冒険者の地フォルセ〜医療への取り組み

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月23日〜12月28日

リプレイ公開日:2006年12月31日

●オープニング

 冒険者の街、ウィンターフォルセ。
 数々の戦乱の中心となったかの領地も、今や静けさを取り戻し始めていた。
 そんな中、ルーシェは嬉しそうな表情で執務室に座っていた。

「これだけあれば医療器具は少ないですけれど揃えられますわね‥‥」
「失礼します、ルーシェさん」
「あら、ユアン様。どうかなさりましたか?」
「この前ご相談頂いた場所の件についてなのですが了承がとれました」
 ユアンの言葉に更に微笑むルーシェ。
 実はフォルセには小さな診療所があるのだが、そこでは少し小さすぎたのだ。
 毎日怪我人、病人が殺到していたのである。
「でも、いいんですか? 大切なお屋敷ですのに‥‥」
「構いませんよ。少しでもルーシェさんのお役に立てるのでしたら、是非」
「‥‥感謝いたします。これで病気の方々も救われます」
「医療に熱心なのはいいことだと思いますから。‥‥ボクも健康であればお手伝いできたのに」
 小声で呟かれた後半の言葉は、ルーシェの耳には届いていない。

「それでは、開院当日のお手伝いさんを募らなくてはいけませんわね」
「ルーシェさん自身がお出向きに?」
「はい。これでも少しぐらいは治癒の知識がありますから‥‥」

 こうして始まる、フォルセの新たな第一歩‥‥。

●今回の参加者

 ea5876 ギルス・シャハウ(29歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 eb3770 麻津名 ゆかり(27歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb4412 華岡 紅子(31歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4434 殺陣 静(19歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb6105 ゾーラク・ピトゥーフ(39歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb7689 リュドミラ・エルフェンバイン(35歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb8483 スキャッグス・ヴィーノ(24歳・♂・ウィザード・エルフ・アトランティス)

●リプレイ本文

●久しぶりの再会
「聖夜もあるっていうのに大変ね」
 華岡紅子(eb4412)が久しぶりのフォルセの地に着き、彼女に出会った第一声である。 その言葉にルーシェも少し苦笑を浮かべながらも頷く。
「でも、私達政治の関係者にとっては聖夜なんて関係ありません。民が望む事全てをして差し上げなくてはいけませんから‥‥」
「その言葉、何処かのナンパ師にも聞かせてやりたいわ」
 悪戯っぽくそう笑うと、紅子は遠くで話をしているルキナスを見やる。
 彼はつい先ほどまでファームの方にいたのだが、此方の様子を見に来たらしい。
 しかし、すぐ帰るとの事であった。
「フォルセでは薬草園を作る事を目指すという事でしたので、設置を提案したいのですが‥‥」
 丁度いいとばかりにゾーラク・ピトゥーフ(eb6105)がルキナスに提案する。
 すると、ルキナスはバツが悪そうに頬を掻く。
「作るにしても今は時期が悪すぎる。それに薬草を一から育てるとなれば確実に必要なのは苗だ。それを手配する準備もある。すぐには出来ないぞ?」
 つけくわえて今の季節は冬。薬草を植えても育たない可能性が高いのだ。
 更に薬草がよく育つ地を選定して植える準備をする為にも時間がかかる。この依頼の間に出来るものではない、という。
「でしたら、その準備は私達が行います。それでいいですか?」
「やるっていうんなら俺はそれで構わないが、選定するまでは少し時間をくれ。でないと変な土地にやりかねないからな、慎重にいきたい」
 リュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)の訴えにルキナスはそう告げる。拒絶しているわけではない。ただ、慎重に行きたいのだ。
 この街の薬草の収穫場となる場所なので尚更である。
「出来るだけ家畜から離れさせておかないとな。そうでないと食われるぜ?」
「そういえば、フォルセには山羊や牛がいたわね」
「確かに食べられそう、ですね」
「とにもかくにも、薬草園は少しばかり保留だ。それで異論はないだろ?」
 ルキナスの言葉に反論する者はいなかった。

●治療の人手が‥‥
「これでよし、です〜」
 ギルス・シャハウ(ea5876)が診療所となっている屋敷の扉に「治療手駐在」という札を下げる。
 それは、街人が治療して貰えるかどうかすぐに判るようにする為だ。
 冒険者達がいる時だけこうするようにしようという事である。
「えっと、魔法の使用なのですがお二人にご相談したいのですが」
「あ、はい?」
 麻津名ゆかり(eb3770)がルーシェとユアンに使う魔法の一覧を見せる。
 二人は少し顔を見合わせながらも小さく頷く。
「まだ魔法に慣れていない人もいると思います」
「でも、それではいつまでたっても慣れないと思いますよ?」
「ですから、優しく使っていただければと思います」
「魔法の効果とかを街の人にも優しく教えてあげてから使用してください。それが条件ですわ」
 ルーシェがにこやかにほほえんでそう言うと、ゆかりは「約束します」と頷くのだった。
 こうして、冒険者達の尽力は始まったのである。
 治癒して貰えると聞いた街人達が自分が先だと団体で押しかけてきたのである。
「お、押さないでくださいー!」
「順番に並んでくださいですよー!」
「これじゃあ人手も足りないのもうなずけるわね。少し人手を探してくるわ」
「お願いします、紅子さんっ!」
 ゆかりの言葉に紅子とユアンは手伝いが出来るような人を集め始めるのである。

