冒険者急募!〜我侭娘のお願い☆
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや易
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月20日〜09月25日
リプレイ公開日:2006年09月22日
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●オープニング
「こーんにちは〜☆」
ギルドに元気な声が響いた。その声の主は二十歳前後の少女である。
「おや? 此れは此れは‥‥ヒルダさんじゃありませんか。どうかしたんですか?」
「此れをまず見て欲しいのよ!」
どんっとカウンターに出されたのは分厚い一冊の本。
しかも古びれており、埃が少しついていた。
「これは‥‥何なんですか?」
「うふふ☆錬金術師の本よ! 此れさえあれば、あたしは錬金術師として勉強、実験が出来るわけよ!」
「は、はぁ‥‥でも、これ何処から手に入れたんです?」
「秘密よ、ひ・み・つ!」
そう言うヒルダを余所目に、ギルド員がその本を開いてみた。
なにやら難しい事がセトタ語で書かれている。
しかも、図式はあるものの字が薄れていて読み難い。
果たしてこんなもので錬金術が出来るのだろうか?
勿論。そんな本はとてつもなく胡散臭い。所々新しい字のものもあるからである。
(「何か‥‥貼り付けられたようなものまであるし‥‥」)
もう本の作りすらデタラメというか、違和感がひしひしと伝わってくる。
「で、まさか此れを見せに来ただけっていうわけじゃないですよね?」
「勿論よ! この度、あたしヒルダは実験を行う事にしたの!」
「実験‥‥ですか?」
「そう、その実験台‥‥じゃなくて! 材料を集めてきて貰いたいの」
ヒルダの言葉に何か少し引っかかりながらも、ギルド員は依頼作成書を取り出した。
「で、その材料というのは?」
「薬草類とキノコ類があればいいのよ」
「‥‥種類とかは確定しなくていいんですか?」
「問題ないって書いてあるからだーいじょうぶよっ☆」
古ぼけた本を見ながらそういうヒルダ。とことんまで危険な香りがする‥‥。
「モンスターとかはいないだろうけれど、いい探検になるんじゃないかしら?」
「探検‥‥ですか‥‥」
「あたしがついていってもいいんだけどねぇ‥‥準備あるし、面倒だしねっ☆」
何か後半、本音が聞こえた気がしたが、気にしない事にした。
こうして、依頼書は作られ張り出されたのだが‥‥。
「ん? 其れ、誰からの依頼だ?」
「はい? ヒルダさんのからですけど」
「まさか、錬金術の材料集めとか!?」
「そーですけど。どうかしたんですか?」
先輩ギルド員は苦笑いを浮かべた。そして、その若いギルド員に言うのだった。
「いいか? ヒルダさんの材料集め募集は大抵『実験台募集』だ! 終わったら何されるか分からないからなっ!?」
「え‥‥えぇぇぇぇぇっ!?」
「まったく、毎度ながらやってくれるよ、ヒルダさんは‥‥」
ギルド員二人。冒険者達の無事を祈るばかりなのだった。
●リプレイ本文
●頼まれたものをとりにいこうっ
「あらあら! 今回はいっぱい集まってくれたのねぇ。嬉しいわっ♪」
ヒルダが集まった冒険者達をそれぞれみて、嬉しそうにうんうんと頷いていた。
そんな様子を、傍にいたギルド員は苦笑いを浮かべる。
「で、取って来るのは何でもいい‥‥の?」
「そ、なんでもいいの♪あ、毒だけは取って来ないでよ? 飲ませるんだから」
「‥‥古ぼけた本というのを見せて貰いたいな‥‥」
「だぁめ。此れは企業秘密。錬金術師がそう簡単にレシピ見せると思ってるの?」
ティアイエル・エルトファーム(ea0324)の願いは、ヒルダの可愛らしい笑顔と共に却下されてしまった。
