男爵のペット奮闘記〜わんことしばわんこ

■ショートシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:易しい

成功報酬:3 G 32 C

参加人数:13人

サポート参加人数:6人

冒険期間:09月27日〜10月02日

リプレイ公開日:2006年09月28日

●オープニング

「レセリア、こっちですよー♪」
 フォルセ陥落危機が過ぎ去ってから数日後。
 やっぱりユアンは犬、レセリアと戯れる日々を過ごしていた。
 レセリアはちょこちょこと歩き、ユアンの膝の上に飛び乗った。
「うぅん、レセリアはやっぱり賢いですねー♪」
「賢いといえば、柴犬っていうのも賢いらしいぞー?」
 そんなユアンとレセリアの戯れを見て、ルキナスがそう言った。
 彼は犬嫌いなので、あまり言いたくはなかったようなのだがあまりにもユアンが楽しそうだった為つい口に出してしまった。
「柴犬‥‥あの少し大きいわんこですか?」
「あぁ、今冒険者の中でも流行りらしいぞ?」
「‥‥可愛いですか?」
「とっても可愛いらしいぞ、冒険者に言わせれば?」
 ルキナスがそう言うと、ユアンは暫く思案の為動きを止めた。
 レセリアがユアンの頬をぺろりと舐めると、ユアンは何かを閃いたかのように立ち上がった。
「僕は決めました!」
「何を?」
「僕の執務室を、わんこ園にします!」
 ‥‥‥‥ぽかーん。
 ルキナスの開いた口は塞がらない。しかもユアンは本気だ。やるといったらやる子供だ!
「ち、ちょっと待て! わんこ園って‥‥!」
「しばわんこをまず連れてきてもらいますっ! 勿論、他のわんこでもいいです! とにかくわんこ園にするんですっ! レセリアのお友達いっぱいです!」
 夢広がるわんこ園。わんこの為だけの楽園。‥‥エサ代がいっぱい。
「待て、待て、待てッ! エサ大は何処から‥‥!」
「ルキナスさん、絶対に葱を育ててはダメです! わんこでも食べられるようなものを育ててくださいっ!」
「俺の農園が餌ー!?」
 大騒ぎになる執務室。ユアンはギルドへ急いで依頼を出した。

『わんこ園を作るお手伝いをしてください』
 というものだった‥‥こうして、暴走したユアンの計画は着々と進んでいくのだった。

●今回の参加者

 ea0417 封魔 大次郎(32歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4714 ジェンド・レヴィノヴァ(32歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea5876 ギルス・シャハウ(29歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb3770 麻津名 ゆかり(27歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3838 ソード・エアシールド(45歳・♂・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 eb3839 イシュカ・エアシールド(45歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4064 信者 福袋(31歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4072 桜桃 真治(40歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4454 エトピリカ・ゼッペロン(36歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4604 青海 いさな(45歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

ランディ・マクファーレン(ea1702)/ シン・ウィンドフェザー(ea1819)/ 利賀桐 真琴(ea3625)/ ムネー・モシュネー(ea4879)/ マルト・ミシェ(ea7511)/ エイジス・レーヴァティン(ea9907

●リプレイ本文

●フォルセはいい天気です
「レンもわんこさんたちとあそぶの―――!」
 フォルセの城内で、元気よく両手を広げてそう言うレン・ウィンドフェザー(ea4509)。
 シン・ウィンドフェザーと親子揃ってのんびりしに来たのだが‥‥。
「プリンセス。キミはそういう事、してる場合じゃあないよね?」
 デラ笑顔なルキナスがレンの後ろにドーンと現れる。
 そして、ガシリとお手を掴むとそのまま執務室へと連行し始める。
「えー! あそびたいなのー!」
「ダーメ。先に執務ちゃっちゃと終わらせてからなー?」
「‥‥ああいう所見ると軍師らしいんですけどね‥‥」
 麻津名ゆかり(eb3770)が遠くでぽつりと呟く。
 本日、フォルセはわんこ達と遊ぶにはうってつけのお天気。
 散歩をさせるのにも丁度よい。
「この広さでわんこ園ってのはちっと、狭すぎだよ。レセリアには十分なんだけど」
 苦言を呈する青海いさな(eb4604)。
 確かに、フォルセは先日陥落危機に陥っていた。
 何とか危機は免れたものの、資金ぶりには少し困る事だろう。
 其れでもユアンはわんこ園を作りたいというのだ。
「では、まずは用地から考えましょうか」
「其れなら俺も手伝うかねぇ」
「ルキナス、いいのかい?」
「ユアンがああなったら誰も止められないっしょ。出来るだけ近くを見繕ってみるわ。あぁ、お前さん手伝ってくれるよなぁ? 以前聞いたどうぶつえんとやらの話も聞きたい」
 ルキナスがそう言うと、信者福袋(eb4064)は喜んでとお供する事になった。
 後は、ユアンに全てを委ねるのだった。

