強敵! 武装ゴブリン部隊現る!

■ショートシナリオ


担当:緑野まりも

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月05日〜11月10日

リプレイ公開日:2005年11月13日

●オープニング

 深い森の中、今日もゴブリン達は大きな切り株を中心にして話し合う。
『おのれ人間め! 仲間を呼んで我らが食料調達部隊を追い払うとはゴブ!』
『しかも人間達は、卑怯な罠をしかけてきたゴブ! ゆるせないゴブ!』
 幾人(匹?)ものゴブリン達が、切り株を拳で叩いて怒りをあらわにする。その騒ぎに驚いて、森の鳥達がバサバサと飛び立っていく。
『みな落ち着くのだゴブ。人間が卑怯なのは今に始まったことではないゴブ。それよりも、それにどう対処するかが重要だゴブ』
『王の言う通りだゴブ!』
 ゴブリンの輪の中で唯一冠を被ったゴブリンが、落ち着き払った声をあげる。それに、ゴブリン達は大きく頷き、ようやく騒ぎを収めた。
『して、どういたしましょうゴブ』
『うむ、人間達の卑怯な罠を対処するには‥‥奇襲ゴブ! 人間達に罠を仕掛ける暇を与えず、電光石火の如く村を占領するゴブ!』
『おお、さすがは王ゴブ!』
『では、その任。ぜひわたくしめにご命令をゴブ』
 冠を被ったゴブリンの作戦に、一同が感心の声をあげた。そして、一人の体格の良いゴブリンが立ち上がる。冠を被ったゴブリンは大きく頷いた。
『ゴブラック卿か。うむ、ではそちに今回の作戦を任せるゴブ。見事人間の村を落としてみせるゴブ!』
『はは! ゴブリンの騎士としてかならずや王のご期待に応えてみせましょうゴブ!』
 命を受けて、立ち上がったゴブリンはうやうやしく頭を下げると、身を翻して戦いの準備に取り掛かるのであった。

『今回の作戦は、少数精鋭による奇襲だゴブ! 我々は、人間に反撃の隙を与えずに一気に村を占領するゴブ!』
『お〜!』
 体格の良いゴブリンの号令の下に集まった4人のゴブリン。それぞれが、人間から奪い取ったのか、ちゃんとした鎧や武器を装備している。
『ゴブレッド、ゴブイエロー、ゴブグリーン、ゴブピンク。お前達の働きに期待しているゴブ!』
『はは! ゴブラックさま!』
 体格の良いゴブリンは、集まった4人のゴブリンの名を呼び、信頼の眼差しで見つめると大きくうなずいた。
『よし、ではいくゴブ!』

 数日後、キャメロットの冒険者ギルドに、一人の男が急いだ様子で駆け込んできた。
「村が! 村が、ゴブリン達に占領されちまった!!」
 男の話では、突然村がゴブリンの集団に襲われ、抵抗する間もなく占領されてしまったそうだ。人数は多くないが、ゴブリン達は皆武装しており、村人達では相手にならずに村を捨てて逃げなくてはならなかった。男も、命からがら逃げ出して、ギルドに助けを求めにきたのだった。
「やつら、秋の収穫を根こそぎ持っていきやがる! 頼む、どうか村を助けてくれ!!」
 男は、必死の思いで頭を下げるのであった。

●今回の参加者

 ea4885 ルディ・ヴォーロ(28歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 eb0200 オードフェルト・ベルゼビュート(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb0276 メイリア・インフェルノ(31歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb2215 朝瀬 凪(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3213 シュラ・ロイヤルナイツ(25歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3349 カメノフ・セーニン(62歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb3483 イシュルーナ・エステルハージ(22歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3512 ケイン・コーシェス(37歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb3587 カイン・リュシエル(20歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

「これはいったいどういうことなんじゃ〜!」
 道中、カメノフ・セーニン(eb3349)はロープに縛られて歩いていた。なんと、パーティではカメノフ包囲網とも言える警戒態勢が敷かれていた為だ。
「自業自得だろう」
「適切な処置じゃの」
「カメノフさんが変なことしないようにするためだから、諦めてよね」
 オードフェルト・ベルゼビュート(eb0200)の呟きに、シュラ・ロイヤルナイツ(eb3213)と朝瀬凪(eb2215)が同意するように頷いた。どうやらカメノフの蛮行は知れ渡っているようである。
「老人のささやかな楽しみなのに〜!」
 悲痛な叫びをあげながら、カメノフは連行されていくのであった。いや、まだ何もしてないはずなのだが‥‥。

