ザ・ちぇんじ〜入れ替わった子供達

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 32 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月15日〜09月20日

リプレイ公開日:2006年09月16日

●オープニング

「きゃあっ!? 台所に虫がっ!」
「また坊ちゃんの仕業ですね!?」
「引っかかる方が悪いんだー♪」
 怒り顔の侍女を見て、ニヤニヤと笑みを浮かべる幼き子供。
 侍女が捕まえようとすると、ぴょいっと避けて逃げていく。
「お待ちになってください、坊ちゃま!」
「やーだね! もーちょっと綺麗な顔で怒れよなー!」
「んもうっ! 余計なお世話だっていうのよっ!」
「どうかしたのかい? 賑やかなようだったけれど‥‥?」
「アルフレート様! いえ、其れが‥‥」
「やれやれ。またイェールクかい?」
 アルフレートと呼ばれる騎士風の男が尋ねると、侍女は恐る恐る首を縦に振った。
 其れを見て、アルフレートは小さく溜息をついた。まるでまたか、と言わんばかりに。
「我が息子ながら、毎日毎日‥‥懲りないな‥‥」
「い、如何なさいましょう‥‥?」
「仕方ない‥‥僕は此れから会議があるから其方に行く。イェールクについては帰って来たら言い聞かせるとしよう」
「はい‥‥いってらっしゃいませ‥‥」
 アルフレートが出て行くと、侍女達は憂鬱の表情を浮かべるのだった。

 アルフレートは王都に住む男爵の一人。元々は騎士として働いていたのだが、今は子爵家に婿入りし継承している。
 その息子がイェールク。しかしこの息子はとんでもない悪戯好き。父アルフレートに怒られても反省の色もなく毎日悪戯三昧な生活をしているのである。
 そんな彼に、母親はいない。母はイェールクを産んだ時に亡くなってしまったのだ。其れを今は父親の手一つで育てられている。
 そんなイェールクには、一つ興味を持っている事があった。
 其れは‥‥。
「平民の生活ってどういうのなんだ?」

 そう。平民の生活への興味である。
 貴族とは違い、平民は決して裕福とは言えない家で暮らしていると聞く。
 食べ物も、着る物も、毎日の生活も全て違うと聞いているのだ。
 こういった話はよくアルフレートからされており、イェールクも興味を持っていた。
「一度でいいから、そういう生活してみたいよなー」
 貴族にとって平民の生活は興味のあるもの。
 平民にとって貴族の生活は羨ましいもの。

「そうだっ! なぁ、なぁっ!」
「どうしました、坊ちゃん?」
「俺、友達が作りたくなった! 平民の子を何人か集めて来てくれよ!」
「おぉ! 遂に坊ちゃんもお友達を作る決意をなされましたか! 今の今まで寄り付く子供に悪戯をしては嫌われていたあの坊ちゃんが‥‥!」
「爺、いいから早く連れてきてくれよっ!」
 イェールクに言われた通り、執事は色んな平民の子供を集めた。
 可愛い女の子から元気な男の子。その中には一人目立たない子供が混じっていた。
 友達を作りたいといったイェールクの為に、大人しい子も執事は連れて来たようだ。
「ふーん、こいつ等が平民の子か」
「どうぞ存分にお遊びください。私はお茶を淹れて参りましょう」
 嬉しそうに笑って執事がその場を後にすると、イェールクは物色するかのように子供達を眺めた。
 そして、一人の子供に目をつけるとその子供の前に立った。痩せてはいるものの、背格好も顔立ちも、驚くほどそっくりな少年だ。

