかな‥‥まずはやっぱりケーキかな〜? パンケーキにドライフルーツをワインで甘く煮詰めたものを混ぜたりして。天界人の人から聞いたふわふわケーキにも挑戦してみたいんだけど」
桂花の横で、お菓子屋志望のしふ達が生唾を飲み込む。
「後は、軽くつまめる点心とか、鶏さんの香草焼きとかスープとか。もちろん、しふラーメンも作ってみんなに食べてもらいたいよね〜☆」
うっとりと想像して幸せ気分に浸っていた料理しふ達、ニーザにからかわれて、慌てて口元の涎を拭った。ふむ、とトーソンさん、腕組みをして顎を摩る。
「それはいいかもしれないな。まだ店の味を体験していない未来のお客さんへの宣伝にもなるという訳だ」
トーソンの言葉に、桂花、暫し目を丸くして彼を見つめ、ぽん、と手を打った。そういう視点は無かったらしい。旦那さん、商売っ気が出て来た様で、実になにより。
「仕込みは済んでいるし、折を見て行ってくれればいい。こっちは娘と私でどうにかしよう」
本当に大丈夫なの〜? とからかうニーザに、まあ見ていなさい、と胸を張る彼。実際、錆び付いていたトーソンの腕前は、かつての冴えを取り戻しつつある。大丈夫そうだね、と確信した桂花は、彼の申し出に甘えることにしたのだった。
ファム・イーリー(ea5684)は、落ち着かない。詩人しふが師匠から式の席での初舞台を仰せつかったと聞いて、どうアドバイスしようかあれこれ考えていたというのに、ちっとも相談に来てくれない。ファムは彼の詩人修行を知らないことになっているから、こちらから声をかける訳にも行かず‥‥こうなるともう気になって気になって、お手伝いも何も手につかない。
「うー、もーだめっ!」
痺れを切らした彼女、詩人しふのお師匠のもとに足を運んだ。話を聞いた師匠殿、膝を打って笑い出す。
「そう、私は彼に言ったんだ。『この私もご相伴に預かるべく必ず出向くし、もっと手強い芸達者もいるだろう』と」
うんうん、と頷くファム。
「彼の芸の未熟は、彼自身も知るところ。しかし芸を披露すれば、どうしたところで比べられる。この日ばかりは、この私も彼にとってはライバルという訳だ」
うんうん。
「そして、もっと手強い芸達者も」
と、師匠殿はファムを指差した。へ? と素っ頓狂な声を上げるファム。そういう見られ方をするのは、全くの想定外。えええ、でもでも、とシドロモドロになる彼女を宥めながら、師匠殿は言った。
「彼は負けず嫌いだ。どんなに困っても、自分から相談を持ちかけることは無いだろう。今頃、いい感じに煮詰まっているのではないかな」
言いながら、ぽろんぽろんと竪琴を爪弾く。
「じゃ、じゃあお師匠からアドバイスを〜」
言っただろう? 私もライバルだとね、と笑いながら弦を弾く指を早める。迷える弟子を導くつもりは全く無いらしい。う〜、と唸りながらヘロヘロ飛んで出て行くファムを、師匠殿はすまし顔で見送った。
桂花と料理しふ達も加わって、ごちそう作りが佳境に入る中。モニカは靴屋のおかみさんの隣に陣取り、そのお手伝いを始めた。
「カートンさんが弟子を取りたがらないのには、何か訳があるんですか?」
雑談の中で、何気なく話しを振る。おかみさんは手を止めて、そうねぇ、と呟いた。
「わるしふに酷い目に遭わされたからって本人は言っているけど‥‥。それは単なる口実かも知れないね。あの人の弟子になりたいって物好きが何人かいたけど、全部断っているから」
何故だと思います? とモニカ。
「あの人、昔から賭け事で色んなことをしくじってるけど、一番のしくじりは目を掛けてくれた師匠に砂を掛ける様な真似をして出て来てしまった事だって、いつだったかそう言ってたわ。だから弟子を取るのが怖いのか、それとも弟子を取る資格が無いと思っているのか‥‥そんなところだと思うんだけどね」