「これじゃあキリがありませんね‥‥」
「そうですねぇ‥‥幾ら並んで貰ったとはいえど‥‥」
 殺陣静(eb4434)は小さく溜息を吐きながらも並んでいる街人の名前を書き記していく。
 こうしておけば順番でもめる事がないというユアンからの提案である。
「次の人どうぞー!」
「‥‥どんなひとであれ、もう少しその土地の医療が発達していれば、
助かったかもしれない人が逝くのを見るのは、本当に心苦しい。本来は元気に駆け回っているはずの子供たちだと、特にそう思ってしまう‥‥‥‥感傷から来る、僕の勝手な考えだがな。」
「そうですわね。子供達が外を駆け回り、大人達が笑顔で働ける。それが一番素晴らしいのだと思います。でも、この街では難しい時もあるかも知れませんわ‥‥何せここは王都の要‥‥そう考えると私は‥‥」
「‥‥?」
「フォルセがフォルセでなかったらいいのに、と考えてしまいます。そうすれば、私は子供達を安全な場所へと誘導出来ましたのに」
 ルーシェの言葉に言った本人であるスキャッグス・ヴィーノ(eb8483)も驚きの表情を見せた。
 何時も弱音を吐かない彼女の初めての弱音だったからである。
「すみません、私が言うべき言葉ではございませんでしたわね。忘れてくださいまし‥‥」
(「‥‥彼女もまた、苦労しているって事か‥‥」)
 政治に関わっているまともな大人はルキナスとルーシェなのである。
 他のユアンと領主はまだ子供といっていい。
 子供らしさを奪ってしまった事に何か罪悪感を感じているようなのだった。

●これからの医療
「はい、次の人どうぞー?」
「ゆかりさん、今の人で終わりです」
「そうですか‥‥少し、疲れましたね」
「お疲れ様ですー。僕も結構疲れちゃいました。このまま製本が出来ればいいんですけどー」
 ギルスが苦笑しながらぱたぱたと飛んでいると、ルキナスがお茶を人数分持って現れたのである。
「よぅ、結構大入りだったんだって? 今ルーシェがお菓子用意してるからな?」
「ルキナスさん、これからこの治療院はどうなるんですか?」
「それは問題ないわ。私とユアンくんである程度手伝ってくれる人を見つけたから」
「紅子のおかげで働き口を見つけたって人もいてな。大喜びだったそうだぜ」
 ルキナスがそう言うと、紅子も嬉しそうに笑むのである。
「これからについてはまずは様子を見てからだろうな。必要であればそっちに時間を割くし‥‥」
「そうですかー。みんな健康になってくれるといいですねー」
「そうだな、健康になってくれないとこの街の宝がなくなるからな」
「宝?」
「そう! 女性の笑顔!」
「男性は?」
「どうでもいい!」
 その一言にゆかりの鉄拳がルキナスの頭に落とされるのだった。
「相変わらずだな、ゆかりの鉄拳‥‥」
「ルキナスさんがまともな事言わないからじゃないの?」
「相変わらずなんだな、ナイス害‥‥」
「そういえば聖夜っていうのがあるんだそうだな。なんだったら此処で軽く騒いでいかないか?」
「え? でも製本が‥‥」
「街人がお礼をしたいって言ってな。外でパーティーの用意してるみたいだぜ?」
 ルキナスがそう言うと、ゆかりはルキナスの腕をぎゅっと掴む。
「それじゃ、お言葉に甘えましょうか」
「そうですね。ゆかりさんもする事があるみたいですし」
「‥‥仕方ないですねー。皆さんと騒いできますー」
「とりあえず、ゆかり。ちょーっと二人でのんびりしようか?」
 ルキナスのその言葉にゆかりは顔を赤らめて沈黙してしまったという‥‥。

「皆様、このたびはありがとうございました。皆様のおかげで何とか乗り切る事が出来ました」
「いいのよ、ルーシェさん。私達で手伝える事があれば何でも言ってね?」
「これが今回の治癒の手順です。まとめておきました」
「ありがとうございます、静さん」
 ルーシェはその書類を胸に抱くと、少し元気のない笑みを浮かべる。
 それをどうしても気になるスキャッグスだったのである‥‥。