胡散臭い本であるのに、彼女は其れをレシピだと信じきっているのだ。
「あ、そうだ。取って来るのはいいんだけどさ。籠とか用意したいんだけどー‥‥」
「それなら人数分用意してるわよ。大事な大事な材料だから、大切に扱ってね?」
そう言うと、ヒルダは笑顔でギルドの扉を指差した。
其処には数個の籠が無造作に置かれていた。トア・ル(ea1923)はその用意の良さに少し感心するのだった。
「よし、これである程度の準備は出来たな。後は俺達に任せてくれ」
「あら、頼もしいお兄さん♪頼りにしちゃってるから、いっぱいとってきてねぇ♪」
ジノ・ダヴィドフ(eb0639)に手を振り、ヒルダは見送るのだった。
なにやら企んでいるような笑みを浮かべながら‥‥。
●静か×賑わす×怪我の声
森は静かなものだった。鳥の囀りが聞こえ、森林浴にはもってこいの場所。
幾つもの薬草が生え、キノコも所々に存在している。
「本当、綺麗な場所ですね。こんなにもいっぱい薬草やキノコがあるのでしたら、直に集まりそうですね」
「そうだね♪それじゃ、集めてしまおっか♪」
トアの言葉に若浦泪(eb4855)は笑って頷き、それぞれ作業に入るのだった。
だが。
三人だけは何かが違うかった。
人間用ぼーるを片手にドンと立つエリーシャ・メロウ(eb4333)。
そして、それに立ちはだかるようにたつシャルロット・プラン(eb4219)。
更には何か困惑した笑みを浮かべながら傍らに立つのがグラン・バク(ea5229)である。
「特訓しましょう、グランさん!」
「そうですね、特訓は大事です。人間用ぼーるもここにあります」
「いや、何か勘違いされているようだが‥‥」
「誤解? 勘違い? 謙遜など不要です」
グランの一言をシャルロットがそう言い放つ。
どうやら特訓はしなくてはいけないようだった。
「必殺シュートを私に伝授してくださいっ!」
「ふむ‥‥では、今から言う事をやってみてもらっていいかな?」
グランが言うには、勢いよく大地を蹴り、空中で回転しながらボールを蹴るのだという。
‥‥簡単に言えばおーばーへっど。
しかし、そんなものが簡単に出来るわけがない。
シャルロットは実践してみるものの、鎧が重すぎて地にズシリと落ちてしまう。
「‥‥大丈夫ですか、シャルロット殿?」
「いたた‥‥だ、大丈夫です」
「‥‥おーい‥‥何バカやってんだ? さっさと採取手伝えよ」
横目で見ていたジノがさっさと手伝うように促す。
そりゃそうだ。採取依頼そっちのけでやる事ではないのだから。
「キノコと薬草、籠わけて入れちゃいましょうか」
「そうね。じゃあこっちにキノコを入れるといいわ」
比良坂初音(eb1263)が籠を差し出すと、泪がこくこくと頷いて其れを籠へと入れる。
「ティアイエル殿、此れは大丈夫でしょうか?」
「んー、毒はないみたいだし、大丈夫だと思う。あ、キノコは毒があるのが多いから、気をつけてね?」
ティアイエルは植物の知識が長けている為、皆の中心となって動いているようだ。
レフェツィア・セヴェナ(ea0356)は、集まった材料を、馬に乗せる作業を行っていた。
そんな時、ジノは一つ何か思いついたようだ。
「なぁ、ティアイエル? 秋といえば、食だよな?」
「え? あー、うん。確かに食べ歩きの秋とか言うもんね。キノコとかはこの季節おいしいと思うよ?」
「‥‥食べれる果物とかあるか?」
「あ、少しならあるよ。あれなんか食べられると思う」
いい匂いのする小さな果実。しかし、数は少ない。どうしたものかとジノも考える。
‥‥まぁ、沢山あるキノコで食べれるものを数個持って帰ろう。
そういう結論に収まった。
「沢山集まったねー。ティアイエルは凄かったよー♪」
「と、トアさん。く、くっつきすぎー‥‥!」
「じゃあ、後はヒルダさんに此れを持っていきましょう」
