【収穫祭】討伐せよ〜村の守り

■ショートシナリオ


担当:マレーア

対応レベル:4〜8lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 40 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月30日〜11月04日

リプレイ公開日:2004年11月07日

●オープニング

 収穫の秋。多くの畑は豊かな実りをつけ、森に放った豚は肥太り、冬に向かっての糧となる。収穫期を終えて収穫祭を迎える。村では1年で最大のイベント、誰しも楽しさを満喫していた。その最中に、その凶報は届いた。
「村の近くで山賊を見た?」
 知らせたのは、この村に訪れる行商人。収穫祭を目当てに、多くの品を揃えてやってきたが、途中で2、3人の山賊に出会った。
「幸い護衛がついていたので切り抜けられたが」
 3人雇っていた護衛は、怪我を負いながらも山賊を一人捕まえて他を追い飛ばし、商人を無事に村まで護衛した。
「こいつの話によると、山賊は大勢いるらしい」
 捕まえた山賊は身形のいい様子、それなりの地位にあるらしい。
 村には領主がたまたま滞在していたが、家臣の数はさほど多くない。領主は早速、友好関係にある近隣の領主に援軍を求める。しかし、直ぐに頭数が揃うわけではない。しかも足りないかも知れない。
「冒険者ギルドに使いをやって至急人数を確保してくれ」
 早馬がギルドに到着した。
「村の護衛ができるものを雇いたい」
 領主の軍勢は山賊の襲撃を行うので、その間に村を襲われないように、守ってくれる人員が欲しい。

●今回の参加者

 ea0714 クオン・レイウイング(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1683 テュール・ヘインツ(21歳・♂・ジプシー・パラ・ノルマン王国)
 ea1807 レーヴェ・ツァーン(30歳・♂・ファイター・エルフ・ノルマン王国)
 ea2031 キウイ・クレープ(30歳・♀・ファイター・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea2361 エレアノール・プランタジネット(22歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea2597 カーツ・ザドペック(37歳・♂・ファイター・人間・神聖ローマ帝国)
 ea4284 フェリシア・ティール(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea6349 フィー・シー・エス(35歳・♂・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●村の守備隊
 領主の軍勢が山賊を攻めるために出撃した後、村の守りを固める冒険者が到着したのは、探索者たちが森の探索に出発する直前だった。
「あいつらが森を探索するのか」
 クオン・レイウイング(ea0714)は、すれ違った探索者たちの顔を覚えた。村の付近で遭遇した場合、山賊と間違って同士討ちしては痛手になる。
「やっぱりこの村か」
 テュール・ヘインツ(ea1683)は少し前にもこの村を訪れていた。村長が行方不明になった事件を解決するために、結局その時の村長は今は領主の館の地下牢に閉じ込められているはずだ。村長になる前の悪事がばれた結果だったそうだ。10歳の子供にはそのあたりのことは難しかったけど。
「頑張ってきてね」
 キウイ・クレープ(ea2031)が声をかける。あちらの冒険者も手を振って答える。
「まずは領主の館に行こう‥‥ってどっちに行けばいい?」
 レーヴェ・ツァーン(ea1807)は村に足を踏み入れて以来疑問に思っていたことを口にした。
「そうね。この村北にも西にも東にも領主の館がある。珍しいわね」
 フェリシア・ティール(ea4284)も同様。
「テュール、2度目なんだろう。どこに行けばいい?」
 カーツ・ザドペック(ea2597)が問い掛ける。
「たぶん北。北の領主の館が一番大きいから、きっとあそこには大きな庭があるから、軍勢が逗留するにはいいはずだよ」
 テュールは以前牛飲馬食した場所を覚えていた。そのことを話すとエレアノール・プランタジネット(ea2361)がのけ反る。
「それが根拠ですか?」
「まあ、行ってみよう。それでダメなら」
 フィー・シー・エス(ea6349)が先頭にたって歩きはじめた。
「あたっただろう?」
 北の領主の館に着くと、館の中に招き入れられた。テュールが自慢そうな態度を取る。
「村の様子は見てもらったと思う」
 領主の館では代官が待っていた。テュールは2度目だが、それ以外の人はもちろん初めて。彼もお祭り騒ぎが始まったような状態だったからあまり顔までは良く覚えていない。先方はもっとだろうけど。
「探索に雇われた冒険者とはすれ違った」
 フィーが答えた。
「それに村の地形もな。珍しい村だな」
 クオンが疑問を口にする。
「砦のようだろう。分割相続の結果だ。普通の山賊なら外見だけで逃げだすはずだが、こっちに寄ってきているらしいのは間違えない。以前はモンスターが出没していた地域もあったため、山賊も寄りつかないようだったが、最近はモンスターも減ったことも影響があるのかも知れない。ダンジョンが山賊のねぐらになっていなければいいが」
「村の防衛、かなり整っているようですわね」
 エレアノールは、村の最も外側ではすでに柵が整備されていたことを思い出した。最近にも補強が行われている。
「山賊の一味が発見されてから、村人総出で村の防御を高めている。諸君は村人と協力して、我等が山賊の全滅させるで戻ってくるまでの間、村を守っていて欲しい。探索隊が探索に成功していれば、一気に包囲殲滅して村には一人たりとも来させない。しかし」
「行き違った場合には‥‥こっちが全員を引き受けるってことですいわね。お任せください。きっと村は守って見せます」
 フェリシアは太鼓判を押した。もっともこの時点ではまったく根拠はなかったが。
「ああ、大船に乗ったつもりでいてくれ」
 カーツも請け合う。

