小さなサバト〜捕縛という名の制裁を

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:12人

サポート参加人数:2人

冒険期間:11月28日〜12月03日

リプレイ公開日:2006年11月30日

●オープニング

「二人とも、集まってくれたみたいですね」
「私達にお話って、何ですか?」
 サクラと統夜はその日、冒険者ギルドに呼び出されていた。
 もう二人は立派な冒険者の仲間だ。此処で依頼を受けるのが適任だとミハイルが任せたのだ。
 勿論、二人に依頼を渡すギルド員はミハイルが選定した者だ。
「今回は大変な仕事になりますのでお二人には協力して頂くことになります」
「そんなに大変な仕事なのか?」
「はい。私達では手に負えないぐらいの大仕事です。この王都から少しいった開拓の為の村があるのですが‥‥どうやら其処が魔物の巣窟になっているようなのです」
 ギルド員の言葉にサクラは首を傾げる。
 開拓の村といえば女が少ない、男が多い場所である。
 そんなところで魔物の巣窟になればすぐに分かることだし、その程度のことではギルドに依頼は持ち込まれないだろう。
「一体どういうことなんだ? 説明ぐらいはしてくれるのだろう?」

 王都の付近。街として土地を開拓する事を目的とした村が存在した。
 其処は男が多く、女は少ない。ゴブリンやコボルト等は男達の手によって何とかしてきていたのだ。
 しかし、其処に魔物が住み着いてしまった。
 その魔物の名は‥‥。

「リリス‥‥っていうの?」
「はい。吸血鬼の一種なんです。人の血を吸い‥‥魔物を増やす‥‥残酷な魔物です。それが二匹、紛れ込んでいます」
「そんなのが村に居座っているという事は‥‥」
「あぁ、確実に村の人間の半分は魔物と化していることだろうな」
 ゴウトがそう答えると統夜はやはりと言った様子で頷く。
 人の姿をとり人を騙しているリリス。
 その魔物が一度潜り込めば村人を魔物にするなんて容易い事だ。
「生き残った人間は僅か6人です。一晩につき一人‥‥リリスは人を襲います。その六人全員が魔物にされないうちにリリス二匹を見つけて捕縛してください」
「ろ、六人!? と、言うことは、三日‥‥ですか!?」
「そうです。リリスは正体がバレれば今まで血を吸ってきた人間を駆使して抹殺を企むことでしょう。ですが躊躇わないでください。人の姿をしていても、その人達は魔物です」

「統夜くん‥‥私達でやれるの、かな?」
「やるしかないことだ。冒険者達もついてきてくれるだろ」
「統夜くんは、怖くないの?」
「誰だって怖いだろ、こんな事? だが、やれる人間がやらないとな‥‥」

 村全てが魔物と化す前に解決する事。
 冒険者達は全力を持って二人をサポートする事。
 それが今回の依頼となったのである。

●今回の参加者

 ea1819 シン・ウィンドフェザー(40歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3102 アッシュ・クライン(33歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea3651 シルバー・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea7511 マルト・ミシェ(62歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea7891 イコン・シュターライゼン(26歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea9244 ピノ・ノワール(31歳・♂・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb1384 マレス・イースディン(25歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 eb3536 ディアドラ・シュウェリーン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