●本当はね‥‥?
 ユアンの執務室に入ると、其処には以前と同じようにレセリアを抱っこしたユアンが待っていた。
 ユアンは冒険者達の姿を見ると、ペコリと頭を下げるのだった。
「ジャクリーン・ジーン・オーカーと申します。フォルセに関する仕事は何度か受けさせて頂きましたが、こうしてお会いするのは初めてですわね。こちらのクレモンテイン共々、以後、お見知り置きを」
「お噂はかねがね伺っています。今回はどうぞよろしくお願いしますね?」
 ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)の挨拶に、セッターのクレモンテインも反応して一緒にお辞儀をする。
 そんな犬の姿を見て、ユアンは嬉しそうに笑うのだった。
「さて、まずは挨拶させるよ。みんな、レセリアに背を向けさせてやって」
 いさながそう言うと、冒険者達はそれぞれの犬の背をレセリアに向けさせた。
 そして、いさながユアンの前に立つ。
「前連れて来た柴犬がさ、忍犬になったんだ。だから改めて挨拶させておくよ」
「わぁ‥‥可愛らしいながらもカッコいいですね‥‥」
「待宵、既望。ちゃんと挨拶するんだよ?」
 いさながそう言うと、2匹の忍犬は大人しく座っているのだった。
 その二匹に、レセリアも少しずつだが近づいて匂いを嗅ぐ。そして、見知った匂いだと分かると、ぴょんぴょん飛びつくのだった。
「ユアン殿にはお初にお目にかかる。拙者、封魔でござる。以後お見知りおきを」
「ござる‥‥? 何だか、面白いお話の仕方です。‥‥あ、可愛い柴犬ですね」
「拙者、ユアン殿が犬と共に過ごす事については何ら異議はござらぬ。むしろそうする事で色々と得られる物もある筈ゆえに」
 封魔大次郎(ea0417)が話を切り出す。その間にもレセリアは彼の柴犬の匂いを嗅いでいる。
「例えばレセリア殿はどうやらこうした部屋の中でも過ごす事の出来るわんこのようでござるが、今回集ったしばわんこはいずれも日に数度の散歩は健康の為にも欠かせぬでござる」
「其れは‥‥」
「今回ユアン殿が思い立ったしばわんこ園をそのまま実現したとして、飼われるしばわんこたちが本当に幸せにユアン殿と過ごす事が出来るか否か。まず落ち着いて考えてみては如何でござろう」
「‥‥」
 黙って俯いてしまうユアンの表情は何処か暗く感じた。何かしら理由があるのだろう。更にはその暗い顔のご主人を見て、レセリアは心配そうにユアンにじゃれつくのだった。

