ペット騒動始末記〜消えた子どもたち

■ショートシナリオ


担当:マレーア3

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや易

成功報酬:2 G 49 C

参加人数:10人

サポート参加人数:6人

冒険期間:09月20日〜09月23日

リプレイ公開日:2006年09月28日

●オープニング

「カイン総監、おっじゃましま〜す!」
 と、窓から入ってきたのは‥‥いや〜、とってもチャーミングな笑顔。空中でヒラヒラとダンスを踊るような仕草がまた愛らしくて。
 はい。シフールの女の子です。ちなみにジ・アースからやって来た天界人ではなくて、アトランティスの地元民です。
「よく来てくれましたね、リル」
「だって、カイン総監の頼みだも〜ん!」
 答えるリルの目をパチパチさせる仕草がまた可愛くて。
 で、シフールのリルがここにやって来たのは、カイン総監から自分の為に働いてくれないかと誘われて。つまりは連絡係とか、冒険者酒場での監督官とか‥‥まあ色々。
「でも連絡係はともかくとしてさ〜、酒場の監督官がわたしに勤まるかな〜?」
「大丈夫。酒場のなごやかな雰囲気をぶち壊さないためにも、リルくらいがちょうどいいのです」
「あ、それもそうか。ごっついジャイアントがラージクレイモアなんか担いで酒場の監督官やってたら、みんな引いちゃうもんね〜!」
「それでは早速ですが、酒場で情報を仕入れてきてくれますか? 近いうちに賢人会議で奏上された献策を実現するための依頼を色々と出す予定なので、冒険者達の都合を知りたいのです」
「ケンジンカイギでソージョーされたケンサク‥‥って、難しい言葉はよく分かんないけど、でもお仕事頑張ってきまーす!」
 リルは冒険者酒場に向かい、しばらくすると戻って来た。
「カイン総監〜っ! 聞いてきました〜っ! キュウゴイン担当の冒険者のお姉さま、22日まで都合がつかないそうでーす。あと、庶民の学校担当のお婆様、『0からじゃと非常にありがたいので』って言ってました」
「0からじゃと‥‥って、意味が分かりませんね。ちゃんと聞いてきたのですか?」
「ん〜、確かにそう言ってたと思うんだけど‥‥」
「まあ、良いでしょう。お二人の都合がはっきりするまで、そちらの依頼は先延ばしにします。先に片づけねばならない事もありますし。さて、一休みしたら近場で聞き込みをしてくれますか? ペット騒動で問題になった事柄のうち、まだ未解決の『怪しい影』と『消えた子ども達』について」
「うん! 任せといて!」
 羽根のあるシフールだけに行動範囲は広いもので、翌日にはもう情報がカンイの元に届けられた。
「怪しい影がよく現れるのは、王都の城壁の中にある貧民街の中の、今にも倒れそうな廃屋がいくつも並んでいる辺りね。‥‥あ、そういえばこんな話を聞いたわ。貧民街のある家で、みんなが寝静まってる真夜中、ガサゴソと妙な物音がするんで目を覚ますと、目の前に世にも恐ろしい怪物がいたんだって。家の人は慌てて逃げ出したけど、後で家に戻ってみると、食べ物やら食器や毛布やらお財布やら、そこら辺に置いてあったものがみんな無くなってたそうよ。これって、はぐれ魔獣かカオスの魔物の仕業かな?」
「しかし食べ物はともかく、食器や毛布や財布まで奪って行く魔獣や魔物とは、あまり聞いたことがありませんね」
「で、消えた子ども達だけど、王都の南にある船着き場の町ガンゾで、小さな男の子や女の子が何人も行方不明になってるの。これもやっぱり、はぐれ魔獣かカオスの魔物の仕業かな? それとも人さらい? まさか、大きくなりすぎて冒険者が捨てた野良ペットに食べられちゃったってことは‥‥ん〜、もしかしたらあるかもしれないけど‥‥」
「ともあれ先のペット騒動の折りに、守備隊長や街の住民達と交わした約束です。依頼を出して調査を行いましょう」

 早速に、カインは次の依頼を出した。

【1】貧民街に出没するという怪しい影や怪物の正体を突き止め、人々の不安を取り除く。
【2】王都の南にある船着き場の町ガンゾで、子ども達が行方不明になった原因を突き止め、人々の不安を取り除く。

 はてさて、これら2つの事件の背後にあるものは、はぐれ魔獣か、野良ペットか、カオスの魔物か、それとも‥‥!?