リオン・ラーディナス(ea1458)/ 飛 天龍(eb0010

●リプレイ本文

●久しぶりの出会いはタックルで
「統夜さん、会いたかったわ!」
「ぐはぁっ!?」
 今回冒険を共にする仲間と合流する為酒場に出てきた統夜とサクラを出迎えたのはディアドラ・シュウェリーン(eb3536)の統夜に対するタックルだった。
 見事に直撃をくらう統夜を、サクラが凄く心配そうに見ているが、それをカイ・ミスト(ea1911)がのんどりと見守る。
「大丈夫です。これぐらいは愛情表現だと思いますから」
「愛情‥‥ですか?」
「そうです」
 サクラの問いにハッキリと答えるカイ。その言葉を信用して、サクラも統夜を放っておく事にしたのである。
「このリリスという魔物、使役するには危険です。それでも望みますか? 場合によっては滅する事もあり得るという事を覚えておいて下さい」
 ピノ・ノワール(ea9244)がサクラにそう問いかける。それほどこのリリスという魔物は手強いのである。
 サクラは統夜と顔を見合わせると、統夜は小さく頷きディアドラの方を見た。
「‥‥私達はサマナーとキャプターなんです。私達にしか出来ない事で助かる命がたくさんあるのなら、私はやります」
「例えそれがどんな魔物であれど、使えるのならば使っていく。手段を選んでいる場合ではないのかもしれない。あの爺がどこまで企んでるかはわからないがな」
「やっぱりあの爺さん、絡んでるのかよ‥‥」
 統夜の言葉にシン・ウィンドフェザー(ea1819)がぼそりとぼやく。
 その言葉を聞いて、サクラも少し苦笑を浮かべるのだった。
「今回も機密事項がいっぱいなんですけど、守ってくれれば嬉しく思うの。だから、よろしくお願いします」
「これからは同じ冒険者として肩を並べるんだ、よろしく頼むぜ?」
 シンの言葉にサクラは嬉しそうに頷く。彼は彼女とはあまり接点はない。しかし、彼女は人なつこいので誰にでも笑顔を振りまくのである。
 そして、統夜の方は暫しディアドラに身を任せて頬ずりされたりしていたのだが、小さくため息をついて彼女の肩を持ち引き離す。
「ディアドラ、すべてが終わったら話がある。手間はとらせない、時間をあけておいてくれ」
「ん、わかったわ。統夜さんの為だもの!」
「‥‥いいのか悪いのか。ま‥今は旅路を急ぐか。すべての人間が魔物となってしまう前に手を打たないと‥‥」
 こうして、冒険者達はそれぞれの思いを胸に秘め、目的地へと向かうのであった。

●村の臭いは‥‥サクラ編
 村に辿り着いた冒険者達は、二手に班を分けることにした。
 一方はサクラを主軸とし、もう片方は統夜を主軸とした班だった。

「村の中では注意を怠らないように。また、単独行動は控えてくださいね」
「は、はい。がんばりますっ!」
 カイが道返の石を設置している間にアッシュ・クライン(ea3102)が村の者に話を通す。
 魔物を退治しに来た事を隠し、長旅で疲れている為暫し置かせて貰えないだろうかという事で話をつけれてたらしい。
 もし、これが魔物退治の為と言ったのならば確実に警戒はされていた事だろう。そう、ここにはリリスという魔物がいるのだから‥‥。
「まだ緊張しておるのかの?」
「は、はい。今までキャプターとしてがんばってきたけれど‥‥でもやっぱり冒険者として冒険するのはこれが初めてだから‥‥」
 ヴェガ・キュアノス(ea7463)のさりげない問いに、サクラは苦笑ながらも答えた。
 彼女は元々は普通の女の子なのである。それが召還されてこうなってしまっているのだから緊張は仕方のない事だろう。
「そういえば今回は見送りにしか来てなかったがふられーの人とは知り合いなのかの?」
 マルト・ミシェ(ea7511)がさりげなく切り出すと、サクラは少し頬を赤らめて小さく頷く。
「でも、出発前にあの人の顔が見れたから‥‥私、がんばれる気がします」
「彼の事が気にいっているようぢゃの?」
「そ、そうかもしれません。だって、私がキャプターになった時‥‥必死になって助けてくれた方ですから」
「ほほぅ?」
「勿論、私のナイトをしてくださった方も大好きなのです」
 はにゃーんとした顔を見せるサクラ。それを見て少し安堵したかまように笑うマルトとヴェガ。
 どうやら心配はいらなかったようだと‥‥。

「‥‥見つけました。ある程度ですが」
 ピノがそういうと、カイ達の中に緊張が走った。
 ピノが言うには、今現在自分たちがいる村の入り口付近。この付近はすべて反応がないというのだ。
 周りには人が沢山いる。しかし、その人間達からもデディクトライスフォースの反応がないという。
「‥‥本当に魔物にされてしまっているようですね」
「話に聞いた通りじゃのう‥‥しかもなにやら監視されておるようにも見えるのじゃが」
「仕方ないですよ。私達は旅人なんです、怪しまれても‥‥」
「とにかく、サクラは俺から離れないようにな」
 アッシュがそういうと、サクラは小さく頷いてアーティファクトを胸に抱きしめるのだった。

