木の蜜を採りにピクニックへ行こう!

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 98 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:06月03日〜06月10日

リプレイ公開日:2006年06月11日

●オープニング

「‥‥ピクニックですか?」
「そう! ジ・アースの人やアトランティスの人と仲良くなれる良い機会だと思うの」
 九条・玖留美の突拍子もない提案は今に始まった事ではない。
 五年来の付き合いの神林・千尋は、「名案でしょ?」と胸の前で両掌を合わせてほんわかとした笑みを浮かべる玖留美に、額を押さえて軽く溜息をついた。

 事の始まりは、ウィル初になるであろう、ファミリーレストラン『スィーツ・iランドinウィル店』の調味料の問題だった。玖留美は店長、千尋はマネージャーだ。また、二人とも天界人である。
 先日、冒険者達の協力でメニューがほぼ決まり、食材の仕入れルートも確保する事が出来た。
 その中で、「天界人向けのメニューは、スィーツ・iランドの店名の通りデザート系を充実させるのが一番」という意見が出されていた。
 デザート系を作るには、甘味料はどうしても欠かす事は出来ない。しかし、天界では簡単に手に入る砂糖は、同じの重さの砂金と交換しなければ手に入れられない程貴重品だった。また、蜂蜜も高級食材なので、甘味料は水飴とジャムがメインになった。
「もう少し甘味利用が欲しいのよね‥‥そうよ! クヌギの樹液よ!」
 そこで玖留美が思い付いたのが、椚(くぬぎ)の樹液である。
 椚の樹液は、カブトムシやクワガタといった昆虫がそれを求めて集まるのを知っている人は多いだろう。その椚の樹液から、メープルシロップに近いものを作る事が可能なのだ。また、胡桃の木の樹液からも作る事が出来る。
「メープルシロップには及ばないけど、近いものが出来ればホットケーキやお菓子のメニューがグッと増えるわ」
 店の事は千尋に、制服の試作品制作は“カオスにゃん”こと、コスプレの弟子の藤野・睦月に任せ、玖留美が市場を駆けずり回った結果、椚の木に似た木がウィルから西に二日歩いたところに群生しているという。

「‥‥聞けば、その森には巨大なカマキリが棲んでいるそうではないですか」
 3mを越す巨大なカマキリ――ジャイアントマンティス――の持つ鎌は、クレイモア並の威力があるといわれている。また、その殺傷能力は中堅の冒険者でも苦戦する程だ。
「聞くまでもないですが、先輩は実戦の心得はあるのですか?」
「宮本武蔵なら全巻読んでるわよ。そうそう、柳生十兵衛勝負集も」
 ジ・アースで二天一流を開眼した名だたる剣豪宮本武蔵は、天界の日本でも健在である。
「‥‥冒険者を護衛として雇いましょう」
「なら、ピクニックがいいわね! 流石ちーちゃん」
 ――という訳で、冒頭のやり取りになった。

 椚の木が群生している森まで歩いて二日、樹液の採取に三日、帰りで二日の一週間の日程で、『スィーツ・iランドinウィル店』主催のピクニックが開かれる事となったのだった。

●今回の参加者

 ea8247 ショウゴ・クレナイ(33歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 ea9311 エルマ・リジア(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3839 イシュカ・エアシールド(45歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4039 リーザ・ブランディス(38歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4072 桜桃 真治(40歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4086 吾妻 虎徹(36歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4344 天野 夏樹(26歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