●捕虜
「こいつが商人の捕まえた山賊ね」
 顔合わせの終わった村の守り手の冒険者は作業に入る前に捕虜を見に行った。身形の良さそうな山賊に興味を持ったのである。
 フェリシアは身形のいい山賊を観察する。たしかに面は山賊。しかし、妙に身形がいい。
「あなた本当にただの山賊?どうしてそんなに身形が良いのかしら。誰かに雇われたのではなくて?」
 フェリシアは尋問してみた。すでに尋問、正確には拷問が行われていた。一応外見では目立たない部分で。そして身形のいい山賊の両手の指は、小指を残して酷く痛めつけられていた。これでは剣はおろか酒杯とて握れないだろう。
「やることに容赦ないな、あの代官。悪役にはぴったりだが、楽して上前はねようって山賊じゃ文句はいえねぇよな。俺はもう行くぜ」
 クオンはこれ以上は聞き出せなかろうと、牢を出た。地下牢なら簡単には抜けさせまい。エレアノールもけっこう安心して出ていった。入口は一つしかない。
「あっちの牢には村長だった人が捕まっているよ」
 テュールは別の牢を覗いてみる。
「いたいた。あの人だよ」
 レーヴェが覗くと、牢の中は確かに男が一人入っていた。
「いったいなんで村長だった人が牢に入っているんだ?」
「悪いことしていたのがばれたんだって」
「良くあることだね」
 キウイも捕虜を確認して出ていった。
「フェリシア、聞き出せそうか。なんなら2、3発ぶん殴ってもいいぞ」
 カーツは手間取りそうなので捕虜に圧力をかけてみた。
「もういいわ。いきましょう」

●村の防衛
「それじゃ班別に行動を開始しようか?」
 クオンはすでに村人に準備をさせていた。見張り台の設置や松明など用意してもらうものはいっぱいあった。山賊がいつ来るか分からない。
「ちょっと聞いて」
 フェリシアが呼び集める。
「あの山賊、一瞬だけだったけど変化があったの」
 曰く、テュールが村長だった人の場所を言ったときだったという。
「それってもしかして誰かがあの村長だった人を救い出すためにか?」
 レーヴェが同意を求める。
「多分。もしかして‥‥あいつを捕まえた商人って以前から村に出入りしていたって‥‥可能性はありそうか」
 土牢なんかに長期間入れられていたら、刑期が終わる遙か前に死んでしまうのがおちだ。死刑にするよりもそちらの方が、反発を招かなくていいのかも知れない。村にはまだ村長だった人の味方もいるはずだから。
「それも考えて居たほうが。護衛の怪我が直るまでということで村に残っているそうですから。それに私達が来る前に幾人か他の商人も到着して滞在しているみたいよ」
 商人は収穫祭が延期になった状態で手ぶらでも帰れずに困っているらしいから、滞在しているのも仕方ないのだが。
「それを踏まえて行動しよう」
 もしかしたら、そいつらが全員敵に回るかも知れない。場合によっては村人の一部も。
「けっこうハードだね」
 キウイはそれでも鼻唄を歌っていた。所詮細かいことなのだろう。
 カーツは村人に南方向に高い見張り台を作らせていた。南以外の方向は領主の館から見張ることができる。その間エレアノールは領主館の地下にある土牢に中に入って捕虜を見張っている。もちろん、村長だった人も含めて不審な行動を取らないかどうかも。

 テュールとレーヴェは村の出入口である南の道で警備していた。村からは外に出る人はいないが、村に入っている人物は山賊の仲間である可能性を考えてここでチェックする。すでに幾人かの商人が村に入っていたし、それほど普通に訪れる人もいない。来るのは武装して集まってくる領主の軍勢ぐらい。
「けっこう集めているものだ」
 領主軍は100名以上になるだろう。200名近くまで行くかも。それだけの数で攻められたら、山賊も壊滅するだろう。

 キウイとフィーは村の中から村の周囲を見回りしていた。村人の顔をできるだけ覚えておき、逆にこちらの顔も覚えてもらう。
「外側には柵がすでにあるから、簡単には村には入れないみたいだ」
「そうだよね。この柵モンスター相手にも十分に効果ありそう。山賊相手なら十分に阻止できるね」
 キウイとフィーが見た範囲では、村の周囲の防御はこの規模の村では十分なレベルと言えた。もちろん、攻城兵器を備えた本格的な軍勢が相手では話にはならないが。
 村の外周の内側には刈り入れの終わった畑があり、外周の柵の先はやがて森になる。村にとっては森は煮炊きする燃料を得る場所であるため、あまりこの状態が長引くと冬に暖をとるために備蓄しておいた薪まで普段の煮炊きに使うことに成りかねない。
 村人は村を守るためにやってきた冒険者を歓迎し、いたるところで笑顔で迎えられた。
「これほどの歓迎は滅多にないね」
「それだけ期待されているということだ。探索に行った連中が成功すれば、こっちは出番なしだが、その方がいい。勝てたにしても、無傷というわけにはいかないから」
 負ければもっとひどいことになるだろう。北の領主の館に援軍に来た軍勢の数を見ると、敵の山賊も相当数が多いと見ているだろう。
「もし、領主軍と山賊の攻撃がすれ違ったら?」
 それだけの大人数をこの村の防御でどれだけ防げるだろう。
「絶対に村は守りきる」
 キウイは燃えた。

