模擬戦にも妥協無し!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:緑野まりも

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月23日〜09月26日

リプレイ公開日:2005年10月01日

●オープニング

 フォレスト・オブ・ローズ『戦学クラス』。騎士としての『力』を得るために日々過酷な訓練を行うこのクラスでは、今日も騎士団長を目指し厳しい模擬戦を行っていた。
「なんだそのなまっちょろい攻撃は! 攻撃とはこうやるんだ!」
 巨大なクレイモアの腹で叩きつけられ、生徒が吹き飛ばされる。オーガ似の男性ジャイアント騎士、オルガ・アーヴィズ講師の怒声が訓練施設に響き渡った。彼の授業はスパルタで有名で、訓練であれ一切容赦しないのが特徴であった。
「実戦なら、いまので死んでたぞ! もっと本気を出さんか!」
 オルガ講師の口癖は『実戦』であり、実戦こそが最も有効な訓練、を信条にしている。死を意識することで、集中力を引き出し。死の恐怖を克服することが、騎士としての力を引き出すことと信じているそうだ。
「お前達にはまだ実戦というものがよくわかっていないようだな! 一瞬の気の迷い、判断の遅れが、そく死につながるということを覚えておけ!」
「はい!!」
 生徒達に怒声を浴びせるオルガ。本来は陽気で人当たりの良い男であるのだが、訓練中はまさに鬼の形相(生徒にはオーガ講師と呼ばれている)で生徒達を鍛え上げるのであった。
「よし、今度集団模擬戦を行う。相手はクエストリガーで募集する各校の生徒や冒険者達だ。彼らの中には、多くの実戦を経験したものもいるだろう。本気というものがどういうものか教えてもらえ!」
「は、はい!」
「まぁしかし、模擬戦と聞いてどうしても本気を出せんものもいるだろう。そこで、この模擬戦では真剣を使ってもらう。もちろん寸止めなど無しだ! 斬られたら痛いぞ」
「え‥‥は、はい‥‥」
「どうした、声が小さくなったな。痛い目をみたくなければ全力を持って相手を打ち倒すんだ! わかったな!」
「はい!!」
 怒声に返すように大きな声を上げた生徒達を満足そうに見て頷くオルガ。こうして、『本気の斬り合い』とも言える模擬戦が行われることとなった。

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea1716 トリア・サテッレウス(28歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea7244 七神 蒼汰(26歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 eb0299 シャルディ・ラズネルグ(40歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb0888 マリス・メア・シュタイン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2122 ヴァル・ヴァロス(27歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3450 デメトリオス・パライオロゴス(33歳・♂・ウィザード・パラ・ビザンチン帝国)
 eb3575 アシャンティーア・ライオット(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

「うむ、よく参加してくれた。どうやら実戦経験豊富な者もいるようだから、生徒達にとってもいい経験となるだろう」
 依頼を受け集まった一同に、オルガ講師が満足そうに頷いた。
「ぜひ、完膚なきまでに叩きのめして、実戦の厳しさを教えてやってくれたまえ! ガッハッハッ!」
 豪快に笑うオルガ講師は、模擬戦は二日後になるので準備や作戦を用意しておいてくれと伝えその場を後にした。
「もちろん、生徒達も必死だ。足元すくわれんように注意してほしい」
 ただ最後に、真面目な表情で忠告を残すオルガ講師。曲りなりにも騎士として訓練を積んできたFORの生徒達である、一筋縄ではいかないだろうと一同は気を引き締めることとなった。