●今回の参加者

 ea0439 アリオス・エルスリード(35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1565 アレクシアス・フェザント(39歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb4153 リディリア・ザハリアーシュ(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4375 エデン・アフナ・ワルヤ(34歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4410 富島 香織(27歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4604 青海 いさな(45歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 eb4844 毛利 鷹嗣(45歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb4863 メレディス・イスファハーン(24歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb5735 結城 絵理子(28歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

ユパウル・ランスロット(ea1389)/ アルフォンス・ニカイドウ(eb0746)/ ディアドラ・シュウェリーン(eb3536)/ 桜桃 真治(eb4072)/ リューズ・ザジ(eb4197)/ ティラ・アスヴォルト(eb4561

●リプレイ本文

●ルーケイ伯のガンゾ入り
 ルーケイ伯アレクシアス・フェザント(ea1565)にとっては久々のガンゾ入り。案内人を務めるのは元スラムの顔役ガーオンの部下、ガーガル・ズー。ガンゾの町に詳しい者ということで、アレクシアスに求められたガーオンが派遣したのだ。
「救護所もだいぶ小さくなりましてね。ここより居心地のいい場所に移った連中も大勢いますよ」
 王都城壁外のスラムが大火で焼け、焼け出された住人達に一時の住処を与えるべく水蛇団がガンゾに設けた救護所も、かなり規模を縮小していた。
「行方不明になった子ども達のことを知らないかな?」
 同行者のメレディス・イスファハーン(eb4863)が、救護所で保護されている者達に聞いて回るが、誰も知らないという。
「ここの連中、ガンゾの町の住人とはあまり付き合いがありませんからねぇ」
 と、ガーガルは言う。
「それじゃ、行方不明になったのは、ここの子ども達じゃないの?」
「まあ、ここの生活に嫌気がさして、勝手に出て行くヤツは珍しくもないけどな。いなくなったと噂されるのは、元からこの土地に住んでいた子ども達のようだ」
「う〜ん。船着き場の町で子どもが行方不明って聞くと、真っ先に人身売買なんかを思い浮かべてしまうんだけど‥‥。そうだとしたら、既に船で運び出されちゃってるかもしれないんだよね」
 二人の話を聞いて、アレクシアスはガーガルに問う。
「‥‥闇市では人身売買も行われていたな?」
「あ〜、それは‥‥」
 ガーガルは口ごもった。ガーガルと縁の深い河賊『水蛇団』にても、今はルーケイ伯に臣従を誓っているとはいえ、かつては人身売買稼業に手を染めもていた。いや、今だって完全に足を洗ったという保証はない。ガーガルが口ごもるところを見ると、どうやら‥‥。
「貧困の為、身を売らざるを得ない者も居よう。だが、犯罪行為によるなら話は別だ。悪意のある人為的な犯罪が背後にあるなら、全力を挙げて対処を行うべきであろう?」
「ごもっともで‥‥」
 三人で話をしていると、物々しい出で立ちのご一行がやって来た。この土地の領主とその家来達だ。何事かと思いきや、ご一行の先頭に立つ領主がアレクシアスに恭しく一礼して言う。
「ルーケイ伯殿。こんな所におられたのですか。カイン総監殿から冒険者を派遣する旨を承っておりましたが、ルーケイ伯殿自らがご足労なされるとは思い至らず、お迎えの用意も為さずにとんだ失礼を」
「いや、王領代官なれども冒険者。民が不安を感じるならば、行動を以って示さねばなるまい」
「しかしルーケイ伯殿に万が一の事があれば、この私にも咎が及びます。ささ、これより我が館に案内致しましょう」
 領主の言葉にアレクシアスは苦笑い。すっかり名を上げてしまった今では、もはや一介の冒険者として、気軽に外を出歩くことも出来そうにない。