なるほどね、と頷きながら、桶の水で野菜の泥を洗い流すモニカである。
その靴屋のカートンは、他の旦那衆と談笑しながら、楽しい酒に酔っていた。その姿を見つけた靴屋志望の不良しふは、自分が作った靴を懐に抱えて、テーブルの上に舞い降りた。
『何事も熱意なのじゃ。それが人を動かすこともあるからの。今の精一杯を見てもらうしか無いのじゃ』
ユラヴィカの助言を思い出しつつ、意を決して自作の靴を差し出した。カートンは、体ごとそっぽを向いて、飲み続けている。
「これが‥‥俺の今の精一杯です。本気なんです、俺を弟子にして下さいっ!」
肩越しに一瞥したカートンは、その靴を手にとって一応眺めては見たが、
「未熟だな。こんなのに関わってたら自分の仕事が滞ってしまう。どうしても靴屋の修行がしたけりゃ、他のもっとお安い職人を探すんだな」
一蹴とはこのことだ。放り返された靴を抱え、靴屋しふは逃げるようにその場を去った。カートンは酒を呷り、不味そうに顔を顰める。
師匠殿の見立て通り、詩人しふはきっちり煮詰まっていた。ぶつぶつと言葉を呟いて首を振り、鼻歌を口ずさんだり竪琴を爪弾いたりしたかと思うと、首を振って頭を掻く。
(「あちゃ〜、すっかり堂々巡りになってるね。バードに大切なのは、ズバリ! 直感、“いんすぴれ〜しょん”だよぉ」)
喉まで出掛かっているこの思い、どうやって伝えよう‥‥と、ファムにとっては考えるまでも無いことで。
見上げれば、空は青くぽっこりとした白い雲が漂い、なんとも言えず良い気持ち。婚礼の準備も、もう間もなく整いそうだ。そんな、わくわくする気持をファムは即興で歌にする。竪琴から紡がれるのは、楽しげで軽やかな旋律。旦那衆がテーブルを叩いて節を取り、おかみさん達も暫し手を休めて聞き入った。と、旦那衆、自分たちも楽器を持ち出した。技術は未熟だし歌を付けたりする力は無いが、誰もが慣れ親しんだ陽気な旋律に乗せて、楽しく酔っ払っている自分達を滑稽に表現する。ファムの歌への返礼という訳だ。そこには今日の日を喜ぶ彼らの気持が溢れている。最後には笑い声と混ざり合うようにして終了した。
驚きの表情でそれを見つめる詩人しふに、ファムが声をかける。
「ぐうたらしてると、翅が湿気ってカビちゃうよ〜? さ、あたしたちもお手伝いに行こ?」
「‥‥ぐうたらはしてねーっての」
何も知らないで言ってくれるよ、とでも言いたげな彼の表情には気付かぬフリで、ファムは彼を連れ回した。この婚礼を、それぞれに祝おうとしているみんなの姿を見せる為に。
「ほら、トムくんはやくはやく!」
「‥‥大声で名前呼ぶなよ恥ずかしい」
いつの間にかいつもの調子に戻っている彼に、ファムはにっこり微笑んだ。
●婚礼は賑やかに
ドレスを直し、アクセサリーとコーディネートし、ちょっとした刺繍など施して、花嫁の着付けは完璧に整った。そろそろ、花婿もやって来る頃。さすがの気丈な花嫁も、些か緊張気味だ。
「少し化粧をしてみようか。不思議と肝が据わるものだから」
「え、で、でも‥‥」
シャリーアの提案に、躊躇する花嫁。化粧をするのは貴族と娼婦だけというくらいで、庶民の女性にとっては馴染みの薄いものだ。
「大丈夫、間違っても水仙屋敷のご夫人の様にはしないから」
花嫁が思わず吹き出す。裁縫しふ達は大笑い。水仙屋敷のご夫人とは‥‥まあ、厚塗りオバケで有名な奥方とでも思っておいて欲しい。シャリーアは他愛の無い話で花嫁の心を解しながら、慣れた手つきで化粧を施して行く。
その様子を外からこっそり覗き見るシフール達。見違えちゃったよ、きれいだね〜などと騒いでいるところに、ひょいと美星が顔を出す。
