親玉探して‥‥
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月03日〜10月08日
リプレイ公開日:2007年10月07日
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●オープニング
頑固で偏屈。なのに腕っ節がよしだがバケモノで有名な騎士バラン・サーガ。
そんなバランにも二人のお付がついていた。
しかし、最近バランの近くでその者達の姿を見ない‥‥。
その理由は‥‥‥。
「おやかたさまあぁぁぁぁぁ! 何処にいらっしゃいますかあぁぁぁぁ!」
「‥‥月斗の旦那‥‥こりゃ探し方が悪いッスよ‥‥」
「探し方が悪い? どういう事だ、玄斗?」
「いやね‥‥今まで月斗の旦那がしてきたことって‥‥」
行き着く先々でバランの行方を聞き回る。これはいい事だ。
しかし、行き着く先々で民から依頼を受け、猪突猛進に突っ込み、依頼を果たす。
これのエンドレス。行った場所の『後の有様』なんて関係ない状態にある‥‥。
「こんなんばっかやってたら、親分は何時までたっても見つかりませんて‥‥」
「ならばどうしろと言うのだ、玄斗!? 民を助けるのは騎士の勤めであると御屋形様が‥‥」
「忍となんとかは使いようって言うじゃないっすか?」
玄斗の言葉に月斗も黙り込んでしまう。
忍の情報能力の凄さは古来より証明されている。
それにバラン・サーガが通った後は何も残さない。そう言われるぐらい派手にやらかす人なので情報なんて簡単に集まるだろう。
「だから後は俺に任せてくださいよ、旦那。ね?」
「む、むぅ‥‥玄斗がそう言うのであれば信じるしかあるまい!」
(「最近旦那が何かに感化されてるような気がして‥‥」)
玄斗は一つ嫌な予感を抱いていた。
もし本当に感化されているならば大人しく待つはずが‥‥。
「‥‥ないと信じるか」
そう言いながら玄斗は情報収集に向かうのであった‥‥。
街の中。
玄斗は懸命に情報を集めた。
そして一人の街人から重要な情報を得るのだった。
「つい最近近くの街で見かけた人がいるらしいね? なんでも噂ではトレジャーハンターに騙されているとか‥‥」
「トレジャーハンター‥‥ねぇ。それじゃあ話術が巧み過ぎて親方にゃあキツイな‥‥」「こんな情報、この街じゃ誰でも知ってるよ。でもさっきのにーちゃんも知らないみたいだったなぁ‥‥」
「さっきのにーちゃん?」
「あぁ、紅いハチマキ巻いた暑っ苦しいにーちゃんでな。知り合いとこの噂の話をしていたら胸倉を捕まれて‥‥」
悪い予感が的中したようだ
「それで!? そいつ、何処にいったんだ!?」
「なんか『謀ったなあぁぁぁぁっ!』とか喚いてどっかに走っていったけど‥‥でもあの先は確か道が複雑で迷子になりやすい森が‥‥」
「何で俺の周りにはそういうのしかいねぇの!?」
玄斗は自分の不運にげんなりしながらも、血気盛ん状態の月斗を探すハメになったのである‥‥。
●リプレイ本文
●合流地点
「似たもの師弟じゃのう。‥‥いわゆる類友かの?」
ヴェガ・キュアノス(ea7463)が玄斗と合流した途端にそう言葉を漏らす。元々素質はあったのだろうが、行き着くところまでイッちゃってるのは師匠の薫陶故と思いたい。
「それは言わないお約束ですよー姐さん‥‥」
「しかし‥‥民の苦難を救う為ではなく己の欲望を満たす為にバラン卿が利用されたとあっては、月斗殿が憤激なさるは当然かと思いますが‥‥」
「だーからって一人で突っ込む事ないでしょーが。結果迷いの森に入って迷子になってんだから」
「とりあえず、阿呆が闇雲に森で迷子になっているかも知れない、と‥‥」
「阿呆って言わないで‥‥あれでも俺の上司なんだから‥‥」
エリーシャ・メロウ(eb4333)と物見昴(eb7871)の言葉に玄斗は頭痛と脱力と眩暈を覚える。いや、言われても仕方の無い事なのだが、それが自分の上司の事となるとやっぱり複雑な心境なのである‥‥。
「しかしあれだな‥‥今度から首輪つけて動いたほうがいいと思うんだけど」
「お前さん、あれが首輪つけて大人しくしてるタイプだと思えるわけ?」
「いや、会った事はまだないからよくわからんが」
「会えば分かる。首輪なんて生ぬるいって事が‥‥」
ある意味危険な発言だ。
