ぶらりブルーゲイル、セレ訪問

■ショートシナリオ


担当:マレーア3

対応レベル:8〜14lv

難易度:易しい

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月12日〜08月17日

リプレイ公開日:2006年08月19日

●オープニング

●レッドインパルス号でGO!
 この日も、数騎のゴーレムグライダーがウィルの王宮を訪れ、エーガン王への謁見を求めた。
 それはセレ分国とトルク分国の特使。
 先日の競技会、第4回GCRに優秀な成績を残した、トルク分国公爵家チームである優勝チーム【ゴートメンバーズ】、セレ分国からは準優勝チーム【ブルーゲイル】とあの【レッドスフィンクス】と同率3位の成績を収めた【フォレストラビッツ】の2チーム、それらを一時国元へ迎え宴を催したいとの事。
 これに対し、エーガン王は威厳に満ちた声で、応えたという。
「ならば、その通行を許そう」と‥‥

 一隻のフロートシップがトルク領からフォロ領との国境たる大河へと進入したのは、夜明けも近く、空が虹色に染まりつつある頃。
 真紅の船体、正にその名を冠するが如く、『レッドインパルス』号はトルクのセクテ領を抜け、水面に船体を映し出す様に低空を進む。随伴するゴーレムグライダーは赤い吹流しと共に、大きくトルク家の旗を掲げていた。
 見る者を魅了せんが如き、赤の行進。
 粛々と行く様は、川筋に生きる者へ新たな時代の到来を、その胸へと明確に焼き付ける瞬間であった。

「副長、副長。前方に機影三。前方に機影三」
「機影確認急がせろ。速度そのまま! 風信器感度無いか!? 信号灯用意!」
「機影確認急げ! 繰り返す! 機影確認急げ!」
「風信機感度良好! 精霊力安定しています! 信号はありません!」
「信号灯用意! 繰り返す! 信号灯用意! 指示あるまで待機!」
 ブリッジ要員は次々と伝声管へ指示を出す。
 そこへ背後の扉が開き、一人の騎士らしき男がこの艦橋へと足を踏み入れた。
「副長」
「はっ!」
 それまで指示を出していた男が、敬礼して男を出迎えた。
「報告致します。物見が前方に三機の機影を確認。所属は未だ確認出来ず。進入角からしてフォロ城からのものと推測されます」
「うむ。確認を急がせろ。第3種戦闘配備を継続! 現速度を維持しつつ前進!」
「はっ!」
「信号班に指示! 『我トルク分国所属レッドインパルス号。フォロ領への侵入許されたし』」
 この指示に従い、艦橋の一画より、光の明滅が放たれる。
 それは海で古くから使われる信号。光の明滅の組み合わせにより意を伝えた。が、陸の騎士、空の騎士がそれを知るかは別の話。

 数刻後、出迎えの三機のゴーレムグライダーに先導され、艦は一路フォロ城へと進んだ。


 そこはマーカスランドのサロン。
 二階にある一室にて、打ち合わせが進んでいた。
「それでは大まかにはこの様に‥‥」
 三人のチームディレクターは、旅の運行予定表を印した書簡を取り交わした。
「先ずはセレに寄り、我等のチームを降ろし、それから船はトルクへと帰還する」
「そこでうちのチームを降ろし、船はセレへ取って返す」
「セレでこちらのチームを拾い、それからトルクへ」
「トルクでうちのチームを拾い、それからここへ」
「もう少しゆっくりとしても構わないのでしょうが‥‥」
「この位が丁度良いでしょう。逗留期間は2日程ですが、その方がまた拝謁する時への励みになるでしょう」
 三人は頷き、席を立つ。
「それでは‥‥」
「ええ‥‥」
「レッドインパルス号で‥‥」
 『レッドインパルス号で』。それがまるで合言葉であるかの様に。

●今回の参加者

 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 eb0746 アルフォンス・ニカイドウ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb4041 エンヴィ・バライエント(34歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4199 ルエラ・ファールヴァルト(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4209 ディーナ・ヘイワード(25歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4392 リュード・フロウ(37歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4395 エルシード・カペアドール(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4501 リーン・エグザンティア(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4856 リィム・タイランツ(35歳・♀・鎧騎士・パラ・アトランティス)