「素敵アルね‥‥。でも、その素敵なお嫁さんの式にだらしない格好で参列するなんてしふしふの名折れアルよ。あたしがキレイにしてあげるアル」
にっこり微笑みハサミと櫛を持って迫る美星に、しふしふ達が蜘蛛の子を散らす様に、わっと散る。
「こ、これでいいよう!」
「よくないアル! なんでキレイにするのに逃げるアルか!」
身形を整えられてしまうのが、なんだか気恥ずかしい微妙な男の子心というやつ。その大騒ぎの中を、花婿と彼の側の参列者が現れた。既に良い感じに出来上がっている旦那衆から掛かる歓迎と冷やかしの声に照れ臭そうな笑顔で応えながら、彼は花嫁を迎える為、仕立て屋に入って行った。
振り向いた花嫁に、花婿の親戚一同から感嘆の溜息が漏れる。
「‥‥とても、素敵だよ」
花嫁の姿に暫し見惚れていた花婿が、ようやくその一言だけを搾り出した。嬉しげに微笑んだ花嫁に、あらぬ方向に視線を泳がせる。
「じゅ、準備が整っているなら行こうか。みなさんをお待たせしてもいけないから」
「あ、ちょっと待って」
裁縫しふ達、シルクのスカーフを取り出すと、花婿の襟元にあしらった。
「ショールとお揃いになる様にしてみたんだけど‥‥うん、なかなかいいね」
二人が並んだ姿を見て、とても満足げな彼ら。
「良かった、間に合った。渡しておきたいものがあったのよ」
モニカが彼らに差し出したのは、2つの誓いの指輪。
「天界から持ってきた指輪よ。永遠の愛を誓う男女の姿が彫られてるの。お二人にも永遠の愛と幸せが訪れますように」
銀のリングを前に見つめ合う二人は本当に幸せそうで、モニカも贈った甲斐があったというもの。
「お二人の前途に竜と精霊のご加護があらん事を」
シャリーアの祝福に送られ、彼らは自分達を祝う為に集まってくれた人々のもとへと向かった。
花婿が洗礼を受けている為、式はジーザス教の様式で行われる。なにぶん見た事も無い異世界の儀式なものだから、皆興味深々。あれほど騒々しかった人達が、静まり返って進行を見守っている。
神父の前で神に誓いを立て、指輪を交換した二人に、自然と拍手が湧き起こる。
「誓いの口付けを」
促されるも、恥ずかしくて俯く花嫁。がんばって! などと何だか良く分からない応援が始まるのを、神父、咳払いで嗜める。怒られちゃったよー、と頭を掻く旦那衆に笑が起こるそんな中で、二人は笑いを堪えながら口付けを交わした。おめでとう! の言葉と拍手で迎えられた二人。
「花嫁さん、ブーケよろしくアル!」
美星に声をかけられ、はっと思い出した彼女は、少し慌てたのだろう、くるりと背を向けるや、間髪入れずブーケを放り投げた。それにどんな意味があるのか美星から熱く語られていた参列の娘さん達は、この不意打ち攻撃にも瞬時に反応、宙に舞うブーケ目掛けて一斉に飛び出した。その凄まじい勢いに男たちは完全においてきぼり。幾本もの白い手をすり抜けて落ちたブーケを幸運にも受け取ったのは‥‥
「やった、やったアルよミックさん!」
大喜びの美星。けれどミックは、良かったね、くらいの軽い反応。ちょっと不満な美星さんである。
「師匠、そろそろ始まるよ〜」
式の様子を伺っていた料理しふの知らせを受けて、桂花が頷く。
「新郎新婦にも、せっかく集まった人達にも、ごちそうが足りなくてガッカリ寂しい思いをさせちゃ駄目だよ!」
おー! と気合いが入る彼ら。宴の席では、通りを代表してゴドフリーさんがスピーチ中。
「この良き日に両人が結ばれたことは大変喜ばしく──」
「ゴドフリーさん長話は遠慮してくれよ! 料理が冷めちまう!」
すっかりくだけた空気の中、次々に料理が運ばれる。並べられるごちそうに皆、心躍り、酒もまた進むというもの。婚礼と知ると、通りすがりの人達も気軽に立ち寄ってご相伴に預かって行く。存分に飲み食いして、幸せな気持で夫婦を祝福する、そのことが彼らに更なる幸せをもたらすという訳だ。