「お前、名前は?」
「ぼっ、ぼく!? え、えっと‥‥アレフ‥‥です‥‥」
「よし、アレフ! 俺と服を交換しろ!」
「え、ええっ!? イェールク様、一体どうするつもりですか‥‥!?」
「決まってる! 俺がお前になって平民の生活をする! お前が俺になって貴族の生活をするんだ」
 とんでもない提案に驚きを隠せないアレフ。
 確かに自分は貴族の生活に憧れてはいる。しかし、このような形で入れ替わり、バレたら後で困るのは自分だ。
 何を言われるか。何をされるか分からない。
「そ、そんなのバレるに決まってますよ!」
「だーいじょうぶだって! 俺とお前、髪型も顔も似てるし‥‥数日たったらまた戻ればいいんだって!」
「で、でも‥‥バレたら‥‥!」
「あーもう! まどろっこしい奴だな! いいから早くかせよっ!」
 我侭なイェールクはアレフの承諾の声も聞かず、着ている服を交換した。
 此れでイェールクはアレフに。アレフはイェールクになったという事になる。外見だけは。
「坊ちゃん、お茶が入りましたよ」
「あ。ありがとうござ‥‥」
「バカ! 俺は敬語なんてつかわないぞ!」
「え‥‥!? あ、ありがとう‥‥!」
「おや、坊ちゃんがお礼を言うだなんて‥‥お友達が出来れば変わるものですなぁ」
 何とか執事を騙しきったイェールクとアレフは、暫く庭で遊んだ後、それぞれの家へと戻った。
 イェールクはアレフの家へ。アレフはイェールクの部屋へと‥‥。

「ただいま。イェールク、いるかい?」
「あ、はい‥‥ッ!?」
「‥‥? どうした、イェールク? 急に僕に敬語なんて使って?」
 アルフレートが不思議そうにアレフを見ると、慌ててアレフはイェールクを演じ出した。
「最近友達がそういうのやってみろって言ってたんだ。だからやってみてるだけだっ!」
「そうかい? そんな事言う友達がイェールクにはいたんだな、僕の知らない所で成長しているんだな。‥‥食事にしようか、皆待っているよ」
「うん!」
 アレフは内心ヒヤヒヤしていた。何時バレて外にほっぽり出されるか判らない。
 こんな夜に表にほっぽり出されでもしたら、寒空のした野宿する事になる。
 本来の自分の家に戻っても、イェールクがいる為追い返されてしまうだろう。
(「僕‥‥どうすればいいんだろ‥‥」)

 そんなイェールクもこの数日で平民の大変さを実感していた。
 朝は早くから叩き起こされ、家の中の掃除、水汲み、お使い。屋敷では皆執事達がやるような事ばかりやらされていた。
 平民の子供はこうして逞しく育っているのだと‥‥。彼にとっては、とんでもない事。早く元に戻らなくては。
 そう思い、本来自分の家である屋敷を尋ねるのだが‥‥。

「どちら様ですか?」
「あの、アレ‥‥じゃなかった、イェールク様はいらっしゃいますか?」
「坊ちゃんなら勉学中です。お会いにはなれません」
 どうやら、イェールクとなっているアレフが真面目に勉学等をしている為、執事も其れを邪魔したくないとの事。
 このままでは互いは元には戻れない。
「お願いです、少しだけでいいから‥‥!」
「ダメです」
「‥‥外に誰か来てるの?」
「坊ちゃんに合わせてくれという平民の子供らしいですね‥‥執事が追い返していますから、坊ちゃんは気にせず勉学に励んでください」
 侍女の言葉でアレフは察しがついた。どうやらイェールクが外に来ているようだ。
 戻らなくては。何としてでも会って戻らなくては。アレフにとって貴族の生活というのは慣れないもの。落ち着かないのである。

 結局彼等は戻る事はなかった。
 しかし、数日後。予想にもしない人物からギルドに依頼が来たのである。
「すまない‥‥こんな事を頼んでいいのかどうか判らないが‥‥僕の息子と彼の友達である子を何とかして元に戻して欲しいんだ。息子も此れに懲りて悪戯は止めるだろうと思って放って置いたんだけど‥‥」
「気付いてらしたんですか‥‥? 入れ替わった事に‥‥?」
「僕は息子の父親だよ? 自分の息子を見間違える程バカじゃない。其れで、お願い出来るかい? 生憎俺は忙しくて屋敷の書斎から出られない。執事に本当の事を話し全てを任せてあったのだが、執事や侍女達はこのままがいいらしくてね‥‥息子が来ないように監視をしているんだ」
 アルフレートはそう言うと頭を下げた。今度のことは、親として息子を教育する絶好の機会だと考えているようだ。
 平民の少年と貴族の少年。果たして、無事に戻る事が出来るのだろうか‥‥?

