魔獣の森〜人跡未踏の大地

■ショートシナリオ


担当:マレーア3

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:12人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月24日〜10月29日

リプレイ公開日:2006年11月02日

●オープニング

「も〜〜〜〜〜」
 と、牛が鳴く。
「いやぁ、立派な牛でこざいますなぁ」
 と、牛の背中をぱんぱん叩き、従者はにんまり。
 なにせ大河を越えてさらに南へ下った先のご領地で牛市が開かれると聞き、遠路はるばる出向いて仕入れてきた牛である。かなりの金額を払ったが、よく肥え太り、手厚く育てられたおかげか人馴れしている。
「流石は名君と名高きジーザム陛下がお治めになる、トルクの牛だけのことはありますなぁ」
 実は、牛はもう一匹いる。
「ぶふぅ! ぶふぅ!」
 こちらの牛は肋骨が見える程に痩せこけ、しかも性質猛々しい。人が近づこうとすれば、鼻息を荒げて突っかかろうとする。
「王都の牛市では、こんな牛しか手に入らなかったのか?」
「左様でございます」
 と、主人たるリボレー・ワンド子爵の問いに答える従者。
「いやはや。飼い犬は飼い主に似ると申しますが。この牛を見るにエーガン陛下のお膝元たる王都の窮状を見る思いで‥‥」
「これ、口が過ぎるぞ」
 子爵は従者をたしなめた。なにもトルクの牛がこんなのばかりで、フオロの牛もこんなのばかりという訳でもあるまいが。対照的な牛2匹の有様は、2人の統治者の為政を象徴するかのよう。
「では、後を宜しく頼むぞ」
「ははっ」
 従者が牛を連れて行く先は、ワンド子爵領のちょうど真ん中辺りで建設が始まった開拓村。既にドワーフの井戸掘り職人によって井戸が掘られ、少しずつだが家も建ち、その近辺では開墾も始まっている。しかし領内から募った入植者はまだ20人にも満たない。
「さて。次は何をどうしたものか」
 やるべき事が多すぎる。開拓村建設のための資財集め・人集め・資金のやり繰りはもとより、隣領から自領に侵入してくる盗賊への対処。さらには過日、とある冒険者の鎧騎士より提案のあった、河川用ゴーレムシップの導入に向けての根回し。誰よりも先に昼食を慌ただしく済ませると書斎に篭もり、会計係を呼びつけて財務状況を確認させ、次いでその日に届けられた様々なシフール便に目を通していると、ノックの音がした。
「まったく。最近のお前ときたら、家族とろくに話もせんで」
 とか言いながら書斎に入って来たガウン姿の老人は、もう何年も前に家督を息子に継がせて隠居の身となった、リボレーの父親のバーゼル・ワンドであった。
「セレミスがこぼしておったぞ。忙しすぎて自分の顔も見てくれないとな」
 ちなみにセレミスはリボレーの妻である。
「お父上。その事は申し訳なく思います。しかし、今は領主の立場にある我が身。領主の役目を疎かには出来ませぬ」
「まあ、それは判るが‥‥」
 言いながらバーゼルは、リボレーの脇の椅子にどっかりと腰を下ろす。
「今日は大事な話があって来た」
「話とは何でしょう?」
「儂(わし)は夢を見たのだ。今、建設中の開拓村のな。時は小雪の降る冬。森の獲物が少なくなり、餌にありつけなくなった魔獣の森の魔獣どもが開拓村に目をつけ、村の人々を襲い家畜を襲い、丸々と肥え太った牛が骨になるまでしゃぶり尽くされてしまうという、世にも恐ろしき夢じゃった」
「は? お父上はいつから予言者になられたのでありますか?」
 思わず訊ねるリボレー。ここアトランティスの世界には、夢によって未来を予知する予言者が存在する。しかし不吉な夢を見たからといって、その全てが正夢だとは限らない。
「しかし斯様な夢を見たのも、この土地の精霊が夢にお告げを託したものかも知れぬと儂は思うぞ。夢が現実のものとならぬよう、備えを為すに越したことはなかろう?」
「で、如何致します?」
「まずは魔獣の森の調査じゃ。先ずは、魔獣の森に如何なる魔獣が住むかを見定めるのじゃ」
「しかし私は忙しい身で‥‥」
「なれば、魔獣の森の調査は儂が取り仕切ろう」
「は? お父上がでありますか?」
 リボレー、思わず父親の目をまじまじと見つめる。
「なあに、これも老人の楽しみじゃ。魔獣の森の探検、わくわくするではないか。危険な魔獣のおかげで迂闊に踏み込めなかった魔獣の森には、何が転がっているか分からんぞ。もしかすると謎の遺跡の一つや二つ、見付かるかも知れんな」
 それが老人の答。