「鶏の香草焼き出来上がるよ!」
こんがりと焼けた鳥の香りと、ローズマリーの芳しい香りが合わさって、なんとも言えない良い匂いが辺りに漂う。しっかりと塩を擦り込んだ後、油と共に蜂蜜を塗ってから焼くのがポイント。美味しい肉汁は内側に閉じ込められて、程よい焦げと甘みが食欲をそそる一品だ。
「みんな慌てないでいいアルよ、ちゃんと取り分けるアル!」
給仕を買って出た美星は、集まるお皿におおわらわ。珍しい肉饅頭としふラーメンも、大いに皆を喜ばせた。これは、のびない内、さめない内が食べ頃という訳で、天龍が運んでいる。目にも止まらぬ速さで一滴の汁も零さず運ぶその技は、ちょっとした軽業のようなもの。自分に向けられる拍手に、天龍は最後まで首を捻っていた。
数々の料理に、皆、次々に手を伸ばす。驚き、感心、舌鼓。その反応に、料理しふ達も実に満足げだ。
宴の座興は、ユラヴィカの祝いの踊りで始まった。ディアッカの奏でるフェアリーベルの音色に、リズミカルに響くユラヴィカのアンクレットベルが合わさって、なんとも躍動的な音を作り上げる。一仕事終えてさっそくご相伴に預かっていた裁縫しふと画家しふ達が、これに合わせてくるくる踊り出し、皆の笑いを誘った。
「ほう、これはなかなか。思いのほか強敵が多そうだ」
弟子を前に、何気にプレッシャーをかける師匠。トムは頷いて、本当にみんな凄いよなぁ、と呟いた。指先でリズムを刻みながら、踊りとそれを楽しむ人々の様子に見入っている。師匠殿、意外そうな面持ちで彼を見つめた。
和やかな雰囲気の中、皆にお酒を勧めて回る花婿と花嫁を、参列者が冷やかしたり、昔話に花を咲かせたり。おめでとう! と肉饅頭など頬張りながら声を掛けて行く人々に、若い夫婦は幸せそうな笑顔を振り撒いていた。
モニカが学校を覗くと、靴屋しふがひとりぽつんと蹲っていた。
「もう諦めたの? ‥‥そうね、それもいいかもね。いっそ、ワルダーさん達について行ったら? 新たな道が開けるかもよ?」
不満げに自分を見上げる目に、モニカは溜息ひとつ。
「辛いのは分かるし、頑張っているのを疑うつもりも無いけど、こんな絶好のチャンスに一度はねつけられたからって諦めてイジケてる様じゃ、とても人の心は動かせないわ。あなたにとってはこの学校が、逃げ場になってしまっているのかもね」
痛烈な言葉に、反発するものの、見つめ返されると迫力はモニカの方が遥かに上。くっ、とそっぽを向き、黙り込んでしまった。
学校を出ると、そこにはイーダが立っていた。
「‥‥言い過ぎたかしら?」
「いいと思うよ。どっちにしろ、あのダメ男を師匠にしようなんて、よっぽどの覚悟がなけりゃ良い結果になんてならないんだから」
立ち直ってくれればいいんだけど、と二人は蹲る影に視線を向けた。
屋根の上では、シャリーとユラヴィカが語り合っていた。
「ワルダー殿がわるしふ団を作った時、他所から加わったのはゲールとシャリー殿だそうじゃな」
こくり、と頷いたシャリー。あ、それから黒翅もね、と付け加えた。
「ゲールとはそれ以前から?」
彼女は首を振る。
「ワルダーと出会った時、ゲールはもう彼と一緒にいたわ。あの人がワルダーと私を結びつけてくれたの。黒翅もそう。あの頃のワルダーは本当に荒んでで怖かったから、最初はゲールの方を頼りにしてたっけ」
彼女にとっては懐かしい記憶とみえて、くすくすと笑い出す。
「わからんな。それでは、何故躊躇しておるのかのう」
「ゲールが何か思惑があって私達を引き合わせたんだとしたら、その形は壊した方がいいのかなって思うの。どんな呪われた意図があったのか、分からないんだし」
ユラヴィカは、カードを手繰りながら話しを聞く。