●冒険者の熱意
「この町で子どもが行方不明になることは、そう珍しいことではない」
 と、富島香織(eb4410)の面会に応じたガンゾの町の警備隊長は言う。
「一番多いのは、水辺で遊んでいる最中に溺れてしまうことだ。そういう場合、遠くに流されたり水底に沈んだりしてしまい、死体も見つからぬことも珍しくない。また、犯罪に巻き込まれることもある。ここは船着き場の町故に、ガラの悪い連中も多く出入りするからな」
「しかし、冒険者のペットが原因だとしたら‥‥」
「まあ、そういう事もあり得るだろうな。王都であれ程の騒ぎになったのだから、その可能性も小さくはないのだろう?」
「その場合には飼い主ごと討伐します。ところで今回の行方不明事件について、警備隊の方で被害は把握されているのでしょうか?」
「子ども達の親から訴えは出されている。が、我々も忙しく、なかなか調査が進まない」
「ともあれ原因を特定することで、これ以上被害が出ないようにしたいと思います」
「いいだろう。冒険者が町で調査を行う許可は既に領主殿から出されているが、我々警備隊も出来る限り協力しよう」
 そして冒険者達による聞き込みが、町中で始まった。
 リオン・ラーディナス(ea1458)の聞き込みは、町の通りや酒場の若者達に、丁寧に声をかける事から始まる。
「今、時間を頂けますか? オレ達冒険者は、この街に子供の行方不明が発生していると聞き調査に来ました。どんな話でもいいから聞かせて下さい」
「ああ、そういえば‥‥」
 一人の若者がこれに応じ、さらに別の若者も。
「近所の子ども達が騒いでたよな。遊び友達が急にいなくなったって」
 すかさず、リオンに同行する青海いさな(eb4604)が、さらなる話を引き出すべく相手に質問。
「さて、原因は何だろうね? この土地に住むあなたはどう思う?」
「う〜ん。もしかしたら人攫いの仕業かな? この辺りではよくある話だし」
「人攫いなら許しちゃおけないし、絶対ほっとけやしないよ‥‥元母親としてはね」
 同じく、同行者のリディリア・ザハリアーシュ(eb4153)も、まめまめしく一人一人に質問を繰り返す。
「子供が行方不明になった場所、時刻、人数、子供の容姿・体格・名前、等を知らないか? 手がかりが少ないゆえ、何でも情報が欲しいのだ」
 リオンが仲間と共にとったこの行動は、冒険者が事件解決の為に動いていることを、町の住民に印象づける狙いもある。元から目立つナリのジャイアントである青海いさなと、同じく猪突猛進ともいえる熱意で調査を進めるリディリアの助けもあって、その結果はリオンが狙った通りのものになった。
「冒険者様がこれだけ熱心に動いて下さるんだ。俺達も領主様にお願いに行こう。領主様ならきっと、みんなの訴えを聞いて下さるはずだ」
 町の人々は冒険者達の熱意に動かされ、早速に町の者の有志達が領主への陳情に出向いた。
「そうか。我が領民がそれを望むのだな?」
 こうまで動きが高まっては、領主も自ら動かざるを得ない。早速に領主は布告を発し、行方知れずになった子どもを持つ親たちを査問会へと呼び出した。

●査問会
 査問会は領主館の前の広場で行われ、大勢の街人達が詰めかけた。
「息子も娘も、何の前触れもなくいきなり消えちまったんです。川で溺れた様子もなし。理由にまるで見当が付きません」
「正直言って手癖の悪い子で、家出してどこかを勝手にほっつき歩いているものと思っていましたが、行方知れずになってからもう1ヶ月。どうにも心配でございます」
「ああ、あたしの娘達はどこへ行ってしまったんでしょう? 心配で心配で、夜も眠れません」
 査問会で証言する3人の親達は、いずれもおよそ1ヶ月前に時を同じくして、その子供達が行方知れずになったという。
「ああ、そういえば‥‥家の近くで得体の知れない大きな生き物の姿を見たような‥‥」
 親の1人がそう口にすると、残る2人も次々と同調した。
「そういえば、俺もそんな生き物の影を見た」
「実は、あたしも‥‥」
 その訴えに耳を傾ける領主の右隣にはアレクシアス、左隣には町の警備隊長が座す。3人とも真剣な顔で訴えに聞き入っていたが、やがて警備隊長が領主に訊ねる。
「やはり、これは冒険者の所から逃げ出したペットの仕業でしょうか?」
 領主は頭を振って答えた。
「まだ、そうと決めつける事はできぬ」

