ハーブを採りにピクニックへ行こう!
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:08月05日〜08月10日
リプレイ公開日:2006年08月13日
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●オープニング
「宅配用のゴーレムグライダーも手に入ったし、いよいよ開店ね」
九条玖留美(ez1078)は、アトランティス初になるであろう、ファミリーレストラン『スィーツ・iランドinウィル店』の店舗の庭先のジャガイモが植えてある家庭菜園に被さるように停めてある、ゴーレムグライダーを見ながらニコニコ顔。先の第4回ゴーレムチャリオットレースにて手に入れた代物だ。応援しているチームが優勝すれば装甲チャリオットがもらえたのだが、残念ながら優勝を逃してしまい、スポンサーと交渉の末、代わりにもらったのだ。
「店長、開店する準備はほぼ整いましたが、開店後の忙しさを予想すると、メニューに必要なハーブの調達は開店前に行かれた方がいいです」
それでも仕事の手は休めないのは玖留美の偉いところか。一言注意するに注意できず、マネージャーの神林千尋は心の中で溜息を付きつつ、顔はあくまでポーカーフェイス、いつものクールビューティーを崩さず告げる。
「メニューに必要なハーブ‥‥ああ、ホースラディッシュとクレソンね」
玖留美はスィーツ・iランドinウィル店のオープニングスタッフとのやり取りを思い出した。
玖留美とオープニングスタッフの1人が、アトランティスで採れる食材のうち、ファミレスで必要そうな食材について話し合った中で出てきたのが、ホースラディッシュ(西洋わさび)とクレソン(オランダガラシ)だ。
ホースラディッシュはアトランティスでも肉や魚の腐敗防止に使わるハーブで、ローストビーフの付け合わせには欠かせない。
クレソンはアブラナ科の香味野菜で、ホースラディッシュ同様、サラダや肉料理の付け合せに用いられている。クレソンの多くは川辺で雑草化している。
ホースラディッシュ、クレソンともにウィルでは栽培されておらず、自生しているものを採りに行くしかないのだが、千尋はスィーツ・iランドinウィル店が開店すれば、採りに行く時間はないと踏んだのだろう。
「残りの開店準備は私と藤野さんで十分出来ますから、店長は採りに行ってきて下さい。ホースラディッシュとクレソンが野生している場所は、以前採りに行った椚(くのぎ)の樹液と違い、近くに強いモンスターは棲んでいないそうですから、良い息抜きになりますよ」
「ピクニックに行ってきていいの、ちーちゃん?」
珍しく千尋が自分から玖留美に遠出許可を出した。意外な事なのか、玖留美は思わず確認してしまう。尚、藤野とは、被服&スィーツ担当の“カオスにゃん”こと藤野睦月だ。
「それに、兵器を兵器として使用せず、平和利用したい店長のお考えは分かりますが、その為には先ずゴーレムグライダーを乗りこなす必要もありますしね」
どうやら千尋は、まだゴーレムグライダーの操縦に慣れていない玖留美が、ウィル近郊で練習するのを良しと思わず、出来れば遠くで練習してきて欲しいようだ。いくらボボガ・ウィウィ男爵より、ウィル上空と近郊、郊外の飛行許可をもらっているとはいえ、誤って貴族街に墜落したらシャレでは済まない。
「本当ならちーちゃんこそ休みを取るべきだけど‥‥お言葉に甘えさせてもらうね」
玖留美は千尋の真意を受け取ったかどうかは分からないが、冒険者をピクニックへと誘うのだった。
●リプレイ本文
●夏バテを吹き飛ばせ!
