暗雲ルーケイ2〜復興会議レポート
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■ショートシナリオ
担当:マレーア3
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 98 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月16日〜07月19日
リプレイ公開日:2006年07月24日
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●オープニング
●騎士学生からの依頼
その日、一人の騎士学生が冒険者ギルドを訪れた。
「私は騎士学生リュノー・レゼン。騎士学院教官シュスト・ヴァーラ殿の代理として、依頼の申請に参りました」
リュノーは騎士学院教官シュスト・ヴァーラの紹介状を携えていた。
「依頼の内容は、王都ウィルにて開催されるルーケイ復興会議についてのものです。復興会議には学園都市ウィルディアを代表してシュスト教官殿が出席なさり、私も書記として随行します。会議の報告書を作成するのが私の仕事ですが、ルーケイの今後について関心を抱く冒険者の方々も、決して少なくはないことでしょう。そこで、学園都市代表の随行者として、若干名の冒険者を募集します」
リュノーが冒険者達に求める役割は、陪席者(オブザーバー)としての会議の傍聴。自ら進んで意見を提出することは出来ないが、正式な会議出席者からの求めがあれば、それに応じる形での発言は可能だ。また、会議の後に開かれる晩餐会では、会議に出席したさまざまな重要人物
と対面できる。相手が望めばさまざまな意見交換も行えるだろう。
「但し、礼儀作法だけはきっちりと弁えて下さい。また、冒険者の中には、当地の事情に疎い方もおいででしょう。私が指南役を務めますので、分からないことがあれば積極的に質問して下さい」
●兆し
フオロ城内、マリーネ姫の居室。
「復興会議の本会場は、『翡翠の間』に定まりて御座います。本会議の終わりし後は、姫殿下並びに列席者一同、『琥珀の間』にお移り頂き、盛大なる晩餐会をお楽しみ頂きます」
「分かりました。滞りなく準備を進めなさい」
報告に上がった侍従長は、一礼して姫の前より退出した。
『翡翠の間』に『琥珀の間』と言えば、マリーネ姫にとっても思い出深き場所だ。『翡翠の間』は国王陛下の招賢令により、冒険者の識者を集めての賢人会議が開かれた場所。今にして思えば、あの会議を境に王家の運命は変わったような気もする。
また『琥珀の間』と聞けば、海戦騎士ルカード・イデルを招いての晩餐会で起きた、ジーザム分国王の馬車牽きの椿事を思い出す。
思えばあの頃の宮廷生活には、常に重苦しさと息苦しさが付きまとっていた。
でも、今は違う。時には優しく寄り添い、時には力強く支え、時には命にかけても姫を守ろうとする冒険者達が、姫の側にいる。それまでは分厚い石の壁に四方を囲まれたかのように毎日が重苦しかったが、彼ら冒険者達はその壁に大きな風穴を開け、新鮮な空気を吹き込んでくれたのだ。
♪旭将軍義仲(あさひしょうぐんよしなか)も
仁科五郎信盛(にしなのごろうのぶもり)も
春台太宰(しゅんだいだざい)先生も
象山佐久間(ぞうざんさくま)先生も
皆この国の人にして
文武(ぶんぶ)の誉(ほま)れ比(たぐい)なく
山と聳(そび)えて世に仰(あお)ぎ
川と流れて名は尽(つき)ず♪
ふと口ずさむのは『信濃の歌』。分県確定寸前に起こった大合唱が、バラバラだった人々の心を一つに結束した逸話をマリーネは聞いた。曲も勿論名曲だが、歌詞はさらに素晴らしい。将に国の鎮めたる歌とは斯くあるべし。
マリーネは歌に挙げられた春台先生の説を思い出す。
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凡(およそ)聖人の道には、人の心底の害悪を論ずること、決して無き事なり。
聖人の教(おしえ)は、外より入る術(わざ)なり。
身を行うに先王の礼を守り、事を処するに先王の義を用い、
外面に君子の容儀を具(そ)だる者を、君子とす。其の人の内心は如何と問わず。
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自分が悪人であることを自覚して、世の諸々の悪事と節制して付き合う事により、初めて正しき事を成し得るのだと言う。この規範の客観化は、極めて現実的な理想主義であり、この説に照らして君臣関係を見るならば、批判を公然と声高に発するも君命に服従する者が良い臣である
となる。
思えば、先王陛下の御代にはそのような人物も多かったが、彼等は当今を事有る毎に先代と比較し、その命に服すことは寡かった。
「‥‥最近、ぱこぱこもカルもルーケイにかかりっきりみたいね」
二人とも、伯の与力として詰めているらしい。
「では、お召しになりますか?」
「そうして頂戴。‥‥会議にはどのドレスを着ていこうかしら?」
この前の戦勝祝賀会では、天界人から献上されたドレスで装った。けれど、他にも思い出深いドレスは幾つもある。たとえばセレ分国王のお招きで、あのエルフの国を訪ねた時に、その身を飾ったドレスはどうだろう?