 クオンと、フェリシアは罠作りに入っていた。柵の外側に、さらに柵の内側にも。その際クオンはロングボウによって一番効率的に攻撃できる位置を確認しておく。罠に嵌まって動きが鈍くなれば、急所を狙撃するのも簡単になる。山賊ならきっと負傷した味方を放置はしないだろう。即死よりも負傷者を出して戦意を喪失させつつ、領主軍の来援を待って挟撃すれば壊滅させられる。
「災い転じて福となすって諺聞いたことあるけど、そんなことね」
「そうだな」

●激突
「領主軍が出発するよ」
 テュールが知らせにきた。
 探索班が山賊のねぐらがダンジョンだと知らせてきたために夜でも行軍が可能になった。ダンジョンの位置が分かっている。
「これで一安心かな」
 キウイは軽く息を吐いた。
「だといいんですけど。探索に雇われた冒険者が西の森で山賊にであったらしいんです」
 エレアノールは小耳に挟んだことを知らせる。
「えっ、だけど山賊のねぐらは東の森にあるダンジョン‥‥まさか。他にも」
「ダンジョンなんてあまりにも変でしょう。確証ないけど」
「確証なんかいらないさ。多分西の森から寄せてくる。テュール、もし敵が押してきたらダンジョンに走って領主軍に知らせろ。ダンジョンの位置分かるのは以前きたことのあるテュールだけだからな」
 クオンがぽんと肩を叩く。
「うん」
 そして予想どおり、やつらはやってきた。
 早暁、村の周囲の森から小枝を折るような足音が聞こえてきた。事前に小枝を撒いておいた効果が出た。
 クオンは西の領主に館の屋上にいた。ここからなら柵の近くまで矢が届く。しかも、高さの違いから反撃はされない。
 柵の付近にはキウイ、フィー、レーヴェ、そしてカーツとフェリシアが伏せてまっていた。柵を乗り越えてきた者たちに最初の一撃を食らわせる。その後方では村人が長柄物を持って待機している。柵の内側の堀に落ちた者の頭上を長柄物で叩く。その程度だろう。
「領主軍が戻ってくるまで死守するぞ」
 クオンの矢が先頭の山賊の眉間に命中する。
 他の山賊は僅かに躊躇したが、怒りに駆られて柵に押し寄せてきた。

●地獄の柵
 村の西、柵を巡る血みどろの戦いが繰り広げられていた。
「テュール、もう着いたかな」
 キウイが呼吸を荒くして話す。
「そろそろ戻ってくるだろう。村人の方には行かせるなよ」
「分かっている」
 柵の乗り越えてきて堀に落ちたものは村人がよってたかってタコ殴り状態になっているが堀に気づいて飛び越えた者は、キウイら5人が連携をとりつつ、防いでいた。昨日西の森に出た山賊の手ごわさを聞いていたから、気合を入れていた。
「流石に強い」
 エレアノールも最初は土牢の入口を見張っていたが、旗色は悪そうなので牢の入口をアイスコフィンで凍らせて、駆けつけてきた。
 アイスブリザードとアイスコフィンを駆使して前衛を支援しはじめる。
 それでも数の差が圧倒しはじめる。やつらにしてもこのまま手ぶらでは帰れないのだろう。
 少なからず手傷を負う。
 矢を打ち尽くしたクオンは館の屋上からロープで地上まで下りて駆けつけて来る。
 フェリシアが切り倒した男に足を捕まえられて倒れる。そこを別の山賊が切りかかろうといた。
「!!」
 思わず目を閉じたが、痛みは来なかった。
「呼んできたよ」
 テュールが連れてきた冒険者の一人の矢がフェリシアを切りかかろうとしていた山賊の首を貫通していた。剣ではなく山賊そのものがフェリシアの上に倒れてきた。
「大丈夫か」
 カーツが山賊を退かしてフェリシアを助け出す。
 領主軍が到着したことで、山賊が柵の外側からの攻めたてられて殲滅されていった。

 昼近くなって、山賊の遺体の確認が行われた。生き残った山賊は後日、村の広場で絞首刑にされる。
「土牢が破られているぞ」
 土牢にはエレアノールがアイスコフィンをかけていたが、それを破壊して出ていった者がいる。捕まえてあった山賊も牢の中に入っていた別の人物も姿はなかった。
「やられたな。しかし、村の被害を考えれば」
 些細なことだった。