秋の味覚狩りサバイバル

■ショートシナリオ


担当:緑野まりも

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月21日〜10月28日

リプレイ公開日:2005年10月28日

●オープニング

「ええぃ! ダメだ、ダメだ。なっとらんぞお前ら!」
 今日も、フォレスト・オブ・ローズではオルガ・アーヴィズ講師の怒声が響き渡り、戦学クラスのスパルタ教育が行われている。模擬戦を主としたFORの中で、『実戦こそが最も有効な教育』と公言する講師であった。
 このオルガ講師、ジャイアントの騎士なのだが、その外見は2メートルを軽く超える身長で筋骨隆々、荒々しく厳つい顔立ちをしており、角でも生えていればモンスターのオーガと間違うほどである。しかしその性格は、豪快かつ荒々しくも、人当たりの良い陽気な性格で、おせっかい焼きな所もあって意外にも生徒達には評判が良く。生徒達の間では『オーガ先生』と呼び親しまれていた。
「バカモン! お前らには緊張感がなさすぎる。そんなんでは、戦場で死ぬぞ!」
 その怪力によって振るわれるクレイモアが、生徒を吹き飛ばす。彼の訓練は絶えず実戦を想定し、死を意識させる緊張感の中で集中力を養おうとしているようであった。授業はスパルタだが、厳しい中にも優しさがあった。
「どうやらお前らには、まだ実戦というものがわかっとらんらしい」
 訓練を終えヘトヘトになっている生徒達に、息一つ乱さないオルガ講師が言い放つ。『実戦』が口癖の彼は、いつも模擬戦と実戦の違いを口にして生徒達を叱咤する。しかし、あくまで訓練学校であるFORでは実戦をする機会は少ない。
「そこでだ‥‥秋の味覚狩りを企画しようと思う」
 そう続けるオルガ講師は、顎を手でさすりながらニヤリと大きな犬歯を見せ付けるように笑う。秋の味覚狩りと実戦とどのような関係があるのだろう、生徒達は一様に首をかしげた。
「お前らには、ここより二日ほどいった森で三日間ほどキャンプをしてもらう。キノコや果物、野生動物など秋の味覚が豊富な森だ。存分に楽しんでくれ」
 キャンプが実戦なのだろうか、オルガ講師はわからない様子の生徒達を眺め見て、笑みを浮かべたまま話を続ける。
「ただし、必要なものは全て自分で用意しろ。野営の道具、食料の調達など全て自分達で行うんだ。ちなみに、この森はオーク共が生息しているので、くれぐれも自分が秋の味覚にならんように注意しろよ。襲われても私は助けんぞ」
 講師の言葉に、一同苦情の声をあげるがオルガ講師は豪快に笑って聞く耳を持たない。こうして、『秋の味覚狩りサバイバル』が企画されたのであった。

●今回の参加者

 ea9833 デューク・マーロウ(29歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb0689 アクアレード・ヴォロディヤ(20歳・♂・ナイト・エルフ・ロシア王国)
 eb3327 ガンバートル・ノムホンモリ(40歳・♀・ファイター・ドワーフ・モンゴル王国)
 eb3350 エリザベート・ロッズ(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb3450 デメトリオス・パライオロゴス(33歳・♂・ウィザード・パラ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

ジェシュファ・フォース・ロッズ(eb2292

●リプレイ本文

 FORの生徒と希望者が参加した課外授業。森は、日に照らされ黄金色に色づく木々が、賑やかに一行を迎えてくれていた。
「お前達には、この森で三日間過ごしてもらう。この時期は、美味い物が盛りだくさんだからな、楽しんで来い」
 明るい森、そこにはもう一つの顔がある。人に仇なすモンスター『オーク』の存在である。一同は無言で顔を引き締めるのだった。
「よし、では森に入れ! 三日後、無事に戻ってくることを信じているぞ!」
 オルガの号令のもと、森へと入っていく一行。こうして『秋の味覚狩りサバイバル』が開始された。

