キノコの山で大騒ぎ
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■ショートシナリオ
担当:マレーア
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:15人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月13日〜07月18日
リプレイ公開日:2004年07月20日
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●オープニング
パリから歩いて一週間ほどかかるその地に、土地の者からキノコ山と呼ばれる、森に包まれた小高い丘がある。山とは些か大袈裟だが、村の教会の鐘突き堂よりも高いため、そう呼ばれていた。
その近くの道を、ワインの樽を積んだ馬車がとろとろと進んでいた。御者台には真っ白なあごひげをたくわえた老人と、恐らくその孫であろう少年が座っている。
するとキノコ山のほうから、何やら女の金切り声に似たけたたましい叫びが聞こえてきた。
うきゃあああああああああーっ!!
少年が老人に問いかける。
「じっちゃん、山のほうで何かが叫んでるよ?」
「ああ、あれはスクリーマーじゃよ。獣か何かがスクリーマーの縄張りに足を踏み込んだんじゃろうて」
スクリーマーとは、叫び声をあげる巨大なキノコである。見かけは毒々しい極色彩の大きなマッシュルームで、自分の周囲の地面に菌糸を伸ばし、そこに何かが踏み込むとけたたましい叫び声を放つのだ。ちなみに毒キノコのような見かけにもかかわらず、スクリーマーに毒はなく、生で食べることもできる。
すると今度は、妙ちくりんな歌声が風にのって流れてきた。
きゃはははは〜♪ 毒きのこ〜♪ 毒きのこ〜♪ あたしたちは毒きのこ〜♪
「じっちゃん、あの歌声は‥‥」
「むむ! こりゃいかん!」
老人は額にしわを寄せると、馬車のスピードを早めた。
突然、嵐のような突風が吹き寄せ、馬車を立ち往生させる。老人の被った日除け帽が吹き飛ばされる。
突風はあっという間に収まったが、今度は火の球が飛んできた。
ぼわあああああん!
火球は馬車の近くの地面でド派手に炸裂。馬車を吹っ飛ばしそうな勢いだ。
「じ、じっちゃん!」
「坊主! わしから離れるな!」
三人の人影が近づいてくる。まだ幼さの残る三人娘のウィザードたちだ。だがそいつらの格好はもっのすご〜くヘン! ケバい化粧、ケバく染めた髪の毛、ケバいドレス、しかもそのいたるところに毒キノコ模様のブチがかき込んである。
「炎のフレイぃ〜!」
「氷のハイダぁ〜!」
「嵐のシイルぅ〜!」
三人娘、それぞれ名乗りを上げると、声を揃えて大見得きった。
「毒キノコ三姉妹、けんざぁ〜ん!!」
炎のフレイが言う。
「おいちいワインを届けてくれるなんてぇ気がきいてるわぁ〜」
嵐のシイルが言う。
「昨日の晩から酒が飲みたくてぇ飲みたくてぇたまらなかったのよね〜」
言うと、二人は何やら怪しいキノコを口にくわえてもぐもぐ。
「あ〜おいちい〜。毒きのこってばさいこ〜!」
「脳みそシビれるような快感がぁもぉヤミツキなのよぉ〜!」
老人は棍棒を握ると、娘たちに突っかかっていった。
「いい加減にせんかぁ! この盗っ人のアホ娘どもが!」
「あ〜らおじいさまぁ〜か弱い女の子に暴力はいけないわぁ〜。おイタするなら氷漬けにしちゃうわょ〜。水の精霊の力を借りてぇ〜アイ〜スコフィ〜ン!」
氷のハイダが呪文を唱えてさっと右手を突き出す。その手の平が青い魔法の光を放ち、冷たい霧が老人の体をすっぽり覆う。次の瞬間、老人はかっと目を見開いたまま、棍棒を振り上げたままの姿で等身大の氷の塊の中に閉じ込められていた。
「じっちゃん! じっちゃぁん!」
氷の塊を拳で叩いて叫ぶ少年。それを尻目に三人娘は馬車の荷台に駆け上がり、ワインの樽を地面に投げ下ろすと、けたたましく笑いながら樽を転がして去っていく。
「きゃははははは! 今夜も徹夜で酒盛りだぁ〜い!」
「毒きのこでラリラリラ〜♪ 何も考えないラリラリ人生ってば最高〜っ♪」
「飲めーっ! 歌えーっ! 叫べーっ! 朝まで騒ぎまくれーっ!」
しばらくすると、強い夏の日差しが老人の体を包んでいた氷を溶かし、老人は意識を取り戻した。
「はっ‥‥!? わしは一体何を‥‥あのアホ娘どもはどこにいったんじゃ!? ‥‥し、しまったぁ! わしの大切なワインを盗まれたぁ!」