「それに、みんなにとってはかつての故郷でも、私にとっては見ず知らずの土地だしね。勝手の分かった街の方が生きて行くには都合がいいもの」
本当にそう思っておるのかの、とユラヴィカが向けた目を、シャリーは見なかった。
「ワルダー殿も言っておった様に、過去のことをあれこれと気に病んでおっても仕方が無いのじゃ。その積み重ねで今があるのだからの。何処にどんな思惑があったとしても、シャリー殿は今、仲間だと思うのじゃ。ひとつの始まりから導かれる結末が必ずひとつとは限らんしの。故に迷いもするが、その中から自分で選ぶ事だってできるのじゃ」
「好きな人同士が一緒にいられないなんておかしいヨ! ワルダーさんが好きならハッキリそう伝えるのが大事だと思うアル!」
どーん! と唐突に湧いて出た美星に、ぎょっとなる二人。
「これあげるアルから、心をしっかり持たなきゃだめアルよ!?」
と、シャリーに押し付けたのは先刻ゲットしたブーケ。言うだけ言うと、彼女はそそくさと給仕に戻って行ってしまった。結論を持っていかれてしまったユラヴィカが、こほん、と咳払いをして場を仕切り直す。
「ま、まあ、そういうことなのじゃ。細かい事など気にせぬのがシフールというものじゃし。昔の事など覚えちゃおらぬしの」
彼は、一枚のカードをシャリーに見せた。
「おぬしが今、填まっておるのはこれ。簡単に言えば停滞じゃな。負けを恐れるあまり勝負を避けるのは、本末転倒だと思うのじゃ」
嫌なこと言うのね、と眉を顰めるシャリーに、これも占い師の務めなのじゃ、とユラヴィカは肩を竦めた。
衆目の前に進み出たシャリーアは、恭しく礼をしたかと思いきや、目にも止まらぬ早業で手にしたダーツを投げ放った。大勢の人の間をすり抜けたダーツは、狙いあたわず掛けられた的の中心に命中する。一瞬送れて驚きの声が上がり、そして、賞賛の拍手が湧き起こった。それが止まぬ内に、今度は3本のダーツを手にした彼女。はっ、と気合いと共に投げ放ったそれは、二本は見事に的を捉えたものの、もう一本は気持ちよくお酒を飲んでいたおじさんの頭を掠めて、背後の壁に突き立った。がちゃ、と杯を落とすおじさん。間髪入れず振り返ったシャーリアは、再び複数のダーツを投げ放つ。わあっ! と声を上げて頭を伏せる参列者達。だが、恐る恐る頭を上げてみれば、ダーツは見事、的に突き立っているではないか。驚きの分興奮も高まり、割れんばかりの拍手がシャーリアに送られた。
笑顔を振り撒きながら、的に刺さったダーツを抜いて行く。壁に突き刺さった一本を抜いた時、頭を掠めたおじさんと目が合った。可哀想に、顔が真っ青だ。
「安心しろ、演出だ」
満面の笑みで言い切った。
「本当か!? 本当なのか!?」
どっと笑いが湧き起こる。おじさんにはとんだ災難ではあったが、場は大いに盛り上がったのだった。
オークルの魔法の仕掛けに子供たちがはしゃぎ回っている頃。ごちそうの方が落ち着いてきたのを見計らい、桂花は大きな型に詰めた種を用意して、お菓子屋しふ達と共にパン屋に向かった。パン屋夫婦はほろ酔い気分で北の国から来たという吟遊詩人の歌に聞き入っている。パン屋では、トートが彼らを待っていた。
「ちゃんと窯、温まってるよ」
鼻の頭に煤など付けてはいるが、火加減を見る目は真剣そのもの。トートも随分と頼もしくなったものである。
「温度を一定に保つのが大切なんだって。大丈夫?」
任せといてよ、とトート。
「楽しみだねー」
「美味しくできるかなー」
わくわくと窯を見つめるお菓子屋しふ達。粉で白くなった顔を拭うのも忘れて期待に胸を膨らませている様を、桂花がにこにこと見守っている。
