遺跡を守れ! 〜暗闇で光るモノ達〜
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:緑野まりも
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 75 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:09月05日〜09月13日
リプレイ公開日:2005年09月13日
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●オープニング
ガリガリ‥‥ガリガリ‥‥暗い闇の中、何かを削るような音がする。ガサゴソ‥‥キーキー‥‥何かが蠢き鳴く声がする。ピカピカ‥‥キラキラ‥‥と闇に浮かぶ二つの球‥‥いや、二つではない、その球は四つ、六つ、八つ‥‥いつしか数えられないほどの球が浮かび上がっていた。
ある日、冒険者ギルドの受付に30歳代でぼさぼさ髪のローブの男が現れた。痩せ型で、神経質そうな顔立ちの彼は、受付前で頭をボリボリと掻く。すると、白いフケがカウンターに落ち、受付嬢が一瞬顔を嫌そうにしかめて身体を引いた。
「こんにちは、私はラルヒー・スコッティンという者だがね。ちょっと困ったことがあって、私ではどうにもならんので冒険者に依頼をしにきた」
受付嬢の気持ちなど気づかないようで、彼は受付でそう述べるとすぐに依頼内容を話し始めた。その間も、頭を掻き続けてはフケがカウンターに降る。
「私は、こう見えても魔法王国アトランティス文明を研究している学者でね。遺跡を探索しては、アトランティスに関係しているモノを探しているのだが‥‥」
といいつつ、懐からこの辺りの地図を取り出す。そして、それを受付カウンターにバサっと広げると、カウンターに降ったフケが舞い上がって、受付嬢はよりいっそう身体を引いた。地図にはいくつもの点となにやら簡単な記述が書き込まれており、やはり受付嬢の様子には気づかない彼は、その一点をトントンと指で叩いた。
「ここだ、ここ。この場所にある遺跡が、いま大変なことになってるんだ。というのも、しばらくほうって置かれたせいで、ジャイアントラットが住み着いてしまったようなのだ」
ジャイアントラットとは、全長1メートルもの大きさのネズミで、廃墟や洞窟に住み着いていることがある動物であった。彼は苦々しく眉をひそめると、大きくため息をついて首を振る。と同時にフケも降る。
「やつらはその鋭い歯で遺跡の壁に穴を開けるどころか、壁が崩れるほどボロボロにしてしまう。この遺跡は、すでに探索しつくされ大した物はないが、といって私としては貴重な遺跡がボロボロにされるのを黙って見過ごすこともできない。あまり増えすぎないうちに、早急になんとかしてほしいのだがね」
彼はもう一度ため息をつくと、再び地図を懐にしまい依頼の手続きをした。その間、終始頬を引きつらせ、身を引いていた受付嬢にはやはり気づかない様子であった。
「それでは、よろしくおねがいするよ」
といって立ち去るローブの男を見送った受付嬢は、遺跡がボロボロになることよりまず先に、自分の頭がボロボロになることを心配してほしいと思った。
●リプレイ本文
キャメロットから三日、山あいの奥まったところにある遺跡入り口へとたどり着いた一行。話に聞いた通り、遺跡は土の中に埋もれており入り口だけがぽっかりと洞窟のように開いていて、その奥は真っ暗闇で見渡すことができない。
「何事もなく付いてよかったですね」
「そ、そうじゃのぅ‥‥」
リースフィア・エルスリード(eb2745)が道中を振り返りニコリと笑みを浮かべると、カメノフ・セーニン(eb3349)が少し引きつった笑みを浮かべながら頷いた。実は、カメノフがリースに会って早々に悪戯しようと魔法を詠唱したところ、どこからともなく矢がカメノフを掠めて飛んできたのだった。
「どうやらこの遺跡は、二階層にわかれているようですね」
「ああ、上への階段があるようだ。天井が崩れないよう注意したほうがいいな」
事前に遺跡の地図を預かっていたクロス・レイナー(eb3469)とローガン・カーティス(eb3087)が遺跡の間取りを軽く説明する。