「‥‥まぁまぁ。皆の言いたい事は彼だってきっと分かってると思うんだ、私は」
 そう言って間に割って入ったのジェンド・レヴィノヴァ(ea4714)。
 ユアンと視線を合わせて、2匹の子犬を見せる。
「初めましてになるな。ウィザードのジェンドだ。今私の腕の中にいるのがセッターのフェンガロン。で、服の中にいるのが‥‥ハスキーのルシエドだ。どちらも子犬だから仲良くしてやってくれると嬉しい」
「子犬‥‥可愛らしいです。服の中にいるのに大人しいんですね?」
「活発な子犬だからな、ルシエドは。こうでもしておかないと走り回られてしまう」
 苦笑を浮かべるジェンドを見て、ユアンは小さく笑っているのだった。
「其れより。お前の本音を聞かせて貰えるか?」
「本音、ですか?」
「病弱だと聞いている‥‥不安なんだろ?」
 ジェンドの問いに、ユアンはまた小さく俯く。そして、ゆっくりと頷くのだった。
「僕は病弱です。其れでも、レセリアの世話だけはちゃんとしようと、散歩も餌やりも頑張ってます。でも‥‥」
「でも?」
「もし、僕が病でいなくなってしまったらレセリアは一人ぼっちになってしまうんです‥‥だから、せめてレセリアが安心出来るようにって‥‥」
「ユアン、前に言った事、忘れてないよね?一匹増えれば、その分負担が増えるのはもちろん、叱られてる姿を見て悲しむのも一匹増える。‥‥わんこ園を本格的に作るなら、『自分にできる範囲』を考えてからにおしよ?」
「そうですよ。誰も止めろだなんて言ってないですしー‥‥一緒に頑張る為に来たんですからねー?」
 ギルス・シャハウ(ea5876)がそう言うと、ユアンは少し涙目になりながらもコクンと頷いた。
 どうやら、頭では理解出来ているようだ。しかし、子供であるが故なのか。気持ちが抑えきれないのである。
「‥‥私は安堵してるよ。お前はちゃんと子供だったんだから」
「ジェンドさん‥‥」
「ほら、ルシエド、フェンガロン。レセリアにちゃんと挨拶しな?」
 そう言うと、ジェンドは一匹ずつ子犬をレセリアの前にゆっくりと出した。
 暴れないよう抱き抱えながら。レセリアも2匹の匂いを嗅いで、遊びたがっているようだ。

「うむ、良き哉良き哉♪ わしがわんこ園の為にガッツリ協力してくれようぞ!」
「は、はい。宜しくお願いします、ヴェガさん」
「ほほほ、世界しばわんこ計画の第一歩じゃの。‥‥いやこちらの話」
 ヴェガ・キュアノス(ea7463)の言葉に首を傾げるユアン。
 話を逸らす為と本来の目的の為、リボン付きの籠を彼の目の前に差し出す。
「わしからのプレゼントじゃ。レセリアの弟分にして欲しいのじゃ」
「わぁ‥‥! しばわんこの子犬さんですか!?」
「そうじゃ。名前はルゥと言うのじゃ。可愛がってくれるかの?」
 ヴェガがそう尋ねると、ユアンは嬉しさのあまり何度も何度も頷くのだった。
 やはり、彼は子供だったのだ。
「犬の世話は大事だが男爵としての仕事も疎かには出来ぬぞえ。ユアンが街を大切にすればこそ、民もわんこも幸せになれるのじゃ」
「は、はい。後でルキナスさんに謝ります‥‥」
「ルキナスは後でわしがみっちり教育するので、その後の方がよいのじゃ」
 にこりと笑みを浮かべるヴェガ。遠くの場所で、ルキナスは悪寒を感じていたようだと後報告を受けるのだった。

「柴犬の望です、仲良くしてあげて下さいね?」
「ゆかりさんもしばわんこをお持ちだったんですね。とっても可愛らしいです‥‥」
「うっわ〜可愛い〜♪ レセリアもすっごく可愛いですよ、ユアンさんっ!」
「た、確かに可愛い‥‥あ、あの‥‥ユアン。後でレセリア‥‥抱っこしていいか?」
「あ、はい。‥‥何だか意外です。ジェンドさんって、可愛いの好きだったりします?」
「うぐっ‥‥!」
 ギクリと動きを止めるジェンド。どうやら図星だったらしい。
 少しギクシャクしながらも、逃げるように執務室を後にする。どうやら資材を探す為のようだ。
「俺達の犬は冒険の仲間。共に苦労を分かち合うからこそ大事に思っている。レセリアの仕事は男爵を励ます事。男爵自身も「レセリアやその友人達と遊んでばかりいる」ではなく「レセリアが来てから仕事も頑張る上に健康にも良いようだ」と言われる位、レセリアが来た事が民も喜んでくれるようになって欲しい」
「‥‥はい。出来れば本当に健康になれればいいのですが‥‥」
 ソード・エアシールド(eb3838)の言葉に少し勇気づけられるユアンだが、やはり不安は完全には拭えない。
 少しずつ、少しずつ。其れが一番だという事なのだろう。
「ま、体の事は少しずつが一番だな。今回は楽しくやらなきゃ、な?」
 桜桃真治(eb4072)がユアンの背を軽く叩く。
 ユアンはどうやら彼女のお腹に興味を示した様子。
「お子様がいらっしゃるんですよね? 大丈夫なんですか、わんこ達といて‥‥?」
「こいつ等はよくしてくれるよ。時々手伝ってくれたりするんだ。不便って事はないよ」
「‥‥身重な体ですし、どうかご無理だけはなさらないでくださいね?」
 逆にユアンに心配され、苦笑いを浮かべるのだった。