 そんなわけで早速、冒険者ギルドから魔獣の森の調査依頼が出された。依頼人はバーゼル・ワンド。王都から魔獣の森までは遠いが、幸いなことにトルクの管理下にある移動用フロートシップの使用許可が下りた。調査隊を乗せたフロートシップは基本的に大河に沿ったルートを進み、大河の岸辺に冒険者を下ろして魔獣の森の奥へと向かわせる。
 今回の調査期間は5日間。うち最初と最後の日はフロートシップによる移動や川岸でのキャンプ設営に費やされるので、残り3日のうちに川岸のキャンプから徒歩で往復可能な範囲を調査することになる。
 なお万が一、冒険者が魔獣の森で遭難して戻って来れなくなった場合には、フロートシップが救援に向かう。その場合、救助された冒険者はそれ相応の負担金を支払うことになる。

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1819 シン・ウィンドフェザー(40歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea5243 バルディッシュ・ドゴール(37歳・♂・ファイター・ジャイアント・イギリス王国)
 ea5929 スニア・ロランド(35歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb3336 フェリシア・フェルモイ(27歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb3653 ケミカ・アクティオ(35歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb4326 レイ・リアンドラ(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4333 エリーシャ・メロウ(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4395 エルシード・カペアドール(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4604 青海 いさな(45歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

アレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)/ エリザ・ブランケンハイム(eb4428

●リプレイ本文

●魔獣の森へ
「みんな!頑張ってくんのよ〜!」
 仲間の声援に送り出され、王都を発ったフロートシップは大河に沿って西に進む。
 複数名乗船している操縦者の鎧騎士に、ついついゴーレムについて訊ねてしまうのは、スニア・ロランド(ea5929)の性か。
「ゴーレムがバーストシューティングで射られたら、ゴーレムはダメージを受けるのか、鎧にのみダメージがいくのか、鎧の隙間を狙わない限りダメージを受けないのか、ご存じではないでしょうか。‥‥他言はしませんので」
「教科書通りに考えれば‥‥」
 と、鎧騎士は前置きして答える。
「ゴーレムは可動部分である基礎媒体──バガンの場合なら魔法を付与した石の石像ですが──これにゴーレム用の鎧を装備させたものです。鎧を装備した人体との対比で考えれば、バーストシューティングで破壊されるのは鎧のみ。人体に相当する基礎媒体は傷つかないはずです。もっとも、私自身はそのような戦闘を経験した事が無いので、確実にそうなるとは言い切れませんが」
 そんな話をするうちに、船はワンド子爵領に到着。ここで依頼主のバーゼル・ワンド卿が乗り込んで来た。
「リボレー閣下にはルーケイ伯の祝賀会にてお目を掛けて頂きましたが、その父君たる方にお目に掛かれようとは思いませんでした」
 挨拶に際してエリーシャ・メロウ(eb4333)がそう自己紹介すると、
「ルーケイ伯の祝賀会とな?」
 大柄なバーゼルはエリーシャの顔を覗き込み、大げさに感心してみせた。
「おお! もしやそなた、あのラーベと渡り合ったという麗しき淑女か!?」
 暫し二人で思い出話に花を咲かせていると、エルシード・カペアドール(eb4395)がやって来て一礼した。
「おや? そなたは‥‥」
「エルシード・カペアドールと申します」
「おお! 大河へのゴーレムシップ導入を熱心に勧めているという才女であったな!」
 バーゼルも息子から色々と話は聞いているようだ。

