最凶二人組〜迷宮突貫
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月16日〜08月21日
リプレイ公開日:2006年08月17日
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●オープニング
あの日の依頼から早数ヶ月。
噂の騎士道バカの老人、バラン・サーガはとある街に腰を据えていた。
町人達が困れば自分が率先して其れを解決する。
まるで冒険者のような日々を過ごしていたのだが‥‥。
「はぁ‥‥天界人の面倒、ですか?」
「さよう。我々の手に余るのだ、あの若者は‥‥」
ある日、バランはその地の領主に呼ばれそう告げられた。
天界人が召喚され、この地に配属になったのはいいのだが、その若者がどうも扱い難いというのだ。
よって、同胞にも似たバランになら頼めると思い、呼んだという。
「して、その若者をどうすればよろしいのですかな?」
「鍛えてやってほしいのだ。どうやら本人も其れを強く志願しておってな。昔の貴殿の活躍を聞いて、弟子入りしたいと言って聞かんのだ」
「ほほぅ。わしに弟子入りとな? して、その天界人とやらは何処に?」
「通せ」
領主がそう告げると、兵士達は頭をたれて返事をし、扉をあける。
すると其処には、紅い鉢巻に紅い上半身真ん中半分を露にしている軽鎧を着込んだ青年がいた。
顔つきはとても凛々しく、その目は雄々しくも燃えていた。
「貴方があのバラン・サーガ様であらせられますか!? 俺は月斗と申しますッ! 何卒弟子に!」
「な、なんじゃ!? この若造、何と言う熱いオーラをもっておるか! よかろうっ! わしの弟子となる事を認めるッ!」
「有難き幸せにございます、御館様ッ!」
口調にも特徴があるぐらいの熱血漢。これでは普通の領主が扱えないわけだとバランは悟った。
「して? どのように鍛えればよいのじゃろうか?」
「この者の目付け役である忍と共に、各地を旅して回るがよかろう。手形は手配してやる」
「御館様と共に旅だぞ、玄斗! これは良き旅になりそうだっ!」
「はーいはいはい‥‥熱いの分かったから、旦那。付き添いの忍の玄斗です、よろしくお願いします」
玄斗が月斗を宥めながらそう言うと、バランも悪い気はしなかった。
昔のように部下が出来たのだ、弟子という名の部下が。
これで一人無茶せずに済みそうだと考えれば
「よぉし! では二人共、すぐに馬を用意せい! 丁度この町の近くにモンスターどもが迷宮を作ってるという噂があるのじゃ! 討伐に行くぞい!」
「はい、御館様! この月斗、例え行き先が地獄であろうともお供致しまするっ!」
「旦那‥‥アンタそんな時代の人間じゃないでしょー?」
「煩い、玄斗! うぉぉぉぉぉぉ! 燃えてきたあぁぁぁ!」
かくして、バランの旅復帰の手始めはモンスターが作る迷宮を焼き払うという事になった。
毎度の事心配ではあるが、心配の種がまた増えた為。領主は町に被害が出ぬように、冒険者を監視として募るのだった。
●リプレイ本文
●久しき再会‥‥
「お久しぶりです。相変わらずお変わりはなさそうですね、その様子だと」
老人騎士バランにそう声をかけるアレス・メルリード(ea0454)。
バランは彼を見て覚えているかの如く笑った。
「おぉ、貴殿か! 貴殿も元気そうで何よりじゃ!」
「お久し振りです、バラン卿! 四度、伝説の騎士たるバラン卿のお供が叶うことを光栄に思います。此度も従士の如くお仕え致しましょう!」
「エリーシャではないか! 主も討伐隊に加わるのじゃな? 此れは心強く思うぞ! 共に騎士道を走ろうぞ!」
エリーシャ・メロウ(eb4333)にそう告げると、エリーシャも悪い気はせず寧ろ嬉しいだろう。
何度も頷いて、返事をするのだった。
「焼き払ってしまって良いのだろうか‥‥」
「ん? どうした? そんな深刻に考えて?」
「あ‥‥いえ‥‥討伐は分かるのですが、焼き払う必要性はあるのですか?」
