僕らの英雄伝 〜序章〜

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 32 C

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:02月02日〜02月07日

リプレイ公開日:2007年02月11日

●オープニング

「ヒーローショーなんて出来ないもんかねぇ」
「「「「は?」」」」
 千歳山春日ののほほんとした一言に、スタッフ達はぽかんと返事を返す。
 全く意味が分かっていないのは現地スタッフであったり春日とは違う国出身の者であったりする訳だが。今回に関しては流石に同郷の者も困惑したらしい。
「ほら、『冒険者』ってさ、勘違いされがちでしょ。この間久し振りにギルド行ってみたんだけど、なんか『おいおい』って仕事まで冒険者様に廻ってきてるのよ。だから‥‥何つーの? 『カッコイイ冒険者』像を創りたい訳ですよ、ぶっちゃけ。子供達に愛され、尊敬される冒険者様に! 私はなりたいのです!」
 ‥‥なんだか理想が突っ走っているような気がしないでもない。いや、多分、きっと突っ走っているのだ。一体君に何があった千歳山春日くん。
「確かに冒険者ってのは流れ者ですけどね。他所の国から来た人達に変な偏見とか持たないように、という意味合いでは悪くないかもしれませんね」
 『ヒーローショー=子供向けの英雄譚芝居』と他のスタッフ達に解説を入れた青年が、春日の台詞に更にフォローを入れる。
「こっちの世界じゃ色んな種族もいる訳だしさ。面白いと思うんだけど。ラジオの方で朗読劇とかして世界観膨らましたりね」
「悪くないですけど‥‥僕らだけじゃ出来ない事も多いですよ」
「それじゃギルドにお願いしに行こうじゃないか」
 ‥‥一番「おいおい」な仕事のような気がする、と思ったのは俺だけだろうか。スタッフ達が一斉に心の中で思った事は言うまでも無い。
「衣装デザインとかも考えないとね。鎧は流石にアクション出来ないし」
「敵も設定組まないと。モンスター出す訳にはいきませんからね」
「そうそう、名前も考えないと。人数とか色とか」
 楽しげに話を続ける約二名を除いて。

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0324 ティアイエル・エルトファーム(20歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ノルマン王国)
 ea2766 物見 兵輔(38歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3625 利賀桐 真琴(30歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea8147 白 銀麗(53歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb1158 ルディ・リトル(15歳・♂・バード・シフール・イギリス王国)
 eb4077 伊藤 登志樹(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4344 天野 夏樹(26歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb9926 大谷 由利佳(27歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

シン・ウィンドフェザー(ea1819)/ 麻津名 ゆかり(eb3770)/ 孫 美星(eb3771

●リプレイ本文

●みなぎるやる気に期待はするが‥‥
 樹海の奥、深き深き地の底にある巨大な洞窟には、邪悪なるカオスニアンの国グランドカオスがある。
 1000年前天界人の勇者によって封じられた強大な力を持つカオス、カオスロードはグランドカオス最深部で岩と化していた。
 だが1000年の歳月により封印は弱まり、目覚めたカオスロードはカオスニアン達に、封印を完全に解く為に人間の負の想念を集めるよう命じる。

 封印の弱まりを知った精霊達は、新たな勇者を召還する。
 それが正義の戦士達‥‥冒険者戦隊ガイロードである!

