街中!必殺お掃除人☆
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 49 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:07月28日〜07月31日
リプレイ公開日:2006年07月31日
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●オープニング
冒険者ギルド。見渡せば何時もより室内が汚れ始めていた。
其れを見て前々から悩んでいたギルド員が溜息をついた。
「困りましたね‥‥忙しさのあまり、掃除を怠けていたら、この有様ですか‥‥」
室内は没となった紙やら、くしゃくしゃにされて放り出された紙等が山積み。
水場へ行けばそれはもうカビの住処となっている状態だ。
「これは、打破しなくてはならない状況ですね」
ぐっと握り拳を握れば、ギルド員は急いで街の酒場へと向かった。
酒場。冒険者達が毎日出入りしている。
ソレも少数ではない。多く、だ。
酒場のウェイトレスに声をかけたギルド員は、事のあらましを教えた。
運がよければ、手伝って貰おうと思ったのだろうか。
しかし、その話にウェイトレスも溜息をつく。
「そうなんですよね。最近ジメジメした場所にカビが住み着いたり、黒い虫が住み着いたりしていて、酒場でも困っているんです」
「ありゃ‥‥それじゃお手伝いは頼めませんね‥‥」
「何分、冒険者の人達で賑わっているからここから離れる事も出来ませんし‥‥」
そこでギルド員は閃いた。
何時も利用している冒険者に掃除を頼もうと考えたのだ。
「そうだ、何時もお客として来ている冒険者の人達に頼んでみません?」
「え‥‥でも、いいんです? お頼みするのも悪い気が‥‥」
「最近討伐や何やらばかりで大変でしょうけれど、息抜きにはなるかも知れません」
ギルド員がにっこりと笑ってそう告げれば、ウェイトレスも納得した。
面倒をかけるが、冒険者達に頼もうと。
そんな時だった。
『ヤツ』が現れたのは。
――ぽて。ぽて。ぽて。――
怪奇音? のようなものが聞こえた。
何かと思って振り返れば、其処に『ヤツ』がいた。
キノコの形をして、ちょっと変わったじぇんとる髭の『ヤツ』が―‥‥。
その数時間後。
ギルドに依頼書が張られていた。
『お掃除してくれる人募集(歩くキノコ退治も含む)』と。その字はとても歪んでいたのだった‥‥。
●リプレイ本文
●事前の処理の巻
依頼を受けた冒険者達はまず冒険者ギルドに集められた。
班分けをしているかも知れないなら、此方でも把握しておきたいというのだ。
「うんうん、結構集まってくれたんですね。これなら掃除もすぐ終わりそうですねぇ」
「おう、其れは任せてくれ! っと、その前になんだが‥‥器物破損しない程度の魔法って使っちゃダメか?」
陸奥勇人(ea3329)がギルド員に尋ねる。
武器は使用不可という事は聞いて承諾している。
が、魔法については触れられてはいないのだ。だからこそ、判断に困るといった所だろう。
「魔法、ですか‥‥本来なら使用はしてくれるな! と、言うのですけれど‥‥」
「ストーンとかあの辺りなら器物破損はないし、いいだろ?」
「‥‥うぅん。最近の冒険者の信用度もありますからねぇ‥‥」
「でも、そのじぇんとる髭のキノコさんに対応出来るかどうかなのです。ムーンアローだけにしますから、お願いします」
富島香織(eb4410)も必死で頼み込む。
渋い顔をしていたギルド員も二人の説得によって小さく溜息をついた。
「分かりました、では魔法は極力使わない程度という方針で許可します。流石に酒場では‥‥昼でも夜でも人は来ますから、それだけは注意してくださいね?」
「では、オーラソードも可能であるか?」
「オーラソード‥‥ですか?」
ギルド員の懸念は一つ。ギルドの掃除でなら其れは其れで実害はないからヨシと言えるのだが、酒場である。
客がいて更には一般人も居る。
「オーラソードも極力使わないという方針でお願い出来ますか?」
「ふむ、酒場の主であるお方がそう言うのであれば‥‥」
「お昼休みの時間の間に何とかして頂ければ私達はいいですので。‥‥でも、グラス類だけは気をつけてくださいね? どたばたされて埃が被れば、また洗い直しですから‥‥」
結果。
極力魔法使用は避ける‥‥という方針で承諾された。
●酒場で大ぱにっく!
