山賊退治は大混乱?
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:緑野まりも
対応レベル:1〜5lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月27日〜10月04日
リプレイ公開日:2005年10月04日
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●オープニング
「あそこが山賊団のアジトだね。近隣の村から相当荒稼ぎしているようさ」
夜遅く、三つの人影が闇に隠れるように山小屋へと近づいていく。山小屋の入り口には荒々しい体格の男が立っているが、人影には気付いていないようであった。
「こんな時間でも明かりがついていますね、それに一応は見張りが立っているようです。襲うにしても、我々三人ではいささか美しくとはいきそうにないでしょう」
「おで‥‥がんばる。あいづら、やる?」
「まぁ待ちな。あたしにいい考えがあるんだよ」
三つの人影は、山小屋の様子を探りながら小さい声で相談する。
「近々村の依頼で、冒険者を雇ってこの山賊団を退治することになってるのさ。その混乱に乗じて、あたしらは‥‥」
「さすがはお嬢様、実に美しい作戦ですね」
「うん、お嬢あだまいい」
「お前達‥‥何度言ったらわかるんだい。お嬢様って呼ぶんじゃないよ。もし人前でそう呼んだらお仕置きだからね」
「わ、わかってますよミス・グラマラス」
「う、うん‥‥。お仕置ぎごわい‥‥」
「わかったら、さっさと準備をするよ!」
「ぐ〜れいと!」
冒険者ギルドの受付に、キャメロットから数日行った所にある村の使いという青年が来ていた。
「頼む! 山賊達を退治してくれないか。このままでは村はお仕舞いだ!」
彼の話では、かなり前から村に賊が現れるようになり、金品や食料を強奪しているのだそうだ。賊は近くの山にアジトを構え、近隣の村を荒らしまわっているようだ。最近では、人質として村の子供もさらわれ、定期的に貢物を要求するようになった。
「子供を人質にとられては、我々はなにもできない。しかし、このままでは貢ぐものもなくなり、結局は殺されてしまうだろう。それに、村も秋の収穫まで奪われてしまったら冬を越すことができない。だったら、危険でも冒険者に山賊退治を依頼しようということになった。お願いだ、助けてくれ!」
青年は苦痛に満ちた表情で頭を下げる。よほど切羽詰っているのだろう、村の様子が声に出ている。ギルドは、早速依頼書を張り出し冒険者を募ることにした。
「お嬢様‥‥っと、ミス・グラマラスの話通り、山賊退治の依頼がされましたね‥‥では、私達も予定通り美しく参りましょう」
その後すぐに、受付の様子を眺めていた美形の青年が、口元に満足そうな笑みを浮かべて立ち上がりギルドを後にするのだった。
●リプレイ本文
依頼の村に着いた一行。村の代表である村長が、一行を出迎えた。
「このままでは村はおしまいです、どうかお助けくださいますよう」
「大丈夫だって、俺達に任せておきな。山賊を倒し、連れ去られた子供も無事に助け出してくるからよ。怖い思いした子供達が喜ぶように、ご馳走用意して待っててくれよな!」
マレス・イースディン(eb1384)が、村人が安心するように力強く声をかけて二カッと笑みを浮かべた。もちろん、自分もご馳走にありつく予定である。
「マレス‥‥この村は食料が奪われて困っているのだから、自分までご馳走になろうとかは考えるなよ」
スプリット・シャトー(ea1865)が、マレスの思惑に気付き忠告する。
「ははは、大丈夫ですよ。皆さんにお礼をする程度の貯えはまだありますから」
「そうか! ‥‥い、いや、子供達のためにってことでな! 俺はそれの残り物でいいから」
「まったく‥‥。それで山賊についてお聞きしたいのだが‥‥」
会話が聞こえていたらしく、村長は少し苦笑浮かべながらも用意すると頷く。マレスの様子にスプリットはため息をつきつつ、山賊アジトへの出立前に山賊たちの詳しい情報を聞くことにした。
「敵は8人、みんな屈強そうな男達。一人だけ黒目黒髪のリーダー格の男が一人いて、獲物は反身の刀らしい‥‥ですか」