「‥‥と言うストーリーですね」
 ステージ裏の控え室。様子を見にきた千歳山春日(ez1083)に、大まかなシナリオ概要を伝えているのは魔女の衣装を着込んだ白銀麗(ea8147)である。
「ふむふむ、悪くないね。でも敵の親玉が『カオスロード』で主役が『ガイロード』? ちょっと紛らわしいかな」
「『ガイナイツ』なんていうのもいいかもしれませんね」
 まあ、後で直せばいい。春日はそう言って微笑む。
 実際、今回の頼みは「ネタ出しをしてくれ」という物だったのだ。まさかこの短期間のうちにスポンサーに見せるためのプレゼン舞台まで作ってしまうとは夢にも思わなかった春日。おかげで今回の舞台の内容はほとんど知らずに今日のこの日がきてしまったのである。
「旦那、後で一言でいいんで店の宣伝して貰えませんかね? 『衣装は冒険者街ロゾム通り8番、仕立て屋【めいど・IN・真琴☆】よりご提供致しました』ってな感じで」
 今回衣装係を買って出た利賀桐真琴(ea3625)が春日に話し掛けてきた。舞台にこそ立たぬものの、衣装担当として友人達と共に動き回った彼女。確かにあれだけの報酬では材料費分にもなりはしなかっただろうが、これで自身の店に客が増えるのであれば何ら問題はない。
「んー、舞台では難しいかな。ラジオの方でならいくらでも入れられるんだけど」
 ショーの看板に書き込んだ所で読める者が少なければ話にならない。またショーの終わりに口頭で伝えたところで、舞台の余韻を損ねてしまう事になりかねない。パンフレットも無理だしねぇ、と春日は笑ったが、真琴や銀麗には『ぱんふれっと』という言葉の意味すら良く分からなかったようだ。
「今回はガイロードが二人か。で、彼がカオスロード? 大分派手だね」
 「彼」とは伊藤登志樹(eb4077)。全身を沿うようにぴったりと作られた衣装の上に黄金に輝く胸甲だけでも充分怪しいというのに、顔にはびしりと決められたサングラス。いかにも『カオス』の名に相応しい姿である。
 が。
「いンや、アレは『イエロー』でやす」
「‥‥は?」
 赤を貴重にひらひらと、動きの映える衣装の天野夏樹(eb4344)。中の衣装も青主体だが、羽織った風の外套がクールな印象をかもし出すアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
 個人の希望を聞けば確かに統一感は薄くなるが、それでもこの二人の衣装はまだ道理が通る。しかし、『イエロー』と称しながら何故に金なのか。
「私は大尉ですよ艦長!」
 仲間との談笑。登志樹の放った遠い世界で聞いた事のある台詞に一瞬眩暈を覚える春日。
「‥‥『本番』までに何とかするか」
 敢えて突っ込むまい。そういった気持ちをこめて視線を逸らした先には物見兵輔(ea2766)とレン・ウィンドフェザー(ea4509)、ルディ・リトル(eb1158)とティアイエル・エルトファーム(ea0324)。銀麗の説明によるとレンが人質で、他の三人はグランドカオスのメンバーのようだ。兵輔の希望か、立ち回りの確認をしている模様。ゆっくりとした動きでレンとティアイエルが兵輔に攻撃、それを受けたり避けたりの兵輔。ルディは客観的にその動きがどうなっているのかを確認しているらしい。
 ‥‥先日見せてもらった時にはなかった、レンの得物の『本気狩☆破裏殲』の文字が気にかかると言えば気にかかるが。
「お客様が席につきました。上演準備お願いします」
 大谷由利佳(eb9926)の声が、全員の耳に届く。
 観劇に来たスポンサーは、異様な姿であっ。全員これから戦に赴く如く完全武装。城攻めの時に使う巨大なタワーシールドまで持参しての観劇だ。
「期待されているのか?」
 鎧装備はいわば正装。だが、冒険者達に敬意を表しているにしてはいささか過剰かも知れない。
 ともあれ春日も慌てて客席へ。
 自分達が一から作った舞台の幕が、今上がる。

●まだまだ僕らは若かった
 竈にかけられた大きな鍋からはぐつぐつと何かが煮える音がして、銀麗扮するカオスニアンの魔女ババ・ジョマがいやらしくニンマリと笑う。
 もう何百年も生きているようなシワだらけの顔や手、長い鼻は鉤状に曲がりカオスニアンの特徴である黒い肌に小柄に体躯。すべてミミクリーでの変装である。
 うっとりと柄杓で鍋の中の液体をすくうと、それは見るからに猛毒を思わせる黒だった。
「ひっひっひ、この秘薬をカオスニアン戦闘員に飲ませれば、以前の十倍のカオスパワーが引き出せるようになる。代わりに、残りの寿命は十分の一になっちまうけどね」
「でもー、それだけの量じゃー、まだまだカオスロード様の完全復活には足りないよー?」
 蝶の羽に黒いしっぽを生やしたルディ扮する黒のシフールが、ババ・ジョマの頭の上をふわふわと飛び回りながら鍋の中を覗き込む。
 動きやすそうな半ズボンに、黒の丈の短いフード付きローブは活発な彼によく似合っている。
 ババ・ジョマが羽虫でも追い払うように手をひらひらさせながら言い聞かせるように言った。
「はやるでないよ。人間どもを簡単に殺してしまえば、負の想念を集めることもできん。じっくり、じっくりと苦しめないとね」
「なるほどねー」
 黒のシフールはそれで納得したようだったが、ティアイエル扮する元森の魔女は不満そうに鼻を鳴らした。
「めんどくさいねぇ。あたしにはあたしのやり方があるわ」
 そう言い捨てると元森の魔女は黒地に緑のアクセントの付いた動きやすそうな服の裾を翻して、部屋から出て行ってしまった。
 好奇心旺盛な黒のシフールがすぐに彼女を追いかける。
「え、なになに、面白いこと? おいらも混ぜてー!」

 黒のシフールも部屋を出て行ったところで場面転換となった。
 重いわねぇ、とブツブツ言いながら鍋を舞台から運び去るババ・ジョマ。続いてスタッフ達が次の場面へと舞台を手早く整えていく。