「で、おいら達はどうする?」
 デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)は森へ入ると、同じグループの仲間達に問いかけた。
「まずは野営をできる場所を確保しなくてはな」
「水場の近くで見通しのいいとこにしようぜ、給水に便利だし」
 デューク・マーロウ(ea9833)が呟くと、アクアレード・ヴォロディヤ(eb0689)が意見を述べる。その意見に一同は頷き、水場を探すこととなった。
「それにしても、殆ど野郎ばっかなのは残念だな」
「あら? 私がいるじゃない、それともなにか文句でもある?」
「とんでもない、殆どって言ったじゃん。リズみたいな可愛い子が一緒で、すっげー嬉しいよ」
「と、当然よね。それはともかく、オークも出るんだから気を引き締めなさいよ」
 途中、アクアレードの軽口に、グループの紅一点エリザベート・ロッズ(eb3350)が顔をしかめて聞き返す。そんな彼女に、アクアレードはすぐに首を横に振ると、ニヒルな笑みを浮かべて容姿を褒める。エリザベートは、一瞬まんざらでもない様子で自分の髪を撫で上げ、照れ隠しに森の危険性に注意を促した。
「泉があったぞ。ちょうど森が開けてる所もあるな」
「よし、ではキャンプの準備をしよう。テントもあるが二人用だ」
 デュークが周囲の様子を探り、キャンプにちょうどいい場所を探してきた。ガンバートル・ノムホンモリ(eb3327)が頷き、簡易テントを取り出してキャンプの準備を始める。
「じゃあ、おいらは食料調達に行こうかな」
「それじゃ、私も行くわ」
「俺も行くぜ。食える物探すのなら任せておけよ」
 デュークとガンバートルがキャンプの設営をしている間に、デメトリオス達が食料調達に出かけることにした。
「ついでに、焚き火用の枯れ枝を集めてきてくれ」
「うん、わかったよ。じゃ、行ってくるね」
「気をつけてな‥‥、美味いもの期待してる」
 デュークの言葉にデメトリオスは頷いて食料調達に出かける。ガンバートルは、彼らが見つけてくるであろう秋の味覚に期待をして見送った。

「うわ〜、いっぱい実ってるよ。取り放題だね」
 森に生る果実が、熟れて甘い香りを漂わせている。魔法で空に浮いたデメトリオスは、香りに誘われるようにフワフワと木に近づくと、手馴れた様子で果実をもぎ取る。
「ちょっとだけなら‥‥いいよね。ん、美味い!」
 もちろん、こっそりつまみ食いすることも忘れない。口いっぱいに広がる甘酸っぱい果汁が、彼を幸せな気分にするのだった。
「え〜と、ちんくしゃの話では‥‥あら、食べられるのはどっちだったかしら」
「どうしたんだい? ああ、食えるのはこっちだぜ」
「本当に? まぁ、あなたがそういうなら‥‥」
「まかせときなって、俺の植物知識に間違いはないぜ」
 エリザベートは、事前に兄に植物の図鑑を頼んでいたが、時間が少ないということで口答で植物の知識を教わっていた。おかげで、似たようなキノコの前でどうしても迷ってしまう。そんな彼女にアクアレードは自信有り気に食べられる植物を教える。それを信じて、彼の言う通りに食料を集めるエリザベートだが‥‥。

「エリザベート‥‥悪いがこれにはすべて毒がある‥‥」
「な‥‥だ、だましたわねぇ!」
 食料を集めて意気揚々と帰ってきたエリザベートに告げる、デュークの真実の言葉。ようやくアクアレードにからかわれていた事に気付いた彼女は、怒り心頭ついつい狂化しそうになったとか。
「食事ができたぞ。味の方は、空腹がスパイスということで勘弁してもらおう」
 調理ができるというデュークが中心になって、秋の味覚をふんだんに使った料理が完成した。デュークとガンバートルが、空いた時間で狩った野鳥や野兎。デメトリオスやアクアレードが見つけてきた果実や香草、キノコなど(自分はちゃんと食料を集めていたアクアレードと、だまされたエリザベートが喧嘩になりそうだったりなかったり)。美味しそうな香りでいっぱいだ。
「うん! 脂が乗ってて美味しい!」
「ふむ、この香草とキノコのスープもなかなか」
 さっそく、デメトリオスとガンバートルが料理にかぶりつく。丸々太って脂が乗った野鳥や野兎、香草の香りやキノコのうまみが染み出したスープなど。焚き火を囲みながら一同は口々に美味しいと言っては、秋の味覚を堪能するのだった。
「どうだ一杯」
「あら、これ美味しいわね!」
 ガンバートルが、一同にワインを振舞った。『シェリーキャンリーゼ』、シェリーキャンの涙と称させるほどの、甘くて口当たりの良い貴腐ワインだ。どうやら、特にエリザベートが気に入ったようだった。酒を酌み交わしながら、故郷や家族のことを語り合う一同、楽しい宴と共に夜はふけていった。