●生を求めて死は動く‥‥統夜編
 二手に分かれた冒険者達。サクラの班が警戒されている原因はこちらにあったのかもしれない。
 統夜が入っている班は、その村の食事処にて情報を集めようとしていたのである。
「なあなあおっちゃんおっちゃんよ。最近この近辺で変な事件とか起こってないか?」
 片手に皿、片手にフォーク。とんでもなく行儀の悪い食べ方でそう話を聞き出そうとするマレス・イースディン(eb1384)。
 それを隣で見て、統夜はゴウトと一人と一匹で頭を抱えるのである。
「俺らこの村の先で怪事件が起こってるって聞いてこれから行くところなんだけどよ。モノはついで。一宿一飯の恩義だ。騎士に魔法使いに、知らないかもしれないけど神父さんだっているんだ。吸血鬼だろうとカオスの魔物だろうと怖いものナシだぜ!」
「‥‥さぁ、ここは開拓村だからねぇ。そういうのは聞いた事ねぇな」
「‥‥何か、まずくないか?」
「何かって何がだよ?」
「こういうのは大っぴらに聞いちゃいけないような気がするわよ?」
 見かねたディアドラがマレスにこっそりと耳打ちする。それもそうだ。この村のどこかにリリスがいるのだ。
 しかも別働隊の人間が調べてくれているのにもかかわらず大っぴらに目的をバラしてしまってはいけない。
「さっきからも村人の反応が少し変だぜ‥‥」
 シンも異様な空気を感じたのか、ちぃっと舌打ちをする。これで別働隊の動きがバレてなければいいのだが‥‥。
「大丈夫だ。雪ダルマとカボチャに捜査を頼んである。あいつらなら魔物だから疑われはしないだろう」
「‥‥結構変わった魔物だけどな」
「ドジしなけりゃいいのよね‥‥あの子達」
 そんな事をいっていると二匹が戻ってきたが少し顔色が悪い。

「統夜、大変だホ‥‥」
「どうした、二人とも?」
「さっき、こっちに向かってクワとか持って走ってくる人間を見たホ‥‥」
 カボチャがそういうと、統夜はハッとして周りを見る。すると、周囲にいた人間は一気に立ち上がり凶器を手にしてにじり寄ってきている。
 これはもう自分達の存在がバレたと考えても過言ではないだろう。
「流石にこれだけの人数は無茶ですよ!?」
 それでも体は勝手に動く。イコン・シュターライゼン(ea7891)は咄嗟に統夜の前に立ちオーラシールドを展開する。
「問題はありません、生存者の方はオルステッドさんに任せて来ました」
 突然加勢に現れたシルバー・ストーム(ea3651)がそう言うと、イコンは少し安堵の息をついた。
 しかし、これでは手厳しいのは確かである。このまま食事処を戦闘の場にするのも‥‥。
「ねぇ、ゴウトちゃん。一つ知りたい事があるの」
「なんだ?」
「リリスを捕縛すれば、この人達みんな元に戻るの?」
 ディアドラが覚悟を決めながらも訪ねる。その問いに、ゴウトは無言で首を横に振る。
「死を持つ者は生を求めて彷徨う。‥‥水でもそうだ。一度零れれば元にはもう戻せない。但し、汲み直せば元に戻る。人にとっての汲み直すは生の輪廻を待つ事と同じだ」
「助からないのね?」
「残念ながら」
「なら、やるっきゃねぇだろうな。こっちがバレてるんだったらこっちが派手に暴れればいいだけだ! サクラの方は感づかせやしねぇぜ!」
 そういうと、シンは自分の腰からスラリと得物を抜く。それに同意するかのようにその背を守るようにストームがたつ。
 こうして、一部は掃討戦となってしまったのであった‥‥。

