畑を荒らすゴブリン達

■ショートシナリオ&プロモート


担当:緑野まりも

対応レベル:1〜4lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:09月21日〜09月26日

リプレイ公開日:2005年09月28日

●オープニング

 深い森の中、とても大きな切り株を中心にしてゴブリン達が集まっていた。
『我々の偉大なる王国も、人間達の侵略に遭い衰退してきているゴブ』
『何を仰りますか王よ、我々が人間ごときに後れを取ることなどありましょうかゴブ』
『その通りですゴブ、ただ卑怯な人間達に一時的に土地を明け渡しているだけで、我々が本気を出せばすぐに取り戻せましょうぞ』
『うむ、そちらのその言葉、心強い限りだゴブ。私とて、このまま人間どもの好き勝手にさせようなどとは思っておらぬゴブ』
 集まったゴブリンの中、冠(のようなもの)を被り、一番偉そうなゴブリンが小さくため息をつくと、ほかのゴブリン達が意気軒昂とばかりにぎゃ〜ぎゃ〜と騒ぎ立てる。冠を被ったゴブリンは、その声に頷くとドンと切り株を叩いて声を上げた。
『このグレートゴブリテン島は、我々ゴブリン王国によって統治されねばならぬゴブ』
『さすがは我らが王だゴブ。我ら円卓の騎士一同、どこまでも王についてまいりますゴブ。なんなりとご命令を』
 冠を被ったゴブリンの声に、他の者達が切り株を叩き囃し立てる。冠を被ったゴブリンは、満足そうに頷き一同を見回して。
『では、汝らに命ずるゴブ。人間どもに攻勢をかける前に、まずは食料の確保が重要であるゴブ。人間から食料を奪ってくるのだゴブ!』
『さすがは王、敵から食料を奪うことによってこちらは潤い、敵は衰弱するというわけですなゴブ。承知いたしました、では兵士に人間の村から食料を奪ってくるように命じましょうゴブ』
 冠を被ったゴブリンの号令により、切り株に集まったゴブリン達の鳴き声が森に響き渡った。

 夜も更けた頃、人間の村の近くに複数の小柄な影が現れた。影達はコソコソといった様子で村の畑へと近づいていく。
『隊長どの〜、今回の任務は食料調達だゴブね』
『その通りだゴブ。我々は、人間達から食料を奪い、王に献上するのだゴブ』
 小柄な影が、影の中で唯一の大柄な影に声をかける。大柄な影は頷くと、畑を指差した。どうやら彼等は、ゴブリンの下っ端で食料調達を命じられたらしい。
『途中で少し食べていいゴブか?』
『バカモノ! これは我々の王国の大事な食料になるのだゴブ、勝手に食べていいものかゴブ』
 畑に入り込んだゴブリンが、野菜を引き抜きながら尋ねるのを、大柄なゴブリンがポカリと殴りつける。
『まずい、人間どもがやってきたゴブ。さっさと食料を持って逃げるゴブ〜』
 畑の異変に気づいた人間がやってくると、ゴブリン達は野菜を抱えて慌てて逃げ出したのだった。

「最近ゴブリンの被害が多くてねぇ。いや、畑から野菜を盗んでいくだけなんだが、ほっとくわけにもいかなくてね」
 冒険者ギルドの受付にきていた男が苦笑を浮かべる。彼は、ゴブリン被害のあった村の代表としてキャメロットへと来ていた。
「それで、冒険者を雇ってゴブリンを退治してもらおうってことになったんだ。私らは素人だし、ゴブリン達は集団で来るから下手に手出しもできないんでね」
 受付でゴブリン退治の依頼をする男は、困ったように肩をすくめる。それほど深刻な雰囲気ではないが、被害が出ている以上そのままにしておくわけにもいかないのだろう。
「とにかく、これ以上畑を荒らさないように追い払ってくれればいいんだ。よろしく頼むよ」
 男はそう頼むと、ふと思い出したように付け足した。
「そういえば、ゴブリン達の様子を見ていたヤツが普通よりも大きい体格のゴブリンがいたって言ってたな」