 深い森の中だった。
 深いと言っても、昼間に入るぶんには危険はない。村の人々も木の実などを拾いに来るような森だ。
 その森の中を、レン扮する村の住人と思われる女の子が籠を抱えて歩いていた。足取りは軽く、鼻歌なんか歌っている。
 しかし、少女のご機嫌は突然壊されることとなる。
 茂みから大きな音を立てて少女の行く手を遮るように元森の魔女が現れたからだ。
 元森の魔女は、両手を大きく広げ少女を捕まえようとジワリジワリと近寄っていく。
「可愛い子みーつけた! この子もカオスの道に引き込んじゃえ★」
 元森の魔女はとても楽しそうな笑顔だが、その目だけは蛇のように酷薄だった。
 村の少女は震えて後ずさる。
 逃げなくては、と思うのに鉛でも飲み込んだかのように体が言う事をきかない。助けを求める声さえ出せない。焦りだけが増していった。
 絶望に塗りつぶされた少女の目から、ポロリと涙がこぼれた。
 そしてやっと助けを求める声を出すことができた。
「きゃー。だれかたすけてなのー」

 ガクリ、と舞台の袖で肩を落とす春日。
 何故あれだけ迫真の演技ができながらセリフは棒読みなのか!
 今すぐ舞台に乱入してレンを問い詰めたい衝動にかられたが、春日はグッとこらえた。

 素人が聞いても棒読みな少女の叫びにもかかわらず、正義の味方は颯爽と現れた。
「待て!」
 と、登場した三人は声をそろえて少女と元森の魔女の間に割り込んだ。
 そして、それぞれが脳みそを絞って考え出した登場ポーズをとり、高らかに名乗りを上げる。
「レッド!」
「ブルー!」
「イエロー!」
 バババッとカッコよく決まったポーズは、もしかしたら次の舞台では変わっているかもしれない。
 が、今はそんなことはどうでもいい。
「冒険者戦隊ガイロード、参上!」
 乱れることなくガイロードの声が重なった。
「こんな幼子をかどわかそうなど、許さない!」
 夏樹扮するガイロードレッドが、勇ましく元森の魔女に指を突きつける。
 その隙に登志樹扮するイエローが少女を避難させた。
 アシュレー扮するブルーが、悔しがる元森の魔女を嘲笑う。
 獲物を横取りされた元森の魔女は、目を吊り上げて叫んだ。
「いまいましい! ええい、やっておしまい!」
「イーッ!」
 人工的な応答と共に黒装束姿のカオスニアン戦闘員が木から飛び降りてきた。演じているのは兵輔である。
 戦闘とは無縁の安全地帯で黒のシフールがキャラキャラと笑った。
「あはは、やっちゃえー★」
「相手は一人だ! いくぞレッド、ブルー!」
「何であんたが仕切るんだ?」
「そうだよ、それ私のセリフだよ」
「仮にも正義の味方のリーダーが、相手は一人だ、なんて叫んでいいのか?」
「ブルー、お前は仲間の結束を乱したいのか?」
「真っ先に乱したのはイエローだろう?」
 ガイロードはいきなり仲間割れをはじめた。
 こんなの台本にあったっけ、と束の間呆けるカオスニアン戦闘員。
 が、すぐに我に返り、まだもめているガイロードに攻撃を仕掛けた。
「イーッ!」
 どこか間抜けた掛け声のわりに、カオスニアン戦闘員の体捌きは本物だった。とても一戦闘員の戦闘力ではない。言ってしまえば幹部クラスだ。
 かろうじてかわしたレッドが文句を飛ばす。
「ム。仲間割れ中に攻撃してくるとは卑怯なヤツ!」
「こんな時に仲間割れしているほうが悪いのさ!」
 元森の魔女が嘲るように笑う。
「ほらほら、どんどんいくよ!」
「なんとかしないと、全滅だねぇ」
 驚いたことに、元森の魔女の声がガイロードの周囲のあちこちから聞こえてきた。
 ハッと見回すが、本体は見えない。どこかに身を潜めているのだろうか。
 ガイロードが声に気をとられると、カオスニアン戦闘員の容赦ない攻撃がくる。
 人数では勝っているのに、三人の心がバラバラなせいでまるで戦いにならなかった。
 どんどん追い詰められていくガイロード。
 このまま一矢報いることもできずに負けてしまうのか!?
 絶体絶命のピンチを迎えたガイロード。しかし、神は正義の味方を見捨てなかった。
 ふわふわのゴスロリ服を身にまとい、マスカレードで顔を隠した少女が舞台袖から躍り出た。
「えんごしますなのー♪」
 マジカル・レンと可愛らしく名乗った少女が振り回すは『本気狩☆破裏殲』。まじかる☆はりせん、と読む。誰に説明されなくともトラブルを引き起こしそうなネーミングである。
 ハリセンである以上、これでカオスニアン戦闘員をぶちのめすのかと思いきや、マジカル・レンはハリセンを一振りし、魔法を放った。
 ローリンググラビティ。
 一瞬だけまったく逆の重力状態にする魔法である。効果範囲内にあるものは九メートル上空に舞い上げられ、落下する。レンのレベルでの効果範囲は直径十五メートル。
 本能で危険を察して逃れたスタッフもいれば、一歩遅れて巻き込まれた哀れなスタッフもいた。
 その哀れなスタッフとは、カオスニアン戦闘員、ブルー、イエロー。
 明らかに正義の味方に犠牲が偏っていた。やはり神はガイロードを見捨てていたのかもしれない。
 くるくると糸の切れた凧のように上空へ舞い上げられた三人は、なす術もなく落下してくる。カオスニアン戦闘員とイエローは舞台の床板を突き破ってその下の地面と熱いキスを交わし、ブルーは自らがより本物に見えるようにとストーン魔法をかけた張りぼての岩に激突した。
 砕けた岩が観劇しているスポンサーへと弾丸のように飛んでいく。
 ガンッ、と音がして岩は鉄製の盾に防がれた。細かい破片が飛んだ他のスポンサー達もそれぞれ護衛の者が持つ盾に守られている。
 それを見た瞬間、避難していた春日は納得した。
 観劇に来たスポンサー達が、何故全員上から下までガッチリと金属製鎧を着込んでいたのか。何故護衛の者も鎧に頑丈な鉄製のタワーシールドを持参していたのか。
 まるで前線にでも行くようないでたちをとても不思議に思っていたのだが、こういうわけだったのだ。彼らは仮令何があってもいいようにと用心に用心を重ねていたのだ。
 冒険者としてはなかなか複雑な心境になるだろう。
 舞台はほぼ瓦礫と化していた。恐獣が通った後のような舞台の上でレッドは頭の中を真っ白にしながらも頑張る。
「‥‥え、えーと、これで形成逆転だよ!」
 どもりながらも剣を抜き、姿を現した元森の魔女に突きつける。
 レッドの両脇を瀕死のブルーとイエローがそれぞれ弓とハンマーを構えて固めた。
 ‥‥形成逆転、ということにした。
 元森の魔女が黒のシフールに目配せすると、黒のシフールは首にぶらさげていたオカリナを吹いた。
 とたんにガイロードが苦痛のうめきをもらし、膝を着く。
 呪曲である。
 その隙に元森の魔女と黒のシフールは「おぼえてろー!」と捨て台詞を残して去っていった。
 一件落着、とスポンサー達に向けて見得を切るガイロード。
 先ほど助けられた村の少女がトテトテと走り出てきてガイロードを讃えた。
「おにーさん、おねーさん、たすけてくれてありがとーなの!」

