シフールの大冒険☆
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■ショートシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:易しい
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月28日〜10月03日
リプレイ公開日:2006年10月04日
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●オープニング
「俺、王都へ行って見たいさ!」
そう言って、田舎街を飛び出した一匹のシフールがいた。
田舎街のシフール達の間では
「王都は怖いとこさよ?」
「其れなのに行くのけ?」
「大きな怪物がいるだよ?」
と、危険な場所とされているらしいのだが、飛び出したシフールはそんなのへっちゃらだと言いのけて王都へとやってきたのだった。
「ひゃー! 此れが王都さね!? ひっろいさー‥‥!」
少年シフールは、王都を空から見るやいなや、嬉しそうに飛び回るのだった。
しかし、此処から少年シフールの試練が始まるのだった。
「まずは降りてみるさ〜。どんな所かしっかり見ないといけないさー♪」
ふわふわ、ひらりひらりと。王都へと飛んで行く。
其処には、彼にとっては大きな生き物がいっぱい行き来していた。
そう、人間である。田舎街にも人間はいたけれど、こんなに多くの人間を見たのは初めてだ。
「なんでこんなにもいっぱい人間がいるさ? こんなに犇めき合ってたら、苦労するさ?」
何故ここに人間が集うのか。少年シフールには思い浮かばなかった。
そうしてぼーっとしていると、一人の人間に少年シフールは跳ね飛ばされてしまった。
「いたた‥‥! 酷いさ! シフール跳ね飛ばすなんて酷いさー! 都会は悪いとこだったさ! でも、此れだけで判断しちゃいけないさ!」
そう言って、地面で踏まれそうになりながらも握り拳を作る少年シフール。
彼の背に、脅威なる者がにじり寄っていた。
「あれ? 暗いさ? もう夜さー?」
「わふっ!」
「へ?」
「わふ‥‥わふっ!」
振り向けば其処にいたのは巨大なわんこ。
しかも、少年シフールを眺めている。今にも食べられてしまいそうだ。
「お、俺を食べても美味しくないさー! こんな魔物がいるなんて、王都はやっぱりこわ‥‥」
「わふっ♪」
「う、うわわあぁぁぁぁぁっ!?」
少年シフールは犬に羽を咥えられ、何処かへと連れ去られてしまった。
どうやら、ぬいぐるみか何かだと思ったのだろう‥‥。
其れを、配達していたシフールが目撃するのだった。
「ね、同士を助けてあげてくれないかしら?」
「どういう事です、其れ?」
冒険者ギルド。ギルド員に手紙を渡しながら配達シフールが尋ねた。
ギルド員も首を傾げて眺めている。
「其れがね、どうも田舎街から王都に来たシフールがいるらしくって。話には聞いてたんだけど、犬に捕まっちゃったみたいなのよ」
「犬に‥‥ですか?」
「そ。田舎街にはあんまりペットなんていないでしょ? だから、そういうとこに用心してなかったみたいで。犬の事魔物だと思っちゃってるわけなのよ」
配達シフールがそう告げると、ギルド員は苦笑いを浮かべた。
確かに、田舎暮らしのシフールからして見れば、犬は魔物なのかも知れない‥‥。
「で、何処に連れて行かれたんですか?」
「分からないわ。だって、王都には犬っていっぱいいるでしょ? そうね、黒と白の大きなわんこだったわ」
配達シフールのお願いは、ギルド員に受け入れられた。
果たして、田舎街出身の少年シフールの運命や如何に‥‥!?
●リプレイ本文
●捜索開始!