スィーツ・iランドinウィル店の店舗にあるオープンテラスで、ぐで〜っと行儀悪く、深く腰を下ろしたセーラ・ティアンズ(eb4726)は、敷地内にある家庭菜園に植えられたジャガイモの水やりをする音無響(eb4482)の姿を目で追う。
「‥‥一日でも早く収穫が出来るようになれば、ジャガイモを使ったメニューを加えられます。天界のファミレスではジャガイモを使った料理は多いですから、スィーツ・iランドinウィル店のメニューを天界のファミレスに少しでも近づけて、多くのお客さんに天界の料理を味わって欲しいですからね」
「とかなんとか言っちゃってぇ、本当は玖留美さんの喜ぶ顔が見たいだけでしょ?」
セーラがニヤリと笑いながらツッコミを入れると、響の表情が強張る。この間、天野夏樹(eb4344)の着替えを覗いてしまった現場を目撃された後から、店長の九条玖留美(ez1078)の態度が余所余所しいのだ。
「恋に傷害や挫折は付き物だから、大いに悩め青少年! ‥‥とはいえ、響さんを弄れなくなったらまた暑くなったわねぇ‥‥エルマさん〜、かき氷お代わり〜。何か面白いことないかなー‥‥こう、政権転覆とか‥‥」
「セーラさんの暇潰しで政権転覆が起こったら、国がいくつあっても足りないッス」
「それに皆さん、ハーブ採りへ行く準備をしているのですから、セーラさんもかき氷の試食ばかりしていないで、自分の準備は自分でしてくださいよ」
セーラは空になったかき氷の器を叩いてお代わりを頼む。そこへ愛犬アレクサンドルとランニングへ行っていたフルーレ・フルフラット(eb1182)が戻り、シールドソードで素振りをしながらツッコミを入れる。更に新しいかき氷を持ってきたエルマ・リジア(ea9311)がたしなめる。
「ぁー‥‥そォ言えば、玖留美さんが何か今度ハーブを採りに行くって言ってたっけ‥‥?」
「それが今日ッス! 自分達はもう準備を終えてるッスよ」
「うん、だらけてるのにも飽きてきたし、ちょっと行ってみようかな。第四回GCRに参加出来なかった分も、この辺りでポイントを稼いでおかないと減俸増えそうだし‥‥」
「玖留美ならやりかねないからねぇ」
ここでセーラは、かき氷の試食を建前に単に涼みに来ていただけという事が判明。フルーレは息抜きに行く当日でも日課の鍛錬を欠かさないというのに。
ようやく重い腰を上げるセーラに、今度はリーザ・ブランディス(eb4039)がニヤニヤと笑いながら追い打ちを掛けた。
リオン・ラーディナス(ea1458)は夏樹と一緒に、厨房で弁当作りに精を出していた。
(「可愛い系のちょっとドジッ娘な店長に、クールビューティーなマネージャー、ロリまで網羅してるとは‥‥く! 俺とした事が、こんな楽園のような酒場を見逃していたとは‥‥一生の不覚!!」)
「リオンさん、料理上手だね。うちのお店、料理人足りないから、よかったら厨房で働かない? ‥‥って、ど、どうしたの!?」
玖留美の他、マネージャーの神林千尋やスィーツ&被服担当の“カオスにゃん”こと藤野睦月と顔合わせをしたリオンは、料理を腕を振るいながらも、美少女&美女揃いに心もお腹も一杯になり感涙が溢れ出す。リオンの料理の腕前に目を見張った夏樹だが、急に涙を流され驚く。
「い、いや‥‥モンスターはいないし、キミのような可愛い女のコ沢山の、楽しいピクニックになりそうだと思ったら、つい感涙がね!」
「リオンさんったら、可愛いだなんてぇ! ホントの事なのに。でも、私もピクニック楽しみなんだ。ゴーレムグライダー、ホントに手に入っちゃうとは思わなかったけど、そのお陰だからね。楽しんでいこう♪」
