海の大敵を排除せよ!
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:10人
サポート参加人数:5人
冒険期間:08月01日〜08月06日
リプレイ公開日:2006年08月04日
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●オープニング
「暑い‥‥ですねぇ‥‥」
真夏のギルド。アトランティスは比較的涼しいという傾向なのだがやはり暑い時は暑い。
だれるギルド員は涼しさを求めている。だがギルドから離れる事は出来ない。
「こういう時は、何処か海とか行きたいですよね‥‥涼しい場所とか‥‥」
「あのー‥‥それでしたら、お持ちした頼み事が丁度いいかも知れませんです」
一人の青年がギルド員にそう告げれば、ギルド員は目をパチクリさせて思考を停止。
が、すぐに仕事だと分かり咄嗟に笑顔を作って対応するだろう。
「はい、ご依頼ですか?」
「そうなんです‥‥最近、ちょっと困っていまして‥‥」
「はぁ‥‥何にお困りなんですか?」
「私達の村の近くに海辺があるのですが‥‥其処にクラゲなるものが大量発生してるんです。これでは観光客も泳げなくて‥‥」
「クラゲ掃除のご依頼ですね?」
「はい。私達の村はここから西に半日いった所にあります。期限は三日‥‥一日、二日でお掃除してくだされば、勿論泳いで貰っても結構です」
そう言うと、青年は少し黙り込むがすぐにもう一つの提案をする。
「半日で終わらせてくれればサービスとして夜にキャンプファイヤーをやろうかと思います。何処かの冒険者さんがくださったものなのですが」
「キャンプファイヤーですかー‥‥いいですねぇ‥‥」
「焼く為の魚、バームクーヘン等は此方で用意しますよ。こういう条件なら、報酬少なくとも損は‥‥しませんよね?」
「そうですね、風流なものを見せてくださるわけですしね」
「それと、今回は特別にマシュマロを炙って食べて貰おうと思っています」
「‥‥薬として使われる、アレを食べるんですか?」
「はい、とある天界の方より教わったんです。其れで、冒険者の方に是非試して頂こうかと。勿論、高いですので人数分しかご用意出来ません」
「ほほぅ‥‥其れはそれで報告が楽しみですねぇ」
ギルド員がそう言えば、青年もハイ、と笑って頷く。
が、すぐに真顔に戻るのである。
「デートとして恋人、夫婦で来て貰っても構いませんが仕事だけはキッチリとしてくだされば言う事はないですし‥‥」
青年が一番危惧している事。
其れは、「クラゲが未掃除」で終わる事である。
この時期、海辺に近い村では漁等が定期的に行われる。
その為、クラゲは大敵。いてはならない存在なのである。
「それじゃあお願いしてもいいですか?」
「はい、受理させて頂きます。早速張り出させて貰いますよ」
「ありがとうございますー‥‥因みに私達の村へは、川舟で下り河口の町で中船舶に乗り換えていくのですが‥‥私は中船舶でお待ちしていますね。案内、しますから」
「原因は‥‥調べなくてもよろしいので?」
「はいー‥‥何分現状が現状ですから、現状さえ何とかしてくれればー‥‥」
そうすればおまんまの食い上げにはならないし、他の人も楽しめるだろうから。とつけくわえた。
青年はぺこりと頭を下げれば、村へと帰っていった。
●リプレイ本文
●村までの旅路
「連れてくペットは軍馬のドラグノフとイーグルドラゴンパピーのロロね」
最初にペットの申請をするフォーリィ・クライト(eb0754)。
依頼人である青年はメモにとって静か頷く。
「ねぇ、泳ぐ時の事なんだけどさ? もしもの時の為にペット飛ばしていいかしら? 木に繋ぐ位ならともかく檻に入れるのはねぇ‥‥」
「本来ならダメです、という所ですよ? 幾ら可愛いペットでも、一般人からして見れば化け物も当然だという事を理解してください」
「‥‥じゃあ」
「今回ばかりは特別です。冒険者の息抜きを兼ねての依頼ですから。仕事さえしっかりしてくれれば。それと、常にペットの傍にいてくださいね。面倒起こされるのはごめんです」
青年の言葉に、フォーリィは安堵した。
自分の可愛いペットが檻の中に入れられるというのは飼い主としては心苦しいものかあるからだ。
しかし、青年の言う事も尤もである。これが普通の依頼だったら怒鳴られている所だ。
「私は馬とボーダーコリーです。ペットにはお手伝いをして貰うという趣向です」
「私は優れた猫と鷹、です」