「村の様子を見てきたよ。なんか偉そうなゴブリンが命令して、ゴブリン達が作物を森に運んでた」
「武装を固めていたゴブリンは5匹いましたわ。一匹は他のゴブリンより体格が良かったですわね」
「ホブゴブリンね。こいつがリーダーだわ。早くやっつけないと、作物全部奪われちゃう!」
 先行して村の様子を探っていたルディ・ヴォーロ(ea4885)、メイリア・インフェルノ(eb0276)、イシュルーナ・エステルハージ(eb3483)の報告を受けた一行。どうやら、武装しているゴブリン達が警備しつつ、部下のゴブリン達が村の作物を奪っていっているようであった。
「村人が精魂込めて作った作物を奪うなんてゆるせねぇ! さっさとやっちまおう!」
「罠を用意する時間はないようだね‥‥」
 放っておけば、作物は全て奪われてしまう。ケイン・コーシェス(eb3512)はいても立ってもいられないといった様子で仲間を見渡し。カイン・リュシエル(eb3587)は万全とはいかない状況に肩を竦めた。
「すぐに動くことには異論はないけれど、相手は結構知恵があるようだから、気を抜かないようにしないとね」
「じゃあ、僕と凪で敵をおびき寄せるよ」
「まかせて」
「わしも空に浮いて手伝おうかの」
 サイレント・ラストワード(eb3730)は、相手を侮らないよう皆に声をかける。ルディと朝瀬が頷き、ゴブリン達を村から引き離して待ち伏せすることにした。カメノフも、ようやく拘束を解いてもらい、リトルフライで囮を買ってでるのであった。

『さぁ、早く作物を運び出すゴブ!』
 ゴブリン達を指揮する、武具を身に着けたホブゴブリン。そこに、同じように武具を身に着けたゴブリンが話しかける。
『ゴブラックさま。我らの奇襲に驚き逃げていくなど、やはり人間は恐れるにたりませんゴブ』
『ゴブレッドよ、油断するなゴブ。人間はかならず報復に来るはずゴブ』
『ご安心を。人間どもが来ても、かならず撃退してみせますゴブ』
 ゴブリンが自信満々の様子で胸を張る。そこへ、また一匹のゴブリンが現れる。
『大変ゴブ! 人間どもがやってきたゴブ!』
『なに!? で、数は?』
『人間の女と子供が一人ずつ、それと空に浮いてる奇怪なハゲジジイが一人ゴブ!』
 ゴブリンは、両手で大きなジェスチャーをしつつ、ホブゴブリンに報告する。
『女子供にジジイだと! 我らを舐めるのもほどがある! ゴブ戦隊集合ゴブ! 人間をやっつけるゴブ!』
『人間のことだ、なにか卑劣な罠があるかもしれないゴブ。くれぐれも注意するゴブ! 残りのゴブリンは引き続き作物の搬送を急ぐゴブ』
 ホブゴブリンをリーダーにした、5匹のゴブリン武装部隊は、各々武器を構えて人間達の迎撃に出るのだった。

「うわぁ〜! ゴブリン怖いよ〜!」
「ゴブリンが武装してるなんて卑怯よ!」
「うほほ〜い、こっちじゃこっちじゃ!」
 ルディ達は、ゴブリンを油断させるように怯えた演技をする(一人例外がいるが)。それに乗せられたように、ゴブリン達はルディ達を追いかけて、まんまと待ち伏せ場所まで誘導されるのであった。
『む、これは罠ゴブ、皆さが‥‥』
「ファイヤーボム!」
『ゴブゥ!』
 ゴブリン達が気付いた後にはすでに遅し。村の被害のでない場所まで誘導されたゴブリンに、カインの魔法が炸裂。火球の爆発に巻き込まれて悲鳴を上げるゴブリン。
「覚悟するんだなゴブリン!」
「人に仇なすゴブリンよ、村は返してもらう!」
 ケインとオードフェルトが、ゴブリン達を囲むように隠れていた草陰から飛び出した。事前に、サイレントやカインにフレイムエリベイションとバーニングソードをかけてもらっている。
『むむ、体勢を立て直すゴブ!』
『ゴブレッド!』
『ゴブイエロー!』
『ゴブグリーン!』
『ゴブピンク!』
『ゴブラック! 5人揃って、ゴブリン戦隊ゴブレンジャー!』
「‥‥なに言ってるのかしらこいつら?」
 ホブゴブリンの号令で混乱から立て直すゴブリン達。なにやらポーズの様なもの取っているが、イシュリーナ達にはなにをしているのかさっぱりわからなかった。人間には、オーガ語はよく理解できない。
『邪悪で卑劣な人間どもよ! 我ら正義のゴブレンジャーが退治してくれる!』
「なにを言っとるのかわからんが、なんとなくムカつくのぅ」
『ゴブゥ! 正義のゴブリンにはそんなもの効かぬゴブ!』
「むむ、たえおったか」
 なにやら騒ぎ立てているホブゴブリンに、シュラは顔をしかめて準備していたスクロールの魔法を唱える。しかし、確実に命中した光の矢は効果が薄かったようであった。
「なんか変なゴブリンだが‥‥まあいい!」
 ゴブリン達の行動に一瞬呆気に取られたケイン達であったが、気を取り直してゴブリンに切りかかる。こうして武装ゴブリンと冒険者達の戦闘が始まった。

