カオスサマナー〜火と氷に抱かれて

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:10人

サポート参加人数:4人

冒険期間:08月16日〜08月21日

リプレイ公開日:2006年08月17日

●オープニング

 ミハイルの研究小屋。
 其処に、前回の報告書を読み漁るミハイルの姿があった。
 双方、無事に一匹目の魔物を捕縛出来た。
 しかも、双方の資料はとても真新しい。研究の成果にもなりうる。

「ほっほ。これぐらいの勢いが無けりゃ次も早々上手くいかんわな」
「次は何を企んでるんだ、じーさん‥‥?」
「企むとは失敬な。次のカオス捕縛にきまっとるじゃろ!」
「次はどんなのなんだ?」
 統夜が尋ねると、ミハイルはさも嬉しそうに笑って資料をポイッと差し出した。
 其処に描かれているのは雪ダルマみたいな形をした、二足歩行の物体。
 蒼い帽子を被っている。
 そしてもう一つの資料にはカボチャ頭でランタン持った空飛ぶ物体である。
「この二匹を捕縛すればいいのか?」
「そうじゃ。この二匹、とても悪戯好きでの。鬼ごっこの状態となるやも知れんし、それぞれ火と水の属性魔法を使いおる。厄介なのじゃ」
「そんな厄介なのを二匹も纏めて‥‥かよ‥‥」
「大丈夫じゃ。こんな事もあろうかとな、こやつを呼んでおいたのじゃ」
 ミハイルが手招きすると、一人の男が部屋へと入ってくる。
 統夜も顔見知りなのか、驚きはしない。ワルプルギスの紋章剣士だったのだから。
「おい、じーさん。人をこんな所に呼び出しといて何の用事だ?」
「お前さんに統夜の事を頼みたい。今の所おまえさんくらいしか、安心してまかせられん。勿論、他の冒険者にも働いて貰うがの。お前さんなら信頼出来るんじゃ」
「じーさん‥‥とか何とか言って、また厄介なのとぶつける気じゃねぇだろうな?」
 ワルプルギスの紋章剣士の鋭い目つきに、ミハイルはそっぽを向いて口笛を吹く。それを見て彼は小さく舌打ちをすると統夜へと向き直った。
「あのじーさんに目ェ付けられた時点で、全てを諦めるんだな。やる気なんだろ?」
「もうとっくに覚悟は出来ている‥‥ゴウト、お前もそうだな?」
「主が出来ているのなら俺も出来ているぞ。安心めされい」
「で? 今回のターゲットはどんなんだよ?」
「ほれ」
 ミハイルが先程、統夜にも見せた同じ絵を彼にも見せる。当然の如く彼は絶句。咥えていたパイプもゴトリと落ちる。
 そして、普段渋い彼に似合わぬ声が響くのだであった。
「結局厄介な奴じゃねえかあぁぁぁぁぁぁ!」

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea1819 シン・ウィンドフェザー(40歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea3651 シルバー・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb1182 フルーレ・フルフラット(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb3536 ディアドラ・シュウェリーン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

キッテン・マラドロイト(eb1194)/ 時雨 蒼威(eb4097)/ リディリア・ザハリアーシュ(eb4153)/ メレディス・イスファハーン(eb4863

●リプレイ本文

●ちっちゃな子供。二人の子供
 統夜が何時ものように冒険者達に目隠しをして、現地へと彼等を運ぶ。
 荷馬車を降りれば、其処は不思議と暑くもなく、寒くもない。
 この季節には珍しい気温だった。
「何だか暖かいな‥‥言ってた二匹の所為か?」
「うむ、バランスを保っておると思ってよいだろうな。では、冒険者の諸君。宜しく頼むぞ?」
「へいへい‥‥ったく、あのじーさんにはかなわねぇよ‥‥」
 そうぼやきながら、シン・ウィンドフェザー(ea1819)が辺りを見回す。
 すると其処にいたのは見せられた絵と同じ魔物。
 可愛らしい顔がひょっこりと見えていた。
「何か来たホよ?」
「何か来たホね?」
「人間だホ?」
「人間だホ」
 そんな単調な会話を繰り返すと、再びその二匹は冒険者達へと視線を戻す。
「ふーむ、かぼちゃと雪だるまか‥‥ハロウィンでも冬でもないからどっちも季節外れだよねえ?」
「俺達と一緒に遊びませんか‥‥?」
「僕達と遊ぶホ?」
「僕達と遊ぶホ!」
 イェーガー・ラタイン(ea6382)の言葉に、喜びを見せる二匹。
 どうやら精神的、思考的にも全て子供のようなものである。
 此れは此れで安心ではあるものの、心配なのは他にもあったのだ。
 子供と遊ぶ時‥‥大人は体力をフルに使うのだから‥‥。
「‥‥ほんとにこういうモンスター居るんだね、何か凄い世界来ちゃったなぁと改めて、ねぇ?」
「‥‥いや、俺に言われても‥‥」
「まぁ、珍しいといえば、珍しいんだろうな。俺達天界人にとっては‥‥」
「やっぱりハロウィンの日には、団体さんで脅迫しに来るんですか?」
「脅迫って何ホ?」
「脅迫って楽しいホ?」
 音無響(eb4482)の尋ねた「脅迫」という言葉に、どうやら興味を持ってしまったご様子。
 此れは危ないと思ったフルーレ・フルフラット(eb1182)が手に持ったコインをちらつかせた。
「鬼ごっこするっスよ♪ 自分を捕まえる事が出来たら、此れはあげるっス♪」
『やるホー!』
 コインに目を奪われた二匹は、逃げるフルーレを追いかけはじめるのだった。