「試みにもう一度、袖を通してみようかしら?」
侍女達を呼び、着付けを始めさせた。暇さえあれば色々なドレスを引っ張り出し、着付けを楽しんでしまうのは、幼い頃よりの習い性。
「飾り物は何がいいかしら? 髪型はどんな風がいいかしら?」
大鏡に写る自分の姿を前に、あれこれ思案していたが‥‥。
「あら?」
腰の辺りが妙に窮屈だ。ほんの3ヶ月前には、体にぴったり合たドレスだったのに。
「‥‥どうしたのかしら?」
それはあまりにもささやかな兆し。姫はまだその意味の重さに気付かない。
●リプレイ本文
●ルーケイ復興会議出席者一覧
マリーネ・アネット
国王陛下の妾妃、ルーケイ伯の後見人
アレクシアス・フェザント
王領ルーケイの代官、ルーケイ伯
ラーベ・アドラ
王領北クイースの代官
レーゾ・アドラ
王領南クイースの代官
グーレング・ドルゴ
王領ラントの代官
ギーズ・ヴァム
王領アーメルの代官
リボレー・ワンド
ワンド子爵領の領主
ラベール・シスイ
シスイ男爵領の領主
シュスト・ヴァーラ
騎士学院教官、学園都市ウィルディア全権代表
●復興会議〜賊徒対策
会議のテーブルには、一つだけ空席がある。
「ロメル子爵は欠席ですか?」
訊ねたマリーネ姫に、付き添いの侍従長が耳打ち。
「病を抱え、領地より離れられないとのことです」
姫はテーブルに居並ぶ参加者に向き直り、厳かに宣告した。
「では、ここにルーケイ復興会議を開催します。ルーケイ伯アレクシアスよ。最初にルーケイの現状について、説明なさい」
アレクシアスは当たり障りのないところから報告を始めた。先の盗賊平定戦における大勝利により、東ルーケイから盗賊の姿は消えたこと。既に東ルーケイには復興された村があり、盗賊に苦しめられていた虜囚達はその村に受け入れらたこと。また、盗賊の支配下にあった村についても、復興の計画が進んでいること、等。
「しかし現在、我が手中にあるのは僅かに東ルーケイのみ。全ルーケイの平定成るまで戦いは続く。出席者諸氏においては、賊徒討伐のための協力態勢を確たる物にすべく、ご助力を願いたい」
「して、次なる獲物は中ルーケイの謀反人どもか? それとも西ルーケイの賊徒どもですかな? 大河に蔓延る強欲なドブネズミどもも、放ってはおけませぬぞ」
切り込んだのは北クイースの代官ラーベ。
「いずれにせよ伯のゴーレムがあれば、賊徒も叛徒も踏み潰すなど容易きこと。次なる合戦が楽しみですな」
「そのゴーレムだが、さらなる賊徒の討伐はもとより、ルーケイの復興事業においても使役したく思う。ついてはルーケイ周辺の各領地におけるゴーレムの乗り入れ許可を願う。勿論、賊徒の討伐に当たっては、互いの了解無く越境し、討伐行為を行う事の無いように願う」
ルーケイ伯の後の言葉は、主としてアーメルの代官ギーズに対してのもの。宴では傍若無人に振る舞うギーズも、姫の同席する会議では別人のように大人しい。ルーケイ伯の言葉に対しては、無言ながら首を縦に振って同意を示した。
「ではここで、各領地における現在までの賊徒の被害、並びに賊徒への対応を確認したい」
アレクシアスが求めると、先ずシスイ男爵が答える。
「東ルーケイの平定により、それと隣り合う我がシスイ領からも賊徒の脅威は消え失せました。寧ろ気掛かりなのは、未だ中ルーケイと西ルーケイに居座る叛徒や賊徒どもが、今後ますます豊かになるであろう東ルーケイの富に引き寄せらるること。こと東ルーケイに産する小麦は、我がシスイ領にも富をもたらします故、より一層のご配慮を願う次第であります」
続いて答える代官ラーベとレーゾも、賊徒よりもむしろ小麦への関心を示す。こと両者の領地は、ルーケイとの間に王領アーメルを挟んでいる。ルーケイからの賊も容易く足を踏み込めない。その代わり、割を食うのはアーメルの代官だ。