詩人しふの師匠殿は、ワインを傍らに置いて喉を潤しながら、その低く温かな歌声で花嫁の美しさと朗らかさを歌い上げた。さすが百戦錬磨、花婿や旦那衆、おかみさん達にも合間合間に話しを振り、軽い笑いを引き出すことを忘れない。終わろうとしたところを2度も引き止められ、惜しみない拍手とたっぷりのお捻りを獲得したのだった。
その後に歌うことになってしまった詩人しふトム。彼は竪琴をぽろんぽろんと奏でながら、囁くような口ぶりで、花嫁の一直線で強引な先生っぷりと無茶理論、シフール達とのてんやわんやな騒動の数々を歌い出した。なるほどこれは、しふ学校の生徒でなければ歌えない歌だ。
(「で、でもこれはダメだよトムくん!」)
ファム、どうしたら良いのか分からずオロオロする。お客さんにはうけているけれども、花嫁は恥ずかしくて顔を伏せてしまった。婚礼に贈る歌としては大失格。師匠が険しい顔で彼を睨む。けれど、トムはその後に、婚礼を祝おうと集まる生徒達の姿と、自分のことの様に喜ぶ通りの人達の姿を歌った。彼女がどれだけ愛されていて、生徒達から慕われているかを。そして、素直な祝福の気持ちを言葉にする。でも、旦那さんには手加減してあげてね♪ と締めて、皆を大いに笑わせた。
「もー、ちょっといいかげんにしなさいよね」
文句を言いながら嬉しさに目を潤ませ笑う花嫁。後でもっと教えてください、と花婿のコメントに、更に笑いが起こる。ちょっと拗ねる花嫁を宥める花婿の姿が微笑ましい。
それに続いて、歌い出したのはファム。
♪街の通りの並木道
皆と一緒に暮らす
とちのきの並木道
嬉しいことも、悲しいことも、一緒にすごした並木道
とぉ〜ちの〜き〜 とぉ〜ちの〜き〜
ここは とちのき とちのき通り♪
「いいぞファムちゃん!」
思いもかけず飛び出したとちのき通りの歌に、住人達が盛り上がる。
「さあ皆さんもご一緒に!」
促すと、詩人達も楽器が弾ける人々も、面白がって後に続く。彼女が期待に満ちた目をトムに向けると、仕方ないな、と苦笑しながら、彼もこの演奏に加わった。たくさんの声と音が集まると、何故かそれだけで楽しい気持が湧き起こって来る。上手な人はもちろん、下手な人が加わっても、それはちっとも損なわれない。歌い終わった後には、みんなが笑い合っていた。
そんなところに、漂って来る甘い香り。運ばれて来たのは、しっとりと焼き上がったドライフルーツケーキだ。新鮮なミルクと蜂蜜で作った甘いクリームがたっぷりと添えられていて、これと一緒に頂くのだ。
「これを夫婦でお客さんに振舞うんだよ。夫婦最初の共同作業でございます☆」
桂花に促され、大きなホールケーキに二人してナイフを入れる。ふわりと漂う甘い香りは幸せの証。娘さん達、おかみさん達はしっとり甘いお菓子に大興奮。酒飲みのオヤジどもも、物珍しげにつついている。
「なんとかなったね師匠」
「うん‥‥でも、やっぱりお菓子は難しいね。もっともっと研究しなきゃだよ」
分量や温度、時間がパズルの様に組み合わさって完成するこの手の洋菓子は、きっと材料の差もあるのだろう、さしものファムも聞きかじりの知識だけでは、思い通りに行かなかった。それでも、十分に賞味に値するものではあるのだが。
「ねえ師匠、僕らがあれを先に完成させたら、褒めてくれる?」
「む! 言ったね? いいよその挑戦受けて立つ。あたいが勝ったら、温めてる新作お菓子のレシピをひとつ教えること。いい?」
勝負だね! と笑い合う弟子と師匠。早速皆してケーキをつつきながら、反省会を始めたのだった。
「いい人達だね」
花婿の呟きに、ちょっと騒々しいけどね、と花嫁。
「上手くやっていけそう?」
頷いた花婿に、これからよろしくね、と花嫁は微笑みかけた。
●お別れの日