●今回の参加者

 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 eb4189 ハルナック・キシュディア(23歳・♂・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4381 ザナック・アレスター(33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4395 エルシード・カペアドール(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4412 華岡 紅子(31歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb6902 宇上 竜(26歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●依頼人と合流
「すまないね‥‥わざわざこんな事で呼び出してしまって‥‥」
 アルフレートがそう言うと、冒険者達は軽く会釈をして見せた。
 優しく笑って首を横に振る。まるで、堅苦しいのが苦手のようだ。
「それで、アルフレート様。少しお願いがあるのですが‥‥」
「お願い? なんだい、何でも言ってくれるかな?」
「私を含めて三人‥‥御屋敷にお招き頂けませんか?」
 ザナック・アレスター(eb4381)が尋ねると、アルフレートが静かに頷いた。
 どうやら、招待状を書いてくれるようだ。サラリと書くと、ザナックに手渡す。
「‥‥あの年頃の貴族の御子の御世話ともなれば、それなりに気苦労が多いのでは?」
「そうだな‥‥でも、あの子がいるお陰で僕は頑張れている。そう確信しているよ」
 ランディ・マクファーレン(ea1702)にそう言うと、アルフレートは屋敷へと戻っていった。
 此れ以上、彼から話を聴くことは出来なさそうだ‥‥。

●貴族な平民
 招待状を貰った三人は、早速アルフレートの屋敷へと向かった。
 対応に出たのは、年老いた執事だった。
「どなた様ですかな? どのようなご用件でしょうか」
「俺達はイェールク様の家庭教師として来た」
「はぁ‥‥坊ちゃまのですか? そのようなお話は聞いておりませんが‥‥」
「アルフレート様より直接頼まれました。これが其れです」
 ザナックが書いてもらった招待状を見せると、執事は小さく頷いて彼等を中へと通した。
 そして、彼等はイェールクの部屋に通されると執事は侍女と一緒に出て行った。
「‥‥行ったみたいだな」
「あ、貴方達は‥‥?」
「私達は、貴方とイェールク様を元に戻しに来ました」
「ほんとですか!? 戻れるんですね‥‥僕達‥‥」
「イェールク君がとんでもない事をして迷惑をかけてすみません‥‥」
 ザナックが謝ると、アレフは小さく首を横に振って俯いた。
 なにやら彼は彼で申し訳がないと感じている所があるのだろう。
「騎士はいつも民に感謝し、また民を守るために技と知恵を磨いています。イェールク君も、きっと今回の事で反省してくれると思うんです。彼をどうか、許してあげて欲しいんです」
「そんな事ありません! 彼は何も悪くないんですっ!」
「‥‥え?」
「僕だって、貴族の暮らしに憧れてたし、抵抗しようと思えば抵抗出来ました。それに‥‥すぐバレると軽い気持ちもあったんです!」
「優しいんだな、アレフは?」
 ランディがそう言うと、アレフは思わず口を塞いだ。
 そして、ランディの提案でアレフを外に出そうという事になった。

「どちらへ行かれるのですか?」
「イェールク様に乗馬を教える。その為、少し外へと出ようと‥‥」
「そうですか。‥‥くれぐれも、お怪我だけはさせぬよう、お願いしますよ?」
 ランディとザナックは小さく頷くと、アレフを外へと連れ出した‥‥。