●リプレイ本文

 フォロ城付近へと降着させた船体を前に、ゴートメンバーズ、ブルーゲイル、フォレストラビッツのメンバーはそれぞれに整列していた。当然、チームディレクターのボルゲル男爵、アレックス男爵、ベルゲリオン子爵とそのお供の方々も。そして宴に出るからには、その奥方と、置いてはいけぬとお子様達も‥‥という訳でハトゥーム家の方々はかなりの大所帯。
 バガンすら乗り入れ出来る程の底部ハッチが開かれており、一行はそこから現れた人物と対峙していた。
「皆様、初めまして。わたくしがこの艦の艦長を務めさせて戴きます、ウォーリー・ハイと申します。これからの数日間、度々ご一緒させて戴く事となりました」
 ウォーリー卿は育ちの良さそうな笑顔で一礼。フォロ城に集まった一同を出迎えたのは、意外に若い艦長だった。
 やや面長の風貌。長身で物腰の柔らかな雰囲気。二十代前半だろうか。身なりも良い。天界グッズの丸い黒ぶち眼鏡を身に付けているのも洒落ている。
「レースで優秀な成績を収めました皆様を、この艦にお招き出来る栄誉を誇らしく想います。当艦は軍船故、大したお持て成しは出来ませんが、乗船の後はゆるりとおくつろぎ下さい」
「ありがとうございます。トルク王陛下のご厚意に甘えさせて戴きます」
 セレ分国を代表して、ベルゲリオン子爵が礼を示す。
「では、皆様、ご搭乗下さい。係りの者が部屋を案内致しますので、それに従って下さい」
 かくして、いよいよ搭乗である。

「けっ! こりゃ、ご丁寧だね」
 どうにも育ちの良さそうな若造に、嫌な予感のするパトリアンナ・ケイジ(ea0353)。

●空行かば
「おおおお、空を! 拙者、空を飛んでいるのである!」
 ふわり浮かび上がった船の甲板へ駆け登ったアルフォンス・ニカイドウ(eb0746)は、いつもの深編み笠の下から、身を乗り出す様に見下ろしていた。
 たちまち総ての世界が小さく、眼前にはフォロ領の雄大な眺めが広がった。
 フォロ城を発った真紅のフロートシップは、数刻も経てば森の上へと出る。
 その頃にはようやく高度をとれる。
 眼下に広がるは、どこの勢力にも組み込まれない未開の地。森や荒地、礫の原など、人の住めぬ地域、他の種族が住まう地域。そうでなければ、あれやこれやと問題になる。問題とする者が居る。

 信号士達は非戦闘員だった。
「俺達は元々、船乗りだったんですぜ」
 赤銅色に日焼けした、無精髭の男達が、船体から少し横に張り出した形の物見台に立ち、周囲の様子を3人体制で見張っていたが、ルエラ・ファールヴァルト(eb4199)が姿を見せると、ニヤニヤしながらもまるで借りてきた猫の様に大人しかった。
「成る程、左舷側のとこちらで全部の方向を見張る訳か?」
「あっしは右前担当」
「おいらは右後ろ!」
「俺は下を見る」
 三人が各人の役割を揉み手をしながら、そわそわと説明する。
「普段、こっちは一人で良いんですがね」
「何も無い時は、交代で見張りに付きますんで」
「状況に応じて態勢を変える訳か。それで、これが信号灯か‥‥」
 ルエラは、物見台の中央に据えられた金属製の器具を指差した。
「へえ、この真ん中の皿で油を染み込ませた綿を燃やして、この遮光板で」
 そう言って、ラッパ状の金属筒の中にある小皿を見せ、その先に取り付けられたシャッターをバシャバシャと開閉させて見せる。金具のレバーを動かす度に、細い金属板が90度回転し、光源を遮るのだ。
「こうやって光の明滅の長短の組み合わせで、一文字一文字を伝えるんでさぁ」
 そう言って上下左右に向けて見せる。中の皿は錘が付いていて常に水平を保つ。そして、この炎の光を、ピカピカに磨かれたラッパ状の金属板の内側が反射して、遠くまで信号を伝えるのだ。
 地球の天界人で電信通信の経験のある者が見れば、モールス信号と酷似している事に気付くであろう。