理由を聞いてリオンの背中をばしばし叩く夏樹。
「これが“水着”という、天界で泳ぐ時に着る服ですか」
ジ・アースには水着という概念がなく、水浴びや水泳は露出の少ない肌着や裸で行う。ショウゴ・クレナイ(ea8247)はカオスにゃんに渡した褌が、彼女の手によってセパレーツタイプの水着へ作り替えられたのを見て驚いた。
「天界の女性って、このような衣類で泳ぐんですか。大胆なんですね」
そこへショウゴを呼びに来たエルマが、水着をあちこち引っ張る。頬がほんのり赤いところを見ると、内心はどきどきしているようだ。
●空を渡る一陣の風
ホースラディッシュとクレソンが自生する森は、ウィルから歩いて二日のところにある。
問題はゴーレムグライダーだ。速く移動距離は長いが、搭乗人数が少なく稼動時間もそう長くないので、徒歩組との合流地点まで先行してもらう事になった。
玖留美はウィル近郊の土地勘のあるリーザに合流地点の地図を書いて渡し、響や夏樹を訓練してもらう。
「あたしのコーチは厳しいぞ!」
「はい、コーチ!」
ゴーレムグライダーに慣れてくると、響は興味があるという夏樹を後ろに乗せて飛行訓練を行った。
「ゴーレムが動かせるなら、後は空の感覚だけだから」
「空の感覚って言っても、私、航空機を操縦する知識も技能もないもの」
「それは覚えてもらうしかないけど‥‥空はいいよ。でも俺、この空よりももっと高く飛びたいんだ‥‥ここじゃあ見えない星の海を」
ゴーレムを動かせるセンスがあっても、必要なのはそれぞれのゴーレムに対応する操縦技能だ。
瞳を少年のようにきらきらと輝かせながら夢を語る響。
「わざとじゃないからって許してもらえることじゃないけど‥‥この間は本当にごめん」
「ちょ!? 操縦中に頭下げないでよ! 音無さんを女性だと誤解してた私も悪いから、もう気にしてないけど‥‥但し! あそこで見た事はキレイさっぱり、跡形もなく、すぐ忘れるように!」
「う、うん!」
「だから、頷かなくていいから前見て前〜!!」
「空って本当に気持ちがいいんだよねぇ」
響と夏樹への特訓が終わると、今度はリーザがレジーとセイジ、そしてエルマのファルファリーナと一緒にゴーレムグライダーで空の散歩を楽しんだ。
●眼福
二日後。目的の森に着き、小川の畔にキャンプを設置すると、早速、ホースラディッシュとクレソン採取を行う。
「先ずは必要量を採ってしまいましょう。それっぽいのを採ってきて、後で仕分けする形がいいですね」
「ハーブなら、現物があればアレクサンドルの鼻も役に立つでしょーか?」
エルマの提案に夏樹やリーザも賛成する。フルーレが愛犬を撫でながら訊ねると、玖留美はホースラディッシュとクレソンを採ってきた。
「なるほど、博物誌の記述と似ていますね」
「アレクサンドルも、もう大丈夫みたいッス」
ショウゴはイギリス王国博物誌の記述と照合し、フルーレは愛犬に匂いを覚えさせた。
「あ、でも自生している植物ですから、根こそぎにしたらいけませんよ」
エルマの注意を聞いて、全員がバラバラに森の中や小川の畔へ散ってゆく。
小一時間後、大漁のホースラディッシュとクレソンが玖留美の前に置かれた。選別している間、水浴びをする運びとなった。
「じゃぁ俺は、天界の利器で釣りでも楽しむとしますかね。今日の夕食、期待していてくれよ」
「俺が使い方を教えますよ」
「では僕は、狩りとキャンプの用意をしておきましょう」
リオンは草むらへ入っていく女性陣へウインクを一つ、フィッシングロッドセットを持って響と共に川上へと向かう。ショウゴはグリフォンのクラウディアと一緒に森の奥へ足を踏み入れる。