「‥‥どうしたものかのぅ。同じシフールの危機なのじゃ」
「そういう時はしふしふ団の出番だよねっ♪」
「うーん、また災難な子も居たものアルね〜、早く助けてあげないとアル」
孫美星(eb3771)の言葉に一同もうんうんと頷く。
災難というか、王都ではよくある光景だったりするのだが彼等は冒険者。
一般とは違ってペットの扱い方は長けている。
「あ、引き受けてくれたの、君達なんだ? 同じシフールの人がいっぱいね、安心したわ」
「貴方が目撃者のシフールさんですか?」
赤坂さなえ(eb4538)が尋ねると、シフールは
「そうよ」
と、答えてにっこりと笑う。
すると、さなえはボーダーコリーのペット、ハナを隣に呼んだ。
「大きなわんこというのはこういう犬ですか?」
「うーん‥‥似ているけれど、ちょーっと違うわね。白と黒は合ってるんだけど‥‥」
「だとしたらどのわんこなのかしら‥‥?」
「白と黒ってハスキーもそうじゃなかったか?」
飛天龍(eb0010)がそう言うと、配達シフールは指をパチンと鳴らした。
「そうそう、そんな名前のわんこだったわ。種類まで覚えてなかったんだけど、今聞いてピーンと来たわっ♪」
「ハスキー犬ですか‥‥其れは確かに私達では既に猛獣クラスですね‥‥」
「大変な犬に捕まってしまったんじゃのぅ‥‥」
「とりあえず、やれる事はやってみましょう」
そう言うと、ディアッカ・ディアボロス(ea5597)が攫われた現場へと案内してくれるようお願いする。
配達シフールは笑顔で頷いて、現場へと案内するのだった。
「ここよ。ここで彼、攫われたの」
配達シフールが案内したのは大通り。
近くに冒険者街がある為、数多くの冒険者達が行き来している。
勿論、街の人達も賑やかなものである。
「ここですか‥‥確かにここならわんこがいても問題ないですね」
「とにかく、早く探してあげるのじゃ」
ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)がそう言うと、ディアッカも頷いてバーストを詠唱する。
彼の目に段々と映し出される当日の現場‥‥。
「‥‥どうやらわんこを完全に魔物だと思いこんでいるみたいですね。それにしても少し変わった喋り方をするシフールさんでしたね」
「田舎の方でも彼の口調、結構特徴あるのよねぇ。あ、そう言えば‥‥彼、ぶかぶかの青い帽子を被っていたわ。情報になるかしら?」
「十分なのじゃ。では、次はわしの番じゃの」
そう言うと、ユラヴィカはサンワードを詠唱する。
集中しているユラヴィカを他所に、配達シフールは踵を返す。
「それじゃ、あたしは仕事あるから戻るわね? 後、お願いね?」
「任せて〜☆あたい達がしっかり保護するからー!」
燕桂花(ea3501)がそう言うと、配達シフールは何処かへと飛び去っていった。
「判ったのじゃ。此処から少し遠い所にいるみたいじゃの。答えてくれたという事は日陰にはいないはずじゃ」
「其れでは、其れを元に探しましょうか‥‥」
しかし、其れは彼の方から来てくれたのだった。
●救出作戦!
「ち、ちょっと! 人を何処まで連れて行くつもりさー!?」
「ん? この声は?」
「この口調‥‥彼です! 彼が近くにいると思います!」
「わんこを探して、その子が咥えていると思います」
「急いで助けるアル!」
こうして、それぞれ広い広場の中散開して探すのだった。
「だ、誰か〜〜!」
「いました、あそこです!」
さなえがその方角を指差すと、其処には意気揚々と歩くハスキーの姿。
そして、その口元にはぶら下げられ暴れるシフールの姿。
「早く救出しないと!」
天龍が慌ててハスキーの元へと向かおうとするが‥‥ハスキーも其れに気付いたのか慌てて走り出す。
まるで、自分の物を盗られると思ってるかの如く。