「え〜っと‥‥魔法で何でも吹き飛ばさないように注意っと‥‥わかったシュガー?」
ティアラ・フォーリスト(ea7222)が町を出る前に注意されていたことを思い出しつつ、ペットのボーダーコリーに話しかけた。
「うち、外国の遺跡なんて初めてやわぁ、外観が見れんのがちょっと残念やね」
「中も真っ暗なようだし、気をつけないとね」
土に埋もれた遺跡の様子に少し残念そうに呟く藤村凪(eb3310)と、入り口の奥に目を凝らし表情を引き締める梁暁黒(ea5575)。
「準備ができたら行こうか‥‥」
アザート・イヲ・マズナ(eb2628)の言葉に一同は頷き、遺跡の中へと入っていった。
遺跡の通路は二人が並んで歩ける程度の広さで、一同は隊列を組んで進む。ランタンを持ったティアラが先頭に立ち、その隣に梁。すぐ後ろには、敵が出たらいつでも前に出られるようにリースとクロスが備えている。一番後方はアザートと藤村が用心をしていた。
「はぁ、本当に真っ暗なんだね。そこ足元危ないから気をつけて」
ティアラがランタンをかざしながら歩いていく。遺跡内は石の通路が続いており、所々何かに削られたようなあとが残っていて、気をつけないと転びそうになる。
「なんだ‥‥あれは」
梁は、通路の先に二つの丸い球のようなものを見つけた。チカチカと点滅するように光るそれは、二つ、四つ、六つ、八つと見る見る間に増えていく。
「ティアラは下がってください」
警戒したリースが、ティアラに代わって前にでる。そして、一同は徐々に光の球へと近づいた。ランタンの光がその光の球のシルエットを浮かび上がらせる。
「ネ、ネズミですか。大きいですね‥‥」
「あ、逃げる!」
クロスが呟く、その光の球の正体はネズミの瞳であった。話に聞いていたが、1メートルを超えるジャイアントラットの姿に思わず息が漏れる。ネズミ達は、光が近づくといっせいに遺跡の奥へと逃げ出した。
「この先に、部屋があるはずだ。そこに逃げ込んだのかも」
ローガンの言葉に頷く一同は、少し進んだ先にあった部屋の中を確認する。すると、数匹のネズミが目を光らせながらこちらを威嚇するように毛を逆立てている。
「う‥‥かなり獣臭いですね」
「逃がさず生かさず‥‥確実にだね」
「貴方達に恨みは在りません‥‥しかし、その命‥‥絶たせていただきます!」
先に入ったリースが顔をしかめ、梁とクロスも続けて入り武器を構える。部屋は三人が戦うには十分の広さで、ティアラのランタンの光の下、戦闘が始まった。
「む、通路の先にもいるな‥‥」
「ほんまやねぇ、それならうちの弓で」
リース達が戦闘をしている間、後方を警戒していたアザートが通路の先に見える光の球に気づく。夜目の利く藤村が、その光に向かって矢を射ると悲鳴のような鳴き声を上げて光が消えた。
「ふぅ、結構大変ですね」
しばらくして、部屋での戦闘も終わり一息つけるリース達。遺跡を壊さないように注意しながら戦闘をするのは、なかなか疲れるようで。加えて、傷を負わせると逃げ出してしまうネズミを駆逐するのは思った以上に面倒であった。
再び探索を開始する一行。各部屋にいるネズミ達をしらみつぶしに倒しながら先へと進んでいく。途中、二階への階段があったが、先に一階を駆逐してしまおうと考えた一行は、それを無視して先へと進んだ。
「この奥が一番大きな部屋で、祭壇になっているようだ。一階はそこで行き止まりだな」
「じゃあ、一階のネズミはそこで最後ってこと?」
「まぁ、そういうことになる」
遺跡の案内に、ティアラが問いかけて、頷くローガン。ここまで一本道を進んできたため、最終的に行き止まりの部屋にネズミを追い込んだことになった。ローガンも松明を持ち、広い空間を照らしながら一行は部屋へと入る。
「まだこんなにいるんだ‥‥」
梁が、照らし出された部屋内の様子にため息をついた。さすがに一階最後の部屋、ここまで追い込まれてきた数匹のネズミ達が威嚇しながらこちらを見ている。前衛のリース達は武器を構え、ジリジリとネズミ達に近づいていった。
「‥‥少し面倒なことになったようだ」
後方を警戒していたアザートの耳に、いくつもの小さい足音が聞こえてきた。どうやら、二階のネズミ達が降りてきてこちらへと向かってきているようなのだ。後衛のアザート達も武器を構え、迫りくるネズミ達を迎え撃つこととなった。