「それで、月斗とかいう奴の人相はどんなんだ?」
「月斗の旦那? 目印といえば紅いハチマキに紅い鎧だから‥‥とにかく紅いのを探せばすぐ見つかるかと‥‥」
「いえ、月斗殿の事です。迷子になれば道を探すのではなく切り開くかと存じます」
「エリーシャ‥‥お前さん、よく旦那の事分かってるな‥‥」
「同門ですから」
そんな素っ気無い答えに、玄斗は苦笑を浮かべてがくりと肩を落とす。
‥‥ある意味疲れ果てた真面目者といった所ではある。しかし変わり者には違いなし。「とにかく、すぐ捜索に入るのじゃ! 皆の者も頑張ろうなのじゃ!」
ヴェガのその言葉と同時に迷子の月斗捜索が始まったのである。
●森とドラゴンとわんこと
「おい、マジでそれ使うのか?」
「あぁ、こいつにゃ人間の匂いも覚えさせてるからな」
「‥‥旦那食うなよ?」
「それは俺次第だ」
オラース・カノーヴァ(ea3486)の一言で心配になってくる玄斗。
それを宥めるかのようにヴェガがぽんぽんと肩を叩く。
「玄斗、月斗の所持品とかあるかの?」
「旦那が何時もつけてた鉢巻の替えならここにあるけど」
「使わせて貰ってよいかの?」
ヴェガがそう言うと、玄斗は捜索に役立つならばと差し出す。
ハチマキを受け取ると、ヴェガは自分のペットのわんこ、茜丸に匂いを覚えさせる。
「これでよいのじゃ。きっと辿っていってくれるはずなのじゃ♪」
「‥‥俺、やっぱあれが心配なんですけど」
指差した先にはオラースのペントドラゴン。
「大丈夫だろ。筋肉質なのはきっと好みじゃないだろーし」
「え、そういう問題?」
「多分そういう問題なのじゃ」
「‥‥俺の上司って、どんな目で見られてんだろ‥‥」
勿論、バカとして見られてますぜ、旦那‥‥。
二人の探索は極めて簡単なもの。オラースが迷わないように塗料を木に塗り進む。
そしてその間に茜丸を連れたヴェガが種族の特徴である視力と土地感を持ってして捜索に入る。
玄斗は他の人が心配だからと様子を見に行ったようである。
「うーむ‥‥おらんのぅ。もしかしてもう少し奥に行っておるのかの?」
「さぁてなぁ‥‥しっかし、薄気味悪い所だぜ。ここなら何が出てもおかしくはねぇだろうなぁ‥‥」
オラースが冗談っぽく言うとヴェガは慌てて周りを見渡す。
カラスの不気味な鳴き声が木霊するその森には光はうっすらとしか入らない。
「こ、怖い事を言ってはいかんのじゃ!」
‥‥ある意味ケモノが迷い込んでるこの森なのだから‥‥。
●地道な一歩
「それじゃあ俺は森の中を飛んで探してみるよ」
飛天龍(eb0010)はシフールである為、身軽であり更に飛べる。行動範囲も広くなる為捜索にはもってこいだろう。
「目で探してる人もいるし私は耳で探してみようと思う」
「物音を聞く‥‥ってわけか。動物の足音とか落ち葉の音も混じるけどわるかぁないね」「最も、動き回る人であるならすぐ聞こえそうだけど‥‥」
「空腹でぶっ倒れてるって事も視野に入れてやって!」
「‥‥‥‥考えない、考えない」
昴のその呟きに玄斗は確信した。
嗚呼、この人達の目には月斗は第二のバランとして映っているのだと‥‥。
今更ですよね
捜索活動は程なく開始された。
木々のざわめき等が聞こえるものの、昴が音を聞き、天龍がそれを確認する。
そういった地道な作業が行われ始めていた。
勿論、迷子にならないようにしながら。
「‥‥しかし、本当に人らしき人が見えないな」
「そうだなー。紅いっていってもそれだけじゃあ‥‥」
「でもそれがトレードマークというのなら仕方ないかも」
「もうちょっと熊みたいだとかあればいいのになー」
‥‥それ、冗談にもなりませんぜ‥‥
「熊みたいのだったら釣れば出てきそうだけどな」
「だとしたら、あっちの奴等に任せるしかないと思うな、俺‥‥」
そう言って彼が見た方角にはなにやら準備している人影があるのだった。
●上手に焼けました
「よし、一つ俺に提案がある」
そう言って焚き火の準備をし始めたルクス・ウィンディード(ea0393)。
勿論、傍にはちゃんと水桶がございます。
「焚き火なんか起こしてどうするんだ?」
「月斗殿を誘き寄せれるんですか、ルクス殿?」
ルクスが心配になってエリーシャとジュリアン・ティフラー(ec3817)も同行していた。最も心配している一人が玄斗であるのだが‥‥!