「は、速い‥‥!」
「このままじゃあの人、目がふらふらになっちゃうよー!?」
「仕方ないのじゃ、ディアッカ!」
「はい。ごめんなさい、わんこさん‥‥!」
逃げ走るハスキーを追いかけて、ディアッカがギリギリの所でシャドウバインディングで足を止める。
ハスキーは観念したのか、座りこんでしまう。彼を隠すかのように。
「お、追いついた‥‥」
「わんこさん、彼を放して欲しいアル。彼はあたし達の仲間アル!」
其れでもわんこは動じない。ぷいっとそっぽを向くのだった。
しかし、其れも一瞬の出来事。ディアッカのメロディーがわんこの心を落ち着かせたのだった。
其れと同時にわんこの口からシフールが放される。
「ひ、ひぇ〜‥‥やっと解放されたさぁ‥‥!」
「しふしふ〜☆」
桂花が開口一番そう挨拶すると、少年シフールは目をぱちくりさせる。
「正義のしふしふ団参上アル〜☆もう安心アルよ〜♪」
「し、しふしふ団?」
「そうだよ。あたい達はしふしふ団。しふしふ〜はシフールの挨拶なんだよ☆」
「‥‥お、王都ってそんな挨拶もあるんさ‥‥?」
少年シフールは不思議そうに首を傾げている。
其れもそうだ、彼はそんな言葉一度も聴いた事がなかったからである。
よって、都会ならでわの挨拶だと思っているようだ。
「しふしふ〜! 飛 天龍だ、宜しくな? ウィルに滞在中は俺の家に泊まっていいぞ」
「あ、ありがとうさぁ! 俺はクァーレってんだ、宜しくさ!」
「宜しければ私達が王都を案内しますよ? どうですか?」
「其れは助かるさ!」
「其れと、さっきの大きな動物さんはわんこです。魔物じゃないですよ?」
さなえがそう言うと、クァーレルはえぇっ? と犬の方を振り返った。
‥‥どうやら本気で魔物だと今の今まで思っていたようなのである。
●しふ学校
「さ、ここがしふしふの為の学校、しふ学校だよ〜」
じゃーん、と桂花が紹介したその矢先。
「こんの、わからずやめーっ!!」
ぼっこーん、と気持ち良い程の打撃音と共に、目の前をぶっ飛んでいったのは不良しふ。ごろごろと転がりながらも、とりゃっとばかりに即起き上がる。さすが、打たれ強いというか何と言うか。
「やったなこの──」
「おちつけ」
噛み付かんばかりの勢いで戻って来た彼の額を、天龍がごつんと小突く。
「あ、あんた達丁度いいところに来た、この頭に血の上ったバカを諌めてやっておくれよ‥‥」
出て来たイーダ先生も軽く息が上がっている。いったい中でどんなデスマッチをやっていたのやら。
「おや? なんだか見慣れない顔がいるね」
クァーレに気付いたイーダが、しふしふっと挨拶。クァーレ、軽くびびりながらも挨拶返し。そこにどやどやと、生徒達も現れた。紹介するや、彼の周りはしふだかり。
「ようこそしふ学校へ! まあゆっくりしていきたまえー」
「そっか、田舎から出てきたばっかりなんだ。僕らにもあったよね、そういう頃」
「犬に咥えられた? あっはっは、あるあるよくある。そういう時は鼻の頭をこの名剣マチバリでぶすっと」
「よし、先輩が王都の厳しさ辛さをみっちりもがが」
「余計なことは教えなくてよいのじゃ」
ユラヴィカが口を塞いで黙らせる。しかし、お兄さんお姉さんは、後輩に悪い遊びを教えたがるもので。
「じゃあじゃあ、お姉さんがちょっぴり危険な王都裏マップをこっそり伝授」
「いやいや、それより俺が王都生活で大切なお役人をだまくらかす方法をば」
「こらーっ! いいかげんにしなさいーっ!」
桂花に叱られ、生徒一同しょぼくれる。
「クァーレくんに会わせるには、ちょっと劇薬すぎたアルか」
美星、溜息をつきながら首を振る。
「‥‥えーと、そちらが落ち着いたら、是非こちらも助けてください‥‥」
気が付けば、さなえもしふだかりに囲まれて、つつかれたりよじ登られたり。ひとりひとり引っ剥がしながら、ディアッカがイーダに問う。