 艦の腹部にある広大な空洞、そこは格納庫。
 十数騎はあろうゴーレムグライダー群。そしてそれを整備する数名のゴーレムニスト達の姿があった。
 油や樹脂の匂いが、船体に開けられた小窓から風が吹き込み渦巻く。
「やっぱり凄い! 凄いよ! こんなにゴーレムグライダーがある!」
 金属製のタラップをカンカンカンと高らかに踏み鳴らし、赤目のエルフ、ディーナ・ヘイワード(eb4209)の小柄な姿が転がる様に跳び出した。
 ディーナは両手を大きく広げ、くるくると回りながらこの格納庫を見回した。
 そして横に張られたロープに蹴躓いて、派手に転んで見せる。
「うわっ!? あたたたた‥‥」
「だ、大丈夫か!?」
 駆け寄るリールに、ディーナはぺロリと赤い舌を出して照れ笑い。
「あ、あははは。だいじょ〜ぶ〜♪」
 差し出された手をしっかり握り返し、よろよろと起き上がる。
「おいおい、ここでは足元に注意してくれよ! あちこち、固定用の出っ張りとかあるから、危ないからね!」
 そう言って何やら跨ぎながら近付いて来るゴーレムニストの整備士達。
「あ、あの!」
 ディーナはここぞとばかりに頼んでみる。
「ゴーレムグライダー操縦させて下さい!」

●城へ
 恐ろしく巨大な樹木の狭間に落ち込んだかの様に真紅の船体があった。
 大地に降下する事無く、巨大な精霊力で浮遊する船体から渡り板が延び、樹上都市セレの外郭に降り立った一行は、大勢のエルフ達に囲まれていた。
「やれやれ、妙な雰囲気だぜ」
「これが樹上都市であるか‥‥凄い‥‥」
 皮肉めいた笑みを浮かべるオラース・カノーヴァ(ea3486)を他所に、長髪を前に下ろしたアルフォンスが目を見開いて見渡した。
「お前誰だ? その声!?」
「いつまでも虚無僧姿と言う訳にはいくまい」
 ふふふんと鼻で笑うアルフォンス。礼服に漆黒のサーコートと決めている。
「ちょっと! 何、その髪形!」
「何!?」
 少し怒った口調で横合いからリィム・タイランツ(eb4856)の小さな身体が食って掛かった。
「も〜、王様に会うんだよ!! そんなみっともない頭で!!」
「そ、そんなにか?」
 たじろぐアルフォンスに屈むよう、くいくいっと手招きするリィムは化粧道具箱から大きな櫛を取り出した。
「早く!」
「お、おう‥‥だが、耳は隠すのだ」
「しょうがないなぁ〜。パッと見ただけですぐ判っちゃうんだから、無駄だと思うけどなぁ〜‥‥」
 そう言いながらも手早く髪をゆって行くリィム。

「凄い凄い! 流石樹上都市と呼ばれるだけあるわね!」
「ちょちょっと」
 リーン・エグザンティア(eb4501)は手近なエルシード・カペアドール(eb4395)に抱きつき、囲む様にそびえ立つ木々に瞳を輝かせていた。
「これこれ、二人とも。大勢のエルフが見てますよ。礼を失しない様にしましょう」
 苦笑しながら相変わらずのリュード・フロウ(eb4392)である。

 好奇心と好意のないまぜになった雰囲気。
 誰彼となく楽の音が、そしてエルフ達の唱和が空気を震わせる。
「おっ、何か始まったよ!」
 パトリアンナはいよいよおえらいさんの来そうな雰囲気に、鋭く警戒。
 そしてエルフの中より、進み出る数名の影。
 アレックス男爵やベルゲリオン子爵がかしこまる様子に、皆でそれに倣った。