●しばわんこ計画第一歩
「まーずはしばわんこの実力からだね。いいかい、ユアン? しばわんこは大人になったらこういった運動が必要になってくるんだ」
 いさなが小さな棒を取り出し、ポンッと軽く投げる。
「待宵、取ってこい!」
「わふっ!」
 いさなの声に反応して、忍犬の待宵がその棒目掛けて走り出す。
 上手に棒を咥えると、尻尾を振りながらいさなの下へと戻ってくる。
「うわぁ、賢いわんこさんですー!」
「レセリアも訓練すれば、こういうの出来るようになるんじゃないかな?」
「あ、でもレセリアも一つ芸が出来るようになったんですよ?」
 ユアンがそう言うと、いさな達は関心があるかのようにレセリアを見た。
 レセリアは小さな目を潤ませながら、辺りをきょろきょろとうかがっている。
「いいですか、見ててくださいね? レセリア‥‥顎っ!」
「わぅっ!」
 ユアンがサッと手を差し出すと、素早くその手に顎をちょほんっと乗せるレセリア。
 その瞬間、執務室はほんわかムードになるのである。その愛くるしさに魅了されるが如く。
「し、しばわんこもいいけどちまわんこもいいなっ‥‥!」
「と、とてもよいのじゃ‥‥」
「真治、この板でいいか? ‥‥って何だこの空気は?」
 外から戻ってきたジェンドは、そのレセリアの姿を見た瞬間手にしていた板をカラーンと落とす。
 そして、暫しの沈黙の後。ユアンとレセリア、二人を纏めて抱きもふるのだった。無言で。

「お、これぐらいの板なら作れるかもだな」
「何か作るんですかー?」
「あぁ、犬用の木のボールと‥‥後は此れを使うんだ」
 モップの先端を取り出して、にっこりと笑う真治。ギルスは首を傾げる。
「其れって何に使うんですか?」
「地球にいた時、こんな風な犬用の歯ブラシ見たことあるんだ。此れで犬も歯磨き出来るだろ?」
「チキュウって凄い所だったんですねー」
「野菜だけじゃなくて、花も植えたらいいんじゃないかな?花のにおいを嗅ぐのが好きな犬もいるし、人々も来て楽しい場所になるし♪ あと地球で見たことがあるんだけど、犬も入れる飲食店みたいな雰囲気で談話所作ったらどうかな。飼い主の交流場所にもなるし、犬達も友達が出来るし♪」
「其れはいいアイデアです。花は心を落ち着かせるといいますしね。ルキナスさんにお願いしてみます!」
「もっともっと楽しいわんこ園になっていくといいな‥‥犬達の為にも、人々の為にも」
「そうですね、僕もそうなるよう頑張るつもりです」
 ユアンと真治は二人笑い合うのだった。

「良いか非常食よ、他の犬と仲良くせねばならぬぞ? 特に、ちわわんこ‥‥かの小さな者には、優しく接してやるのじゃ!」
「ひ、非常食‥‥!? た、食べちゃだめですよ!?」
 エトピリカ・ゼッペロン(eb4454)の服を必死に引っ張るユアン。
 どうやら名前が名前であるが故、勘違いされてしまったようなのである。
「大丈夫! ワシの第一の郎党にして忠実な部下、ダッケルの「非常食」じゃ! 食いはせんよ?」
「で、でもでもっ!」
「‥‥名前がちょっとアレだけれど、可愛がってるには間違いないと思うよ?」
「‥‥食べちゃダメですからね‥‥?」
 レセリアと共に目を潤ませ、エトピリカを見つめるユアンなのでした。