●平民な貴族
 その頃、ハルナック・キシュディア(eb4189)とエルシード・カペアドール(eb4395)、華岡紅子(eb4412)はイェールクがいるという民家へと向かっていた。
 其処には懸命に働く子供の姿が見えた。
「あの子かしら‥‥?」
「みたいも。さ、いきましょ」
 エルシードがそう言うと、三人は彼へと近づいていく。
 その時だった。イェールクはバランスを崩し水を零してしまう。
「大丈夫?」
「だっ、大丈夫だ! 気安くさわんなよっ!」
「あら‥‥」
「俺はアルフレート男爵の息子だぞ!?」
「はいはい‥‥で、どうしたの?」
 エルシードが軽く聞き流すと、機嫌を損ねたのかそっぽを向いてしまった。
 此れでは、連れ出す所が心を打ち明けてくれる様子にはなれないようだ。
「まぁまぁ‥‥。其れはそうとして、何か困っている事でもあるの?」
「何でだよ?」
「何か、悩みを抱えていたみたいだったから」
 紅子がそう言うと、イェールクはぷいっとそっぽを向きながらぽつりぽつりと話を始めた。
 アレフと入れ替わって元に戻れなくなった事。全て。
「ふぅん。そうなの。でも執事達は貴方に帰って来て欲しくないんじゃないかしら?」
「エルシードさん、言いすぎよ?」
「本当は貴方に気付いてるのに追い返してるのかもね。我侭放題に悪戯していたなら当然だけど」
「俺だって‥‥本当は‥‥」
 ぼそりと呟きかけた言葉をイェールクは飲み込んだ。
 其れに紅子は薄々感づいているようだった。握り拳を作っているイェールクの手が見えたからだ。
「エルシードさん、其処までよ」
「そうですね。‥‥だが気をつけた方が良い。民は貴族に反抗できないし、仮にすれば命がない。君から見て信頼に足る貴族であることを自らの行いで示した貴族以外には、たとえ子供であっても近づかないようすべきだよ。貴族の気まぐれで潰されて良いほど君の将来は安いものではないだろう」
「‥‥‥‥」
 沈黙してしまったイェールクを、紅子が優しく諭し連れて行くのだった。
 この子には何かある。何か表に出していない思いがある、と。

●合流
 数日過ぎて。家庭教師となった三人は毎日のように外で授業を行っていた。
 ランディが馬を引きながら、一行は今日も歩いていた。宇上も一緒にだ。
「‥‥貴族の暮らしは如何だったかな、アレフ?」
「平民とは違う意味で、貴族も大変なんですね‥‥其れに‥‥」
「其れに?」
「‥‥イェールク様のお気持ちが、少し分かった気がします」
 アレフがそう言うと、ランディとザナックが顔を見合わせた。
「きっと‥‥寂しかったんです‥‥彼‥‥」
「アレフ‥‥」
「では、彼にも事情を聞きましょうか」
 そう言うと、ザナックは前の遠くを見た。
 其処には、四人の人影。
 イェールクとエルシード達だ。
「そっちは上手くいったようね」
「そっちの首尾はどうだ?」
「全然。この子ったらちっとも話してくれなくて‥‥」
「では、どうしようか‥‥元に戻すのは‥‥」
「私に心当たりがあるの。戻してあげてくれないかしら?」
 突然、紅子がそう提案すると、冒険者達は顔を見合わせた。
 協議の結果、アレフとイェールクの服を元へと戻すのだった。