尚、スィーツ・iランドinウィル店でショウゴが提供した褌を買い取り、それに報酬を上乗せしてクラウディアの餌代としているので、ショウゴの出費はなかった。
「水遊びの基本といったら、水の掛けっこよね! それそれ〜!!」
「うわ!? 夏樹さんやったわね〜! えいえい〜!!」
「夏樹もセーラも冷たいじゃないか‥‥いやぁ水が気持ちいい。天界の知識ってのはいいねぇ」
「こういう夏の楽しみ方というのは、天界人らしい発想ですよね」
セーラからビキニを借りた夏樹は、小川へ派手に飛び込み、ワンピース水着を着たセーラやビキニを纏うリーザへ水を掛ける。応戦するセーラ。リーザがふと照り付ける日射しを眩しそうに見上げると、膨らませたビニール製の浮輪にファルファリーナとバーシトレイバーを乗せて遊ばせるエルマが頷いた。
「‥‥気付いたんですけど、皆さんスタイルかなりいいんですよね。一体、何を食べたらあんな風に育つんでしょう」
「エ、エルマさん‥‥まじまじと見つめられると照れるッス‥‥この水着、天界の人は大胆なんスねぇ。男性が一緒だったら恥ずかしいッスよ‥‥」
ふと、フルーレ達の肢体を見て項垂れるエルマ。胸の大きさはおそらくセーラと同じくらいだろう。しかし、フルーレもリーザも夏樹もいいスタイルをしている。ビキニ姿でアレクサンドルとアルフレッドと戯れながら、トライデントで漁を楽しんでいたフルーレは、エルマの視線を浴びてもじもじと身体をくねらせる。
「よぉぉぉし! 大物ゲット!!」
「大物って‥‥」
釣りに行ったはずのリオンと響は、適度な射程にて真夏のマーメイドたる乙女達の戯れを堪能していた。
「うーむ、あれが水着‥‥天界のアイテムって、ホント素晴らしいよね! エルマさんやセーラさんの熟れる前の禁断の胸もいいけど、フルーレさんや夏樹さんのような瑞々しい胸も、いやいや、玖留美さんやリーザさんのような熟れた大人の胸も捨てがたいし‥‥この世に桃源郷があるなら、まさにこのことだね! そうは思わないかい、響君?」
「え、ええ。やっぱり、綺麗だなぁ‥‥玖留美さんだけはじろじろと見ないで下さいよ」
「ふっ、玖留美さんはキミの本命かい? しかし、ワンピースという水着はいかん。せっかくのスタイルを隠してはもったいない。もっと露出を多くして華やぐビキニという水着で‥‥」
「二人とも、そこで何をやっているんですか!?」
選別を終えた玖留美も水浴びに加わると、リオンと響の評論はヒートアップする。
その為、後ろに狩りを終えたショウゴが来た事に気付かず、彼の声に驚き、そのまま小川へつんのめってしまう。
「あ! ‥‥ごっ、ごめんなさい、わざとじゃ、わざとじゃないんです」
「‥‥あ、響さんも一緒に水浴びどうッスか? 気持ち良いッスよ♪」
「フルーレさん、リオンさんがいることもお忘れなく。ふふふ、氷の傍ってひんやりしてて気持ちいいんですよね」
響は真下から玖留美を見上げる形となり、玖留美は慌てて下腹部を手で隠す。真っ赤になって弁解する響に、彼を男の子として接しつつも、本当の性別は女の子と割と強固に信じ込んでいるフルーレが水浴びに誘うが、エルマは遠慮解釈情け容赦なくアイスコフィンを掛け、哀れ二人の氷柱は水浴びで火照った身体を涼む為に使われることとなった。
一悶着あった後、クラウとスレイと一緒に水浴びをしたショウゴは、玖留美のゴーレムグライダーの特訓に付き合ってクラウと空の散策に洒落込んだ。
「そうそう、九条さん。藤野さんと神林さんに何かお土産はありませんか? 特に神林さんに、心落ち着けるものがあると良いですね‥‥どうやら、気苦労が絶えなさそうですし‥‥」