●民への気配りと用地
「ユアン様の体調を考えるとルキナス様の菜園なんかは近いですが‥‥」
「それだけは絶対にダメだ。俺の可愛い野菜ちゃんが食われてしまう」
「ですよねぇ‥‥預り所近辺がペットには良さそうですが‥‥」
「ユアン相手にゃ遠すぎる。マリスが来てくれれば問題はないだろうが、マリスにだって仕事があるしな」
「そうですね、仮のわんこ園を執務室近辺に設けて、ユアン様の健康状態が良くなり次第、郊外に移す、という計画はいかがでしょうか?」
「其れが一番妥当だな。執務室付近って事は城付近がいいだろうな。城門裏付近なら小さめのスペースがある。夜になれば城の中へという形にすれば、問題ないだろ?」
 ルキナスと信者は二人街の中を歩いていた。わんこ園の用地を探す為である。
 先日の陥落危機の紛争で所々は荒れているものの、其れ以外の被害は少ない。
 民も、それぞれの日常的な生活に戻っていた。
「民の子供達とも遊べるようにしてはやりたいねぇ」
「犬嫌いと伺ったのですが‥‥其れでもそんな事を考えるんですか?」
「民である子供達が望めば、それもするさね。‥‥ユアンの事もあるしな。それでユアンが友達を作ってくれれば言う事はないし?」
「ユアン様も持病の改善に対して目標があった方が励みになりますし、ちまわんこ以外のわんこは、元々散歩など、飼い主がある程度一緒に動き回る体力が必要になってきますからねぇ」
「まー‥‥子供でいさせてやれる時間も与えてはやりたいんだが、その前にアイツは男爵だ。其れに言ってしまえばプリンセスもそうだし‥‥」
 そう言うと、ルキナスは天を仰いだ。つられて信者も天を仰ぐ。
「本来なら子供であるべき者達が、子供では居られず‥‥執務に拘束されてばかりっていうのも可哀想だろ?」
「まぁ、確かにそうですね。でも、費用が問題になりません? 予算を打ち出しに入りませんと」
「信者が考えてる設備‥‥訓練施設か‥‥。最初は自給出来るもので賄うってのはどうかと思ったんだが。早い話、広い充分な土地さえ有れば他には何も要らない。放牧地や休閑地を利用する手もある」
「其れはそれでいいと思いますよ? 経済的に問題があるようでしたら、とことんまでお得にしていくべきです」
「んじゃま、少し設備設計と赴きますかねぇ‥‥」
 そんな話をしていると、目の前からゆかりとジャクリーンが走ってきた。
 どうやら、民の様子を見回っていたようで民の子供達と一緒だった。

「こんにちは、ルキナス様。この子達も犬と遊びたいというものですから」
「そっか。其れなら城に入れてやってくれ。何時でも歓迎だからな」
「ルキナスさんッ!」
 そんなやりとりをするルキナスにゆかりが思わず抱きついた。
 その目に涙を浮かべながら。
「ちょっ‥‥! ゆかりっ!?」
「ご無事でホント良かったです‥‥。敵に捕まってた事は気にし過ぎないで下さい、あなたが設計し直した城の防御力と地図があったからこうしてまた会えたんですから‥‥」
「ゆ、ゆかり‥‥その‥‥あれだ。俺も嬉しいっちゃ嬉しいが‥‥」
 真っ赤な顔をちらりと背けてそう言うと、ルキナスは辺りを見る。
 勿論、子供達がにやにや笑いながらその光景を眺めているのだった。
「ルキナス様ったら紅くなってるのー!」
「ルキナス様かわいいー♪」
「こらっ! からかうなっての! ‥‥ま、丁度いい。ゆかり」
「はい?」
「俺さ、お前を娶ろうと思う。返事は今度でいい」
 さりげなく小声でそう言い残して、彼は子供達と一緒に城へと向かうのだった。

「‥‥さて、施設の方の道具を準備しないといけませんね」
「お手伝い出来る事、あるかしら?」
「そうですね、犬が運動も兼ねて訓練が出来るようアスレチック状なものを作りたいので、協力してください」
「‥‥ゆかりさんはどうします?」
「暫くは動かないでしょうから、進めちゃいましょう」
 こうして、真っ赤になって残るゆかりを置いて、信者とジャクリーンは新たなる仕事に取り掛かるのだった。
 後に城の裏門付近に、立派な『わんこ専用施設』が出来たのだった。