サヤ・シェルナーグ(ea1894)/ 円 巴(ea3738)/ ソード・エアシールド(eb3838)/ 真音 樹希(eb4016

●リプレイ本文

●ピクニックには手作り料理が必須☆
 九条玖留美(ez1078)との待ち合わせ場所は、スィーツ・iランドinウィル店だった。
「アトランティスでファミレスが見られるとは思わなかったな‥‥」
「開店したら一緒に食べに来ような。それにファミレスなら、この子に私達の世界の料理を食べさせてあげられるじゃないか」
「‥‥俺達の世界の料理か‥‥そうだな‥‥」
 吾妻虎徹(eb4086)と桜桃真治(eb4072)は寄り添いながら天界を思い起こした。真治が虎徹の肩に顔を預けると、彼は真治の身体をもう少し引き寄せた。真治と虎徹は新婚で、且つ彼女は子を宿したばかりだった。虎徹の行動一つ一つにさり気ない真治への気遣いが窺えた。
「わ!? ‥‥月例新聞に載るとは‥‥しかも僕の名前もありますし。アトランティスでの知名度がかなり上がったでしょうか?」
「『天界人が物珍しい事をやっている』程度の関心でしょうね、今のところは」
「それでも、多くの方の関心を持っているのですね‥‥」
 店舗の南側に備え付けられたオープンテラスでは、ショウゴ・クレナイ(ea8247)がマネージャーの神林千尋と話し込んでいた。
「ピクニックねぇ‥‥いや、ホント気楽なもんだ」
「まったくです。店長の気楽さには私も呆れています」
 同じテーブルを囲むリーザ・ブランディス(eb4039)が呟くと、玖留美を擁護すべき千尋も彼女に同意した。確かにウィルの政治情勢を見れば、ピクニックどころではないだろう。
「まぁ、天界人らしい発想だし、それくらいの余裕は欲しいところだけどねぇ」
 リーザは苦笑を浮かべると、試作メニューのハーブティーを口に含んだ。
 スィーツ・iランドinウィル店の現状を千尋に聞いたところ、ウエイトレスの制服の仮縫いは終わって着々と出来ているし、試作メニューも大半は完成しており、後はメープルシロップもどきを採ってきてデザートメニューを充実させれば、開店準備はほぼ整うところまで来ているとの事。

「ピクニックと言えば、やっぱりサンドイッチですよね〜。お米があれば、おにぎりでも良かったんですけど」
「私もウィルに来てから、お米とはご無沙汰だわ」
 厨房では、歓談しながらお弁当を作る天野夏樹(eb4344)と玖留美の姿があった。まだパン焼き窯は完成していないので、パンは出来物だが、それに調理した鶏肉や兎肉、豚肉をハーブを一緒に挟んでサンドイッチにしていた。
「‥‥睦月さんも真面目に働いているようで良かったです‥‥」
 夏樹達の作ったサンドイッチをバスケットに詰めてゆくエルマ・リジア(ea9311)。今回は九人と大所帯の上に、玖留美の厚意でエルマ達が連れているペットの分のお弁当も作っているので、その量はかなり多い。
 “カオスにゃん”こと藤野睦月がウエイトレスの制服の裁縫を中断して、自分の隣でノリノリで各種肉を焼くのを手伝っている姿を見ると、エルマはホッとしたような、今までの素行を見ているだけに複雑な気持ちになった。

 お弁当の準備が出来ると、音無響(eb4482)が帰ってきた。
「虫除けスプレーや殺虫剤が売ってないのは不便だよね‥‥」
 響はエルマからジャイアント・マンティスについて詳しく教わり、虫除けになりそうな物を探しに市場へ繰り出していた。
『あっ、でも昔から虫除けに使われてる草とかはあるんじゃないかと思って。今後の事を考えても、見つけておけたらいいと思うんだ』
 響は「カマキリとはいえ、3mを越すと普通の虫除けのハーブでは効果は期待できない」と薬草を扱う露天商の主人に断られ、手ぶらだった。
 椚(くぬぎ)の木の幹を傷をつける手斧に樹液を採る桶等、必要な物をショウゴの愛馬スレイと響の愛馬宇宙(そら)に積んでゆく。
「玖留美さん! 何があっても、玖留美さんは絶対俺が守りますから」
「ありがと。期待してるわよ、音無くん」
 レジャーシートと水筒、空のペットボトルを宇宙に積んでいる最中、玖留美が一人なのに気付くと、響は真っ直ぐに見つめながらそう伝えた。