夕暮れ色の空を、美星とミックは見つめていた。赤い光を受けると、家々の屋根がまるで海の様にうねって見える。以前にミックから教えてもらったこの場所に、美星は彼を呼び出した。彼女が彼に差し出したのは、誓いの指輪。
「ミックさん、大好きアル」
その銀の指輪の持つ意味を、ミックも今日の婚礼で知った。
「凄く嬉しいけど、僕は泥棒‥‥」
言いかけた言葉を、美星の唇が遮った。抱き締め合う二人の姿が、暗くなりゆく風景の中に溶けて行く。
楽しい酒に酔い、撃沈した参列者を介抱して帰し終えたのは、とっぷりと夜も暮れた頃だった。お疲れさま、とモニカに声を掛けられ、薬しふ達がようやく息をついた頃に、修道士が彼らを迎えに来た。
「彼らのこと、よろしくお願いしますアル」
ぺこりと頭を下げた美星に、心配はいりませんよ、と修道士は笑った。
「彼らの探究心には感心しています。きっと良い癒し手になるでしょう。もう少し神の教えについても興味を持ってくれると、なお良いのですが」
相変わらず偏っている様で、モニカは思わず苦笑い。
「もう行くのか。頑張れよ」
声を掛けたバンゴに、彼らは大きく手を振った。
「寂しいんじゃないの?」
からかうモニカに、うるせーよ、とバンゴ。どんな顔をしているのかは、見ないでおく。
「どうでしたか師匠」
「単調なメロディ、工夫の無い言葉、愚直すぎる表現。ネタに救われはしたが、反則ぎりぎりだ。ファム嬢のフォローが無かったら、多少気まずい空気を残したかも知れない」
手厳しい評価に、はい、と頷くトム。その様子を覗き見ていたファムに、彼はこっちに来いよ、と声をかけ、師匠とファムを互いに紹介した。
「でも、知ってたんだな。俺が演奏してる時、師匠とファムを見てたらなんとなく分かったよ」
おあいこだよね、とファム。決心はついたのかね? と問うた師匠に彼は、師匠のもとを離れてみようと思います、と答えた。
「破れかぶれで歌ってみて分かったんだ。歌う前に諦められてしまう歌や詩は、とても不幸なんだって。そう思ったら、俺の心に浮かんだものがどんな風に育つのか、見てみたくなったんだ」
「いつ発つの?」
「準備が出来次第。月末くらいになっちゃうかな」
そっか、とファム。頑張らなきゃだね、と掛けた言葉に、彼は吹っ切れたような、今まで見た事の無い晴れやかな笑みを浮かべた。
モロゾは久々のお泊り。ワルダーと荒れてしまった土地の再生について熱く語り合っている。天龍はそれを聞いて、彼らの旅立ちが迫っているのだと改めて感じていた。後片付けを終え、一息つく拳法しふ達に向き直り、天龍は言った。
「久しぶりに組み手をしよう。鍛錬を怠っていた者はいないだろうな?」
拳を交えてみると、彼らのことが見えて来る。才能のある者、残念ながら無い者、器用にこなす者、愚直に向き合う者、黙々と己の技を磨いた者、人を導くのが上手い者‥‥。そしてもうひとつ。組み手を終えた彼らは、互いに何が未熟なのかを話し合っていた。天龍にただ導かれるだけではない、いつの間にか、彼らの中で補い合い切磋琢磨できる、そんな境地に達していたのだ。
「基礎は全て教えた。ウィルに残る者達には今後も稽古をつけてやれるが、トーエン領に戻る者も日々の鍛錬を怠らなければ己を高めていく事が出来るだろう。それぞれよく考えてどうするか決めて欲しいと思う」
はいっ、と答えた彼らの声に、迷いは無い様に思える。
「気になるのですか?」
ディアッカに声をかけられ、拳法しふの様子を伺っていた不良しふ達が、うお、と小さく声を上げた。
「べ、べつに‥‥そりゃワルダーさんは手伝いたいけど、トーエンの奴のところに戻るなんて考えただけでもゾッとするしな。てか、すんなり聞き入れるワルダーさんもさっぱりわからねぇよ」
