【遺跡探索記】エルフの森の遺跡

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 32 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月06日〜06月11日

リプレイ公開日:2006年06月12日

●オープニング

 その日、ウィルの冒険者ギルドの扉を一人の女性の鎧騎士が叩いた。
「遺跡探索に協力してくださる冒険者を募りたいのですが、よろしいでしょうか?」
 折り目正しくそう切り出す彼女の名は、カティア・ラッセ。叙勲を受けたばかりの鎧騎士だという。なるほど、身を包んでいるゴーレムライダーや、背負っているサンショートソードの柄や鞘、左手に括り付けている円形のライトシールドは使い込まれた跡はなく、どことなく新しさを感じる。その装備からウィル新刀を修めているようだ。
 また、彼女の姓であるラッセ家は、フオロ家に仕える男爵家の一つだ。顔立ちは物静かそうな貴族令嬢のそれで、ゴーレムライダーを纏っておらず、代わりにドレスを着ていたら誰も彼女が鎧騎士だとは分からないだろう。
 だが、鎧騎士の叙勲を受けている以上、ゴーレムの操縦法を身に付け、主君に認められるので、それ相応の実力を持っていることには変わりない。
「お恥ずかしい話ですが、ボ‥‥わたしはまだまだ駆け出しの鎧騎士で、エーガン様にお許しを戴いて国中を回り、武者修行をしているのです」
 カティアのように主君の許可を得て冒険をする鎧騎士も少なくない。鎧騎士が己の名声を高める事は、鎧騎士の地位向上に繋がるからだ。尚、カティアのような封土を持たぬ鎧騎士は、エーガンといった国王個人ではなく、フオロ家といった家に属していることが多い。大抵の場合、家同士が累代の君臣関係にある場合が多いのだ。因みに、彼女の騎士学校の学費はフオロ家が負担していた。
「先日、ここより二日離れた森の奥で、密林に埋もれた入口を見付けたのです。その森は今では誰も住んでいないそうですが、昔はエルフが住んでいたという話ですから、その入口もエルフが作った遺跡かも知れません。ただ、ボ‥‥わたしは、遺跡を探索する術を身に付けていませんので、得意な冒険者に協力してもらおうと思ったのです」
 騎士よりレンジャーの方が、探索に長けているのは確かだ。
 彼女が見付けた遺跡は、今のところ冒険者ギルドに発見された情報はない。運が良ければ未盗掘の遺跡である可能性もある。ただ、エルフが住んでいた森にあったからエルフが作ったもの、というのはカティアの推測に過ぎず、実際には探索してみないと分からないだろう。
「ボ‥‥わたしは、武者修行になればいいので、遺跡の中にアイテムがあった時は協力してくださる冒険者で山分けしてくださって結構です。ただし、そういうことを見越して、報酬は少なくさせてもらいます」
 ちゃっかりしているが、未盗掘の遺跡なら何か残されている可能性もあるだろう。そういう意味ではカティアの判断は正しいと言える。

 カティアの武者修行に付き合い、遺跡を探索して欲しい。

●今回の参加者

 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3727 セデュース・セディメント(47歳・♂・バード・人間・イギリス王国)
 ea3982 レイリー・ロンド(29歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea5592 イフェリア・エルトランス(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6360 アーディル・エグザントゥス(34歳・♂・レンジャー・人間・ビザンチン帝国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb0754 フォーリィ・クライト(21歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb2449 アン・ケヒト(27歳・♀・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

リュウガ・ダグラス(ea2578

●リプレイ本文

●吟遊詩人は語る
「さて、これよりお話しいたしますは、遺跡探索記の第一章‥‥本当の自分を騎士道というベールで包んだ鎧騎士と、かの者のベールを春風の如くゆるりと揺らした冒険者達のはじまりの物語‥‥」
 ウィルの酒場『騎士の誉れ』の一角に、朗々と歌う吟遊詩人が一人。語り口調は決して流麗とは言えず、調子外れもいいところだが、何故か興味を抱かせるその詩に、近くにいた冒険者達は話を止め、聞き入った。