 ウィルの街の門の前には、イシュカ・エアシールド(eb3839)と見送りのソード・エアシールド、ショウゴを見送りに来たサヤ・シェルナーグの姿があった。
「依頼人が来たようです。一緒に行けないのが残念ですが‥‥行ってきますね、ソード」
「俺も別の依頼受けたしな。人付き合い苦手なのは分かってるが‥‥頑張れ」
「私は武器で戦う事は出来ませんけど、万一、怪我人が出た時は手当てする事なら出来ますし、人付き合いは苦手ですけど‥‥料理の事を聞くのは勉強にもなりますしね」
 人付き合いが苦手なイシュカは、玖留美に予め断ってここで待ち合わせていた。
「き、気を付けてね‥‥」
「僕は大丈夫ですよ。木イチゴとお土産話をたくさん持って帰ってきますからね」
 サヤはジャイアント・マンティスの話を聞いて恐くて泣いていたが、ショウゴが頭を撫でて笑顔で出立したのだった。

●木イチゴ摘み☆
 空の代わりに天に広がる精霊界は澄み渡り、頬を撫でる風は心地よく、春の陽気に包まれた絶好のピクニック日和だった。
「そういえば、こういう風にのんびりと天を眺めるような日は、最近、とんとご無沙汰だねぇ」
「パフ♪ 魔法の竜が暮らしてた〜♪」
 先頭を歩くリーザはアトランティス人、玖留美から目的地を聞いて案内していた。彼女の隣を歩く夏樹は、思わず鼻歌が飛び出す。そのくらいまったりとした道中だった。
「‥‥ピクニックって、した事がなくて‥‥」
「ちょっと遠出する散歩だと思えばいいわ。私も秋葉原店の店長になってからは、ピクニックほとんど行ってないわね」
「‥‥いい天気のピクニックになりそうで、良かったです‥‥あまりウィルから出る事もありませんから、グラーティアも嬉しそうです‥‥」
 エルマの周りをくるくる回る愛犬グラーティア。広大な自然の中を散歩できるのは嬉しいようだ。エルマも心がほんわか温かくなり、思わず笑みがこぼれる。
「天界のファミレスは忙しいんですね」
 ショウゴは玖留美を始め、夏樹や響に積極的に話し掛け、アトランティスへ喚ばれた後、何処にいたのか? 等を聞いていた。ショウゴのようにジ・アースから来た冒険者は月道経由だが、天界から来た者は「喚ばれた」ので、どうやって喚ばれたのか、少なからず興味があるようだ。
 だが、夏樹達もどうして喚ばれたのか分からないので、応える事が出来ない。話題は自然と、ジ・アース、アトランティス、そして天界、それぞれの世界の事へ移っていった。
「へぇ、天界にはジドウシャやヒコウキっていう、ゴーレムシップやフロートシップみたいな乗り物がたくさんあるんだねぇ」
「馬車や馬より速く、一人で操れるのは凄いですね」
 夏樹や響の話を聞くと、リーザとショウゴは大いに驚く。特に鎧騎士のリーザは、自動車や飛行機に興味を持ったようだ。
「妊婦なんだから無茶するなよ‥‥」
「ジャイアント・マンティスがいるの、当分先だろ? 今は虎徹とのピクニックを楽しみたいんだ♪」
 ショウゴ達からやや離れて、手を繋いで歩く虎徹と真治。激しい運動を控えている真治を慮って、虎徹は歩くペースをみんなより遅くしていた。
「あの二人は夫婦なんだ‥‥やっぱり愛する人と結ばれるのって憧れます」
 響は視線をチラッと玖留美に向けると‥‥玖留美はイシュカと、天界とジ・アースの料理について話しており、響の声は聞こえていなかったようだ。
「そろそろお弁当の時間ですか?」
 そればかりか、イシュカが響の視線を受け取ってしまい、お昼と勘違いする始末。しかし、丁度、木イチゴが成っている林も近い事から、お昼になった。