「ルーケイの賊徒には手を焼いている」
答えるギーズの声はいつになく小さい。マリーネ姫に代官達の視線が気になる様子だ。
「その対策については‥‥ここでぐだぐだ説明するよりも、現地に赴きその目で確かめた方が良かろう。いずれ、それに相応しい場にて協議を行おう」
その言葉、ギーズなりに言葉を選んでのものであろう。
ウィルディア代表のシュストからは、南ルーケイから侵入する賊徒による若干の被害が報告されるも、さほど深刻なものでは無いとのことだ。
そして現在、最も深刻な被害を被っているのは、西ルーケイの毒蛇団に悩まされるワンド子爵領であろう。多大な出費と引き替えに領地の守りは固めたが、領地の周辺でその餌食となる者は後を絶たない。一刻も早い西ルーケイの平定を望むと、ワンド子爵は訴えた。
●復興会議〜小麦の利権
議題が小麦に移ると、代官ラーベとレーゾは俄然、色めき立つ。北クイースと南クイース、共に小麦の収穫豊かな土地であり、2人の代官はそれぞれ王都に小麦の販路を持ち、その売り上げで鎬を削っているとか。
「必要とあらば北ルーケイより、小麦の種籾を貸し付けても良い」
「ならば南ルーケイからは、畑を耕す牛も貸し付けますぞ」
勿論、貸し付けを行うからには、貸付料をがめつくせしめようという魂胆だ。
先の戦勝祝賀会の延長戦よろしく、美味しいルーケイ利権を自分の元へ引き込もうとやっきになる2人の姿は、端で見ていても見目麗しいものではなく。
「どうしたものだろう?」
マリーネ姫に付き添う王家調査室室長、草薙麟太郎は考えあぐね、何か姫に助言してこの場を収めて貰おうかとも思ったが。やはり姫に付き添う侍従長がほくそ笑んで彼に言う。
「このまま放っておいても、やがては時が解決いたしましょう」
そしてついに、マリーネ姫の口から欠伸が一つ。
それを見た途端、ラーベとレーゾの顔色が変わった。
「いい加減、議論が長くなりすぎた」
「では、いずれ日を改めて」
こと姫の顔色を伺うことにかけては、才気に長けた御仁達であった。
●時代は代わりゆく
学園都市ウィルディア代表のシュストにとって、最大の関心事はルーケイに配備されるゴーレムの動向。会議に先立ち、トルクの使者とルーケイ伯与力との事前交渉が行われており、その結果をシュストは復興会議にて告知する。
「結果だけを簡潔に伝えよう。ルーケイに配備されたゴーレムの整備は、騎士学院が担うこととなる。そして今、ゴーレムに関しての全権を委任されたトルクの使者、正騎士ヘイレス・イルク殿がここに見えている。彼からも一言、言葉を添えて頂こう」
会議には陪席者として臨むヘイレスではあったが、シュストの求めに答えて発言した。
「ルーケイの復興には我等がトルクの王、ジーザム陛下も並々ならぬご期待をお寄せです。過日にはフオロとトルクとが剣を交え、血を流した歴史もありました。
しかし、時代は変わったのです。先王レズナー陛下の御世において、ウィルの6分国はかつてない結束を世に示し、ここに強国ウィルの下地は作られました。その遺業は現王エーガン陛下により日々、完成の域へと近づきつつあります。
今はウィルの領主同士、分国同士が諍い合う時ではありません。内部でいがみ合う国が、などて諸国にその偉を誇れましょう。フオロとトルクは共に王道を歩み、強国ウィルの礎となるべきなのです。ルーケイへのゴーレム配備はまさしく、共に手を携える両王家の姿を象徴するもの。そうならんことを、私は切に望みます」
その言葉が終わるや、盛大なる拍手がヘイレスを包んだ。それは出席者全員による賛意の表明。
●トルクの男爵