●鬼ごっこ? かくれんぼ?
「おっにさんこっちら♪」
「ホー!」
 フルーレが雪ダルマの魔物と遊んでいる間、カボチャの魔物はランディ・マクファーレン(ea1702)が連れてきていたエレメンタルフェアリーであるエルデに興味を惹かれていた。
「この子も喋るホ?」
「ホー♪」
「‥‥そんなに上手くは話せないようだ」
「ダメダメだホー! 僕みたいに立派な魔物にならなきゃだホー?」
「ホー♪」
 バカにされているのも分からず、エルデも同じ言葉ほ繰り返す。
 此れには飼い主であるランディも頭を痛めるのだった。
 しかし、これで此方の目的に一歩近づいた為、よしとするべきだ。
「よし、じゃあこっちはボール遊びでもするか?」
 ビーチボールを差し出しながら、シンがカボチャ君にそう提案する。
 すると、カボチャ君。意外にボールに興味を示して‥‥
「遊ぶホー! やるホー!」
 勢い持ってるランタン振り回し、ボールをべちんっ! とはたくのである。
 ぽーんと飛んでいったボールを見て
「取って来るホ♪」
「わ、わたくしですか?」
「取って来るんだホ!」
 ここで機嫌を損ねては大変な事になる。ルメリア・アドミナル(ea8594)は渋々その飛んでいったボールを拾いに行くのであった。

「捕まえたホー! 頑張ったホー!」
 その頃雪ダルマ君は、必死の奇襲作戦やら、隠れてシュパパン! と抱きつくような形でフルーレを捕まえていた。
「ありゃ、つかまったっスね〜。じゃあこのメダルは贈呈っス♪」
「やったホ! 取れたホ!」
「フルーレ、つかまっちゃったのねぇ。そう言えば、雪ダルマ君とカボチャ君にはお名前あるのかしら?」
「ないホー。捕まえたら名前つけるホー」
 ディアドラ・シュウェリーン(eb3536)の問いにそう答える。
 どうやら、彼等の知能は子供並ではあるものの、魔物捕縛の話は知っている様子。
 仲間として捕縛されればそれなりの名称をつける気のようだ。
「よし、じゃあ次はかくれんぼでもするか?」
 龍堂光太(eb4257)の提案に、雪ダルマも快く応じる。
 子供達の遊びにとことんまで付き合う気な冒険者達。
 しかし、彼等のスタミナはタフに近くなかなか飽きる事はなかった。

●夕刻過ぎには‥‥
「つ、疲れます‥‥流石に‥‥」
 そう言い出したのはシルバー・ストーム(ea3651)。
 エルフであるが為、そんなに体力がない彼は少し息切れを起こしている様子。
「でも一人見つからないホ!」
「見つけるまでやるホ!」
 二匹は相当ムキになっている様子。
 探しているのはアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
 インビジブルのスクロールを使って姿を消している為、二匹の目に映らないのだ。
 二匹はもう必死である。森の中を探したり、木の上を探したり‥‥。
「ゴウト、あれはあれで役に立つのか‥‥?」
「あの二匹は偵察能力に長けている。落ちているものを何でも拾うという習性があるが‥‥」
「まったく‥‥あれでは本当に疲れきってしまうな」
 そう言うと、統夜は遊び疲れはじめた冒険者達の手助けにと自分が前に出た。
「俺も探してやろうか‥‥?」
「いいんだホ?」
「頼んでいいホ?」
「あぁ、その代わり条件がある。‥‥其れはお前達も分かっているな?」
「その変な筒に入ればいいんだホ?」
「狭そうだホ。でも、背に腹は変えられないだホ!」
 何とも簡単に契約を承諾する二匹。
 知能が子供の為、アシュレーさえ見つかれば満足するというのだ。
 しかし、相手はインビジブルを使っている為早々と見つかりはしないだろう。