 戦闘の序盤は、魔法の援護もあり有利に進めていた冒険者達であったが‥‥。
「く、こいつら結構固い! 気をつけてくださいメイリアさん」
「あら‥‥わかっていますわ。朝瀬さんも‥‥」
『必殺バーストアタックゴブ!』
「きゃ!」
「うわ! 私の一張羅が!」
 ゴブリン達はよく訓練されているようで、堅実な攻撃で徐々に盛り返してくる。そして防具を着て攻撃が通りにくい相手に手をこまねく朝瀬とメイリア。お互いを心配する二人であったが、一瞬の隙をつかれてゴブリンのCOが炸裂。避けそこなった二人は、着ていた服を切り裂かれる。
「おお! もっとやれやれ〜!」
 歓声をあげるカメノフ、どっちの味方だ‥‥。
「大丈夫か! メイリア?」
「ええ、服を切られただけで怪我はないですわ」
「これを! メイリアは少しさがってて!」
 メイリアの窮地に、助けに駆け寄るオードフェルト。自分のマントをメイリアにかけると、改めてゴブリンと対峙した。
「うおお! これでどうだ!」
『ゴブゥ!!』
 魔法により炎に包まれたクレイモアを一閃。気合のこもった一撃はゴブリンを切り裂き、大きなダメージを与えるのだった。

「くそ! いい加減倒れろ!」
『やられたゴブ‥‥』
 ケインが木剣をゴブリンの額に叩き込み、ようやくこれを打ち倒す。しかし、ケインも少なからずダメージを受けて、腕からは血が流れていた。
「ち、これなら回復薬を用意しておくんだったな‥‥」
「大丈夫!? この者に神の癒しを、リカバー!」
「‥‥助かった!」
 様子に気がついたイシュルーナがケインに駆け寄り腕に触れる。そして、優しい光がケインの傷を癒していく。ケインは感謝の言葉を残し、次の相手に向かっていくのだった。

「クイックラスト!」
『ゴブブ、武器が!』
「いまだ! 服の恨みを思い知れ! スマッシュ!」
『無念ゴブ〜』
 サイレントの援護で、渾身の一撃を与える朝瀬。ゴブリンもさすがにこれは効いたのか、後ろへと倒れこんだ。
「ほれほれ、これを避けきれるかの?」
「よ〜く狙って‥‥シュート!」
 カメノフが事前に街で買っておいた木材をゴブリンにぶつける。草陰ではルディが身を隠しながらスリングで的確に狙い撃ちしていた。
「サンレーザーならどうじゃ!」
『ぎゃ〜、熱いゴブ!』
 シュラは別のスクロールを広げると、太陽の光を集めた光線がゴブリンを打ち抜く。これは流石に効いたようだった。

『ゴブゥ、我が特務部隊が!』
「お前達の負けだ! これ以上人間を襲わないと誓えば命だけは‥‥」
 部下が次々と倒され焦るホブゴブリンに、オードフェルトが降伏勧告をしようとする。だが‥‥。
「グォォ! オマエタチニンゲンハ、ワレワレノトチヲウバイ、モリニオイヤッタ! コノウラミハゼッタイニハラスゾ!」
「このゴブリン、イギリス語を話せるんだ」
「けれど、聞く耳はもたない様子ね」
 雄たけびと共に、片言のイギリス語を話すホブゴブリン。言葉が通じることに、少しの期待をもつカインであったが、サイレントは厳しい視線を向ける。
「ナカマノカタキ!」
「しまっ!」
 言うが早いか、斧を渾身の力で振り下ろすホブゴブリン。言葉が通じたことに一瞬油断したか、オードフェルトはこの一撃を受けてしまう。
「オード! 大丈夫!? このポーションを!」
『一時撤退だゴブ!』
「待て! 逃がすか!」
「ケインさん! あなたも怪我を負ってるんだから深追いはダメよ!」
「ちっ!」
 オードフェルトに駆け寄るメイリア、大きな怪我を負った彼にリカバーポーションを飲ませる。そして、逃げ出したホブゴブリンを追いかけようとするケインだったが、イシュルーナの静止に追撃を断念した。

「リーダーが逃げ出したせいか、他のゴブリン達も森に逃げていったようだよ」
 しばらくして村の様子を報告するルディ。リーダーは逃がしてしまったが、どうやら村の奪回には成功したようであった。冒険者側も結構なダメージを負うことになったが、ポーションとイシュルーナの魔法で怪我を癒す。
 そして、依頼を達成した一行は、ゴブリン達の持っていた武具をいくつか戦利品として持ち帰り、帰路へとつくのだった。
 その後サイレントの報告で、ゴブリンが出没する森に対して警戒するように各村に伝わることになる。