「人質は、二人の男の子だな。だが、他の村からさらわれた者もいるかもしれない‥‥」
朝瀬凪(eb2215)とアザート・イヲ・マズナ(eb2628)が、村人から聞いた情報をまとめる。話を聞いて一同は、リーダー格の男は要注意ということになった。
村での情報収集をすませた一行は、仮眠をして夜を待ち、暗くなってから山賊に奇襲をかけることにした。
「よし行くか! で、明かりはどうするんだ?」
夜も更けて、山賊アジトへと出発する頃になってイグナーツ・ヨルムハイト(eb3454)が当然の疑問を口にした。アジトは山の中、不慣れな土地で明かりもなく山へ入れば、道に迷うだろう。しかし、ランタンを持っているスプリットやアザートは油を切らしており、マレスのたいまつはやや不便だった。
「あ、あの‥‥ゴホッ! 自分がランタンを持ってるでありま‥‥ゴホゴホ!」
一同が困ったように顔を見合わせていると、隅で隠れるようにしていたカモメの被り物を被った少女凍瞳院けると(eb0838)が、激しく咳き込みながら申し出る。赤面症の彼女は、あまり一行の輪に入れなかったため皆から失念されていたのだった。
「凍瞳院さん大丈夫ですか!?」
メアリ・テューダー(eb2205)が、気遣うように凍瞳院の背中を擦ってやる。凍瞳院のおかげで、明かりの心配はなくなったのだが、今度は彼女の体調の方が心配になる一行であった。
「ここで明かりを消せ。偵察に行ってくる」
「それじゃ俺も」
山賊のアジトへと向かう一行。道を先行していたロイ・シュナイダー(ea4449)が、一行を留めるように手で制した。そして、ロイはイグナーツと共に偵察に向かう。
「見張りは一人‥‥か。聞いたとおり、明かりがついている」
「よし、俺が忍び足で近づいて中の様子を探ってみるよ」
「わかった‥‥。俺は周囲の様子を確認して、この辺りに仲間を呼んでこよう」
情報通りの場所でアジトを見つけた二人。お互い頷き合うと、ロイは周囲の様子を探り仲間を呼びに戻る。イグナーツは、見張りに気付かれないように忍び足でアジトへと近づき、窓から中の様子を探るのであった。
「どうやらヤツら、中で宴会をしているようだぜ。人質の姿は見えなかったから、どこか窓の無い部屋に閉じ込められてるのかもしれない。残念ながら、入り口以外は人の出入りできる場所はなかった」
再び合流した一行。イグナーツの偵察の報告を聞くと、アジトの近くの茂みに隠れる。そして、作戦通りマレスが一人でアジトへと向かった。
「なんだぁてめぇは?」
「ここかい? お宝たんまり稼いだ山賊の根城ってのは? ちょいと俺もお仲間に入れてもらおうと思ってよ‥‥」
マレスに気付いた見張りが、警戒したように武器を構えて問いただす。マレスは、両手を広げてゆっくりと近づきながらにこやかな笑みを浮かべる。
「彼の者の動きを抑制せよ、アグラベイション」
「仲間だぁ? ふざけて‥‥か、身体が!?」
そんなマレスに意識が集中していた山賊に、メアリが魔法をかけて動きを抑制させた。
「悪いな、やっぱ悪い山賊にはなれねぇや」
「ぐぁ!」
「いまだ!」
動きを抑制された山賊に近づいたマレスは、渾身の力を込めて山賊を切り伏せる。それを合図にスプリット達が飛び出してアジトへと向かった。
「おい、どうしたん‥‥ぐぁ!」
「おっと、邪魔なんだよ。ったく、矢の代金だって馬鹿にならないんだぜ」
運悪く様子を見に来た山賊が現れるが、狙いを定めていたイグナーツの矢に射られる。一同は、そのままの勢いでアジトに乗り込んだ。
「な、なんだてめぇら!?」
小屋に入ってすぐの部屋。イグナーツの報告通り宴会をしていた山賊達が、突然の乱入者達に慌てて武器を取ろうとする。
「反応が遅いですよ」
「語ることなど無い‥‥その体で知れ‥‥」
朝瀬が、準備に手間取った敵を切り裂き。ロイが、攻撃してきた敵の武器を奪い取り、隠し持っていた剣で攻撃する。奇襲は成功し、山賊達は混乱からなかなか立ち直れなかった。
「雑魚には用はねえ。ボス出せ、ボスーー」
「冒険者‥‥か、夜襲とはやってくれる。いいだろう、俺が相手だ」