「これでもエルスリードなのです。そうそうやらせはしません!」
「僕に死角はないんだよ!」
「く‥‥! まだまだ!」
結果的にネズミに囲まれることとなった一行だが、リーフの長剣が確実に敵を捕らえ、梁の犬嗅拳は光の届かない場所でさえ冴え渡り、クルスは襲い掛かる敵にカウンターを返していく。
「おっと、やらせるわけにはいかんのぅ、サイコキネシス!」
「遅い‥‥な」
「今宵の陸奥宝寿は血に飢えておる‥‥な〜んてなぁ、ふふふ」
後方でもカメノフの援護のもと、アザードの左右のナイフが煌き、弓から小太刀へと持ち替えた藤村の一閃が敵を切り裂く。そして、前後に備えた隊列が功を奏し、ネズミ達の撃退に成功した。
「いたた、さすがにいまのはきつかったですね」
今の戦いで、ダメージが蓄積していたクルスが、用意しておいたリカバーポーションを服用しつつ苦笑を浮かべる。他の者たちも、程度は軽いながらダメージを受け、長時間の探索で疲労していた。
「そうですね、とりあえずはこれで一階は掃討し終わったわけですし、一度戻りましょうか」
リースの提案に、一同は頷き一度遺跡から出ることにした。外へ出てみれば、すっかり日も暮れていたので、彼等は野営の準備をして夜を明かすこととなった。
「ぱ、ぱふぱふしてくれんかのぅ〜」
「たぁ! ごめん、手加減できなかったよ」
夜の見張り、まず最初に立ったカメノフと梁であったが、飛び付くカメノフを梁が容赦なく粉砕、そのままカメノフは永い眠りへとつくのであった‥‥。
「予想通り‥‥か」
そんな様子を、アザートがこっそり見ていた。
「今日は戦いで疲れたんじゃないか? 見張りなら私だけでも大丈夫だぞ」
「いえ! まだまだだいじょうぶでふぁ〜〜‥‥す、すみません」
二組目、ローガンとリース。前衛で戦っていたリースを気遣うローガンに、笑顔で応えるリースであったが、ついつい欠伸をしてしまい顔を赤らめた。
「クロスさんはがんばって戦ってくれたのに、あたしはあまりお役に立てなくてごめんなさい」
「いえ、そんなことないですよ。ティアラさんが明かりを持ってくれてるから安心して戦えるんです。それに、僕の力は誰かを護る為にあるんですから」
三組目、ティアラとクロス。遺跡を壊す危険性から魔法の使えないティアラが少し申し訳なさそうに言うと、クロスが笑みを浮かべてティアラの頭を優しく撫でた。
「すまない‥‥気の聞いた話もできず」
「ええよ〜、うちの話を聞いてくれるだけで嬉しいわぁ」
最終組、アザートと藤村。話すのが苦手なのか、アザートが申し訳なさそうに言うと、藤村はニコニコと笑いながら自分の話をし始める。そうして、何事もなく(?)夜は明けるのであった。
「さて、今日は二階だな。二階も間取りは一階とそれほど変わらない。ただ、今度は足元が崩れないように注意しないとな」
ローガンの説明のもと二階へと上った一行は、順調にネズミを駆逐していく。
「無力なモノも排除しなければならないのは気が進みませんが‥‥」
途中、子ネズミなど(といってもやはり十分に大きいが)の姿に悲しそうに眉をひそめるリース達であったが、大きくなりまた繁殖されるわけにはいかず排除することとなった。
やがて最後の部屋。ここもまた、やや大きめの部屋になっていたが‥‥。
「壁画‥‥ですか」
「こんなん初めて見るわぁ」
「これは、アトランティスを記したものなのだろうか‥‥」
「見事なものだね」
「ふん‥‥人の歴史‥‥か」
「コレと比べれば、わしもまだまだ若いのぅ」
「すごいねぇ、コレは壊しちゃだめだよね」
「かつての人々の息吹が、風化しながらも今ここにある‥‥」
追い込んだネズミ達を駆逐した一行を迎えたのは、壁一面に描かれた壁画であった。その壁画がケルトのものなのか、それとも依頼人の言う魔法王国アトランティスのものかは一同にはわからないが、古代の歴史を今も残すそれに少なからず感動を覚えるのであった。
その後は、念には念を入れてもう一度各部屋を見回り、だいたい駆逐し終わったことを確認すると、一行は帰途へとついた。
依頼人が報告を聞いて、喜びのあまりフケを撒き散らかしたことを後述しておこう。