「あ、虎徹、今回もお弁当作ってきたんだ。食べる?」
「もらおう‥‥」
 真治は円巴に手伝ってもらい、パンケーキとハンバーガー、デザートにはヨーグルトと付け合せのジャム、水飴で作ったお菓子をお弁当として持ってきていた。
「はい、あーん♪」
「‥‥あーん‥‥また料理の腕を上げたようだな‥‥」
「虎徹に美味しいものを一杯食べてもらいたいからね♪」
 パンケーキを千切って虎徹の口元へ持っていくと、彼は美味しそうに頬張った。今度は虎徹が真治にハンバーガーをあーんさせて食べさせる。
 交互にあーんしてお弁当を平らげた食後は、真治が虎徹を膝枕し、木陰でのんびりと昼寝をした。虎徹の銀色の髪を優しく梳く真治。
「こうやって静かに出来るのもたまにはいいな‥‥楽しいよ。とても」
「こうしてると、なんだか世界に二人っきりになった気分だな‥‥」
 微笑み合う二人。イシュカ達から距離を取っているので、実際、二人っきりなのだが‥‥。

「‥‥グラーティアが、木イチゴがたくさん成っている木を見付けました‥‥傷みにくいものをお店用に採って、傷みやすいものはデザート代わりに食べてしまいましょう‥‥」
「良いジャムの原料になりそうですね。でも、行きに摘んだら荷物になりませんか?」
「この辺は小動物が多いからねぇ。行きにあったからって、帰りにもあるという保証は出来ないよ」
 グラーティアがくわえてきた木イチゴを見せるエルマ。イシュカは帰りに摘んだ方がいいと提案するが、リーザの驢馬や虎徹の愛馬は空いているので、リーザは摘めるうちに摘んだ方がいいと反論した。彼女の言う事はもっともで玖留美も賛成し、食後の腹ごなしに木イチゴ摘みが始まった。
 また、ショウゴやリーザのように腕に覚えるある冒険者は小動物を狩った。

「子供が出来ている分、より大切に扱わないとな‥‥二人で作った大切な命だから‥‥」
「ああ。木イチゴ狩りとかした事ないから嬉しいな」
 虎徹は真治をお姫様抱っこで持ち上げて、木イチゴを摘ませた。真治が腕の中で動き、温もりを直に感じるたびに微笑む。
「大漁大漁♪ これでしばらくは干し果物やジャムに困らないな♪」
 ずだ袋に詰まった採った果物に満足げに頷く真治。

 一方、ショウゴやリーザもそれなりに獲物を仕留め、イシュカ達も木イチゴやカラントを採った。
 肉は肉、木イチゴは木イチゴ、カラントはカラントとひとまとめにし、エルマがアイスコフィンでそれぞれ凍らせた。

●ジャイアント・マンティス!!
 椚の木が群生している森に着いた。
 樹液を採るのは簡単だ。幹に傷をつけ、そこから滲み出る樹液を桶へ誘導し、集めるという、天界では伝統的なメープルシロップの採取法で十分なのだ。
「ジャイアント・マンティスは絶対に油断出来ないからねぇ‥‥出来れば樹液は森の浅いところで集めたいところだけど、まとまった量を採るとなると木の数が必要か‥‥」
「多少効率は悪くなるでしょうけど、全員で一緒に行動しましょう」
 リーザが問題点を指摘する。加えて採取には時間が掛かる為、玖留美はそれを見越して、樹液の採取に三日取っていた。
 玖留美の安全を考えると、イシュカの提案に反論する者はいなかった。
 森の入口にベースキャンプを張り、虎徹と真治はそこでお留守番だ。とはいえ、こちらにもいつジャイアント・マンティスが襲ってくるか分からないので、真治は定期的にブレスセンサーを発動させて警戒を怠らない。
「ごめんなさい。少しだけ樹液を分けてください」
 夏樹とイシュカ、エルマと玖留美が手分けして椚の幹に手斧で傷を付け、桶をセットする。アトランティスには、天界ではお伽噺や伝説の類でしかない木の精霊が本当にいる事を聞いている夏樹は、樹を傷つける際、頭を下げて断りを入れた。
 ショウゴは聖者の剣と黄金の獅子の盾を、リーザはサンソードを、響は高貴なる者のレイピアとライトシールドをそれぞれ構え、作業をするエルマ達を視界に入れつつ、別の方向の警戒に当たっていた。