イシュカ・エアシールド(eb3839)と辰木日向(eb4078)も同じように申請する。
青年は軽くメモをすると、やはり
「常に一緒にいる事」
と釘を刺すのである。
「子狼のトトよ。挨拶しなさい♪」
小津野真帆(eb4715)の声に応える事もなく欠伸をする子狼。
流石に少し心配になるのであるが、飼い主が近くにいるのならと檻は採用しないようではある。
「もうすぐ着きますよ。すぐに仕事に取り掛かってくれると助かります」
全員分の申請を受けて、そういう青年。目の前には、綺麗な小島の村が広がっていた。
●クラゲ退治
「さて、仕事に入ろうか! とっとと仕事終わらせてルーシェの水着姿を拝む為に!」
アシュレー・ウォルサム(ea0244)が一人燃えながらそう叫ぶ。
彼は夫婦での参加であり、しかも新婚である為バカップルの区域なのである。
「これはこれできつい仕事だが‥‥ま、人間や危険なモンスター相手にするより、ずっとやり易くていいか」
「そうですね。それに、お休みも貰えるのですし頑張らないといけませんっ」
ルーシェ・アトレリア(ea0749)も微笑みながら、頑張る意思を見せる。
こうして冒険者は二手に分かれた。
浜辺掃除班と海掃除班である。
「まずは浜辺から始めるか」
「場所はすぐ其処の木下に。俺が後でサンレーザーで焼くからさ」
グリフォンを撫でながらアシュレーがそう告げる。
アレス・メルリード(ea0454)もその意見に賛同し、次々とクラゲを広い挙げて行く。
浜辺には凄い数のクラゲ。死体もあれば生きているのもいるわけだ。
「すみません。私、力とかないですし‥‥今までこういうクラゲの現象は起きた事、あるんですよね?」
「えぇ、ここまで酷いのはこれが初めてですけど‥‥」
「その時に使っていた道具って、ありますか?」
ルーシェが尋ねると、依頼人である青年が一つの道具を引っ張り出して来た。
石を棒のように細長く削り、その先にしっかりとした木の皮と板が縛り付けられている。
いわば、ソリみたいなものである。
「此れなら力がなくても広い範囲でお掃除出来ると思いますよ」
「わ、ありがとうございます♪確かにこれなら楽々ですねっ♪」
喜ぶルーシェ。ソリのようなその道具を使って次々とクラゲを指定された位置へと運んで行く。
「どうやらあっちは順調のようね」
「そうみたいですねぇ。私達もそろそろ始めましょう」
結城絵理子(eb5735)がそう言うと、真帆も頷いてペットの子狼を連れてくる。
「ねぇ、船みたいなのはないかしら?」
「あるには、ありますけど。大人数は無理ですよ?」
「大丈夫よ。あたしのペットとアシュレーのペットで運ばせるから」
「‥‥暴れないようにだけさせてくださいね?」
不安そうな青年を他所に、フォーリィはイシュカと一緒に海へと出る。
「うっわー。いっぱいいる。気持ち悪い‥‥」
「フォーリィさん、急いで捕まえてしまいましょう」
「そうね。ロロ、お願いね?」
フォーリィがそう言えば、イーグルドラゴンパピーはくきゅうんと鳴く。
一生懸命浜辺へと運ぶと、サティー・タンヴィール(eb2503)が其れを回収して指定位置まで運んでいく。
こうして集められたクラゲは、アシュレーによって焼却処理されたのでありました。
一部を除いては‥‥。
●お休みだっ!
こうしてクラゲ処理のお仕事を終えた冒険者達。
アシュレーはサングラス。海パン姿でルーシェを待っているようだ。
「す、すみません。遅れてしまいましたっ!」
「う、うは‥‥天界人の知識に感謝‥‥! 神に感謝‥‥!」
ルーシェがワンピースの水着姿で出てくれば、アシュレーは天に向かってそう叫ぶ。
その鼻からは血がだっくだっく。勿論、諸事情で遂には立てなくなってしまったりと男としてはとても情けないものになった。
「よーし、泳ぐわよ! おもいっきり泳ぐわよッ!」
フォーリィは水着がない為、布でそれなりに代用している。
男が数人いるものの、問題はないだろうというかなり女傑的思考だ。
「あ、それでしたらアレスさん。私と一緒にボートに乗りませんか?」
「え!? あ、俺‥‥!?」
女性の水着姿というものに免疫がないアレス。サティーに誘われればその顔は鮮やかな夕暮れ色。
「はい、ご一緒できればいいなと思いまして。其れに、フォーリィさん達が泳ぐみたいなので」
「あ‥‥そ、そうか。なら俺も、一緒に遊ぶよ‥‥」
「うわー、熱いっ! 熱いわぁ! いいわ、私はロロとアツアツになるのよっ!」
「虚しい抵抗意識ですよぅ。私ともアツアツしてくださいですよぅ」