●キャンプ
 バーゼルを乗せた船は、さらに大河沿いに西へ。北の岸部を見れば、魔獣の森の巨木が大河ぎりぎりまで迫っている。西の分国から王都を目指す船影もあるが、森の魔獣を避けるため、船は川岸から大きく距離を置いて進んでいる。
「見よ! あそこじゃ!」
 甲板のバーゼルが指さすそこには、丈の高い草が生い茂る中州が広がっていた。この辺りで唯一、フロートシップを着陸させられる場所だ。
「この中州は竜の寝床と呼ばれておってな」
 と、中州に着陸したフロートシップの上で、バーゼルが説明する。大河を行き来する船の者達により、中州の存在は昔から知られていた。
 フロートシップから小舟が下ろされ、冒険者一行は中州より岸辺に移動。足跡を印したその地にベースキャンプを設置した。
「この辺りでは、どんな獣が出て来るかわからん。‥‥噂では別の所にでかい竜みたいなのが出たらしい‥‥恐獣とかいう奴かもしれん‥‥」
 もっとも、魔獣の森に恐獣が住むという話は聞いていない。ともあれ、オルステッド・ブライオン(ea2449)は仲間と共にキャンプの回りに鳴子を仕掛け、底に杭を植えた落とし穴を作って、魔獣の接近に備える。
「そー言やこの森、うちのチビ助が取っ捕まえた野良ペットを捨てた場所でもあるんだよな?」
 呟いて森の奥を見つめるシン・ウィンドフェザー(ea1819)。冒険者街の野良ペット掃除の時の話だが、魔獣の森は広い。森に放されたペットがまだ生きていたとしても、彼等と遭遇する可能性は少なく思われた。
「では、いざ行かん! 魔獣の森へ!」
 キャンプ設営も終わり、皆の先頭に立って森へ向かおうとしたバーゼルを、フェリシア・フェルモイ(eb3336)が引き止めた。
「バーゼル様はキャンプにお残り頂きたく。指揮される方は、後方にどっしり構えていて下さってこそ皆安心して冒険出来るのです」
「皆が安心しても儂(わし)が退屈するではないか! 依頼人を満足させるのが冒険者の役目であろう!?」
 言い張るバーゼルにアシュレー・ウォルサム(ea0244)が一言。
「依頼人の安全を守るのも冒険者の役目だから」
 暫し押し問答は続いたが、最後にバーゼルは折れた。
「仕方ない。儂は指揮官として、ここで待つとしよう。良き報告を期待しておるぞ」
 明日になれば冒険者達は3班に分かれ、魔獣の森の探検を開始する。キャンプを起点として、各班はそれぞれ東、北、南に向かう。犬を同行させるのは、魔獣への警戒と道に迷った時に備えて。
 出合った魔獣はやり過ごす。戦闘は極力避ける。それが冒険者達の取り決めた探検の基本方針だ。
「にゅふふー、今回はしばわんこ率が高うて満足じゃ♪」
 と、ヴェガ・キュアノス(ea7463)は仲間の連れて来た忍犬をもふもふ。

●探検第1日目
 探検の第1日。この日、フェリシアの所属する第1班は、待機してキャンプの警備。
「わたくしは怪物の事を研究しております為、今回の依頼に参加させていただきました」
 昼食の準備がてら、フェリシアが話を向けると、バーゼルも乗ってきた。
「怪物か。実は、儂も怪物に興味があってな」
 どぼん! キャンプの南側に広がる大河の水面で、何かが跳ねた。
「ん? 魚か?」
「‥‥のようですわ」
「暇つぶしに魚釣りでもするか。こういう事もあろうかと、釣り竿も持ってきたしな」
 バーゼルとフェリシア、釣りをしようと川岸へ歩み寄ると、草の陰で長いものがくねくね動いている。
「気をつけて! そこに蛇が!」
 いや、よく見ると蛇ではなかった。
「これ‥‥ミミズですね」
 全長50cmくらいになる大ミミズ。
「熱帯には10mにもなる大ミミズがいるそうですが、その小型種かもしれません。魔獣の森ミミズとでも名付けましょうか?」
 その日の昼、キャンプでは何事もなく過ぎ、そして夕飯時。
「どうか、元子爵様の武勇伝などお聞かせ願えませんか?」
 バーゼルを退屈させぬようケミカ・アクティオ(eb3653)がせがむと、向こうも乗ってきた。
「うむ。では儂がまだ若い頃、お家の財産を狙う悪徳商人や盗賊どもと渡り合った時の話をしてやろう」
 食事がてら、話に花を咲かせるうちに、森の西に向かっていた第2班が戻って来た。
「気をつけろ。森の中には毒のある動物がいるぞ」
「森の中の沼地を調べてみたら、そこは毒蛙と毒蛇の巣。もっと注意してかかるべきだったわ」
 毒蛇に噛まれた跡を見せながら、バルディッシュ・ドゴール(ea5243)とスニアが報告した。
 やがて、東に向かった第3班も戻って来た。
「蜂に刺されたよ〜! こんなでっかいのに!」
 とか言いながら、アシュレーが指でぶら下げて示したのは、雀程にも大きなスズメバチの死骸。
「こりゃでかい!」
 と、皆が驚いて口にする中で、フェリシアは冷静にコメント。
「でも、ホルレー男爵のご領地にも出没するラージビーは、これより一回り大きい体長30cmですけど」
「30cmもある蜂なんかに刺されたくないよ〜!」
 と、アシュレー。他の仲間達もあちこち刺されており、解毒の魔法が使えるヴェガが同行していたから良かったものの、彼女がいなければどうなっていたことか。