此れから襲い来る悲劇を知る者は誰もいない。だぁれも。
●人体実験という名のお礼
ギルドへと帰ってくると、ヒルダは冒険者達の籠を見て目を輝かせていた。
「すっごいわー! こんなにも持って帰って来てくれただなんてっ♪」
「此れだけあれば大丈夫かな?」
「もちのろん! すっごく長持ちするわ! あ、ついでで悪いんだけど、これ一緒にあたしの工房に持ってきてくれるかしら? お礼も其処でするわね」
そう言うと、ヒルダは道案内するかのように先に歩き出した。
其れを追う冒険者達をギルド員は敬礼して見送るのだった。‥‥何故かは知らないが。
ヒルダの家はそんなに新しくはなかった。
古ぼけた家という印象。だが、中に入ればそれなりの本と、機材がテーブルに置かれていた。
如何にも錬金術師の家といった感じである。
「材料は此方に置いてもらえる?」
「‥‥こんないい加減な材料で‥‥錬金術なんて出来るのかしら?」
初音の一言で、ヒルダはカチンと来たのか踵を返して初音の前に立った。
「いい加減な材料? そうでもないのよ? いい? 錬金術のレシピというものはね、人によってそれぞれ異なるものなのよ?」
「そ、そうなのか?」
「そうよ! 例え同じ物を作るにしても、材料の量を少し変えるだけで効果が違う薬が出来るわけ☆」
ヒルダは得意気に説明すると、薬草とキノコを人数分手にとった。
「貴方達はここで待ってて頂戴? 実例を見せてあげるわっ! あぁ、後。錬金術の現場は企業秘密だから、絶対覗かないでね?」
「‥‥錬金術って難しいものなんだな‥‥」
「あの説明だと、ちょっぴり感心しちゃうかも‥‥」
そして、数時間後。薬ビンを数本持ったヒルダが別室からやっと出てきたのだ。
「さぁ、出来たわよ。ね、飲んでみない?」
「‥‥今、悪寒が‥‥」
「だーいじょうぶ! いいから飲む飲む♪」
選抜されたのは三人。アル・エド(eb7003)、ジノ、グラン。
まずはアルが飲んだようだが、即座に卒倒。再起不能状態だ。
其れを見て、ジノとグランはふるふると首を横に振りたくなってしまうのだったが‥‥
「まだ飲んでくれないの?」
傍らでにーっこり笑うヒルダ。‥‥此れはもう後退は出来ない。
此れも女性達の盾になる為! 一気に薬を飲み干すグラン。
「‥‥‥」
「どう?」
「‥‥にゃーん」
『え゛?』
グランが幾ら声を発しようとしても、ネコの鳴き声しか出て来ない。
此れはまた奇怪な薬を引きあててしまったようだ。
「あらー。此れ、声帯をネコにする効果を持っちゃったのね。分量の問題かしら?」
「にゃー!」
「元に戻せ? そんなの出来るわけないじゃない。解毒薬飲んだって、毒じゃないから中和もされないし。三日経てば元に戻るって書いてあったし?」
ヒルダが平然とそう答えると、グランはもう何も喋らないと決意したのか。
小屋の隅でのの字を書き始めた。
「さ、最後は貴方よ?」
「‥‥命に関わるような事はきっと、たぶん、恐らくないはずだ」
「えぇ、ないわね」
「そう、信じてるぞ、ヒルダ‥‥‥‥信じてるからなっ!!!」
「あたしを信じて、いざ飲みなさい!」
ずびしっと指差すヒルダ。其れを合図にして一気に薬を飲み干すジノ。
‥‥数分後。いきなりジノの体がグラリと揺れる。
「あ‥‥世界が回って見え‥‥」
「あらぁ。酔っ払いになる効果だったみたいねー‥‥もう少し分量制限した方がいいのかしら?」
「あ、あの! ‥‥一体どうやって材料の分量を?」
「? 目分量よ?」
ヒルダのその一言に、冒険者達は硬直した。
そして、そのまま後ずさりすると、実験台になった三人を連れて一目散に逃げ出すのだった。
「‥‥あら、逃げられちゃった。まぁいいわ、またギルドで募集して、新しい人さがしましょ♪」
実験台がまだまだ足りないと笑って言うヒルダなのだった。