「そりゃあ、ね。モンスターは人類の敵。共存を望むなら何もあんなとこに迷宮作るわけないっしょ?」
アトス・ラフェール(ea2179)の疑問にそう答える玄斗。
モンスターが何かの意図を持って作り出した迷宮。だからこそ人的被害が出る前に叩く。
人的被害が出てしまえば、手遅れなのだ。
「もし。貴方は気付いておられるのかの? 私等がついてくる理由を?」
「‥‥そりゃあね。忍だからってのもあるけど、これじゃ大抵想像はつくよ」
「ふむ、そうか。では、ひっそりこっそりと監視するでの、頼むぞ?」
「はいはい。気付かれないように頼むよ?」
黄安成(ea2253)と玄斗がひっそりとそんな会話をかわしている。
勿論、月斗とバランは其れに気付くわけもない。
だって、眼中にはモンスターだけだもの。
「とりあえず、先行し近辺の町にモンスター討伐の旨を知らせ迷宮に対する情報収集を行っておきます。巣を壊滅させるなら、周囲に事情を知らせておいたほうがいいでしょうし、歓迎の気運があれば凱旋祝いでも町でしてくれるでしょう」
「いや、待て待て‥‥お館様がお館様だし、旦那も旦那だ。やりすぎる場合もあるし、此れが表沙汰になればここの領主のスキャンダルだからな、最初は伏せておいてくれ」
「スキャンダル、ですか?」
「そう。確かにお館様達が巣窟を一掃するなら知らせてもいいかも知れないんだが‥‥心配なのは限度なんだよ」
米神を押さえて、シャルロット・プラン(eb4219)に玄斗はそう告げる。
この二人が暴走した時、やりすぎという言葉は辞書から消えてしまう。
もし、そんなのを表沙汰にしたら‥‥此れこそバランの本当の武勇伝になってしまう。違った意味での。
「弟が世話になった様で、どうもどうも。ま、モンスター退治を頑張りましょうや、バランのじいさんよ」
「ふむ、貴殿が領主に挨拶しようと試みた輩か‥‥たわけめっ!」
ヴァラス・ロフキシモ(ea2538)に一発の鉄拳が放たれる。
キリモミ回転しながら、ヴァラスはべしゃりと地に落ちた。
殴られて当然である。彼は領主に挨拶しようと試みたのだが、その下品な笑みが不審者だと思われたのだ。
更には此れが冒険者か、と領主に少し悪い印象を与えてしまったのだ。
「いいか、若造!? 領主様と接見する時こそ、邪なる念を捨てるのじゃ! 其れ捨てずして会う等、無礼千万である! 次やればこれではすまん事を覚悟めされぃ!」
バランの怒りはご尤も。冒険者は領主より偉いわけじゃない。
更には依頼人だからといって、そう易々と冒険者に会うわけがないのだ。
かくして、彼等の足はモンスターの巣窟へと向けられるのだった。
●熱血突破!
モンスターの巣窟まではそう時間はかからなかった。
街から数十分といった森の中だ。
入り口は薄暗く、まるで夜のように感じられる。
「ここがその入り口ですか? 結構暗いんですねぇ」
「うむ。昼か夜かの判別も迷う程の暗さでの。討伐隊もなかなか近寄らんのだ」
「でもそれじゃ討伐隊の意味ないですよね〜?」
「討伐隊も人の子じゃ。怖いもんは怖いんじゃろう。情けない事ではあるがのぅ」
バランの答えに、ラルト・バーネット(eb5848)もなるほどと頷く。
そして、突貫準備を整えた冒険者達に目を配らせ月斗の肩を叩いた。
「月斗! 主が先頭に立てィ!」
「盾を持ってきましたので、自分が先頭に立ちましょう。無茶をなされては‥‥!」
「心配めされるな! この月斗、お館様のように魂、燃えたぎらせましょうぞ!」
レオニール・グリューネバーグ(ea7211)にそう告げる月斗。
既に暴走のスイッチは押されているようだ。
「見せて貰おうか!あんたの実力とやらを!」
「承知! うおぉぉぉ!」
来栖健吾(eb5539)の一言が暴走スイッチ完全押し込みの役割を果たしてしまった。
二本の槍を両手に構え、一気に巣窟内へと走って行く月斗。
其れを見て、玄斗とアレスは米神を押さえるのだった。
「‥‥バランさんに月斗さんか。なんだか苦労の種が二人に増えてしまった感じだ‥‥これはまた、あの勢いに付いてくには骨が折れそうだ」
「同感‥‥」
●熱血撃破!