「そんじゃま、大掃除と行きますか!」
勇人が掃除道具を片手に小さく溜息をつく。
「結局、何も分からなかったのじゃ‥‥」
シュタール・アイゼナッハ(ea9387)も溜息をつく。
イェーガーにキノコの正体を調べて貰おうと思い、頼んだのはいいのだが新種だったらしく情報は何一つつかめなかった。
「それではまずは備品を片付けるのであるよ!」
「あら、重いですし沢山あるのに‥‥お願いしますね?」
「任せるであるよ!」
アルフォンス・ニカイドウ(eb0746)は大きな声でそう言えば、テーブル、椅子等大きな物を外へと運び出して行く。
香織はバケツを借りて、井戸へと水を汲みに行く。
「でも、ヒゲがあって歩くキノコなんて面白そうね! どんな奴か楽しみだわ!」
エリザ・ブランケンハイム(eb4428)もやる気は十分。
だが、酒場の汚れというのは埃やカビだけではない。色々な生物が住みついてしまっている部分もあるわけだ。
「ちなみに仕込みとかは他でやってくれるか。出来るだけ早くやっちまうんでな。それから、店員さんは皿とか危険なものをどうにかしてくれると助かる」
「じゃあ、私達はお皿とグラスを一時的に片付けて来ますね。掃除、お願いします」
「おし、これで多少ドタバタしても大丈夫だな。んじゃ水場から片付けるぜ!」
勇人の言葉に、冒険者全員がオーッ! と片腕をあげた。
こうして掃除は開始された。
「しかし水場は凄い悲惨な状況であるな」
アルフォンスがそう口にすれば
「アレよね‥‥裏側っていうのは見ないほうが良いって本当よね」
エリザもそう言いはじめる。
「ちょっとじめじめしただけで、カビってすぐに増えるよね‥‥こすり落とすのも結構力いるし」
しかし、そう言ってても始まらない。音無響(eb4482)もエリザやアルフォンス達と同様、モップを片手に床を掃除し始める。
「皆さん、ちょっと窓開けますね? 埃をとらないとですので」
「でも、何だかみんなでこういう風にお掃除するのって楽しいです。給食当番みたい」
布をマスク代わりにしながら雑巾で窓を拭きながら山下博士(eb4096)がそう告げる。
何時もお世話になっている場所だから。そんな勢いで参加した者もいるだろうが、こうして複数でやると楽しいと思う者もいるだろう。
そんな雰囲気も束の間である。
――ぽてぽてぽて――
足音が響いた。
●ヤツが来た!
「何だ、今の足音?」
「確かに、ぽてぽてという音がしましたけど‥‥」
「ちょっと、アレッ!」
エリザが突然大声をあげる。
全員がその方角へと視線をやれば、ぷりんぷりんなお尻をしたじぇんとるヒゲのキノコがじゃじゃーん! とポーズを決めているでは無いか。
「よし、来たな。作戦通りに行くぜ?」
勇人が網の設置を開始する。追い込んでキノコを捕まえようというのだ。
其れまでの時間稼ぎは‥‥。
「出来れば退去して欲しいのぅ」
「???」
シュタールの行動。イコンに頼んで説得を試みるも失敗。
寧ろ、キノコと会話しようというのがそもそも間違いである。
「ちょっと! そこのキノコ! 今から此処を掃除をするんだから、移動するか手伝うか、どっちかしなさいよ!」
「〜♪」
エリザの言葉に対してじぇんとるヒゲがとった行動。
ズンチャ♪ ズンチャ♪ ズンチャ♪
両手を上下させ、腰をくねくねぷりんぷりんさせダンスを踊り始めたのだ。
どうやら、彼に退く気はないようだっ!
「ほんとに動いてる、あのヒゲドコ‥‥」
「響」
「こほんっ‥‥! こういうの見ると、ほんとに異世界に来たんだなぁって思うよね」
勇人に一部ツッコミ入れられ制止させられた部分は知るべき事ではない。響は苦笑しながら誤魔化す。
「仕方ないわね! こうなったらこうよ!」
踊ってるキノコをガシリと掴むエリザ。呆然とする勇人達。嗚呼、罠までしかけたのに‥‥。
エリザはその捕まえたキノコを縛り上げ天井に吊るす。
「掃除が終わるまで大人しくしてなさい! 邪魔するならグルグル巻きにして庇からぶら下げてカサカサに乾燥させるわよ! いいの!?」
「!!!」
「‥‥なぁ、エリザ?」
「何よ?」
「其れ、掴むの怖くなかったか?」
「何処が? こんなのはこうでもしなきゃ、ウロチョロされてうっとおしいだけよ?」
女傑というのは彼女の事を言うのか。折角設置した罠を片付けながら、勇人はそう思うのであった。
「しかし、本当に何だろうな。このヒゲキノコは?」
「さぁ? でも変なキノコには変わりないよな」
シュタールがちょんとキノコを突っつけば胞子がぶわー‥‥。
掃除は、初期化されてしまったのでありました‥‥。
その後冒険者達が苦労したのは言うまでもない。
●ギルドお掃除大作戦!