だが既に後の祭り。三人娘の姿はキノコ山の森の奧に消えていた。
で、ここは冒険者ギルド。
「‥‥というのが、ついこの前起きた事件のあらましなんだがな。え? その毒キノコ三姉妹は何者かって?」
訊ねられたギルドの事務員は、とても言いにくそうに声をひそめて答えた。
「ここだけの話だが、実はな‥‥ヤツらはうちのギルドの冒険者のなれの果てだ。まあ、これを読め」
事務員が机の引き出しから取り出したのは、かなり前にギルドの掲示板から剥がされた依頼書だった。そこにはこんなことが書かれていた。
『パリから歩いて一週間ほどかかるその地に、キノコ山と呼ばれる土地がある。昔からキノコの産地で、ここでのキノコ狩りを代々の御領主も許しており、近くに住む村人の楽しみとなっていた。ところが最近、得体の知れない毒キノコが増えているという。どうやら何者かがキノコ山に住み着き、あちこちで毒キノコを栽培しているらしい。誤って毒キノコを口にした付近の村人は、ありもしない幻覚が見えたり、わけの分からないことを口走ったり、むちゃくちゃな行動をしでかしたりで、大変な目にあっている。冒険者諸君はこの被害を一刻も早く食い止めるべく、キノコ山にはびこる毒キノコを一掃して村の平和を取り戻してほしい』
「で、あの三人娘はこの依頼を受けてキノコ山に入ったはいいが、毒キノコを口にしておかしくなり、今じゃ近くを通る人々から酒や食料を強奪しては毎日毎夜どんちゃん騒ぎという体たらく。この際だからはっきり言ってやる。ヤツらは冒険者の恥だっ!!!!!!!!」
思わず興奮して怒鳴った事務員は、再び声の調子を元に戻して続けた。
「とにかく、冒険者ギルドの名誉にかけてもあのアホ娘どもをキノコ山から連れ戻してくれ。この際だ、ぶち殺す以外だったらどんな手を使ったって構わん。で、連れ戻しに成功したなら、キノコ山に生えた毒キノコは全部抜き取って処分してくれ。これ以上、ヘンな騒ぎを起こしたくはないんだ」
●リプレイ本文
●倒せ毒三姉妹
パラのレンジャー、ティルコット・ジーベンランセ(ea3173)にとってはこれが初の依頼。
「茶々ッとすますかねぇ。しかし15人っていうのは、いくらなんでも多くねぇ?」
全員そろった仲間を見て唖然とする。色々なのがいて楽しそうだが‥‥。
「まぁ、宜しく頼むわ」
最初っから力押しってゆーのもアレなんで、アンジェリカ・リリアーガ(ea2005)は『毒キノコ三姉妹にお酒を差し入れして酔い潰す作戦』を提案。
「でも、酔い潰すには結構な酒量が必要になっちゃうんだよね」
依頼主に掛け合うも返事は芳しくない。ちなみに依頼主はキノコ山の近くの村の村長だ。
「冒険者ギルドの不始末でこうなったんじゃろうが! 自分たちで何とかせい!」
「でも、あたしたちお金ないし、この作戦でいかないと死人が出るかもしれないし‥‥」
「仕方がないわい。ならわしらでワインを用意するとしよう。成功したら代金はあの三人娘に請求するが、失敗した時にはおまえさん達に払ってもらうぞ」
作戦はアマツ・オオトリ(ea1842)が中心になってまとめ、先行して毒三姉妹に接触する潜入班、三姉妹を誘き出す囮班、捕縛を担当する奇襲班の3班に分けられた。
●潜入
山の麓道、毒三姉妹がよく現れるという場所へ来ると、潜入役のサーガイン・サウンドブレード(ea3811)は自前で用意したワインを持って、大声で呼ばわった。
「美しいお嬢様方〜! 美味しいワインをお持ち致しましたぁ〜! どうか私の話を聞いて下さ〜い!」
返事はない。何かの現れる気配もない。周囲は静まりかえっている。
「お嬢様方〜! お休みなのですかぁ〜!?」
叫ぶこと1時間余り。
「毒〜♪ 毒〜♪ さっきから叫んでいるおまえはだ〜れだ?」
「サーガイン・サウンドブレードと申します。噂は聞いていますよ。美しい三姉妹がこの山でご活躍されていると。それにしても、噂以上です」
その言葉に三姉妹は色めきたった。
「きゃははは! ついにあたしたちも有名人よ!」
「もう名もない冒険者からは卒業ね!」
「さあ今夜はお客人と一緒に祝いの宴じゃ〜!」
サーガインは三姉妹に手を引かれ、森の中へひっぱって行かれる。
ふと背後に人の気配。立ち止まって振り返ると、何かがサッと木の陰に隠れたような‥‥。
「ちょっとぉ〜!」
「何もたもた歩いてるのよ〜?」
「日が暮れるわよ〜!」
三姉妹にせかされ、再び歩き始めるサーガイン。急に背中が重たくなったようだが気のせいだろうか?