「どうするッス? このままじゃ見つかるまでここにいる事になるッスよ?」
「もう夕暮れですし、このままでは夜になってしまいますねぇ‥‥俺達も探しましょうか?」
「其れが一番だな。まったく、アイツが場の空気を読んで出てきてくれればいいんだが‥‥」
 シンの不安気な一言は、彼に届いたのだろうか?
 それとも、届かず未だ隠れているのだろうか?
「とりあえず、俺も探すのを手伝おう。作戦の話通りなら、此れが役に立つはずだ」
 そう言うと、ランディはオーラエリベイションを発動させ、聴覚と視覚を強化してアシュレー探しを始める。
「ホー! 早く出てくるんだホー!」
 苛立ったカボチャ君がいきなりランタンから炎を飛ばし始めていた。
 どうやら機嫌が悪くなり始めているようだ。
(「あちゃ‥‥此れはそろそろ出ないとまずいかね‥‥?」)
「出てきてくれないと困るホー!」
 雪ダルマ君も少し不安気である。
 このまま見つからなければ、人間すら見つけられない魔物としてバカにされるからである。
(「タイミングを見計らって‥‥」)
 流石にマズイと思ったアシュレーも、二匹が近づいてきたのを確認すると茂みの中で大きな音を立てる。
 その音を聞きつけて、二匹は茂みの中を覗きこむ。
「あっちゃあ、見つかっちゃったかー。上手く隠れたつもりなんだけれどなー‥‥」
「見つけたホ♪」
「見つけたホっ。約束通り、トウヤの仲間になるホ!」
「約束は守るんだホ♪」
「トウホー君って呼ぶホ!」
 その言葉を耳にした統夜は頭を抱え込んだ。
 何で自分の名前を文字ってそう名乗るかが分からなかった為だ。
 しかし、これで契約は成立。捕縛が出来るというもの。
 統夜は管を二本取り出すと、ゆっくりと精神を集中させた。
「我が名において命ずる‥‥全ての魔、全ての生命‥‥全て我に捧げ仕えよ‥‥汝は我がつるぎ。我が盾なり‥‥吸引ッ!」
「ホホー!? そんなに強く吸っちゃダメー!」
「頭が変形しちゃうホー!?」
 それぞれ文句を口にしながらも、無事吸引は完了。
 其れと同時に冒険者達はぐったり座りこむのである。
「‥‥疲れた‥‥心身共に‥‥つか、まだ序盤でこれかよ」
「なんか‥‥あの言葉使いがまだ耳に残ってるよ‥‥」
「本気で疲れたッス‥‥何なんだろう、本当に‥‥」
 体力ある冒険者達をも疲れさせた二匹の魔物。
 子供であるが故に恐ろしいものだった。

●帰り道
「さて、今回の魔物の情報だが‥‥名称は決まってはいないようで、新種のようだ。火と水の扱いにそれぞれ長けており、冷却、解凍等は自由自在。偵察能力に長けているようだな」
 ゴウトがそう冒険者達に告げる。二匹の魔物は管の中でどたばたと暴れている様子だった。
「ゴウトさん、こっちは捕まえたカオスとの絆が深くなくても大丈夫なのでしょうか?」
「そうだな、其れも此方は考えなくてはならないんだが‥‥サクラみたいにピクニック、というわけにはいかんだろうな」
「‥‥そうなんですか?」
「そろそろ統夜も実践に立たねばならん。そのサマナーの力を駆使してモンスター討伐をするのだ。サマナーは、指揮能力が試されるものだからな」
 ゴウトの言葉に、統夜は沈黙する。
 未だ不安を抱える自分に、其れが出来るかどうか、不安なのである。
「何れは強敵と戦わねばなるまい。統夜、気を引き締めろ」
「其れくらい、分かってる‥‥」
「性格が子供みたいで悪戯好きって、予測出来ないようなコトしそうで、下手なモンスターよりもやっかいですね‥‥所で、雪だるまくんとカボチャくん自体は仲いいのかなぁ?」
「仲は非常にいいらしいな。彼等は彼等で同じ釜の飯を食っていたようだ」
 響の質問にゴウトが答えていると、光太が統夜の目の前に立った。
 その表情は真剣そのもの。彼に一つ、問いたい事があるのだという。
「カオスを使うということはカオスに踏み込むということでもある。カオスに取りこまれず、こちらの世界に踏みとどまるための何かが、君にはあるのか?」
 その問いに、統夜の瞳は一瞬曇った。
 されど、素直にこう答えたのだ。
「今はまだない。だが、其れを探す為の旅でもある。‥‥今は、そうとしか言えない。だが‥‥」
「‥‥?」
「お前達みたいな冒険者と共にありたいと願う事。此れが今言える、唯一の踏みとどまるための何かだ‥‥」
 そう言うと、統夜は少し照れくさそうにそっぽを向いた。
 此れにはゴウトもやれやれと首を竦めるだけだった。
 しかし、そんな統夜を見て一人の女性は心を奪われていたようだ。

「‥‥カオスだけじゃなくて、わたしのことも捕まえてほしいわ」
 ディアドラがぽつりと呟いた言葉は、彼の耳に入る事はなかった‥‥。