●そして、屋敷へと‥‥。
 紅子の提案で二人を元に戻すと、二人を連れてそのまま屋敷を尋ねた。
 執事達は元に戻ったのに気付いたようで、がっかりした様子だった。
「アルフレート様にお会いしたいの、いいかしら?」
「イェールク!」
「父さま‥‥!」
「心配させて‥‥ホントに‥‥!」
「‥‥」
 アルフレートが撫でようとすると、イェールクはそっぽを向いてしまった。
 拗ねているようではない。何か不満があるようだった。
「まったく、この子ったら。ねぇ、どーしてこんな事したのか、そろそろ話してくれない?」
「今ならしっかり本音を言っていいんですよ?」
「どーせ何時もの我侭じゃないの?」
 エルシードがそう言うと、ハルナックが間に入った。すると、イェールクは涙をぼろぼろと流し始めるのだった。
「‥‥さまの所為だ‥‥」
「ん‥‥?」
「父さまの所為だ! 何時も何時も何時も! 会議だ執務だって俺と遊んでくれなくて!」
(「やっぱり‥‥そういう事だったのね‥‥」)
 紅子は心の中でそう呟いていた。
 そう、彼は寂しかったのだ。父に構って貰えず‥‥だから悪戯で気を引かせようと、子供なりに頑張ったのだ。
「イェールク‥‥」
「去年の誕生日だって、俺一人で過ごしたんだぞ! 一昨年の誕生日も! ずっと! ずっと父さま、いてくれなかったじゃないか! ずっと待ってたのに!」
 イェールクがそう叫ぶと、アレフが慌てて彼の傍へと駆け寄った。
 どうやら彼も感じていたようだ。彼の心の中の寂しさを‥‥。
「アルフレート様‥‥忙しくても執事さん達に任せるような必要最低限なものではなく、確りと子供と接してあげて欲しいです‥‥」
「‥‥彼女が死んで‥‥ずっと僕が息子の模範にならなきゃと思って頑張ってたのが‥‥まさかこうして寂しがらせていたなんて‥‥」
 紅子の言葉に、沈んだ表情を浮かべると、宇上竜に背を押されたアルフレートは泣きじゃくるイェールクの前にしゃがみこんだ。
 そして、彼の頭をポンと叩くとこう言うのだった。

「イェールク。平民の暮らしはどうだった?」
「‥‥え?」
「父さんよりお前の方が、その経験は上なんだぞ? 話をいっぱい聞かせてくれるね?」
「父さま‥‥執務は‥‥?」
「そんなの後廻しでいいよ。今は息子の方が大事だ。冒険、いっぱいしたんだろう? その話も聞きたい」
「父さま‥‥!」
「それと‥‥アレフ君、だったかな?」
「は、はい!?」
「‥‥イェールクの良き友でいてほしいんだけど‥‥どうかな?」
 にこりと笑みを浮かべるアルフレート。
 アレフは嬉しそうに笑いながら頷くのだった。
「良かったわね、アレフくん?」
「イェールクも、良かったな?」
「此れからは、友達で‥‥いてくれるか?」
「僕の方こそ‥‥! その‥‥今度、一緒に遊びましょう。いい遊び場、知ってるんです」
「‥‥子供は子供同士。理解し合うのも早いものだね」
「アルフレート様も何時か理解出来ると思いますよ?」
「そうだと、いいんだけど‥‥」
 寂しそうな笑顔が、なんとも印象的だった‥‥。
 けれど何時か分かり合える日が来るだろう。
 例え母がいなくとも、彼等は親子なのだから。
 子の事は親がよく知り、親の事は子がよく知る。
 そんな関係になって欲しいと、冒険者達は願う。
 その願いを秘めて、屋敷を後にするのだった。


 こうして親子の溝が浮き彫りになった。
 果たして、此れで溝が埋まって行くのかどうか‥‥。
 其れは‥‥。

「ねぇ、たまには様子を見に行ったりしてみない?」
 エルシードが提案すると、冒険者達も同意するように頷いた。
「様子が見たいと思ったら、どうなのか聞いてみればいいかしら?」
「そうだな。そうしてみよう‥‥か」
「アレフくんとイェールクくんの事も、気になりますからね」
「あの二人なら、上手くやっていけると思うけれど‥‥」

 この後の経過を見るも、見ないも‥‥。
 冒険者達次第なのだ‥‥。