●囮作戦
「これを見て」
クリシュナ・パラハ(ea1850)が、巨木の木の下に固まって生えている茶色っぽいキノコを指さした。
「見た目は普通のキノコに見えるけど、これが例の毒キノコ。食用キノコと紛らわしいけど」
ティルコット・ジーベンランセ(ea3173)が毒キノコをまとめて引っこ抜くと、手持ちの袋の中へ投げ入れた。
「あぁ、なんかメンドイ‥‥山ごと燃やしたくなるぜ。痛ぇ!」
呟くティルコットをどついたのはアンジェリカ。
「今のが村長に聞こえたら大目玉だよ! お尋ね者に成りたい?」
「じょ、冗談だったのに‥‥」
背中に小さめのワインの樽を背負ったジャック・ファンダネリ(ea4746)が注意をうながす。
「さあ、いきますよ」
クリシュナ・パラハ(ea1850)がオカリナを取り出し、楽しく吹きながら皆と一緒に歩き始めた。囮班はハイキングにやって来た一般人を装い、皆でわいわい騒ぎながら姉妹をおびき寄せようと言うのだ。
ふと、クリシュナがオカリナを吹くのを止め、ジャックに訊ねた。
「どうして背中に鞭なんか隠し持ってるんですか?」
「いやほら、仮にもナイトだし。キノコでラリッただけのお嬢さん達、素手で殴れないの」
先行する囮に続いて、奇襲班が森道を進む。大人数を姉妹に悟られぬよう、それでも緊急時にはすぐに囮のもとへ駆けつけられるよう、適度の距離を置いて。奇襲を受けぬよう、デルテ・フェザーク(ea3412)とエル・サーディミスト(ea1743)の2人で、一定の歩数を歩くごとに交互にバイブレーションセンサーの魔法を使い、怪しい気配を確かめる。
「あ、こんな所にキノコが」
思わず手にとってしげしげと眺めていると、シルバー・ストーム(ea3651)がやってきた。
「それはシャグマアミガサタケと呼ばれる毒キノコですね。食べれば致死的な猛毒キノコですが、ちゃんと毒抜きすれば珍味ですよ。茹でているときの蒸気でも死んじゃうほどの毒ですけどね。あ、こっちのやつは‥‥適量だと精神の高揚作用がありますね」
「毒‥‥ってことは、薬にもなるよね?」
エルは毒キノコを小袋の中に放り込むと、再び歩き始めた。
森の中、どこからともなくオカリナの音と、騒々しい歌声が流れてきた。サーガインは耳をそばだて、にんまりほくそ笑んで三姉妹に告げる。
「カモが来たようです。あの方々から色々と巻き上げましょう。私は回復魔法が使えますので、傷ついた時はお任せ下さい」
三姉妹、やってきた囮班を藪の陰からうかがい、ニンマリ。
「きゃははは、親切な旅人さんがワインと食べ物をもってきてくれた〜!」
「今度も思いっきりカッコよく登場してやるわ!」
「一番乗りは、あ・た・しぃ〜!」
と、三人の目に、囮班のほうのに駆けていくサーガインの姿が映る。
「こら〜! 抜け駆けすな〜っ!」
●捕縛作戦
バイブレーションセンサーを発動させたデルテが、囮班に接近してくる4つの生き物の気配を捉えた。
「三姉妹が近づいてくるみたい。急いで。でも気づかれないように」
「うきゃ〜っ!! なんですかあなたたちは〜っ!?」
三姉妹を引き連れていきなり現れたサーガインの姿に、クリシュナがわざと大声出して驚いてみせる。
「ハ〜ッハッハッハッ、現れましたね。あなた方など毒キノコ三姉妹様にかかれば赤子も同然。逃げるのなら所持品を置いて行っていただきましょう。それではお願い致します、姐さん方」
サーガインがササッと引き下がり、囮班の前に三姉妹がずらり並んで現れた。と、いきなりティルコットがナンパモードで三姉妹の前に踊り出る。
「へぇい、彼女。俺と一緒‥‥ぬわぁぁ!!」
ぼごっ! ぼごっ! ぼごっ!