●ルキナス犬克服計画
「人参、パセリ、蕪、豆類付近でしたら大丈夫ですよ。パンも食べますよね。野菜を多く取るとお通じが良くなるみたいですし、量が増えますから量が欲しい時など満足するみたいです。肉や内臓肉を細かくしたものに卵を混ぜて、人参、蕪の葉を細かく刻んだもの、麦に豆を入れてただ柔らかく煮た物とか。味付けが必要ない分手軽ですけど、調理中間違って人の食事と入れ替えたりしないようにしませんとね。えさ代軽減の為なら、イナゴなどの昆虫も良いです。川魚を獲る方がおられるのでしたら、お話して売り物にならないものがあったら持ってきてもらえないか交渉するのも手かと思いますよ。後は
‥‥そうですね。鶏以外の家畜の骨があるのでしたら、それを大鍋に入れて骨がひたひたになる位まで水を入れて下さい。沸騰したら弱火にして、水分がなくなるまで煮て下さい。この時野菜を入れても構いません。途中で混ぜないよう、焦がさないように。水分がなくなったら出来上がりです。これなら骨も食べれるようになりますよ。でも骨ばかり食べても体調を崩しますから与えすぎないように気をつけて下さい。
あ、野菜は与えすぎては不可ません。元来が肉食なのでよく刻み、すりつぶした物を与えて下さい。大麦やエンマ麦のお粥を野菜の上に振りかけるような感じで。肉や魚は、時々でも適正に生で与えて下さいね。いくら可愛くても一日二度の食餌の量はきちんとして下さい」
 細々とした注意では、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.肉や肉付き骨は野菜と一緒にあげて良い。野菜は穀物と一緒にあげて良い。
2.穀物は肉と一緒にあげてはいけない。乳製品は野菜と一緒にあげても良い。
3.果物を与える場合は、少なくとも1時間あけて果物だけで摂ると良い。
 (そうすれば消化の効率が良くなる)
4.もし有るなら、ニンニク、玉ねぎ、にらなどの勳菜は、一ヶ月に一度が理想。
 (食べ過ぎの場合溶血性貧血になる場合があるが、虫下しにくい効果有り)
5.なす科植物は絶対厳禁。
6.鳥の骨は「調理してなければ平気」。
 人間でも、食べ物を喉に詰まらせてしまう人がいるように、
 鳥の骨が引っかかってしまった動物がいればよほど運が悪い
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なるほど、では施設が出来て活動が出来るようになればそう致しますね」
 イシュカ・エアシールド(eb3839)がそう言ってユアンと勉強会をしている間。
 一つの計画が水面下で実行されようとしていた。
「本当に上手く行くのか?」
「其れはやってみんと判らないのじゃ」
「まずはルキナス確保からだね?」
「では僕が連れてきます〜」
 そう言うと、ギルスはルキナスを呼びに執務室を後にした。
 そして数分後。何も知らされていないルキナスがギルスとゆかりと共に戻ってくるのだった。
「俺に話があるんだって?」
「そうじゃ。犬嫌いを治すのじゃ! 嫌々付き合わせているのをユアンが知れば悲しむであろ?」
「‥‥う゛っ‥‥いや、俺は遠慮したい‥‥」
「望、お手っ」
「わふ☆」
 ゆかりの声を聞いて、ペットである望がゆかりの手にシュタッと片足を置く。
 そして、ゆかりはルキナスにほんわかと笑みを向けた。
「ほら〜こんなに可愛いですよー☆」
「い、いや‥‥だがしかし‥‥ッ!」
「仕方のないヤツじゃのぅ‥‥では、わんこの何処が怖いのじゃ?」
「そりゃあ、かぷられたり引きずられたりと散々な目に合ってるから‥‥」
「大半僕の所為じゃないですか〜」
 ギルスが笑ってそう言うと、ルキナスはその通りだと頷く。
 やはりあの2匹の襲来が恐怖だったのだろう。
「では犬に対するイメージはどうじゃ?」
「でかい、ごつい、怖い、痛い」
「‥‥なんちゅうイメージ‥‥」
「仕方ないだろ、引きずられまくったんだから痛いわけだし」
 ヴェガは小さく溜息をつくと、ルキナスにメンタルリカバーを付与する。
 犬に対する恐怖心を取り除く為だ。そして、こう話始めた。
「わんこは人間の良きパートナー。何を恐れる事があろうか。特にしばわんこは‥‥」
「‥‥洗脳が始まったようだな」
「あはは‥‥此れで少しはよくなってくれるといいんですけど‥‥」
 数分後。ヴェガの洗脳トークが終わり、ルキナスは半分洗脳された状態になってしまっていた。