●無理してる?
「手合わせよろしくお願いします!」
「よっし、来い!」
 女鎧騎士カティア・ラッセは恭しく騎士の礼を取ると、ウィル新刀流のスタンダードな構えを取った。対峙する風烈(ea1587)は十二形意拳・酉の構えで迎える。
 サンショートソードの初太刀は、教科書通りの軌道。思っていたよりも鋭いが、見切れない程ではない。烈は月桂樹の木剣で受け流すと、次の攻撃に備えて構え直す。しかし、カティアからの攻撃はなかった。
 今度は烈が仕掛ける。彼の太刀筋は見えているようで、カティアは紋章の入った丸いライトシールドで受け流すが、続く二撃目は捌き切れず、ゴーレムライダーにその洗礼を受ける。
(「太刀筋、体捌き、足運び、どれも悪くはないが‥‥」)
 その後も攻防を繰り返すが、カティアの刃が烈の身体を捉える事はなく、烈がカティアの喉元に木剣の切っ先を突きつけ、組み手は終わった。
「カティアさんの技、見せてもらえるかな? 同じ女剣士同士、問題点とか指摘できると思うの」
「ボ‥‥わたしは乗馬が好きなので、チャージングとフェイントを覚えました」
 軽く休憩を挟んだ後、今度はフォーリィ・クライト(eb0754)と手合わせをすべく、距離を取るカティア。
 本人は裂帛の気合いのつもりなのだろう、盾を放り、可愛い掛け声に乗ったチャージングをフォーリィは軽く往なす。反撃に転じた彼女の初撃に、やはり目は追いついているものの、かわすまでには至らなかった。
 カティアはロングソード「正騎士」の一撃を受けても即座に体勢を立て直し、今度はフェイントを織り交ぜる。これにはフォーリィも意表を衝かれたが、かわせない程ではない。
 首筋にピタリと刃を当てられ、決着が付いた。
 アン・ケヒト(eb2449)がカティアにタオル差し出した。彼女が診た限り、負傷はしていないようだ。痣はしばらく残るかも知れないが。
 フォーリィにはイフェリア・エルトランス(ea5592)がタオルを渡す。顔を拭きながらカティアを曇った表情で見つめ、物思いを耽るフォーリィ。
「ボクって言いそうになるカティアさんって、何だか可愛いわね」
「カティアさん‥‥無理というか、気を張り詰めてるというか‥‥どうもよくないわね」
「鎧騎士だから、じゃないかな? 騎士道の体現が厳しく求められてるそうだから」
 イフェリアもフォーリィも、カティアが鎧騎士であろうと無理をしていると勘付いていた。『本当のカティア』は、冒険者ギルドで顔合わせをした時感じたように、もしかしたらお嬢様なのかも知れない。
「‥‥手合わせはそのくらいにして、夕食にしましょう。出来立てですよ‥‥」
「フッ、味は期待しないでくれよな。何せ、漢の料理だからな」
「いや、そこは格好付けるところではないだろ」
 そこへお玉に鍋の蓋の二刀流というおさんどんスタイルのイェーガー・ラタイン(ea6382)が呼びに来た。今日の夕食の当番は彼とアーディル・エグザントゥス(ea6360)だ。アーディルの物言いにレイリー・ロンド(ea3982)がツッコミを入れる。今回集まった冒険者達はカティアを含め、料理が得意ではないのだ!
 という訳で初日の夕食は、全員の保存食の干し肉を、イェーガーとアーディルが摘んだ食べられる植物と一緒に鍋で煮込んだ、漢の鍋料理だった。
「世の中には、自らの肉体を鋼に、手を岩に、刃に変えようと鍛錬する者もいるのさ」
 鍋を囲みながら、烈とフォーリィが軽く組み手をして気付いた点を指摘する。不思議なもので、みんなで突っつく鍋は美味しく、会話も弾んだ。セデュース・セディメント(ea3727)の語りがそれに一役買っている。
『勇者の行いを世に広めるのは吟遊詩人の使命です。卿も吟遊詩人達が唄う勇者の歌をお聴きになられた事があるでしょう。わたくしは卿をいずれ世に出るであろう勇者と見出しました』
 大袈裟すぎるくらいの身振り手振りを交える彼の語り口調は、冒険者ギルドでカティアをあっさり説得(丸め込み)していた。
『卿のご活躍がわたくしの歌となる事によって卿の名声が広く知れ渡り、ひいてはラッセ家の主家でもあるフオロ家の名声が高まる事にも繋がります。また、いずれマリーネ姫にお目に掛かる機会もあると存じますが、その際には必ずやカティア・ラッセなる有望な鎧騎士殿の存在をお伝えする事をお約束いたしましょう』
 しかもセデュースは個人的にマリーネ・アネット姫と面識があるという。フオロ家に仕える騎士の自分の名が国王エーガンの寵姫マリーネの耳に入る事は、鎧騎士として名誉な事なのだ。
「実戦の前に聞きたいんだが、カティアさんは鎧騎士になってどれくらい実戦を積んだんだ?」
「‥‥差し支えなければ、俺も聞きたいです‥‥武者修行で遺跡探索とはあまり聞きませんので‥‥」
 レイリーが先ず自分のペットや冒険談を話し、その後、カティアへ話題を振る。また、武者修行というと、モンスター退治を連想する者も多い。イェーガーもその一人で、だからこそ事情をカティアに訊ねた。
「カオスニアン討伐には数回出掛けました。ただ、カオスニアンを討伐した際、騎士の戦い方だけではなく、冒険者の戦い方や技能も身に付ける必要があると感じたのです」
 イェーガーは失礼にならない程度にカティアの様子を見たり話をして、その人となりを推し量っていた。
 カティアの武術は騎士として恥ずかしくない腕前を持っているようだ。加えて、チャージングとフェイントを修得している。一方、回避にはやや不安があるのか、盾を持ち、ゴーレムライダーを纏う事で打たれ強くした反面、機敏さを犠牲にしていた。
 また、向上心はあるものの、セデュースの煽てを鵜呑みにする辺り、世間慣れしていない事が窺えた。