3つのゲンコツが順繰りにティルコットの顔面にめり込んだ。
「おまえのせいで!」
「カッコよく名乗るタイミングを!」
「失ったじゃないの!」
ワイン樽を背負ったジャックが進み出る。
「まあまあ、ここは平和的に話し合いで解決しませんか?」
ジャックは時間稼ぎの話し合いを開始。そこへ後からやって来た奇襲班が追いつき、三姉妹が話に気を取られている間に、ぐるりと回りを取り囲んだ。
三方包囲網を形成した奇襲班に、アマツ・オオトリが身振りで合図を送る。──そのまま待機せよ。
その時、リューヌ・プランタン(ea1849)は見た。サーガインの背中にシフールがへばりついている。あれは冒険者ギルドにいた仲間に違いないが、あんなところで何をやっているのだ?
アマツが突撃の合図を下す。奇襲班の冒険者たちがどっと飛び出した。ほとんど同時にサーガインの背中のシフール、ファム・クライス(ea4732)も飛び出した。
「たーんらたらたた♪ たららたららー♪ みゅーじっくすたーと!! れっつだんしんぐ!」
空中での奇妙なダンスと、怪しいイギリス語のセリフに戸惑う敵と味方。
「皆さんご注目〜一番ファム光ります! れっつ!しゃいにんぐ!」
ファム、ダブリングアーマーを発動。強烈な光で三人娘の目が眩み、周りの冒険者たちも思わず目をつぶる。
「うきゃあ!」
炎のフレイの叫びが聞こえた。ファムが顔面にドロップキックをお見舞いしたのだ。
「はががが‥‥! よくむぉ〜やぁたわねぇ〜! フゥァイゥア〜ブォ〜ム!」
「危ない! 伏せろ!」
アマツが叫び、身を伏せる。だがファイヤーボムは飛んでこない。
「フゥァィア〜ブ〜ム! フゥェィヤ〜ブ〜ム!」
炎のフレイ、顔面にキックをくらったせいか呪文が成就しない。
「邪魔者は消えちゃいなさ〜い! スト〜ム!」
嵐のシイルがストームを放つ。
「さようなら〜さようなら〜あでぃおすあみーご!!」
アヤしいイスパニア語のセリフと共にファムが吹っ飛んでいき、シイルの前方にいた冒険者たちが暴風で体をよろめかせる。
「みんな、俺の周りに集まれ! ホーリーフィールド!」
スケル・ハティ(ea3305)が仲間の周りに聖なる魔法の結界を張り巡らす。嵐のシイルのストームが再び襲ってきたが、暴風は結界に遮られた。続いてリューヌ・プランタン(ea1849)がコアギュレイトの魔法を飛ばす。
「か、体がぁ‥‥!」
体の自由を奪われまいと、意思の力で必死で抵抗するシイル。そして彼らは魔法に耐えた。
「あははははは! こんなチンケな魔法に負けるようなあたしじゃ‥‥」
突然に暴風が起こり、シイルを地面に倒す。アンジェリカがストームの魔法を放ったのだ。隙を与えずリューヌがシイルの上に馬乗りになり、両手を押さえつけて捕縛した。
「これで一人‥‥」
顔に怪我した炎のフレイがサーガインに駆け寄る。
「顔に怪我してぇ呪文がぁうまく唱えられないの! 何とかぁしてぇ!」
「分かりました、任せてください」
メタボリズムの魔法を唱えるサーガイン。しかし何も変化は現れない。
「どうしたの!? 何も起こらないじゃないの!」
「実は魔法が効き始めるまで、かれこれあと1週間ほど‥‥」
「この役立たず!」
サーガインに蹴りを入れるフレイ。そこへティルコットが駆けてきた。
「寄るなぁ! 近づくなぁ! このナンパ野郎ぅ! ファイヤーボムッッッ!」
ティルコットに向かって両手を突き出すフレイ。しかしその手から火球は放たれなかった。
「ど、どうしてぇ!? ちゃんと呪文言えたのにぃ!」
その背後で解説するサーガイン。
「実はメタボリズムの魔法をかけると、かけた相手の魔法の力がゼロになってしまうのです」
「返せぇー! あたしの魔法返せーっ!」
サーガインに飛びついて暴れるフレイ。山猫のように噛みつくひっかく蹴る殴る。ティルコットが必死で引き剥がそうとするも、攻撃を避けるだけで手がいっぱい。
「って、早く捕縛!! ‥‥っとぉ、してくれってぇ‥‥のっ!!」
そこへディアルト・ヘレス(ea2181)がやってきた。
「おまえらぁなんかぁだいっきらいだぁ〜!!」