 模擬戦当日、FORの屋外訓練施設に案内された一同。
「やぁ、みなさんお待たせしました。今日はお日柄もよく、戦うには最適ですねぇ」
「へぇ、ここが今日の戦う場所かぁ。みんな、こんにちは〜!」
 トリア・サテッレウス(ea1716)とアシャンティーア・ライオット(eb3575)が明るい声で、FORの生徒達に挨拶をする。アシャンは、FORの生徒であるトリアの案内のもと、この場にくるまでも興味津々といった感じでFORの校舎を眺めて騒いでいた。トリアも、絶えずニコニコと笑みを浮かべており戦いの緊張感はまったくない様子であった。
「うあ〜、相手のみんなも強そうだなぁ。おいらもがんばらないと‥‥」
 逆にデメトリオス・パライオロゴス(eb3450)は、やや緊張した面持ちで対戦相手を眺めている。相手の生徒達は、さすがに毎日訓練をしているというだけあって、見た目はすでに立派な騎士であった。
「相手にとって不足無しってやつだな! 夢想七神流の太刀筋を見切れるか楽しみだ」
「ふむ、相手は重装で固めた者もいるようだな。軽い攻撃は弾かれる‥‥か」
 七神蒼汰(ea7244)が気合をいれニヤリと笑みを浮かべ。ヴァル・ヴァロス(eb2122)は冷静に相手の様子を探る。対戦相手の構成は、革鎧に槍や剣を持つ軽装が5人と、重く硬い鎧に身を包み盾を持った重装が3人といった感じであった。
「さて、私も足手まといにはならないよう頑張りませんとね」
 シャルディ・ラズネルグ(eb0299)が一同の様子を眺め見て笑みを浮かべる。言葉の割には余裕を持ったその様子は、やはりいくつもの経験を積んできたことによるものであろうか。
「さぁ、はじめようか。悪いが、女性以外には手加減はできないな」
 漆黒のローブに身を包んだマナウス・ドラッケン(ea0021)が、騎士がするように剣を前に構え礼をする。一見悪の親玉風な服装の彼であるが、数々の称号を持つマナウスの名は、このFORでも知れているようで、生徒達の表情にも緊張が走る。もちろん、女性に弱いことでも有名だ。
「それでは、模擬戦を開始するぞ。各人所定の場所につくように!」
 一同を見渡し頷いたオルガ講師。講師の指示で一同は、お互い10メートルほど離れた位置に立つと、武器を構えて対峙する。
「よし、戦闘開始!」
 ついにオルガ講師の号令の下、本気の模擬戦が開始されるのであった。

「おっと、気負うのも良いが、突出するのはよくないんじゃないか」
 開始の号令を聞き、すぐに動き出した軽装の生徒の足元にナイフが刺さる。驚き立ち止まる生徒に、マナウスが笑みを浮かべながら忠告して、ナイフに仕込んであった紐を引っ張り手元に戻した。結果的に、飛び道具を警戒し生徒達の移動が鈍り足止めすることに成功する。
「さすがはマナウスさん、いい仕事しますねぇ。これは僕もサボるわけにはいきませんか。はい、オーラパワーですよ」
「かたじけない、これなら十分なダメージを与えられるだろう」
 戦いが始まってもニコニコと笑みを浮かべているトリアは、足止めをするマナウスを賞賛すると、七神の木剣にオーラを込める。七神はオーラにより威力の上がった木剣を腰に挿し、トリアに礼を述べて前に出た。
「違う、これは死神ではない‥‥心を凍らせろ。さぁ、俺が相手だ‥‥」
 戦いの開始直後、一瞬目を閉じたヴァル。小さく呟き再び開いた瞳は赤く、その顔には表情が失われていた。ハーフエルフである彼は、戦いに身をおくと狂化してしまうのである。しかし、シールドソードを構えた彼の姿は相手に威圧感を与えるのであった。
「ここより前にはでないでね。バキュームフィールド!」
 マナウス達が足止めをしている間に後方に下がった後衛。デメトリオスは、こっそり地面に目印を描き、その場に真空の空間を作り出した。この真空の空間は、入ったものに傷を負わせることができる。これで、相手が後衛に近づくのを防ぐという作戦だった。
「怯むな! これまでの訓練の成果を見せるんだ!」
 重鎧を身に纏った青年が、浮き足立った者達を激励する。その言葉に、気を取り直したように生徒達が動き出した。
「俺たち重装は相手の前衛と対峙し押し下げる。軽装のも‥‥」
「?」
 青年は、指示を出している最中で突然口ごもる。いや、口ごもったのではない、声を発することができなくなったのだ。
「聞こえない‥‥喋れない‥‥どう怖い?」
 模擬戦の前まではあれほど騒がしかったアシャンが静かに呟く、その瞳はいつのまにか赤く、まるで仮面をつけたかのように無表情だった。彼女はサイレンスの魔法で、指示を出していた青年の声を遮断していた。パクパクと口を開こうとも声を出せない様子に、他の生徒達は一瞬気を取られる。
「動揺は即、死を招く‥‥」
「うあぁぁ!」
 その一瞬を逃さず、ヴァルが近づいていた軽装の生徒に渾身の一撃を与えた。防御する間もなく、シールドソードに切り裂かれて悲鳴を上げる生徒。飛び散る血が、これが本気の闘いだと否応なく思い知らせた。ただし、これは模擬戦、大きな怪我を負った者は退場し治療を受けることになる。
「よ、よくも!」
「貴方の相手は僕ですよ。お覚悟、よろしいです? 僕は‥‥微妙な所ですけどね!」
 怪我を負わされ退場していく仲間の姿に火が付いたのか、激昂するように突撃する軽装の生徒。その生徒を軽くいなすように、トリアが笑みを浮かべて対峙する。トリアは盾をうまく使い攻撃を受け流しながらカウンター気味の攻撃を返していった。
「夢想七神流抜刀術、貴殿に見切れるかな」
 目にも留まらぬ早業とはこのこと、七神が腰に挿した木剣が抜かれたことさえわからぬほどの瞬速で相手を切り裂く。木剣といえど、オーラを込められたそれは十分な威力を持っている。対峙した者は、その攻撃を避けることもできずダメージを受けた。
「いまだ、隙あり! な、剣が思うように動かない‥‥」
「残念ですが、やらせるわけにはまいりませんね」
 シャルディのサイコキネシスも、振りかぶる剣の動きを阻害し前衛をよく援護している。そして彼は、ペットの鷹にも攻撃をさせ相手を惑わさせた。