●今回の参加者

 ea4267 ショコラ・フォンス(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb3114 忌野 貞子(27歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3153 マージ・アエスタース(27歳・♀・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 eb3349 カメノフ・セーニン(62歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb3387 御法川 沙雪華(26歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb3389 シータ・ラーダシュトラ(28歳・♀・ファイター・人間・インドゥーラ国)
 eb3531 クリア・サーレク(24歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb3563 烈 美狼(26歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

エスリン・マッカレル(ea9669

●リプレイ本文

 依頼を受けゴブリン退治に向かう一行。キャメロットの出入り口の門をくぐった一行は、魔法の靴などで先に村へ行き情報収集を行う班と、後から万全の体勢で向かう班に分かれることになった。
「では、私は馬に乗って急ぎましょう」
 ショコラ・フォンス(ea4267)が、自分の馬に跨る。彼は、騎士や貴族の嗜みとして騎乗技能を修得していた。
『あの、クリアさん。私の馬を貸しますか?』
『ありがとう、でも僕は馬を走らせることができないから』
 先行組の御法川沙雪華(eb3387)がゲルマン語で、クリア・サーレク(eb3531)に馬を貸そうかと申し出る。しかし、クリアは騎乗技能がなかったため馬を早く走らせることができず首を振った。
「わしも、ドンキーに乗って急ぎたかったのじゃがのう。しかたない、ゆっくりと向かうとするかの」
 ロバに乗ったカメノフ・セーニン(eb3349)も、やはり早く走らせることはできなかったのでチャカポコとゆっくり向かうことになった。
「うちは、沙雪華ちゃんにくっ付いてくなぁ」
「じゃあ、先に行ってるね!」
 御法川の肩にしがみついたマージ・アエスタース(eb3153)と、準備運動までして元気満点なシータ・ラーダシュトラ(eb3389)が手を振る。そして、先行組は先に出発していった。
「すぐに‥‥追いつきますからねぇ‥‥うふふふふ」
 後発組の忌野貞子(eb3114)が、先行組の四人を見送り手を振る。しかし彼女の笑みは、本当になにか超越的な理由で先行組に追いつきそうで少し怖い、と一同は思った。
「あちゃぁ、ちょっと遅ぅなってしもうたわ」
 先行組が出発してから少しして、烈美狼(eb3563)が後発組に合流する。彼女は、出発の間際になって闇夜に隠れるマントを探したが間に合わず、結局持っていた毛布を炭で黒くしたものを今回限りということで用意してきたのだった。
「じゃあ準備もできたし、こちらもそろそろ向かおうよ」
 クリアの言葉に、後発組の一同は頷くと村へと向かって出発した。

『ようやくつきましたね、早く着けてよかったわ』
『これで、振り向いたら貞子ちゃんおったら、おっかないなぁ』
『う‥‥それは確かに怖いね‥‥』
『はは‥‥できそうな雰囲気でしたからね』
 一日早く村へとたどり着いた先行組。イギリス語が話せない御法川に合わせて、ゲルマン語でそんな冗談を交わしている一行を、村人達が出迎えた。
「え〜っと‥‥村特有の禁忌があるのでそれには触れないことっと‥‥。こんにちは! ボク達はギルドで依頼を受けた者です」
 シータは、事前に知り合いの女性に言われたことを小声で確認すると、村人に元気な声で挨拶をした。
「4人‥‥かい? もう少し来てくれると聞いていたが」
「いえ、私達は村の様子を見ておこうと先に来た者です。あとから残りのメンバーも来ますので」
「そうか、それは心強いな」
 ショコラが説明すると、心配そうな村人も納得したように笑みを浮かべる。一行は、村人達との挨拶を済ませると、さっそくゴブリンや被害現場についての情報を収集することにした。
「うん、大きなゴブリンは一匹なんだ」
『ゴブリン用の罠を仕掛けてもいいかしら? もちろん、あとで片付けますよ』
 シータと御法川は、村人にゴブリンについて話を聞く。どうやら、ゴブリン達はだいたい5〜6匹で、一匹はほかよりも大きい体格であったらしかった。シータの通訳で、罠について尋ねる御法川には、村人は後片付けしてくれるならと了承した。
「皆が丹精込めて作った作物盗ってくなんてひどいわ〜。それで、どこらへんからやってくるん?」
「なるほど、彼等は柵を乗り越えてくるんですか」
 マージとショコラは、被害にあったという畑を確認し、ゴブリン達が村に隣接する森からやってくることを確認した。畑には一応柵が設けられてあるが、どうやらそこを乗り越えてくるらしい。