フレイがディアルトに飛びかかった──かに見えたが、一瞬早くディアルトのスタンアタックがフレイの急所に決まった。炎のフレイは気を失って倒れた。
「こうなったら、あたし一人だけでも戦ってやるぅ〜! 一人残らず氷漬けにしてやるわ〜! きゃははははは!」
氷のハイダは無理矢理に高笑い。そして見た。自分の魔法の届く範囲に、デルテが立っている。
「まずはおまえから氷漬けよっ! アイスコフィ〜ン!」
魔法を飛ばすハイダ。ところが魔法はまるで効かない。
「どうして!? どうしてなのよっ!?」
よく見ると、デルテの頭上にはブラックボールの黒い球が浮かんでいる。生い茂る木の枝のせいでそれに気づかなかった。
「ええい! こうなったらブリザードでガチガチにしてやるわ!」
魔法の印を切ろうとしたハイダの手にジャックの鞭が飛び、ハイダの呪文が途切れる。
「お嬢さん相手に手荒な事はしたくないんだがっ!」
「よくもやったわね! 痛いじゃないの!」
ハイダはジャックの鞭の届かぬ場所へ走り、再び呪文を唱え始めたが、今度はシルバー・ストーム(ea3651)の放った矢がハイダの脇腹をかすめ、その呪文を中断させた。
「それは、見逃せませんね」
「よくも! よくもあたしの邪魔ばかりして!」
するとハイダの頭上の木の枝が、まるで人間の手のように左右からハイダに覆い被さり、ハイダの体を持ち上げてその自由を奪った。
「何よ! この木は何なのよっ!」
プラントコントロールで二本の木の枝を操ったエルとデルテが、顔を見合わせてにっこり笑う。
「うまくいったね」
「ええ」
ティーア・グラナート(ea4210)がハイダの両手・両足をロープでぐるぐる巻きにして、捕縛完了。
「よし、もういいぞ。お嬢さんを下ろしてやれ」
●大騒ぎの後始末
捕らえられた三姉妹にアマツ・オオトリが言い放つ。
「享楽に耽る醜い姿、人それを堕落と言う! 貴様たちに名乗る名は無い!!」
ティーアが三姉妹の毒キノコ模様服を見て、半ば感心したように言う。
「ん〜、それにしても斬新なデザインだ。普通考え付かない。」
「あぁ、それにしても、女性には優しくの騎士道精神が‥‥。誰か、お嬢さん方にリカバーかけてくんない?」
ジャックに言われて、リューヌ・ブランタンがリカバーの魔法をかけ、彼女らが所持していた毒キノコを睨んでアンチドートの魔法を唱える。
「慈愛に満ちたるセーラ神よ。この娘の体内より精神を狂わせし、この毒キノコの毒を取り除きたまえ」
一人一人に呪文をかけてやると、三姉妹は正気に戻った。
「‥‥あれ?」
「あたしたち‥‥」
「‥‥ずっと何してたんだろ?」
ジャックが娘たちに訊いた。
「どうやら正気に戻ったようだね。さて、お嬢さん方に質問。山で毒キノコを栽培してる奴を見なかったかい?」
「知らないわ」
娘は三人とも首を振る。すると、エル・サーディミストの声がした。
「犯人はここにいるよ。ずっと物陰に隠れていたのを見つけたんだ」
見るとエルの隣には、見るからに胡散臭そうなエルフの男がツタでグルグル巻きにされて立っていた。
「ぼ、僕は怪しい者なんかじゃない! 僕はキノコの愛好家なんだ! そのキノコは毒なんかじゃない! 適量を使えば、素晴らしい薬になるんだよ!」
ある意味彼も被害者だが、ディアルト・ヘレスは言う。
「世の中、そんなに甘くない。自分の撒いた種は自分でしっかり刈り取ってもらうぞ」
続けて三姉妹にも言う。
「おまえたちもな」
こうして事件は解決した。冒険者たちは山のあちこちで毒キノコを抜き取りつつ、キノコ狩りをぞんぶんに楽しんだ。
「セップにジロル、プルロット季節。外れの大豊作♪ きゃ。こっちは旬のオロンジュにボレロワイヤルですわ。ふっふっふ、大漁ですよ?」
クリシュナは大喜び。
「これ、本当に食えるのか? 炙り焼きがいいかな?」
でっかいスクリーマーをかついだティーアが言うと、籠一杯のキノコを手にしたアンジェリカが答えた。
「シチューもいいかもね」
ここだけの話だが、レイは例の毒キノコをサンプルとして少しばかり失敬した。後で自分の研究の役に立つかもしれないので。