「しかし、本当に暗いですね、中も?」
アトスが持ってきていた携帯のランタンを掲げながらぽつりと呟く。
因みに突貫した月斗は、勿論前線。うっかり顔出したモンスターさえなぎ倒していく勢いだ。
その月斗の隣には、負けじとエリーシャがいる。弟子同士の競い合いにもみえなくもない‥‥。
「まあなんだ自分の短所と長所を知っているのと把握しているんじゃあ意味が違うって事だわな」
月斗を見やりながら、王風門(eb5247)がそう漏らす。
苦笑を浮かべるアレス。アレスは分かっているのだ。風門が言うほど、彼等は無知ではないという事を。
彼等の冒険に付き合っていたのだから。但し、この熱血がなければの話である。
「お館様! 行き止まりでございますっ!」
「お? 行き止まり? 道は一本しかなかったよな?」
アレスが不思議がって前へと進む。
確かに其処には壁しかなかった。大きな壁である。
「しかし、大きい壁だのぅ? 道も一本しかなかったし、どうなっておるのかのぅ?」
「月斗!」
「はいっ!」
バランが月斗の名を呼んだ。その瞬間、玄斗とアレスは嫌な予感を感じとるのだった。
まさか‥‥やる気なのか‥‥? 本当に‥‥?
「進めぬのなら、進めるようにするのじゃ!」
「承知! うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
「やばい、本気でやる気だ!!」
「皆さん、崩れますよ! 離れてください!」
エリーシャが咄嗟に避難するようにと仲間に指示を出す。
皆が一歩後ずさった瞬間の出来事であった。
大きな音をたて、壁が崩れ落ちる。月斗の一撃によるものだ。
‥‥本当に最凶師弟だと思ったアレスなのだった。
しかし、悲劇は其処では止まらない。
何と、壁を崩した先は‥‥
「おいっ! 前ッ!」
健吾が慌てて得物を手に握る。
「うっわー‥‥これはモンスターハウスですねぇ〜‥‥」
「暢気にいってる場合じゃないですよ、ラルトさん! 一気に片付けましょう!」
「月斗よ、熱く時代を駆け抜けるのじゃ!」
「承知ィィィィ!」
もうその後はてんやわんやであった。
暴走スイッチ完全押し込みされた月斗が敵陣の中に突っ込んでいく。
其れを制御しようとレオニールとアトスが奮闘するも、エリーシャと共に暴れている為なかなか上手く行かず。
更には風門が狂化した状態で暴れている為、其方を優先せざる得なくなったり‥‥。
ただ、唯一の安全はアレスはバランを。健吾とレオニールが月斗の背を守っていた事であった。
●結局暴走しました
その乱闘から数分後。迷宮の入り口では‥‥。
「はー‥‥はー‥‥」
「ぜぇ‥‥ぜぇ‥‥」
必死に暴走を止めようとしていたレオニールとアトス。
肩で息をして二人既にぐったりしていた。
勿論、バラン、月斗、玄斗に怪我はない。
「よーし、燃やすぜ、旦那?」
「おう! 盛大にやれぃ!」
月斗の一言で、玄斗は迷宮に焔を投げた。
迷宮は一気に火の手が廻り炎上していく。その焔で何時の間にかとってきた動物を調理し始める健吾だった。
「今回も大変でした‥‥バランさん、油注ぎすぎです!」
「何を言う、アレス! わしの弟子はこうでなくてはならんのじゃ!」
「私も短い間ではありましたが、バラン様の下で教わった身‥‥月斗さんのご活躍ぶりには感服致しました」
「‥‥ほんと凄いよ〜‥‥槍で壁一掃しましたし〜‥‥」
ラルトが少しがくぶると震えながらそうぼやく。
そして、バランは思い出して告げるのだった。
「そう言えば、主等の仲間からフオロへの勧誘があったのじゃが。返事を伝えておく。王の勅命でも無い限り無理じゃ」
そりゃそうだ。バランは元々フオロの人間だった。しかし、エーガン王によりヒマを言い渡されたのだから‥‥。
「玄斗さん、そういえば忍びの者と紹介されましたがどちらの御出身で?
「俺? ジ・アース、ジャパンの者。此れしか教えれないねぇ」
忍たる者、自分の流儀をそう易々と教えてはいけない。
その為、ジ・アースより来たという答えに留まるのだった。
「やりました! やりました、お館様!」
「うむ、よくやった‥‥月斗ぉ!」
「お館様ぁ!」
その後、炎上する迷宮の前で感激のあまり殴り合うバランと月斗。
バランの拳を受けても拭き飛びはするものの、気絶はしない物凄い月斗の姿を見て‥‥
「何か‥‥本当に心配なんだけど‥‥」
「同感‥‥」
アレスと玄斗がそうぼやくのであった。