●北方の探検
 探検2日目。第1班はキャンプ地の北側の探検に乗り出した。
「流石は人跡未踏の森。もの凄い草だ」
 胸元まで伸びる下草をかき分け、邪魔な蔓はワンハンドハルバートで切って捨てながら、シンは一行の先頭に立って進む。
 暫く歩くと、森の中の開けた場所に出た。
「ここは魔獣の縄張りでしょうか?」
 地面に落ちる獣毛や羽毛、木の幹に残された爪痕が無いかと探すエリーシャ。しかし彼女より先に、森に馴れたシンがそれを見つける。微かに漂うのは獣の尿の異臭。
「そのようだ。ここは避けて通ろう」
 かなり歩いた頃。生い茂る下草が急になくなった。森の中に踏みならされた道が延々と続いている。地面を調べると、獣の毛と思しき物が。
「この道は獣道、魔獣の通り道だな」
 道はくねくねと蛇行しつつ、北へ延びているようだ。
「ちょっと空から偵察してくるね」
 シフールのケミカが、木漏れ日の輝く森の天井に向かって飛ぶ。
「大丈夫、上には何もいないわよね」
 確認したはずだったが‥‥その羽根がねばねばした糸に引っかかった。
「あっ!」
 張り巡らされた蜘蛛の糸。木の陰から大きな蜘蛛がぬうっと姿を現す。
「うわーっ! 来るなーっ!」
「どうした、ケミカ!?」
 叫び声を聞き、下の仲間が呼ばわると、ちょっと間を置いて上から氷の塊が落下。
 どぉん!
 地面に落ちたそれを見れば、ケミカのアイスコフィンの魔法で氷漬けになった大蜘蛛。
「まあ、大きな蜘蛛」
 と、フェリシアはしげしげと監察。体長1mほどだが、シフールにとっては十分に脅威だ。
「うわーっ! また出たーっ!」
 ケミカの叫びと共に、再び氷の塊が落ちてきた。今度は大鷲の氷漬け。
「こんな調子で大丈夫かしら?」
 で、ケミカの方は次々と襲い来るモンスターを排除し、ようやく生い茂る森の木々の上空に出た。
「あれ? 何か見えるよ」
 広がる森のかなり遠くの方に塔のような物体が見える。飛んで行くだけでも何時間もかかりそうな場所だ。その物体の回りを何かが群れ飛んでいる。一見、鳥のようにも見えるが、この遠さから姿を確認できる程に大きな鳥がいるのだろうか?
 不意に、ケミカの頭上を巨大な影が過ぎる。見上げると、翼を広げた巨大な銀色のドララゴン。ドラゴンは塔のような物体に向かって、一直線に飛んで行く。
「もしかして、あれはドラゴンの住処なの?」

●東方の探検
 木、木、木。見える物は生い茂る木々の広がりばかり。グリフォンに乗って上空から偵察しても、木の下に何があるかは分からない。
「地道に地面を歩きますか」
 アシュレーは空からの偵察を止め、地上に戻った。
 第3班は前日に到達した地点から探検を再開する。
 魔獣の森では下草の中に潜む生き物に注意。木の陰に隠れている生き物に注意。
 ドンドン、ドンドン。響く音はレイ・リアンドラ(eb4326)の叩く太鼓の音。魔獣の警戒心を刺激して、寄せ付けないように叩き続けている。しかし‥‥。
「しっ!」
 前方に大熊が現れた。こちらに近づいて来る。魔獣の森の獣は人間を恐れない。
「大声を出したり急いで逃げたりせずに、落ち着いてゆっくりと下がって」
 アシュレーはこういう事に馴れている。皆を後退させ、ペットのグリフォンを連れて大熊を待ち受ける。
 グリフォンの姿を見て、流石に大熊もたじろいだ。そのままくるりと向きを変え、生い茂る木々の向こうに姿を消した。
「さて、この辺りにも1本」
 大熊の姿が見えなくなると、手近な大木の高い位置にも矢を放つ。木に突き刺さった矢は恰好の目印になり、帰りに道に迷わずに済む。
 それからかなり歩き、一行は踏み固められた道に出くわした。
「これはオーガの通り道ではありませんか?」
 動物の頭蓋骨を木の棒に突き刺した道標がある。それをレイが目ざとく見つけて言った。
「太鼓を叩いて歩いてみましょう。オーガが音に気付いて現れるかもしれません」
 しかし太鼓を叩いて道を歩いて行くと、現れたのはグリフォン。しかも森のグリフォンは、アシュレーの連れたペットのグリフォンを見て、仲間と思ったのか近寄って来る。
「うわ、まずいよ‥‥」
 一行は近くの藪の中に飛び込み、グリフォンをやり過ごす。
 それから再び道を進み始めたが、オーガには出合うことなく、引き返す時を迎えた。