●本命はどちらに?
 その騒ぎを聞きつけて、アトス・ラフェール(ea2179)とオルステッド・ブライオン(ea2449)が生存者を連れて村の入り口へと向かっていた。
 勿論、その騒ぎはサクラ達の耳にも入っていた。
「どうやらあちらの方が遭遇してしまいましたか」
「大丈夫かな‥‥統夜くん‥‥」
「大丈夫じゃよ。何せあちらには血気がお盛んな若者が多いからのぅ」
「それって私は‥‥」
「俺は‥‥」
 アッシュとカイが苦笑して見つめていてもヴェガにとってはお構いなし。
 勿論、悪気なんてどこにもないのではあるが‥‥。
「あ、あの。旅の方々‥‥ですか?}
 一同がのんどりしていると、そんな声が聞こえてきた。
 振り返ればそこにいたのは双子の女の子。姿も声も瓜二つなのである。
「ああ、そうだが。俺達に何か?」
「父さんがいなくなってしまったの‥‥」
「私達、お父さん探しているの‥‥」
『お願い、一緒に探してください‥‥』
 双子の声が重なる。接していたアッシュの体が少しふらつくとカイは咄嗟に異変を感知してアッシュを支える。
 そして、代わりにヴェガが対応に出るのである。
「その父上とやらはどんな御人なのじゃ?」
「とても優しくて」
「とても強くて」
『とっても美味しいの‥‥』
 双子の声が重なったと同時に、黒い霧がその場に吹き荒れた。
 双子はどうやらリリスだったようだ。片方の騒ぎがバレたせいでもう片方であるサクラ達の班の存在もバレた様子だった。
「はわぁ!? こっちに来たの!? 統夜くん達は!?」
「きっとシンさんが何とかしてくれている事でしょう。まずは此方をどうにかしないといけませんね」
 そういいながらキューピットボウを構えるカイ。やっと何かの暗示から逃げられたのかアッシュもゆっくりと立ち上がる。
「貴方達が来てからおかしいと思ったの!」
「この村が変に賑やかになるしね!」
「じゃが、これ以上は死者を冒涜させるわけにもいかぬ!」
 ヴェガが咄嗟にコアギュレイトを一匹のリリスに向けて放つ。リリスも少し余裕を見て対抗する。
 そして、それと同時に目で合図をして周りにいた死者の群れを一気に冒険者へと向かわせる。
 これはこの班だけでは厳しい物があるだろう‥‥。

●捕縛は罪の楔として
「サクラ、大丈夫か!?」
「は、はいぃ! 何とか‥‥きゃっ! なってます!」
 アーティファクトでマリオネットを召還しながら応戦するサクラ。
 しかし、彼女にも疲労の表情が出ていた。このまま持久戦ではつらい物がある。
 そんな時だった。

「少人数を大人数でだなんて酷い子達ね!」
 その声と同時に戦闘馬が一匹。二匹のリリスの横をすり抜けていく。
 巧みにすり抜けるとサクラ達の前に戦闘馬を置き、その人物は地に立つのである。
「へっ‥‥あれぐらいの襲撃で諦めると思うなよ、カオスが!」
「シンさん!」
「待たせたわね、もう大丈夫よ!」
 周りの魔物をディアドラがアイスブリザードで攻撃していく。
「く‥‥! この人数では不利!」
「逃げるしか‥‥!」
「逃がすわけにはいかんのじゃ!」
「コケてしまえいっ!」
 ヴェガのコアギュレイトが一匹をとらえ、マルトがもう一匹に向けてグラビティーキャノンを。
「ここまで、だな‥‥?」
 最後にはオルステッドの鞭で絡め取られ、行動不能になってしまう。
「サクラ、統夜! 今だ!」
 アッシュの声に二人は頷く。そしてアーティファクトであるカードど管を構える。
 その間の護衛はシンとカイで行われていた。リリスを捕縛したとはいえど雑魚が残っているのだから。
「真理なす神の、行く行くを願いて! 我が掌中にその命委ねん!」
「‥‥」
「がんばって、統夜さん! あなたの背は支えてあげるわ!」
「‥‥そう、だな。でないと割に合わないな」
「え?」
「我が名において命ずる‥‥全ての魔、全ての生命‥‥全て我に捧げ仕えよ‥‥汝は我がつるぎ。我が盾なり‥‥吸引ッ!」
 二人の声が響くとリリスはそれぞれの元へと捕縛されていく。
 一匹はカードに。一匹は管に‥‥。こうして残る生存者は冒険者達と他6名しか残らなかった‥‥。

「村人はもう助からないって事だったんですか‥‥」
「生をなくしたものは二度と生に触れる事は出来ん。輪廻が回るまではな」
 ゴウトの答えに、冒険者達はそれぞれ肩を落とす。せめて弔ってやりたい。そんな事で一日余裕を見て残る事にしたのである。
「‥‥人は皆生をほしがる物だ。しかしそれはないもの強請りにしか過ぎん。人はどんな事で朽ちるかわからん。だからこその人生。楽しいのではないのだろうかね」
「わかっていても‥‥魔物によって命を落とすというのは‥‥」
「それもまた、人生」
 そういうと、ゴウトはディアドラをチラリと見てから統夜の肩から離れた。
「話って何かしら?」
「お前の執念に負けたよ」
「?」
 ディアドラはわからないといった感じで首をかしげた。その唇に軽く統夜から珍しく唇が落とされた。
「背、預けた」
 そう言い残すと統夜も弔いの手伝いへと向かうのである。


 死は生を喰らい、生は意味を探す。
 冒険者達の働きにより、この開拓村は封鎖されずに済んだという‥‥。