 夕食後、イェーガーが交代で見張りを立てようと提案するが、フォーリィのロロ‥‥イーグルドラゴンパピーを筆頭に、勢揃いした軍馬や駿馬を前に襲ってくる者やモンスターが果たしているだろうか?
 女性陣はカティアのテントに集まり、他愛ないお喋りに興じた。
「私は体力も無いくせに、昔から未知の遺跡や迷宮を冒険するのが好きでな。我ながら困ったものだ」
「でも、遺跡はモンスターとは関係なく、ワクワクしないかな? あ‥‥申し訳ありません」
「謝る事はないわ。むしろ本当のカティアさんが見られて嬉しいもの」
「鎧騎士は騎士道とか大変だと思うわ。でも、無理して強くなっても、それって背伸びしているだけじゃないかな? だからカティアさんももっと自然にしていいと思うんだけど‥‥」
 女性同士という事もあり、つい地が出てしまったのだろう。アンが切っ掛けを作り、イフェリアとフォーリィが昼間、感じた事をカティアにぶつけた。

「おはよう! 今日も一日よろしくね!」
 翌日、張り詰めた雰囲気が取れ、いい感じで明るく挨拶をするカティアの姿があった。これが地の彼女だ。
 何も知らない男性陣が唖然としたのは言うまでもなかった。