絵理子から誤解発言も飛び出す始末。しかし、フォーリィに泳ぎを教わる為、ルーシェも一緒に遊ぶ事に。
皆で遊べば怖くない、のだが‥‥。
「私は、色々と準備を手伝いますね」
若浦泪(eb4855)がキャンプファイヤーの準備をしている青年にそう告げて手伝いを始める。
網の手入れ、船の掃除。そして魚や鶏肉の調理の手伝い。
「あっ! 綺麗な貝殻み〜つけた! これでブローチとか作ったら綺麗かも〜♪」
「わふぅん‥‥」
「あ、トトもそう思う? じゃあ、いっぱい見つけよ〜☆ほら、日向さんも一緒に!」
「え? あ、でもっ!」
「ペット達も一緒に連れて、貝殻探しっ! これなら子供っぽくないよ?」
こうして、冒険者達は昼の海のバカンスを楽しんでいくのだった。
勿論、変態チックなアシュレーに対し、最後にはフォーリィが海に沈めた、という騒ぎもあったわけだが。
●夜の楽しみはそれぞれ。
「皆さん、キャンプファイヤーの準備出来ましたよー」
夜も更けて、青年が皆に声をかければ冒険者達は火の回りへと集まった。
其処には魚、鶏肉、バームクーヘン。そして、マシュマロが人数分用意されていた。
「ペットさんのお食事は別でご用意しました。お口に合うかどうか分かりませんが」
「ありがとう! ほら、ロロ。お食べ」
「まっしゅまろ♪ まっしゅまろ♪」
真帆がまずマシュマロに手をつける。
すると、泪と絵理子も食べたいと思ったのか続いて手にとる。
「ところで、マシュマロって薬なんですかぁ? 甘くて美味しいおやつかと思ったのですけれど‥‥異世界って不思議ですねぇ」
「えぇ、こっちの世界ではとてもとても貴重な薬なんです。とても高価で、此れを食べるだなんて滅多に出来ない事なんですよ」
「そうなの〜?」
「えぇ。1から作るにしても砂糖が貴重な世の中ですから、そういった事も出来ないんです」
青年は、説明し終えると次に食べ方を説明していた。木の串に刺し、火で炙って食べるのだという。
「うわぁ‥‥! 甘くておいし〜!」
「これ、やっぱりお土産にしちゃだめですか‥‥?」
「マシュマロは高価なものですし、人数分しか用意出来てないのでお持ち帰りはちょっと‥‥」
「其れは残念です。響さんにも食べてもらいたかったです」
残念そうに、泪は呟いた。
その付近では。カップル達の夜が始まっていたのである。
「アレスさん、此方で横になってください。私がマッサージしてあげますから」
「え‥‥? いや、俺は別に!」
「戦場にも行かれるのでしょう? でしたら疲れをとって頂かないと」
ほぼ無理矢理に横にさせると、サティーはアレスの背をゆっくりとマッサージしていく。
アレスも照れながらもその施しを受け、勇気を持って言葉を告げようとする。
「あ、あのさ‥‥?」
「はい?」
「もし良ければ、だけど‥‥また一緒に海とか行ってみないか? 今度は仕事とかそういうの抜きで、遊ぶためにさ」
「‥‥そうですね、アレスさんとなら喜んで」
にこりと微笑みそう告げるサティー。アレスも其れが嬉しかったのかにっこりと微笑む。
こうして、1組のカップルが出来たとか出来なかったとか。
浜辺では二人の人影があった。
アシュレーがルーシェを誘って浜辺で散歩しているのである。
「んー綺麗だねえ‥‥ずっとこうしてれたらいいね、二人一緒に」
「そうですね、ずっと二人一緒にいましょう。‥‥アシュレーさん、一曲歌ってあげますっ」
ルーシェが歌い出せば、暫くその愛しい横顔を見つめていた。やがてアシュレーも負けずと伴奏を奏でる。二人のハーモニーは和えられて、静かな夜空に響く。
「なぁんか、向こうは盛り上がってるみたいねー」
「らぶらぶ? らぶらぶ? 羨ましいなぁ〜‥‥」
そんなフォーリィと真帆の声は二人には聞こえていない。歌が終わればアシュレーとルーシェは暫しの間見つめあう。
そして最後には‥‥。
「わっ!? あれ何してるの!?」
「だ、ダメよ、真帆! 見ちゃダメ! 見ちゃダメ!」
「‥‥どっか違う所でやれよ‥‥」
小さな溜息がアレスの口から出た。サティーと一緒である為、ある意味人の事は言えないけれど。
あそこまでは、やらないから。と心の中でそう呟くのだった。
かくして砂浜の夜は更け行く。束の間の休息。それでも冒険者にとっては、最高の休息になった事だろう。
次の日の朝。浜辺にはフォーリィからの制裁という形でアッシュは首だけ出され砂浜に埋められていた。
理由は
「子供になんてもの見せるのよ!?」
だったらしい。
数日間のバカンスであった。