 その夜‥‥。
「おいデューク! リズが水浴びにいったらしいぜ!」
「な‥‥まさか覗きにいくつもりじゃないだろうな」
「な〜に言ってんだよ。オークの出る森で一人にさせとくわけにはいかないじゃん、護衛だよ、ご・え・い」
「そ、そうだな‥‥なら、俺も行こう」
「そうこなくっちゃ!」
 エリザベートがいないことに気付いたアクアレードは、こっそりとデュークに耳打ちした。そんな誘いにしぶしぶといった様子で立ち上がるデュークだが、実はかなり乗り気のようである。二人は抜き足差し足、泉に向かうのだが‥‥。
「このおバカども〜〜! ライトニングサンダーボルト!!」
「ぎゃ〜〜!」
 合掌である‥‥。

 そんなこんなで、楽しい一日目は何事も無く(?)過ぎさった。休む前には交代で見張りを立てたが、とくに不審な者もいないようであった。
「このまま、残り二日間を無事に過ごせればいいのにね」
 朝露に輝く森を眺めながらエリザベートとは呟く。しかしこの願いは、二日目に脆くも崩れ去るのであった‥‥。
「じゃあ行ってくるぜ」
 日中、アクアレード達はデューク達に留守番を頼んで食料調達にでかけた。森の幸は豊富で、この日も十分な食料が取れたのだが。
「よし、今日も良い兎がとれたな」
「わぁ、さすがだなぁ」
 ガンバートルが矢を射て野兎を取ると、感嘆の声をあげるデメトリオス。今日も美味しい肉料理が食べれるであろうと喜んだ矢先。
「おい、気をつけろ‥‥。何か近づいてくる」
「うむ‥‥、自分も気配を感じる」
「え、もしかしてオーク?」
 アクアレードとガンバートルが警戒するように周囲を見渡す。気付けば、木々の陰から豚の頭を持つ巨漢の化け物の姿が現れたのだった。
「‥‥ちっ、こっちからも現れやがった」
 慎重にその場を離れようとするアクアレード達だったが、後方からもオークが現れて苦々しく顔をしかめる。
「退路を得るにもやるしかないか、援護頼むぜ!」
「ああ、任せろ」
「うん‥‥」
 意を決したアクアレードが槍を構える。ガンバートルが退路から近づいてくるオークに、その正確な射撃で傷を負わし、デメトリオスの稲妻がその身を撃ち抜く。そして、怯んだオークにアクアレードの槍が突き刺さる‥‥のだが。
「くっ! 槍が抜けない!?」
「危ない!」
「しまっ‥‥!!」
 ドゴッ、鈍い音と共にアクアレードが吹っ飛ぶ。肉に刺さり抜けなくなった槍に気を取られ、オークの戦槌を避け切れなかったのだ。その威力は強力で、防具をつけていなかったアクアレードは大きなダメージを負ってしまう。
「ぐぁ‥‥腕の骨が‥‥く、アバラも何本かもってかれた‥‥」
 木に打ち付けられたアクアレードが苦悶の声をあげる。
「アクアレー、ぐぉ!」
「モリさん!」
「む、ぐぅ‥‥逃げろ」
 アクアレードの窮地に助けにでようとしたガンバートルだが、近づいてきていたもう一匹のオークに吹き飛ばされる。かろうじて重傷は避けられたが、激痛ですぐには身動きが取れない。
「くそぉ、こんなやつらに食べられ放題は勘弁だ!」
 二人が倒され、進退窮まったデメトリオス。ジリジリと近づいてくるオークになんとか一矢報いようとしたそのとき。
「まったく、笑えない冗談だな!」
「デュークさん!」
 突然、オークの急所に矢が突き刺さり悲鳴を上げる。異変に気付き助けにきたデュークの矢であった。
「大丈夫!? ライトニングサンダーボルト!」
 エリザベートの稲妻もオークを撃ち抜き、不意打ちを受けたオーク達はパニックになると逃げ出したのだった。
「おいらは大丈夫だけど、アクアレードさんとモリさんが」
「さぁ、これを飲んで!」
「ぐ、すまない‥‥」
「む、アクアレードのほうは手持ちのポーションでは直せないぞ‥‥」
 エリザベートがガンバートルにリカバーポーションを与えて傷を癒す。しかし、アクアレードの怪我は重すぎてリカバーポーションでは癒せなかった。
「くそ、ドジっちまったぜ‥‥」
「しゃべっちゃだめだよ、いま応急処置するから」
 苦痛に呻きながらも引きつった笑みを浮かべるアクアレードを制して、デメトリオスが折れた腕などを木の枝で結び応急処置する。
「しかたない、この怪我でキャンプを続行するのは無理だ。先生に言って、街に帰還させてもらおう」
 デュークの言葉に頷く一同。アクアレードの身を案じて、一行はキャンプを中止して町へと帰還することになった。おかげで、アクアレードは大事に至らなかったが、課外授業のほうは途中棄権という形で終了となるのであった。