 出迎えた饗応役のエルフに連れられ、一行は歌声の中、木々に渡された橋を渡り、次第に都市の中央へと進んで行く。
 木々と一体化した建物群。そしてそれらを幾重にも繋ぐ空中回廊。
 次第に、その建物の造りが重々しく、時代を感じさせる趣とスケールを兼ね備えて来る。
 そして館へと入り、そこで一時休憩となった。

 その数刻後、一行はセレの王城へと入城していた。
 大広間へと通され、その一歩前の部屋へ。そこでひとしきり楽の音が鳴り響いた。
「アレックス・ウッズ男爵! チーム・ブルーゲイル!」
 その呼び声に、整然と立ち並び、一行はエルフの貴族達が居並ぶ大広間へと進み出る。
 大広間の天蓋は広く高く、柔らかな光が天窓から幾条も伸びていた。
 木の柱には豪奢なタペストリーが掛けられ、セレの伝承をそこで物語っている。
 その下を、堂々とした足取りで進み行く。
「ベルゲリオン・ア・ハトゥーム子爵! チーム・フォレストラビッツ!」
 続き入室するフォレストラビッツの面々が、数歩後ろに立ち並ぶ。
 そこで、目の前の玉座に座るセレ王、コハク・セレがこの宴の主役の到着に、楽の音を止めさせた。
「皆、長旅ご苦労であった。セレの栄誉の為に力を尽くし、それを護った者達よ、皆に表を見せその栄誉ある名を知らしめよ」
「はは〜っ!」

 真っ先に名乗りを挙げたのは、日に焼け赤銅色の肌をした一人の女だった。
「ジ・アースのイギリスから来たパトリアンナ・ケイジだ! 皆、パティって呼んでくれる!」
 礼服姿のパトリアンナは相変わらずのぶっきらぼうな口調で、何か文句あるのかとばかりに居並ぶ貴族達をねめつけた。
(「うへぇ〜! 居心地悪ぃ〜!」)

「同じく! ノルマンから来た天界人、オラース・カノーヴァだぜ! セレで一番強い者と戦いてぇ! 他にも何かあったら言ってくれ! 魔物でもなんでも退治して見せるぜ!」
 オラースは普段と変わらぬ旅装束でこの場に立っていた。

「拙者アルフォンス・ニカイドウである! オラース殿と同じくノルマンより参った天界人! この様に晴やかな場は初めてである故、失礼があったら許されよ!」
 すると、ざわりと空気が揺れた。
 ひそひそと話をし、アルフォンスを見る目が心なしか冷たく感じられた。

「さーてと、格好いいところ見せないとね」
 そうつぶやき、エンヴィ・バライエント(eb4041)は高らかに名乗りを挙げた。マントを翻し、その身にまとうゴーレムマスターを誇示した。
「ブルーゲイル操者のエンヴィ・バライエントです! 今回はこのような素晴らしい宴を開いて頂いて感謝で言葉もありません! これからもブルーゲイルは青き龍の如く瞬く間に有終の美を飾るでしょう! この剣に誓って!」
 そう言って、エンヴィは腰の剣を引き抜き、その流麗な刀身をかざし、それから目の前に置いた。
 その清廉な言の葉に、ある者は眉をしかめるが、大部分のエルフは惜しみない拍手を贈った。