復興会議にはトルクの男爵、時雨蒼威も陪席者として出席していた。会議の後、ヘイレスと話をする機会を得たので、ルーケイの賊徒がトルク領に及ぼす被害について訊ねてみた。
「ルーケイの賊徒による、トルク本領内での直接被害はありません」
と、ヘイレスは答える。
「ルーケイとトルクの間には、大河が横たわっておりますからな。とはいえ、トルク本領より大河を隔てたワンド子爵領へ交易に向かう者達が、ルーケイを根城とする賊に襲われる事件は後を絶ちません。そのことは、トルクがルーケイと無関係でいられない理由の一つなのです」
「ところで、明日はチャリオットレースが開催されるが。ヘイレス殿は観戦されるか?」
「生憎と、私は多忙の身でして‥‥」
「それは残念」
続けて、蒼威はヘイレスに耳打ちした。
「実は、南のイムン分国へ友好使節を派遣できないものかと考えている。過去のイムンとトルクの仲は、如何なものだろう?」
ヘイレスは囁くように答えた。
「良好とは申せません。恐らくはウィルの6分国の中で、今のトルク王を最も嫌っているのがイムンの王家でありましょう。逆に考えれば、そういう仲であるからこそ、友好使節の派遣が重みをもってくるはず。但し、事は慎重に運ばねばなりませんな」
●姫のご懐妊
『翡翠の間』での会議が終わり、その後は晩餐会。参加者がぞろぞろと『琥珀の間』へ移動する最中、大急ぎで反対方向に廊下を進むのは、依頼人の騎士学生リュノーとキース・ファラン(eb4324)。これから記録部屋で、議事録をまとめる一仕事だ。
「俺、もともと代書屋を生業にしていたからな。しっかりした議事録を作りたいな」
「代書屋でしたか。貴重な戦力ですね。宜しくお願いします」
早くもキースは、リュノーに当てにされている。また仕事で一緒になるかもしれない。
途中、ルーケイ伯とすれ違った。
「これからもがんばってくれ!」
冒険者流儀でキースは挨拶の言葉をかけ、ついでにリュノーにも意見を披露。
「ルーケイに関しては、独自の産業などで国力をつけたい気持ちもわかるけれど、まずは治安の回復だね」
さて、『琥珀の間』では。
「私はゴーレムを『量産可能な強力な魔剣』として認識しております。これからは『魔剣』を用意できる政治力と財力がより重視されることになり、社会全体に極めて多くの変化が生じることでしょう。これは騎士道が廃れる結果起こる現象ではありません。新たな現実に対応するため、騎士道は本質を保ちつつも、細部は変わっていかざるを得ないということです」
と、スニア・ロランド(ea5929)は話す。相手は教官シュスト。例のごとく無表情ながらもシュストは真剣に耳を傾けていたが、そこへマリーネ姫の一行が姿を現した。
スニアとシュストは話を中断し、何気なくマリーネ姫を見つめ、取り巻きの言葉に耳を傾けていたスニアは、以前とは違う姫の様子に気が付いた。
お腹の辺りが僅かに膨らんでいる。
後日。スニアはエーロン王子に対し、この件について内密理に報告した。
●姫のお気に入り
華やかな晩餐会なのに、ルリ・テランセラ(ea5013)はテーブルに座ったきり落ち込みっぱなし。
「どうしたの?」
声をかけられ、顔を上げるとマリーネ姫が心配そうに見ている。
「ウィンターフォルセのこととか‥‥色々あったから‥‥」
「ウィンターフォルセ?」
姫の傍らに控えた山下博士(eb4096)が、姫に耳打ちする。
「実は‥‥」
やがて、マリーネ姫は得心の表情に。
「‥‥そうだったの」
「それに‥‥今は一緒にアトランティスに一緒に来た人達と、とスレナスさんしか知り合いいないから‥‥もぉ本当のお父様とお母様じゃないけど、イギリスの両親とバルディエお父様とは二度と会えないから‥‥」
ルリはもう泣きそう。姫は博士に頼む。
「瑠璃姫を私の部屋に連れて行って、面倒を見てあげて。後で私も行きます」