●エルフの森の遺跡
 その遺跡は森の木々の隙間に半ば埋もれ、わずかに口を開けていた。
 烈達は入口の前にベースキャンプを設置すると、フォーリィがロロに荷物と他のペットの番を言いつけた。間違っても他のペットを襲わないよう言い聞かせるのも忘れない。
「遺跡探掘‥‥うん、何が出てくる事か」
 未盗掘の可能性を秘めた遺跡を臨み、アーディルは楽しそうだ。ウィルを発つ前、リュウガ・ダグラスが遺跡に関する情報を再度冒険者ギルドで調べたが、やはり発見された情報はなかったとレイリーを見送りながら告げていた。
「大怪我をしたら修行も何もないし、今回は最初だからいろいろと見て学んで欲しいな」
「私は体力も低く、攻撃する術も持たない。カティア、私を護ってくれよ?」
「フォーリィさん達に任せるよ。ボクで護れるかどうか分からないけど」
 フォーリィとアンが隊列について説明すると、カティアは素直に従った。
 先頭はイェーガーとフォーリィ、二列目はカティアとイフェリア、三列目はセデュースとアン、四列目はレイリー、最後尾は烈とアーディルという隊列で入る。烈が最後尾なのはバックアタックを警戒しての事だ。
 イェーガーがたいまつを、イフェリアとカティア、レイリーと烈がランタンを、そしてフォーリィがハンディLEDライトを灯し、明かりも万全。これだけ明るければセデュースとアンもマッピングしやすい。
「ここ数年‥‥いえ、数十年は人が入った形跡はないわね。そう言えば、この地では地面を掘るのは禁忌よね。地下を掘る技術はドワーフが持っているそうだけど、エルフとは仲が良かったのかしら?」
「見たところ自然の洞窟を利用しているようですから、一概に掘ったとは言えませんよ。それにエルフの住んでいた森に存在しているだけですから、エルフのものともドワーフのものとも、まだ判断できかねます」
 床の埃の積もり具合からそう判断するイフェリア。ジ・アースで数多くの迷宮を踏破したのでお手の物だ。彼女の疑問に、羊皮紙の切れ端にマッピングを始めたセデュースが応える。
 入って間もなく通路が右手に折れていた(「┌」)。
「‥‥静かに‥‥変な音が聞こえます‥‥水の流れる音です‥‥」
 イェーガーが人差し指を口に当てて耳を澄ませた。近くに水源があるようだ。それだけではない、特定の床を踏むと大量の水が溢れ、いきなり入口まで押し流される罠のように見受けた。
 イェーガーは慎重に探り踏んではいけない床に印を付けると、その床を避けて先へ進む。
 続く道は真っ直ぐだった(「│」)。
“バシャ!”「!?」
 次の瞬間、セデュースとアンに天井から大量の液体が降り掛かった。イェーガーが慌ててその液体を調べると、昔は危険な液体だったようだが、長い年月が経って劣化し、今では身体に害は無いようだ。しかし、刺激臭だけは酷く、二人は着替える羽目になった。
 そこは冷静沈着がモットーのアン、女性陣が壁になり、慌てる事なく身体を拭き、服を着替えた。
 しばらく進むと、左手に脇道が見えてくる(「┴」)。
「左側の通路はダミーね」
 天井のわずかな不自然な凹凸からイフェリアが判断した。灯りで照らすと天井から巨大なクラブがぶら下がっていた。多分、仕掛けられていた罠が発動した名残であろう。
 ここも直進すると、通路は再び真っ直ぐになる(「|」)。
「左右の壁に壁画があるな‥‥綺麗な壁画だけど、何だか違和感があるな」
「‥‥『我に気付き者に試練と祝福を、無知な者には絶望を与えん』か。どうやら隠れている同じものを探し、それと同じ床絵を踏んでいかないといけないようだ」