 続くルエラはシルクのドレスに身を包み、貴婦人然として控えていた。その面差しは憂いを帯び、その胸の内をコハク王に告げた。
「私はルエラ・ファールヴァルト。カーロン王子に忠誠を誓う者。この様な身で、セレの国の方々の歓迎を受ける事が出来るのか判りませんが、この度、この様な盛大なる宴を催して戴き、感謝致します」
 すると、コハク王は不思議そうに尋ねた。
「ルエラとやらよ。つまりカーロン・フォロはこのセレに仇為す者である、というのかな?」
「おお、何と恐ろしい‥‥」
「フォロのカーロン王子がセレに‥‥」
 ざわざわとエルフの諸侯達に、ルエラは慌ててそれを否定した。
「そ、その様な事は決して!」
「ならば、何を気に病む必要がある。ゆるりと宴を楽しむが良い」
 コハク王はそう言って微笑んでくれたが、小さな波紋がセレの貴族の間に残った。ルエラは、静かな湖面に無用な一石を投じてしまったのだ。
「はは! 有難きお言葉! それと共に、今回ベーメ領安寧の為、陛下への拝謁を賜る事が出来なかったフラガ・ラック卿より、セレの皆様に宜しくとの事で御座います!」
「ベーメ領‥‥」
「フォロのベーメで何かあったというのは本当の様ですね‥‥」
 エルフの諸侯がざわめく中、ベーメ領での反乱についてセレ王にルエラは己の感じた事実を余す事無く話す事となった。これはトルクがセレへ引き渡す筈のウッドゴーレムを実戦で使用し、中古品を納品した事を説明する形となった。真相はどうであれ。

 ざわめく空気に苦笑いを浮かべつつ、可憐なイブニングドレスに身を包んだディーナは、元気に王様へと挨拶をした。
「今回はお招き戴きありがとう御座います! ディーナ・ヘイワードと申します! 次は、ぼ‥‥私も優勝してみたいですね。セレ分国のためにもがんばります!」
「ほお、これは元気な‥‥」
 思わず笑顔がほころぶコハク王。周囲の諸侯も相槌をうつ。
「ディーナ卿よ。次回の走り、期待しているぞ」
「はい! お任せ下さい!」
「うむ!」
 すると、コハク王の傍らに控えていたエルフの若い貴婦人が何事かを耳うちし、王も何事かを告げた。そして、その貴婦人はまっすぐにディーナを見、微笑んだ。
「セレ分国公爵ヒトミ・ルーイです。ディーナ卿、貴方の様に若きエルフの乙女がチームに参加し、活躍してくれる事を心から嬉しく想います」
「へ〜‥‥」
 一瞬、ぽか〜んと相手の顔をまじまじと見てしまうディーナ。
(「この娘が公爵様なんだ〜‥‥どう見ても私よりちょっと若いくらいだよね〜‥‥」)
「アレックス男爵も良く私の期待に応えてくれています。これからも頼みますよ」
「ははっ! 有難きお言葉! このアレックス、この者共々に閣下のご期待に添います様、努力致す所存で御座います!」
 つい先程のきな臭い空気を吹き消すかの様に、暖かな拍手がこの場を包んでゆく。
 ディーナはふとヒトミ公爵と目線を合わせてしまい、にこやかに微笑んだ。

「リュード・フロウめにて御座います」
 そつの無い言葉でしめ、エルシードへと。すると豪奢なシルクのマントを舞わせ、うっすらと挑発的な笑みを浮かべた。
「エルシード・カペアドールにて御座います! 今後もセレの栄光と名誉の御為に、尽力する事を誓います!」
 静かに頷くコハク王。そこでエルシードは一つの賭けに出た。
「陛下! お願いが御座います!」
「何かね?」
 発言を許され、エルシードは諸侯の見守る中、ウッドゴーレムによる正騎士との試合を申し入れ、それは翌日の事となる。

「リーン・エグザンティアですわ! この度はこのような機会を戴き、有り難うございます」
 ホワイトドレスに身を包んだリーンは、青い瞳を輝かせヒトミ公爵を値踏みする。
(「ふ〜ん、のんけみたいね‥‥ざ〜んねん♪」)
 一目見て、その気は無い事を感じ取った。

「さてと。頑張ってみようかな」
 くすくすと笑うリィム。エンジェルフェザーでふわふわにおめかし。意気揚揚。
「リィム・タイランツです! 第3回のみの参加で申し訳ありませんが‥‥よろしくです」
 するとコハク王は面白そうに話し掛けた。
「そなたは優勝時のみの参加という訳か。第4回はどのチームに所属したのだ?」
「はい! ソードフィッシュです!」
 元気に答えると、一瞬、場の空気が凍り付いた。