「‥‥熱意だけは伝わった」
 足元の岩を気にしつつ、スポンサーの一人が言った。
 他のスポンサーも次々に感想を述べだす。
「結局これは何を伝えたいんだ?」
「あの凶悪な魔法を使う娘が一番の敵ではないのか?」
「無学の者に聞かせるなら、もう少し筋を単純にしたほうがいいだろう」
「一回ごとに舞台を壊すのか。経費が掛かりすぎないか? なによりこれでは見物するほうも命懸けだ」
「いや、実際には風信ラジオの音声劇だ。聞いてる者が怪我をする恐れは無い」
「聞いておきたいことがある‥‥これは治療費も我々が出すのか? 下手をすると死ぬかもしれんぞ」
「いや、彼らは魔法でどんな大怪我でもたちどころに簡単に治すことができるらしい」
「そうか‥‥。子供の頃から天界人は世界を救う救世主であると聞いてきたが、あんな日常を平然と送っているとしたら、確かに我らの武勇など子供だましだ」
「何にしろ民達には刺激が強すぎるだろう」
「心身共にな」
「これはあまりにも急がせ過ぎた我らが悪かったのかも知れない。天界人にとっては当たり前の日常かも知れないが、我らの常識に照らすと生き死にを見せ物にしている。これでは後世、我らは大暴君と描かれて仕舞う。少し間を置いて内容を煮詰めて貰おうじゃないか」

 そんなスポンサー達の会話を聞きながら、由利佳は乾いた笑いをこぼすしかなかった。
「あ、あはは、あははは」
「‥‥ここまで『知らない』とは思わなかった‥‥いや、いいんだ。全部俺が悪かった」
 慰めようとした由利佳の言葉を遮り、春日はガックリとうなだれる。
 そんな彼の嘆きも知らず、レンの費用で教会で即刻治療して貰い、すっかり怪我も治った冒険者達はスッキリした顔で笑顔を交し合っていた。
「たのしかったのー!」
 今は残骸と化した舞台を背後に、レンは無邪気な笑みを漏らす。

 天界人恐るべし。