●子ども達の声
「あら、珍しいものを連れてるね」
 聞き込みに精を出すアリオス・エルスリード(ea0439)の周りを飛び回る、ペットのエレメンタラーフェアリーを見て、物売りの女が言う。
「だけど気をつけなよ。そいつは危ない魔法も使えるって話だからね。で、ここだけの話だがね。査問会にやって来た親たちは、みんなろくでなしさ。仕事もしねぇで酒浸りの飲んだくれ野郎、博打に狂って女房に逃げられた甲斐性なし野郎、口に出すのも憚れる商売に手を出してるあばずれ女。あたしに言わせりゃ、あんな親の所に生まれた子どもは、ほんっとに可哀想だね。‥‥おっと、あたしが今喋った事は、領主様には内緒だよ」
 と、物売りの女はアリオスに告げて立ち去った。後で何人かの街人から裏を取ったが、彼女の話は本当らしかった。
「これまでの聞き込みからすると、行方不明の子ども達には次の共通点があった訳だな。いずれも働ける年齢に達したばかりで、その親に問題があり、そして1ヶ月前の同じ頃に行方知れずになっている」
「子ども達にも話を聞いてみよう」
 件の親たちの家の近所での聞き込みは、子ども達とも比較的に年齢の近いメレディスが中心になって行う。
「ねぇねぇ、今は何して遊ぶのが流行ってるの!?」
 子ども達の警戒心を解くため、そんな話題から入ってみる。
「お姉ちゃん、ここに遊びに来たのか?」
「ん〜、初めての土地だからよく分からなくって。ところで、この辺りで珍しい動物を見かけなかった?」
「狐とか、トカゲとか?」
「ううん。人を呑み込んじゃいそうな大きな動物」
「そんなの見たことないよ」
 と、子ども達は誰もが否定する。
「それじゃあ、変なおじさんに追いかけられたりしなかった?」
「変なおじさん、あそこに住んでるよ」
 と、子どもが指さしたのは、査問会に出ていたとある親の家。
「俺達が外で遊んでいると、すぐに家から出て来て、オレ達を追いかけ回して怒鳴るんだ。うるさく騒いでいると、とっ捕まえて人買いに売り飛ばすぞって」
「あの家の子とは遊んだの?」
 子ども達は頭を振った。
「あの家の子、朝から晩まで働かされていて、みんなと遊ぶ暇もなかったもんな」
 続いてリディリアが訊ねる。
「他に、最近怪しい人物など見かけなかったか? それから、不審な出来事などはなかったか?」
「怪しい人ってわけじゃないけど、子ども好きの親切なおじさんなら知ってる。1ヶ月くらい前にこの辺りにやって来て、僕達に甘いお菓子をくれたんだ」
「もっと詳しく聞かせてくれるか?」
「おじさんは可哀想な子どもを幸せにするために、可哀想な子ども達を探してるって教えてくれたんだ。だから、僕達はこの町に住む可哀想な子ども達の家を教えてあげたんだ」
 子ども達がその人物に教えた家は、あの3人の親たちの家だった。