 レイリーがドワーフが魔獣と共に戦う壁画を見付けると、持ち前のセトタ語で解読するアーディル。その先には何種類かの床絵が床に敷き詰められていた。誤った床絵を踏めば足場が崩れる罠であろう。壁画には巧妙に矢の発射口が隠されており、手続きを間違えると矢でも発射される仕組みでは無いかとイェーガーは看る。
 念の為、矢の発射口に布切れを詰めて塞ぐと、総掛かりで壁画を睨めっこし、間違い探しならぬ隠れた共通点探しをする。
 謎は解けた。隠されたものは変わった形の鏃をした矢だ。その矢の描かれた床絵のみを踏みながら先へ進む。
 すると十字路に出た(「┼」)。十字路はその構造上、危険な罠を仕掛けやすい。イェーガーとイフェリアは重点的に罠を調べる。
「‥‥最初と同じ罠ですね‥‥十字路の中央の特定の床を踏むと、四方に壁が現れて閉じ込められ、水攻めにされます‥‥」
 水源が近いせいか、水を使った罠が多いようだ。ここでもイェーガーが踏んではいけない床に印を付け、罠をやり過ごして先へ進んだ。
 その先も十字路だった(「┼」)。先程同じか、それとも全く別の罠があるかも知れないと、イェーガーとイフェリアは念入りに探すが‥‥。
「罠だらけだな。ワームでも出てきそうだ」
「いや、やられたわ。罠がないのが罠ね」
 レイリーの感想にイフェリアが悔しそうに応える。ここには罠はなく、悪戯に時間を消耗しただけだった。その結果、イェーガーは手持ちのたいまつを使い切り、烈から予備のたいまつを買い取る事に。今まで罠が多かっただけに、どうしても抱いてしまう疑心暗鬼を巧みに利用した罠といえよう。
 イフェリアが天井の煤の付き具合から、よく使用していた通路を見極めて進んだ先には扉があった。その左右に異形なモンスターを象った像が置かれてある。扉の先がおそらくこの遺跡の最深部だろう。
 烈はオーラパワーとオーラエリベイションを、レイリーはオーラパワーを付与し、異形の像へ近付く。すると異形の像は突然鋭い爪で襲いかかってきた。
「ガーゴイルの爪は強力だぞ。急所なんかない、破壊してしまうんだ!」
 異形の像‥‥ガーゴイルと戦った事のあるレイリーが、カティアに聞かせるように叫んだ。彼女はセデュースが唄う士気を高めるメロディに後押しされ、フォーリィのソニックブームとイフェリアの矢、アンの適切な指示の援護もあって何とか戦っている。傷を負ってもアンが控えているので安心して戦えるのだろう。
 ガーゴイルはジ・アースのゴーレムと違い、特に硬いという事はない。イェーガーのGパニッシャーでも十分ダメージを与えられる。
 烈がダブルアタックと鳥爪撃を繰り出し、合わせてレイリーもオーラの輝きに包まれたライトサンソードを振るう。こちらは特に苦戦する事なく、一体のガーゴイルを沈めた。
 カティアの方は途中、彼女が中傷を負うと、アーディルが鞭を振り回してガーゴイルを絡め取り、引きづられても動きを抑えているうちにフォーリィが前衛へ出て、後退した彼女はアンにリカバーを掛けてもらう。それを繰り返し、最後はカティアが止めを刺したのだった。

 扉には鍵が掛かっていた。イェーガーが外すと、中は金属を扱う工房のようだ。ドワーフの工房のようだが荒れ放題で、辛うじて使用できる銀製のメイスと矢、指輪を数点見付け、カティアを除く全員で山分けした。

●吟遊詩人は語り終える
「さて、これにて遺跡探索記の第一章はおしまい‥‥本当の自分を騎士道というベールで包む鎧騎士は、一歩、本当の鎧騎士へと近付いたのでした‥‥」
 吟遊詩人はそう締め括る。聞き入った冒険者達は拍手を送り、彼へ泉で冷やした贅沢なエールを奢った。吟遊詩人は苦笑を浮かべてジョッキを受け取ったのだった。