 村人達からある程度の情報を得た一行は、その夜実際にゴブリン達がやってくるか隠れて見張ることにした。
『今日も豊作だゴブ〜』
「こらぁ! 野菜を盗んじゃダメだろ!」
『ぎゃ! 人間だゴブ!? 逃げるゴブ〜』
『こ、こら、勝手に逃げるな! ええい、しかたない今日のところは撤退だゴブ』
 ゴブリンの数を確かめた後、畑が荒らされる前にシータが大声を出して追い払う。ゴブリン達はその声に驚き、ぎゃ〜ぎゃ〜と騒いでは慌てて逃げ出す。体格の良いゴブリンも、逃げ出すほかのゴブリンにしかたない様子で逃げ出した。
『ホブゴブリンでしたね』
『間違いないわ、あれがリーダーですね』
 モンスター知識のあるショコラと御法川が、体格の良いゴブリンを見て頷きあう。やはり、敵のリーダーはホブゴブリンのようであった。

 次の日、後発メンバーと合流した一行はゴブリン達の来るルートに罠を仕掛けることにしたのだが。
「それ、ちょちょいとな」
「きゃあ!!」
 突然、落とし穴を手伝っていたクリアのスカートがめくりあがって、チラリと肌着が見える。クリアは慌てて手で押さえるが、時すでに遅し。
「‥‥見た!?」
「ほっほっほっ、風の仕業じゃよ風。のうショコラ?」
「え‥‥、私に振られても」
 キッと睨みつけるクリアに、カメノフは飄々としてとぼける。話を振られたショコラは、困ったように頬を掻いて苦笑した。
「ふ〜ん‥‥。じゃあ、雷の仕業で記憶喪失になってもしかたないよね」
「へ‥‥」
「ライトニングサンダーボルト、略してライサンダー! いっけえ!」
 ど〜ん! 哀れカメノフ、雷に撃たれて黒焦げに‥‥なる所でかろうじて地面に逸れて助かる。
「どう? 忘れた?」
「はい‥‥」
 ニッコリと微笑むクリアに、カメノフは意気消沈になるのであった。

「こんばんわぁ〜‥‥」
「うわ!? 脅かさんといて」
「な、なに?」
 その夜、ゴブリン退治が決行される直前に、忌野が烈とクリアに声をかける。ランタンの明かりに、浮かび上がるように映る忌野はかなり怖いのだが、初依頼の烈とクリアにゴブリンについてレクチャーすることとなった。
「‥‥と、霊が教えてくれました」
「いや、霊って‥‥」
 烈とクリアは、時折出る忌野の怪しい言動にただただ笑みを引きつらせて話を聞くしかなかった。