 それから二日間は小動物が現れるくらいで何事もなく過ぎ――三日目、椚の樹液が溜まった桶を回収している最中の事だった。
 突然、グラーティアが吠え出した。真治も飛来する3m大のそれをブレスセンサーで感知する。
「か、カマキリだー! お、大き過ぎるよ‥‥こんなのあり!?」
「‥‥先手必勝です‥‥夏樹さん、下がってください‥‥」
 事前にエルマからジャイアント・マンティスについてレクチャーされていたとはいえ、直に見るその巨大さに及び腰になる夏樹。
 流石に場数を踏んでいるだけの事はあり、エルマは冷静にアイスブリザードで先手を打った。
「大きい分、しぶといですね」
「あの鎌の鋭さ、侮れないよ」
 盾を前面に押し出してショウゴが接近する。彼へ大きな鎌が振り下ろされる。受け流すが、その攻撃はショウゴとほぼ互角だった。リーザでは少々荷の重い相手だろう。ショウゴは盾で受け流してカウンターを確実に決め、リーザはオフシフトと木を盾代わりに回避に専念した。イシュカの神の祝福がなければ、二人とも切り刻まれていたかも知れない。
 すると、もう一方から別のジャイアント・マンティスが現れる。
「玖留美さんには指一本触れさせない! 俺が守るって、そう約束したんだから!」
 ショウゴ達は目の前のジャイアント・マンティスで手一杯なので、新手には響が玖留美を庇うように立ち向かう。
 エルマが再びアイスブリザードを放った後、初撃を繰り出す。振るわれる巨大な鎌を盾で受け流しつつ、弱そうな腹や足を狙おうとするが、そこは相応のコンバットオプションを身に付けていないのに無茶をしようとしたせいか、徐々に防戦一方になる響。
「うわああああああああああ!」
 その時、夏樹が叫び声と共にスタンガンを構えて突進した。しかし、ジャイアント・マンティスは気絶せず、夏樹の腕に鋭い牙を突き立てた。
 そこへイシュカが援護射撃でホーリーを放ち、響も合わせて突き掛かる。そして歯を食いしばって堪えた夏樹が、再度スタンガンを押し付けると、今度はジャイアント・マンティスも気絶したのだった。
 ショウゴとリーザの方も、ショウゴがスマッシュを決めて決着が付いていた。
「こ、怖かったよー」
「もう大丈夫よ、大丈夫だから」
「だって、守るって約束したから」
 脅威が去った為か、その場にへたり込んで大泣きを始める夏樹。幸い、中傷で済んだので、イシュカがリカバーで癒す傍ら、エルマに庇われていた玖留美が彼女を安心させるように胸に抱き、響は微笑み掛けた。

「赤ちゃんがお腹にいる間に色んなもの食べておきたいんだ。ダメかな?」
「んー、当面、必要な分は採れたし、桜桃さんが持ってきたトランプ、久しぶりに遊んだしね」
 桶を持ってベースキャンプへ帰ってきた玖留美へ、真治が樹液が欲しいと頼んだ。夜は真治の持ってきた紙製のトランプで遊んだ事もあり、快く譲る玖留美。
「皆もありがとう! お腹の子も喜んでるよ♪」
 死闘を終えた夏樹達を労うと、虎徹と寄り添いながら家路につく真治だった。
 ショウゴ達もベースキャンプを畳み、桶をスレイや宇宙に積んで帰り支度を済ませると、その後に続いたのだった。