●乱闘
 ここはガンゾの町でも、とりわけ胡散臭い店や酒場が並ぶ一画。
「怖い所に来ちゃったわね。でも、毛利さんと一緒にいるから安心だわ」
 がっしりした体つきの毛利鷹嗣(eb4844)に、ぴったりと体を寄り添わせて歩く結城絵理子(eb5735)の横を、見るからに粗っぽい男どもが通り過ぎてゆく。
「少しは僧侶である俺の立場も弁えてくれるか?」
 彼女の態度に戸惑い気味の鷹嗣だったが、やがてとある店の前で立ち止まる。
「ここで情報を集めよう」
「あの‥‥このお店って‥‥」
 娼館である。入口では化粧をした女達が客を引いている。
「あくまでも情報収集だ」
「なら、私も一緒に行く」
 二人とも冒険者であることを隠し、服装も地味。店の前の女達に小金を渡して尋ねると、女達は色々と教えてくれた。この界隈で、特に怪しい連中のたまり場になっている酒場の事などを。
 そして、鷹嗣の耳にそっと囁く。
「お連れさんにも気をつけなよ。油断していたら悪い奴らに浚われて、どこか遠い所へ売り飛ばされちまうからね」
 娼館の前を立ち去ると、二人は先ほど教えられた場末の酒場に入った。
 酒場の暗がりでは、男達が酒を呷りながら愚痴っている。
「畜生! 冒険者がうろつき回るお陰で、仕事がやりにくいったらありゃしねぇ!」
「ほとぼりの冷めるまで待て。どうせ奴らは町から出て行く」
 知らず知らずのうちに、絵理子は男達の話に聞き入っていた。その様子に男達が気付いて怒鳴る。
「そこで何聞き耳立ててやがる!?」
 さらに、男達は鷹嗣に詰め寄る。
「この辺りじゃ見かけねえ顔だな。何者だ!?」
 男の一人が鷹嗣の襟首を掴んだ。‥‥と思いきや、男は彫像のように固まり、ばたりと倒れる。咄嗟に鷹嗣が高速詠唱で放った、コアギュレイトの魔法が為せる技。
「逃げろ!」
 呆然とする男達を後目に、鷹嗣は絵理子の手を引いて店を飛び出す。通りを走る2人の後から、男達の怒声が追いかけてくる。
「てめえ! 何しやがった!?」
 しかし運良く、町で調査中の冒険者達が2人の前に姿を見せた。
「助けてぇ!」
 絵理子の叫びに冒険者達は仲間の危機を知り、加勢に駆けつけた。最初に香織が男達のリーダー格へムーンアローを放つ。次いで青海いさなが男達の中に飛び込み、めったやたらに拳を叩きつける。男の一人がナイフを取り出すや、その体を鷹嗣のコアギュレイトが硬直させる。弓を構えたアリオスに男達が向かうや、ペットのエレメンタルフェアリーは飼い主と自分の身の危険を感じて、スリープ魔法を連発。かくして男達はばたばたと倒れ、一網打尽にされた。

●事件の真相
 急転直下で事件の真相は明らかとなった。
「取り調べにより、捕らえられた一味は人買いの手先と判明し、彼らの自白を得ました。それによれば行方不明の子ども達は、金に困っていた親たちが、人買いに売り渡したのです。親たちを問い詰めたところ、彼らもそのように白状致しました。
 彼の者達は親の名にも値せぬ不埒者。しかも、自らの罪を冒険者の随伴獣になすりつけるとは、ますますもって許し難し。よって彼の者達には厳しき罰を与え、人買いの手先どもは追放刑に処します。これで、今回の騒ぎについては何とぞご容赦を」
 ルーケイ伯アレクシアスに対し、土地の領主は恐縮して報告した。
「で、売られた子ども達はどうなったのだ?」
 領主は申し訳なさそうな顔で答える。
「既に我が領地より連れ去られ、もはや行方も定かではありません」

●新たな護民官
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私は、リオン・ラーディナスと言う天界から来た冒険者です。
王への忠誠の元、民のために護民官の任に就きたく御手紙を
書いた次第です。
民衆のために行動を起こす事は勿論、発生したトラブルの解決や、
その職責の対しても理解しているつもりです。
お恥ずかしくも、私は書面において思いの全てを伝える程の、
文の才がありません。
ゆえに機会があれば、是非とも拝謁を許されたく思っております。
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 斯くの如くリオンが書き記した手紙が、護民官エデン・アフナ・ワルヤ(eb4375)の手に渡される。
「では、わたくしは近い内にこの手紙を携え、陛下の元に参りましょう。そして、信頼する適任者への交代を陛下に上申致します」
 今、多くの冒険者が民の為に動いている。それがエデンにとっては心強くもある。
「では、今日のところはこれで‥‥」
 エデンはリオンの前より立ち去った。貧民街での一件は、エデンの手助けもあって首尾良く片付いたが、仕事はまだまだ残っている。王都の情報を纏めた冒険者向けの書類の作成だ。徹夜で取り組んでいるが、仕上がるまでにはあと暫く時間がかかる。