 夜目の利くショコラたちが見張っていると、しばらくしていくつもの黒い影が現れた。
『お前達、今日も人間達が見張ってるかもしれないゴブ。十分気をつけるゴブ』
『わかってるゴブ〜』
 ゴブリン達は、予想通りのルートで現れると今日も畑に向かっていく。
『ゴブ!? 隊長、あんなところに食料が!』
『むむ、怪しいゴブ。アレには手を出さない方がいいゴブ』
 ゴブリン達は立ち止まると、クリアが仕掛けた保存食を前でぎゃ〜ぎゃ〜と騒いでいる。
『ダメゴブ〜、がまんできないゴブ! ぎゃぁ!』
 一度は素通りしようとしたゴブリン達であったが、一匹が我慢できなくなったように保存食に飛びついた。しかし、そこには落とし穴が掘ってありゴブリンは見事に引っかかってしまう。
「いまです!」
「闇を照らす光よ、ライト!」
 一行はゴブリンが落とし穴に引っかかったと同時に、御法川が落とし穴を中心に周囲をカンテラで照らし、マージはライトを唱え上空を飛ぶ。それに驚いたゴブリン達が混乱して、足元の縄に掛かっては転倒する。
『人間だゴブ〜、人間が現れたゴブ〜、殺される〜』
『こら、落ち着け! 落ち着くだゴブ! 隊制を立て直すゴブ』
 ホブゴブリンが、ゴブリン達を落ち着かせようとするがあまり効果はない。
「おいたはいけませんよ」
「たぁ! 畑を荒らす不埒者はゆるさないぞ!」
「悪しき者に裁きを、ディストロイ!」
 御法川が火遁の術で敵を炎で包むと、隠れていたシータとショコラが飛び出して、転倒したゴブリン達を攻撃する。ゴブリン達は、腕を切り裂かれ、魔法で吹き飛ばされる。
『く、罠とは卑怯ゴブ。やはり人間は酷いヤツラゴブ!』
 仲間が次々とやられ、リーダーのホブゴブリンが悔しそうに地団駄を踏む。ゴブリン達も何とか隊制を整え、武器を構える。
『ここは俺が何とかするゴブ。残った者は包囲を突破し、王に報‥‥ゴフゥ!』
『隊長〜!』
「どや、強烈やろ?」
 ゴブリン達になにやら指示を出している様子のホブゴブリンであったが、突然の後ろからの不意打ちに吹き飛ぶ。黒い毛布で身を隠し、ゴブリン達をやりすごしていた烈が忍び足でホブゴブリンに近づき、両手と頭突きで渾身のトリプルアタックを放ったのであった。
『うぐぐ‥‥不意打ちとは卑怯な』
「うふふ、霊が呼んでますよ。ウォーターボム」
「チャンス! 右手に雷、左手に稲妻、そーれ、焦げろっ!」
『ぎゃぁ〜〜〜』
 よろよろと立ち上がるホブゴブリンに、忌野とクリアの魔法が炸裂。びしょ濡れになった身体に、高速詠唱で唱えた二発の雷が突き刺さり、感電しながら断末魔の声をあげる。集中攻撃を受け、あっさり力尽きるホブゴブリン。
『ぎゃ〜、隊長がやられたゴブ! みんな逃げるゴブ〜』
「ほれほれ、畑を荒らすとこういう目にあうんじゃよ」
 リーダーを失ったゴブリン達が慌てて逃げ出すのを、カメノフが追い立てるようにサイコキネシスで石をぶつける。あえて何匹か逃がすことによって、これ以上畑を荒らさないように脅かすのだ。
「大成功やね、これであいつらがまた畑を荒らすことはあらへんやろ。依頼達成のお祝いに宴会でもせぇへん?」
「いいですね、ではそのホブゴブリンを料理して‥‥いえ冗談ですよ」
 依頼通り、ゴブリンに痛手を負わせて追い払うことに成功した一行。逃げていくゴブリン達にガッツポーズを取る烈は、一同に宴会を提案する。ショコラは烈に頷くが、黒焦げになったホブゴブリンを見下ろして苦笑した。
 次の日、村人に結果を報告し、仕掛けた罠を撤去した一行は、意気揚々とキャメロットへと帰るのであった。