●西方の探検
 探検3日目。西に向かった第2班は、森の中の道を進んでいた。藪の中を進むうちに出くわした道だ。
「獣道にしては広すぎるようだが?」
 呟きつつバルディッシュは周囲を丹念に監察。派手な色のキノコが生えているのを見つける。
「色々調べたが、この森には珍しい植物も多いな」
 キノコを調べようとして、ふと足下に落ちている物体に気付いた。拾ってみると大きな鱗。
「どうしたの?」
 連れて来た忍犬2匹が妙にそわそわしているのに、青海いさな(eb4604)は気付いた。何かの気配を感じている様子だ。耳を澄ますと、聞き慣れない生き物の唸り声らしき物が聞こえる。
「ここから先は慎重に進んだ方がいいね。さて、鬼が出るか蛇が出るか‥‥楽しみだねぇ」
 さらに道を進むと、森の中の開けた場所に出た。そこは石造りの遺跡が広がる場所。しかもそこには先住者がいた。鬼でもなく蛇でもなく。
「あれは、竜じゃないか!」
 ドラゴンの下級種、岩のような緑褐色の肌を持つ6本足のフォレストドラゴンが、遺跡のそこかしこに寝そべっている。
「出直した方が良さそうですね」
 スニアが言う。他の者も同じ思いだ。遺跡の場所を地図に印し、一行は来た道を引き返す。

●第3班〜キャンプ
 第3班はキャンプで待機中。エルシードは大河を見ながら、自分の計画についてあれこれ考える。
「セレから王都まで、森を切り開き陸路を舗装するのは障害が多すぎる‥‥。やはり大河を高速で巡航できる船が必要ね」
 森に目をやれば、森林内でのゴーレム使用のことを考える。
「おそらくバガンよりもウッドゴーレムの方が小さくて小回りも利くし、森林内での移動や戦闘には便利だと思うんだけどね」
 一昨日、昨日と、森の中を探検した経験からそう実感した。
「さて、暇のあるうちに手紙でも‥‥」
 ワンド子爵に向けて認める手紙は、ショアのゴーレムニストとの面談で聞き出した河川用ゴーレムシップに関する費用と注意点。河川用となると座礁の危険性が高まるらしいので、舷側を低くし喫水を浅くする等の工夫が肝要と書いておく。

●黒いドラゴン
 探検3日目の夕方。キャンプでは皆で夕食を囲み、ちょっとした打ち上げ気分。
「そんな面白い物を見たのなら、どうしてもっと早く報告せんのじゃ?」
 と、一応は文句をつけるバーゼルを、フェリシアがいなす。
「だって、途中で冒険譚を話してしまいますと『明日は一緒に行く!』と言われかねませんもの」
「はは、そりゃそうじゃ」
 笑いながらも、バーゼルは携帯電話に記録された、さまざまな魔獣の画像に見入っている。
「流石は天界の利器。便利なものじゃ」
 と、夕闇がますます暗さを増す空から、巨大な影が迫る。
「あれは‥‥!」
 夜の闇のように黒いドラゴンだ。しかも低空飛行で旋回を続け、地上の冒険者達を監察しているかのような。
 やがてドラゴンは姿を消し、キャンプは夜の闇に包まれた。

●探検はまだまだ続く
 魔獣の森を発つ日に現れたオーガ達。狩り場を荒らされたと怒る彼等に冒険者は詫びを入れ、酒やお菓子を贈るとオーガ達も大いに満足。そして一行を乗せた船は森を離れるが、バーゼル卿はまだまだやる気。
「さあ、次なる冒険の準備にかかるのじゃ!」
 魔獣の森ではまだまだ冒険が待っている。