「ところで、今日の授業予定は?」
「画家工房の親方から、見学の許可をもらってるよ」
「あ、いいアルね、街で働いてるしふしふの姿、見たくないアルか?」
呆気に取られていたクァーレ、はっと我に返る。
「うん、見たいさー」
「決まりアルね。さ、みんなも行くアルよ。通行の邪魔にならないように、整列〜アル!」
わいわい言いながらのしふ行進。
「おや、お出かけかい?」
「余所見してると踏んづけられるぞ、気をつけて行きな!」
通りの人達から、気さくに声がかかる。そんな様子に、クァーレの表情も綻び気味。
「えーとね、画家工房で働いてる仲間の他に、農家で働いてるのもいるよ。あと、パン屋とかね。僕はねー、お菓子屋さん始めようかと思ってるんだー。こないだ大失敗しちゃったんだけどねー」
「自分で作って人間のひと相手に商売するの? はー、凄いさー」
「え、そう? 照れちゃうなぁ」
「俺は俺は、天龍先生から拳法習ってるんだ。日々修行なんだ」
とりゃ、とりゃっと正拳突きなど。強そうさー、凄いさーと感心されて照れまくり。
「私は桂花先生から料理習ってるよ。冒険者酒場とかで雇ってくれないかなぁ」
「街で暮らすにはお金がいるからさ。何かして稼がなきゃならないんだ。しふしふも世知辛い世間に揉まれなきゃならない時代なんだよねぇ」
「そんな街でも立派に暮らしてるなんて、本当に偉いさー」
うんうんと頷き感心する彼に、咳払いなどしながら視線を逸らす者多数。
「ま、クァーレを落胆させない様に頑張れよ」
天龍に背中を叩かれ、咳き込んでみたり。何かにつけて驚き感心するクァーレが新鮮らしく、兄貴面してあれこれと世話を焼く生徒達に、皆してくすりと笑い合った。
●別れ
「それじゃあ、色々お世話になったさぁ!」
「えへへ、どーいたしまして!」
「土産だ、持っていけ」
天龍が彼に手渡したのは、手袋だった。
その手の甲の部分には、彼の顔そっくりな刺繍がなされていた。
「い、いいの!? うわぁ、ありがとう!」
「後は此れもなのじゃ」
手渡されたのは彼等と同じ腕章。
しふしふ団腕章である。渡された彼は、嬉しそうに其れを腕につけてパタパタと飛び回るのだった。
「本当に楽しかったさー♪色んな所、案内してもらったばかりでなくこんなお土産までー!」
「いいって事アル! だって‥‥」
「あたい達はもう仲間だし☆」
「仲間‥‥? 俺もしふしふ団さ〜?」
「そういう事になるな?」
天龍がそう言うと、クァーレルも喜び飛び回る。
田舎の友達だけではない、都会の友達も出来たというのだ。
そして、何よりも心強い仲間が出来た事に、彼は幸せを感じるのだった。
しかし、問題はまだ他にもあった。
「でも、帰りが心配ですね‥‥どうしますか‥‥?」
「帰りが無事とは限らないからな‥‥」
其れもそうだ。無事来れたとしても、帰りが一番問題である。
魔物に襲われないという保障は何処にもない。
「ならわしが途中まで送り届けてくるのじゃ!」
ユラヴィカがそう言うと、彼も嬉しそうに頷くのだった。
どうやら自分達の村も見て欲しいようだった。
「それじゃあ皆さん、ありがとうさ! また王都に来たら遊んで欲しいさ!」
「勿論アル! その時はお土産話期待してるアル♪」
「はいさー! それじゃ、さようならさー!」
そう言うと、クァーレルはユラヴィカと共に帰路につくのだった。
後日、ユラヴィカはしふしふ団の者達にこう話をしていた。
「彼の村は本当に小さな村でのぅ。自然がいっぱいで、気持ちよかったのじゃ♪」
「ほんと? 何時か行ってみたいね☆」
「此れも何かの縁です。次会える日があるかも知れません」
「先の事は誰にも分からないからな。其れを楽しみにしていよう」
ユラヴィカの土産話は、彼等にとっても有意義なものとなったのだった。