 慣れない実戦形式に戸惑う生徒側に、ギルド側は戦いを優位に進めていった。しかし、さすがに訓練された生徒達を相手にして、前衛にも退場者が出てきた。
「その躊躇、よくありませんねぇ。はぁ! 返しの一撃というやつです‥‥!!」
「ぐぁ!」
「油断すれば容赦はしません‥‥そういうお仕事ですからね。といっても‥‥僕も限界か」
 トリアは二人を同時に相手にしつつもなんとかこれを打ち倒すが、ダメージが蓄積し退場となる。
「受けた!? ならばこれではどうか、夢想七神流奥義、霞刃!」
 神速の技は確実に相手を捉えていた。しかし、木剣からはすでにオーラが失われており、相手を包む硬い鎧に阻まれて軽いダメージにしかならなかった。そして、渾身の技のあとの一瞬の硬直を狙われ、相手の攻撃を避けられなかった七神も退場することとなる。
 前衛が次々と退場する中、華麗なステップで攻撃を回避しては、素早い攻撃で相手を打ち倒していたマナウスであったが。
「お、女の子!?」
「女とはいえ、私も騎士です!」
 重装の者の一人が、被っていた兜を飛ばされ栗色の髪がフワリと舞う。少女の素顔にマナウスは一瞬躊躇してしまい、その隙をつかれ相手の一撃を受けて退場することとなった。

 幾人かの退場者を出したが、アシャンのサイレンスで統率が取れない生徒側に対し、ギルド側は終始戦いを優位に進めていく。
「ウィザードだからって油断はよくないね‥‥ライトニングソード」
「ぐぁ!」
 アシャンの稲妻の剣に意表を衝かれ倒される生徒。アシャンは、感情のこもらない冷たい視線でそれを見下ろす。
「攻撃が‥‥かならずしも前から来るとは限りませんよ」
 生徒の後頭部に大きな石が命中し昏倒する。サイコキネシスでそれを操作していたシャルディがニコリと微笑んだ。
「これで終わりだ‥‥」
「きゃぁ!」
「模擬戦終了!」
 やがて退場者の見守る中、生徒側の最後の一人だった栗毛の少女がヴァルに打ち倒される。そして、オルガ講師の号令で模擬戦は終了した。
 ギルド側は4人が残り勝利ということになった。特に活躍したのは、ヴァルとデメトリオスで。ヴァルは、鉄壁の守りと渾身の攻撃で相手を一撃で打ち倒していき。デメトリオスは、真空の空間で足が止まった相手をライトニングサンダーボルトでダメージを与える。そして、最後は空中に浮き、石を投げつけて援護した。
「お前達は、決して剣技などの実力では劣っていない。しかし、実戦に対する心構えで負けていた。それが、今回の模擬戦でわかっただろう!」
「はい!」
「では、それを教えてくれた相手の皆さんに礼!」
「ありがとうございました!」
 オルガ講師の号令の下、FORの生徒達は一同に礼をする。彼等はこの戦いで、なにかを掴んだのかもしれない。
 このあと、お互いの健闘を称えあい、酒場で打ち上げをしたのだが。酔っ払ったオルガ講師が暴れて大変だったのは、また別のお話。