「これでよし‥‥エリーシャ、火を頼めるか?」
「はい、分かりました。‥‥でもどうするんですか?」
「こうするんだよ」
ルクスは先程こっそり仕留めておいたウサギの肉を焚き火にて炙り出す。
‥‥‥。
沈黙が流れた。長い沈黙だった。破ったのは玄斗の一言。
「ルクスの旦那。それってもしかして‥‥」
「匂いにさそわれてくるかなと‥‥」
「バカ! もし月斗の旦那が空腹状態だったらそれこそくま‥‥!」
そう言おうとした瞬間の出来事である。
玄斗の目の前を勢いよく何かが走り抜け、気がつけばルクスは紅い何かに捕縛されている状態だった。
「‥‥本当に釣れたぞ?」
「本当に釣れましたね」
「ここまで単純だとは俺も思わなかった」
「誰か助けろ」
ルクスの声も聞こえぬフリをしているかのように玄斗は火の始末を開始して他のメンバーに合図を送る。
「しかし本当に空腹だったのでしょうか?」
「俺には理解出来ないが匂いで釣られてきた‥‥というより‥‥」
「火の音に釣られて来た‥‥でしょうか」
「だから助けろって!」
ルクスの声にやっとエリーシャが反応し、大きく深呼吸をする。
「‥‥何をやっておるか月斗ォォォ!!」
「はっ!? おやかたさまぁっ!?」
「おや、此処におったんじゃな、月斗は。して、どこで迷子になっていたんじゃ?」
「惜しいな、もうちょっとでペントドラゴンの本日のエサ代が浮くと‥‥」
「やっぱ食わせるつもりだったんか!」
玄斗の鋭いツッコミがオラースに入る。
「とにかく、此処ではなんですから一度外に出て話をしましょうか。仲間もお待ちしていますから」
●現状そしてこれから
ヴェガから現在のバランの現状を教えて貰った二人は、少し溜息をついていた。
いや、正確には溜息をついたのは玄斗の方。月斗はウサギの肉やら保存食で餌付けされている。
加藤瑠璃(eb4288)の提案もある程度聞き終わった所で玄斗は真面目な顔つきへと戻る。
「アイテム鑑定、ねぇ‥‥」
「ギルド総督に話してみようと思うの」
「それはそれでいいんじゃないか? 話してみるのも一つの手。俺にゃどうすることも出来ないけど‥‥」
「そしてそのやり方ならバランさんが「これからは冒険者ギルドのやり方に従う」ってことにすれば、騙しやすくても『ぼろ儲け』はできないと思うのよね」
「‥‥そいつぁ無理だ」
玄斗の言葉に瑠璃も首を傾げる。どうして? その疑問がまず出てくるだろう。
「言ってしまえば御屋形様は冒険者じゃない。だから冒険者ギルドのやり方に従う道理はない。更に猜疑心の強いエーガン王すら全く手を出せなかった御人だ。良くも悪くも騎士道バカ一代。誰も縛れるわけがない」
「ふむ‥‥ならばバランの方はこちらで何とかカバーするしかないのじゃな?」
「そうなる。あの人を縛ろうと思っちゃダメだ。逆にカツが来るぞ」
玄斗の言葉に瑠璃も苦笑の表情を浮かべる。
しかし、まだ望みが消えたわけではない。ギルド総督に話を通してみれば‥‥。しかしそれはまた別の話である。
「そういえば玄斗殿、事前にお願いしたあれですが」
エリーシャがそう切り出すと、玄斗は頷いて一枚の報告書を取り出した。
バランは依頼人達を深く信じていた為、二度と謀られぬようにするには確かな証拠が必要。という事で玄斗に色々と頼んでおいたのだ。
「聖書と杖の件だったよな? 『表』の市場では確実に出回ってない事は確かだな」
「表とな?」
「あぁ、トレジャーハンターや泥棒達は盗んだり騙し取ったりした物は表ではまず売らない。『裏』のその筋で売るんだが‥‥どうやらそろそろ市の時期らしくてな、大きな出店があるらしいぜ?」
「つまり、そこに出るかも知れないって事かい」
オラースがそう言うと、玄斗は小さく頷いた。
「これからどたばたしそうだな‥‥俺達は御屋形様の心配より動かなきゃならない事が出来たみたいだねぇ」
「どういう事だ、玄斗?」
「啄木鳥隊の本仕事さ、旦那」
ニィと笑う玄斗に月斗も笑みで返す。
とにかく、この仕事はこれで一段落したと‥‥(割り切れないものは多々あるが)‥‥しておこう。