晩餐会が終わると、姫はルリと博士の待つ居室に現れた。
「晩餐会は人が多すぎて。ここで3人だけの方がずっと落ち着くわ」
勿論、居室の外では衛士達がしっかり警備についている。
「何を飲もうかしら? あなたのお気に入りはなぁに?」
姫に訊ねられ、ルリは一番のお気に入りを答える。
「ジャスミンの紅茶。とても香りいいから」
姫は侍女を呼び寄せて紅茶を頼み、やがて侍女は香り高いジャスミンの紅茶に、お茶受けの甘いお菓子を持って現れた。
「ぱこぱこ、今日は何のお話を聞かせてくれるの?」
3人で紅茶とお菓子を楽しみながら、姫が問う。
「カール大帝と北条時政、そして保科正之の話をしましょう」
姫にとっては初めて聞く名前だが、いずれも地球では歴史上の人物だ。
博士によれば、カール大帝と北条時政は、年を取ってから出来た子供への盲愛により、その子を破滅させる結果を招いたり、国を分裂させて仕舞った人物。
逆に保科正之は、徳川家光の庶弟として後継者争いを回避し、ついには諸侯の尊敬と兄の信頼を集め、遺児を託され事実上の王として統治し、重き立場を子孫に至るまで全うした人物である。
姫は暫くその話に聞き入っていたが、話が終わると訝しげに問う。
「でも、どうしてそんな王族達の話を持ち出したの?」
今度は、博士が訝しげに問う番。
「姫は、まだお気づきになられていないのですか?」
「え?」
姫はぽかんとした顔になった。
●波乱の予兆
晩餐会も終わり、シュスト教官と別れの挨拶を交わした後、ベアルファレス・ジスハート(eb4242)は人目に付かぬよう王都の処刑場へと向かった。処刑官と話をするためだ。
「新しい処刑方法でございますか?」
「我々はこれをギロチンと呼ぶ」
ベアルファレスは概略図を描いて説明する。
「処刑は庶民にとって、娯楽の意味合いも含む。天界でも過去の歴史においては、その様な風潮が主流だったな」
ギロチン刑を提案した目的は、見せしめの意味合いと、民への娯楽としての趣向性を強める為。処刑具の数を揃えるのが困難なので、少人数の重罪犯に対して行うことになろう。尤も、元々ギロチンとは死刑囚の苦痛軽減に考案された代物ではあるが。
「謀反などを考える愚か者共への戒めと、民のストレス発散‥‥必要悪だな、これは」
処刑場での用事を済ませると、続いてマリーネ姫に仕える侍女長を訪ねる。
「こんな夜遅くにどうしましたの?」
「内密に話がある。姫のご懐妊のことだ」
そう告げた瞬間、侍女長の顔色が変わった。
「どうして、それを‥‥」
「山下が最初に気付いた。いずれは判る事であろうが、覚悟はしておかねばならんな‥‥」
●代官の屋敷にて
招かれた貴族街の屋敷に足を踏み入れ、思わずカルナックス・レイヴ(eb2448)は感嘆の声を上げる。
「素晴らしい‥‥」
室内を豪華に飾る数々の装飾もさることながら、あちこちに飾られた少女画の愛くるしさときたら。妖精のような少女達の姿は、さながらこの屋敷の主であるかの如し。
しかし、カルナックスはすぐに気を引き締める。ここに来た目的は、先のラント領主であるレーガー・ラントの情報を、現在のラント代官グーレング・ドルゴから得るため。
「レーガー卿は聡明にして剛胆。それまで実り少なき土地であったラント領を、一代にして実り豊かな地に変えたる傑物だ。今日のラントの繁栄もレーガー卿あってのこと」
意外にもグーレングは、先の領主に好感を抱いている様子。
「そのレーガー卿が、何故に国王陛下の不興を買うことになったのだ?」
グーレングの顔に、悪代官の評判に似つかわしい酷薄な笑みが浮かぶ。
「夏の夜は短いが‥‥じっくりと話して聞かせてやろう。今まさにこの王国を呑み込まんとする、大いなる災禍の話をな」