「ちょ!? 何で私を見るの!? ‥‥って、ちーちゃんは私がいなければ、それなりに息を抜くと思うよ」
玖留美にも千尋に苦労を掛けている自覚はあるようで、自分を見つめるショウゴの視線を玖留美から逸らした。
●二兎を追う者は一兎をも得ず
ショウゴがクラウと一緒に集めてきた薪が組まれて積まれ、その中にリオンが集めた木葉とリーザが提供した固形燃料が入れられ、火が付けられると盛大に燃え上がる。
氷柱から解放されたリオンが、夏樹と一緒に料理の腕を振るう。ちゃんと川魚は釣っており、フルーレが捕った魚と、セーラが採取した木の実やキノコと合わせて、ハーブを使った魚の蒸し焼きやスープが作られる。尚、セーラの採ってきたキノコの中に、鮮やかな色の毒々しいキノコが混じっていたのはお約束か。
「まだ駄目、まだ駄目ですよ‥‥よーし、いい子ですね、食べていいですよ」
手にした獲物を自分で勝手に食べず、主人であるショウゴの指示を仰ぐよう、躾を教え込む。
「うちのパッソは犬みたいに従順じゃないところもあるけど、むしろその気まぐれさが可愛いんだ‥‥という訳で玖留美さん、お店の衣装にネコミミなんてオプションを加えてみたら、どうかなッ!?」
「ネコミミかぁ‥‥面白そうだけど、材料が手に入るかなぁ」
「暗雲立ち込める暗き時こそ、大きな篝火が必要なんじゃないかな‥‥って、オレは思う。店、応援してるから頑張ってね」
愛猫を猫可愛がりしながら玖留美にスィーツ・iランドinウィル店のアイディアを提供するリオン。
「ささ、飲んで、飲んで♪」
「いや、あたし、お酒は‥‥」
「みんな飲んでるのに、一人だけ飲まないと盛り上がりに欠けるッス。リーザさんには飲みやすい天護酒をオススメッス♪」
バニースタイルに着替えてお酌して回る夏樹。お酒が弱いリーザが断ると、今度はフルーレがジ・アースのジャパンから持ってきたという珍しいお酒を注ぎに来る。セーラ達も発泡酒を始め、ハーブワインやどぶろくを飲んでいるので、流石に飲まない訳にはいかず、心の中で血涙を流しながら飲み干したリーザは‥‥急にしおらしくなる。多少お酒に強くなるバッカスの指輪を付けていても、生来のお酒の弱さまでは治せない。
「リーザさん、お酒こぼしちゃダメじゃない〜」
「そ、それは‥‥セーラさんが‥‥わざとあたしに‥‥」
「濡れたままだと風邪を引くッス! 早速拭き拭きッス♪」
「風邪を引かないよう、こちらの服に着替えてしまいましょう」
リーザが弱気になったのをいい事に、セーラがわざと発泡酒をこぼしてフルーレが拭き拭きし、エルマが黒ロリの制服へと着替えさせてしまう。その一部始終は夏樹の携帯電話とメモリーオーディオ、そしてリオンの心の中にしっかりと刻まれるのだった。
「炎に照らされた髪、とても綺麗ですね。あの、玖留美さん、俺‥‥」
「分かってるわ、私でよければリーザさんの告白の練習相手になるよ」
響と玖留美は喧噪から離れ、キャンプファイヤーの炎に照らされた景色が映し出す、ロマンチックなムードの中にいた。思い切って響が告白しようとすると、玖留美が制する。
「でも私自身は、結構嫉妬深いの。だから、私だけを見てくれる人じゃないとダメなのよね。あちこち目移りしたり、他の女性に弄られて楽しんじゃうような、八方美人な男性は好きになれないな‥‥って、音無くんには関係ないよね」
玖留美も相当酔っているようで、酔った勢いで自らの恋愛観を語った。そういえば、一人で発泡酒の小樽を3、4個は空けていたはず。
収穫はあったが、もう少し流されやすい性格を何とかしないと、玖留美の恋愛対象から程遠いところに位置付けられてしまう自分に気付いた響だった。