「後は子犬達で頼むのじゃ、ジェンド」
「ん、判った。出来るだけやってみよう」
 そう言うと、ジェンドは2匹の子犬を連れてルキナスの前に立った。
「静かにゆっくりルキナスに近寄り、追い詰めたら笑いかけろ」
 いさなもこっそりと二匹の犬に指示を出していた‥‥果たしてルキナスの運命や如何に!?
「お、俺に犬近づけるなって!!」
「‥‥大丈夫、暴れないように私が抱きあげておく。撫でて愛でてやるぐらいはしてくれないか? 何時までも犬嫌いでは何かと困るだろう?」
「で、でもなぁ‥‥」
「それともまだ怖いか? でかい犬では問題があるだろうから、子犬で慣れて貰おうと思ってるんだが」
 ジェンドがそう言うと、恐る恐るルシエドに手を伸ばそうとするルキナス。
 少しずつではあるが、恐怖を克服出来ている様子である。
 そして、いさなの布石が遂に発揮した。
 ジェンドの後ろで2匹の忍犬がルキナスに笑みを向けているのだ。
 更に‥‥
「わぅ〜♪」
 遂に撫でられた子犬ルシエドの愛らしい声がプラスされ、ルキナスはクラリとよろけるのだった。
「お、撫でれたじゃないか‥‥良かったな、ルシエド。撫でて貰えたぞ?」
「よし、よくやったよ、お前達! 可愛らしい柴スマイルだったよ!」
「か、か、可愛らし過ぎるだろ〜〜!」
『!?』
 事件はその時に起こった。
 あまりの可愛さに暴走してしまったルキナスが、2匹の忍犬と子犬のハスキーを抱きしめようとしてジェンドを巻き込んでしまったのである。
 犬に対する恐怖心は無事消えたのであったが‥‥。 
「い‥‥い‥‥」
「あ、でもこの子犬がいるとちょーっと邪魔だったか‥‥」
「いっぺん死んでこい、このすけこましたらし軍師があぁぁぁっ!」

 ジェンドの盛大なる廻し蹴りをモロに喰らい吹き飛ばされたルキナス。
 その後、いさな、レン。そして何よりゆかりにお説教され、ギルスの犬二匹によりがっぷりされたのは言うまでもない。

●ラスト〜プリンセスの執務〜
「あーあ。レンもわんこさんたちと遊びたいなのー」
「プリンセス、執務が終われば遊んで来てもよろしいですからね?」
「るーしぇちゃんはやさしいのー。あ、そうそう。これがこんかいまとめたものなの」
 ぺらっと一つの資料をルーシェに手渡すレン。
 其処にはこう書かれていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「乙」はペットのフロストウルフを、自分の命令には従うと盲信してウィンターフォルセの街中に引き連れ
 魔獣に慣れていない住民に対し過剰なる恐怖を与え、同日に行われていたペットに対する意識改革を目的とした祭を台無しにし、冒険者達への名誉回復を妨害し兼ねない行為を行った。

 また、先のウィンターフォルセ事変において、ギルド総監の温情によって与えられた汚名返上の機会をも無視した事により、情状酌量の余地は無い物と判断。
 よって「乙」に対し、レン・ウィンターフォルセ・ウィンドフェザーの名の元、以下の審判を下す。

一、今後「乙」に対し、街道を含むウィンターフォルセ領内へ、所有する全てのペットを随伴する事を禁止。

一、違反した場合は即刻拘束した後、随伴したペットを没収。

一、違反行為を繰り返した場合、「乙」の街道を含むウィンターフォルセ領内への立ち入りをも禁止。

尚、更正の機会を与える為、ファームへの無償奉仕を提案(強制に在らず)。
ファーム責任者であるマリスが「乙」の働きを認め、保証した場合のみ上記の罰則を無効とする。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「此れでいいんですのね? プリンセスが決めた事ですから、私は何とも言えませんが」
「これでいいなの。フォルセとしてはこのようにうごいてほしいなの」
「判りましたわ、マリス様には此方からご連絡すると同時にエーガン王様とカイン様に此れを送らせて頂きます」
「さぁ、あそぶなのー♪」
 レンは執務室の椅子からぴょんっと飛び降りて、わんこ達が待つ執務室へと走って行くのだった。