否定しながら、全部喋ってしまった。馬鹿正直なんですね、とディアッカは可笑しく思いながら、彼らがトーエン領での出来事とその後の顛末を知らない事に思い当たった。彼らからすると、確かにこれは、唐突な話に聞こえるかも知れない。
「そうですね。こうは考えられないでしょうか。トーエン卿にまた同じ失敗を繰り返させない為に、彼は戻る事を決めたのだと。故郷の復興を自らの手で行うというのは、きっとやりがいのある仕事でしょうし」
そう説得され、ううむ、と黙ってしまった彼ら。そこにバンゴが通りかかった。バンゴさんは行くんですか、どうなんですか、と問い詰める不良しふ達に、バンゴは言った。
「俺はワルダーさんのとこに間借りさせてもらいながら、辺境で困ってる連中にとっての『冒険者』になれないか試してみようと思ってる。まあ、当分は食うにも困る羽目になるだろうがな。街と違ってどいつもこいつも貧乏だから、あんまり金取れないしな」
しょうがねえよな、と笑う彼。
「お前ら、他にどうしてもって思い定めてることがあるんじゃなければ、その力、ワルダーさんに貸してやってくれよ。あの人は来たい奴は来いみたいな言い方をしたが、そんなもん、みんなに来て欲しいに決まってるだろ。あの人がいつでも俺らのことを考えて動いてるの、お前ら知らない訳でも無いだろうによ」
不良しふ達、言葉も無い。
シャリーアから支援の申し出を受けたワルダーは、まじまじと彼女の顔を見た。
「酔狂な奴がいたものだ。まだ海のものとも山のものともつかない話だぞ? 真剣に取り組んだって頓挫しないとも限らない。成功するにしてもずっと先の話だろう。それどころか、俺達は元わるしふ。金だけ頂いて逃亡なんてことだって有り得るんだ。いくらなんでも不用意過ぎないか?」
「‥‥持ち逃げは確かに困るな。でも、これでも人を見る目はあるつもりだ」
彼女は澄まし顔で答えた。
「エルフの私は、マウロ家が代がわりするような未来でも皆様とともに過ごせる。そんな場所をひとつ持っておくのは、悪い投資ではないと思う。良き友好と未来の為に、是非とも協力させてもらいたい」
どちらにしろ俺に決める権限は無い、トーエン卿に直接掛け合ってくれ、と彼。わかった、と席を立った彼女に、感謝する、とワルダーは頭を下げた。この金で、どれだけの苦労と損害が回避できるか分からないのだ。
後日トーエン卿と話し合いが行われ、彼はこの申し出を有難く受けた。シャリーア・フォルテライズ男爵の名は、融資者の筆頭に刻まれている。
ワルダー達が旅立つ日、天龍は弟子達にこんな話しをした。
「俺はお前達に戦う為の『武』を教えたが、俺の生まれた国では『武』という字は『戈』を『止』めると書く。力を安易に振るう事はせぬ様にな」
彼らが武術だけでなくその心までを習得し、自らを戒めて凶事を招き入れることが無い様、祈るばかりの天龍である。そして、彼が取り出したのは、しふしふ団腕章。初期組には配っているが、後から加わった者にも今、手渡す。
「例え離れていても、同じ腕章をした仲間達が頑張っている事を忘れない様にな」
その腕章を見つめる彼らの目に溢れる思いは、言葉よりも多くの感情を語っていた。
「‥‥済まない、シャリーを見かけなかったか?」
ワルダーに聞かれ、いや、と首を振る天龍。まさか、と皆の胸に嫌な予感が走る。
「た、たいへんだよ! トムが靴屋の前に座り込んで、弟子にしてくれるまで動かないって!」
「ミックさんは、何処かに出かけているアルか?」
なんてこった、とイーダが首を振った。
しふ学校会計。
前回の残金720G20C。シャリーアが寄付した100Gと美星が寄付した100G、料理しふが賃金の中から入れた5Gを加え、5月21日〜6月29日の生徒34人、生活費1日ひとり5Cの合計68Gを差し引いて、6月29日の残金は857G20Cとなる。