暴れるマレスに、黒目黒髪の男が対峙する。男は奇襲を受けても冷静な面持ちで刀を構え、二人の間に緊張が走った。
「生きた者の位置を我に示せ、ディテクトライフフォース‥‥人質はこっちでありま‥‥ゴホゴホ!」
「わかった‥‥というか、無理するな‥‥」
混乱の中、凍瞳院が魔法で小さい反応のあった場所をアザートに指し示す。それに頷くアザートだが、咳き込む彼女に苦笑した。
「う、動くな! このガキ共がどうなってもいいのか!」
「ち、先を越されたか‥‥」
山賊を避けて、子供のいる部屋へと向かうアザート。しかし一歩遅く、先に山賊の一人が眠っている子供に剣を向けて人質に取っていた。アザートは一瞬顔をしかめるが‥‥。
「金目の物を出せ‥‥」
「て、てめぇ、なに言ってやがる。このガキどもが目に入らねえのか!?」
「子供? そんなものはもらったところで一銭にもならん‥‥」
アザートはスゥッと表情をなくすと、人質を取った山賊に向かってそう言い放った。冷たい視線を向け、まるで子供のことなど眼中に無いように近づいていく。
「ひ、ひぃ! 頼む、命だけは‥‥」
「眠ってろ‥‥」
ハッタリに引っかかった山賊の隙をつき、アザートはナイフの柄で山賊を昏倒させる。こうして、人質の子供の救出は成功した‥‥が、このハッタリがもとで後日アザートは『脅迫交渉人』と呼ばれることになる。
「な、なんだ、この煙は!?」
アザートが人質を救出しているころ、山賊と戦っていた誘導班は謎の煙に包まれていた。魔法で作られた煙のようであったが、山賊の魔法ではなかったし、ましてや味方の作戦というわけでもなかった。突然の煙に視界が阻まれ、混乱する一同。
「む、私達以外に誰か侵入してきている!? そこにいるのは誰だ!」
「おや、気付かれちまったかい」
ブレスセンサーによって新しい侵入者を感知したスプリットが、煙の中で叫ぶ。その声に、答えるように女性の声が聞こえた。
「誰だと聞かれたら、答えたがるのが人の性! ミス・グラマラスとはアタシのことさ!」
「我々の華麗な作戦に気付くとは、なかなかやりますね。ミスター・ビューティフォーとは私の事です。姿をお見せできないのが残念ですが」
「う、おで‥‥みずだー・まっずる‥‥」
煙の中で、名乗りをあげる謎の侵入者達。サービス精神旺盛なのかなんなのか。あまりのことに、冒険者も山賊達も呆然としていると、再び煙の中から声が聞こえてくる。
「山賊達の集めたお宝は、アタシらグレイト団がいただいたよ!」
「グレイト団? 前に、荷馬車を襲っていた‥‥すごく単純なお名前ですね‥‥。あ、いえ、そうじゃなくて、それは本来村人の物ですから、山賊の装備で我慢していただけませんか?」
「そんなわけにいくかい、いただけるものはいただいていくよ! さて、お前達ずらかるよ!」
「ぐ〜れいと!」
メアリが、一団の名を聞き前の依頼に現れた盗賊を思い出す。グレイト団と名乗る一団は、メアリのお願いを聞きいれるわけもなく、謎の掛け声と共に素早い動きで逃げ出す。
「待て! ライトニングサンダーボルト!」
「ぎゃぁ! なんで俺が‥‥」
スプリットが、逃げるグレイト団に雷を飛ばすが、なんと山賊を盾にして魔法を避ける。そして、まんまと逃げていってしまった。
「く‥‥山賊に身を落とし、最後はこれか‥‥」
「痛ぅ、さすがは敵のボスだったな」
グレイト団の乱入により、乱戦になってしまったが、なんとか山賊を退治した冒険者達。マレスは敵のリーダーとの戦いで怪我を負ってしまったが、自らのポーションで傷を癒した。
「はぁ‥‥金目の物はほとんど残ってませんでした、でも食料は取って行かなかった様ですね」
メアリが小屋の中を調べたが、やはり金目の物はグレイト団に奪われたようであった。予期せぬ乱入者に対応できなかった一同はため息をつく。ちなみに、外で警戒していたイグナーツは魔法で眠らされていたようだ。
「お腹空いたでしょう、これをお食べなさい」
「おねえちゃ〜ん!」
朝になり朝瀬が、捕まっていた子供達に保存食を食べさせ、ニコリと微笑む。子供達は安心したのか、彼女の胸で泣き出してしまった。何はともあれ、目的通り山賊を退治し人質を助けた一行。無事依頼を達成し、彼らは山を降りるのであった。