「よう、こっちはそろそろ終わりか?」
ひょっこりと顔を出した勇人。見つけたギルド員は書類整理をしながらコクリと頷いた。
他の人員は、酒場のウェイトレスに報告をしにいっている。
「昼は人が沢山来ますので、夜に来てくださって本当に助かりますよ」
「重要な書類とかはどうすればいいんだ?」
「私が付き添いといいますか、監視といいますか。そういう形で同行しますので、何かあれば尋ねてくだされば。それより、あのキノコは‥‥?」
「大丈夫。捕まえた。俺じゃなく、エリザが。素手で」
勇人が棒読み状態でそう伝えれば、ギルド員もぽかーんとしていた。
あんな気持ち悪いキノコを素手で捕まえたとか、アリエナイ。といった様子。
そして、他の面子が揃い掃除は開始される。
「よし、まずは落ちてる羊皮紙の切れ端とか拾うぞ」
「資源は貴重であるぞ。放り捨てるのではなく再利用を心掛けねば」
「は、はぁ‥‥面目ありません。忙しいものですから、つい‥‥」
「そういうのがいかんのである!」
アルフォンスはギルド員にお説教する中、他の人員は掃除に専念。
「それにしても、ギルドって何時もこんなに散らかっているんですか?」
「ここまで散らかるのは珍しいです。GCRや討伐隊やルーケイの事等で忙しかったですから、最近は」
流石の博士も苦笑を浮かべていた。忙しさにかまけ、彼自身も住処を掃除するという気にはならなかったからだ。
「流石に、ここまでの散らかしはいけませんよ。私でもこれは唖然とします」
「だよねぇ‥‥なんでこんなになるのやらー‥‥」
響と香織は奥の書物室を掃除していた。が、其処が一番酷かったのかも知れない。
羊皮紙の切れ端は山をも造り、更にその中には本まで埋まっている状態なのだから。
「‥‥この切れ端の山、どうするのじゃ?」
「燃すわけにはいかないわよね? だったら捨てるしかないわね。まずは纏めておくのよ!」
エリザの指示に、シュタールは頷いて羊皮紙の切れ端で出来た山を外に移し始める。
こうして掃除は順調に進んでいた。が、勇人は違和感にようやく気付いた。
自分達のペットの姿がないのである。
「おい、みんな! 自分のペットはちゃんといるか!?」
「フィンはいるけど‥‥ポピー‥‥水のエレメンタラーフェアリーがいませんっ!」
「こっちは私のとアルフォンス、響の犬がいないわっ!」
「あれ? そう言えば私のポルナレフちゃんもいませんね? トカゲなんですけど、流石に家出はしませんし‥‥」
皆が慌てているその時。ドサドサッ! バタンッ! ゴトンッ! という音が響いた。
「書物室からです!」
「い、一体何が起こったんだ!?」
「とにかく、急いで見に行くのであるよ!」
冒険者達とギルド員が見た光景。
其れは素晴らしくも難儀なものだった。
猫は棚やら床やらを飛びまわり何かを追いかけている。
水のエレメンタラーフェアリーはきゃっきゃっ♪ と楽しそうに応援しているかのよう。
追い込む形で犬達がワンワンと吼えていれば、一匹のトカゲがペロンッと黒い物体を飲み込むのである。
「‥‥こ、これは‥‥」
「ちょっと! 貴方達一体何を追いかけて‥‥キャーッ!?」
「どうしたんです、エリザさん!?」
「この子達、G追いかけてるわ!!」
そう。猫は素早く動く黒い虫に興味を示して追いかける。
犬はその猫に反応してワンワン吼える。
トカゲはその黒いのをもしゃもしゃ食べてエサにしてお掃除している。
其れを応援している水のエレメンタラーフェアリー‥‥。
「これって、お掃除‥‥手伝ってくれているのかしら‥‥?」
「そうかも知れませんねぇ。知性のあるペットというのは、飼い主の言う事を聞くだけではありません。自分達の意思があります。主人が大変そうであるのならば手伝おうともするかも知れません」
笑ってそう言うと、ギルド員はうんうんと頷いて冒険者達を見やった。一般人とは違いリベラルなものである。トカゲはたらふくGを召し上がってご機嫌の様子。
「お疲れ様です、お掃除はもうこれぐらいで十分です。各自、ご自分のペット達を褒めてあげてくださいね?」
「確かに、もう朝‥‥だしな」
「そうですね、これぐらいにしましょうか」
「お礼は後日改めてお渡ししますから。‥‥本当に、いいペットをお持ちですね、皆さん」
そう微笑んでギルド員は冒険者達を見送った。
帰路についた冒険者達は何事もなかったかのように帰ろうとしていたのだが。
「そう言えば、あのキノコの処遇どうしたの?」
「あれ? エリザが持ってるんだよな?」
「あ。アイツ‥‥吊るしたまんまだわ!」
エリザの言葉に遅刻したランディが急いで酒場に急行した。
ランディが辿りついた頃、キノコは吊られながらも踊り人々の注目の的になっていたという‥‥。
その後、キノコがどうなったのかは、誰も知らない。