しんぷるけーす 小鬼退治

■ショートシナリオ


担当:松原祥一

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月15日〜04月20日

リプレイ公開日:2005年04月24日

●オープニング

「ああ、新しい仕事の依頼が入ってますよ」
 ギルドの手代から見せられた依頼書に、冒険者は驚いた。
「小鬼退治‥‥だと?」
「はい、何でございましょう?」
 冒険者は依頼書を手代に付き返した。
「俺を誰だと思ってる。少しは江戸でも名の知れた冒険者の俺に、今更小鬼退治とは何事だ?」
 一年ほど前には小鬼退治に全身が緊張したものだ。
 しかし、それから幾多の冒険を経験してきた。今は己にも腕にもそれなりの自信がある。世間の風評の方が己の先を行き、過ぎた二つ名で呼ばれる事もある。だからといって江戸一、日本一とは自惚れないが、駆けだしとは大きく差をつけたはずだ。格段に、強くなったはずだ。
 その自分に今更、遥か昔に通り過ぎた道を歩けと言われては腹も立つ。
「どれどれ‥‥いいえ、間違いありません。この依頼ですよ。受けますか? どうしますか?」
 そこまで言われては、この冒険者ももう一度念入りに目を通した。或いは小鬼でも無数の大群か、それとも小鬼の王ならば、今の自分にも釣り合うだろう。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 しかし、どう読んでもただの小鬼退治にしか思えない。
「それとも、他のにしますか?」

 江戸から二日の小さな村からの依頼で、田畑を荒らす小鬼を退治してくれというシンプルな仕事だ。
 依頼書によれば数は5、6匹。村の近くの森を根城にしている事も分かっている。
 まさしく新米冒険者の為に用意されたような仕事。

「‥‥そうか、分かったぞ」
「何ですか?」
「手代、初心を思い出させようという老婆心だな。確かに慢心は禁物だ、小鬼如きと侮ってはいつ足元をすくわれるか分かったものじゃない」
 得心したように何度も頷く冒険者に、手代は溜息をついた。
「そんなくだらない事の為にこの私が指一本動かすとでも? それより私も忙しいので、受けるのか受けないのか、早く決めて下さいませんかね」
 では何なのだろう‥‥?

●今回の参加者

 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0861 緋邑 嵐天丸(25歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2722 琴宮 茜(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea5694 高村 綺羅(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6195 南天 桃(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea6321 竜 太猛(35歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea7901 氷雨 雹刃(41歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文


 小鬼退治。
 駆け出しの冒険者にピッタリと言われる定番依頼の一つ。
 危険度の低さの割に依頼人には有り難がられるので、新人はまず小鬼退治で自信を付けると言われる。

「小鬼は人より弱いのですの」
 ジャパン最強の少女志士とも噂される琴宮茜(ea2722)は自分の拙い知識で小鬼の事を伝えた。
「え〜、そ〜なんですかぁ」
 茜と同じ志士で、小鬼とも戦闘経験のある南天桃(ea6195)は感心して頷いている。
「でも〜、そんな小鬼退治に皆さんを〜呼ぶのですか〜凄いですねぇ。私〜みたいに初心者にも能力的に負けてる事のある私なら〜わかる気もしますけどぉ?」
 南天桃は特徴的な喋り方をした。聞いていると段々気が抜けていく。
「そんなの、向うに着けば分かる事だろ? なあ急ごうぜ」
 緋邑嵐天丸(ea0861)は出立時からの、この穏やかな雰囲気に慣れなかった。常に強敵との戦いを渇望してきた少年剣士は気が逸る。徒歩二日の距離を徒歩二日で移動するのは久方ぶりだ。
「韋駄天の草履が何足かあるんだから、馬持ってない奴らもそれ借りればいいじゃんか?」
「小鬼相手にそこまで焦る事も無いじゃろう。いや侮っておるのではないぞ、だが無理は禁物じゃて」
 年寄り臭い喋り方をする竜太猛(ea6321)は嵐天丸を宥めた。
「そうですよ。いたずらに人数を分けるのは得策とは言えません。それにみんな目的の村に行くのは初めてなんですから、万が一道に迷ってしまったら困るじゃないですか」
 緋邑と歳も近く、同じく浪人の雨宮零(ea9527)がフォローを入れる。
「昔の人も巧遅は拙速に如かずと言ってるぜ」
「あ、保存食が足りないのでしたらどうぞ」
 往復三日の仕事と考えてか、緋邑はそれだけの食糧しかを持ってきていない。雨宮がニコヤカに保存食の包みを渡すので、緋邑も急ぐ事は諦めた。波風を立てるほどの話でもない。
「久々の戦闘が小鬼なのは残念ですが、皆さんの言われる通り、甘く見るのは禁物ですね」
 騎士のルーラス・エルミナス(ea0282)はそう云って微笑んだ。
「どんな依頼を受けてた?」
「どうと言われても普通です。ごるびーから茸を取ったり、子供に冒険話を聞かせたり、河童と宴会したり、少女愛好画家に因果を含めたり‥‥」
 思えばこの一月、随分と戦いから遠のいていた。何にでも首を突っ込む気性のせいか? 故郷のイギリスを出てはや半年、頭には三度笠に必勝鉢巻、腰には日本刀、越後屋手拭いにフランケン十字勲章を引っ掛けて、ジャパンにも馴染んでいた。
「‥」
 ふと遠い目をしたルーラス。
「心配しなくても。皆、手練れの兵達‥‥。綺羅は綺羅の出来るだけをするだけ。他の手出しはしないように注意するから‥‥」
 慎重になっている仲間の気を解すように高村綺羅(ea5694)が言う。そう、江戸でも実力者と呼んで差し支えない冒険者が揃っている。敵は数匹の小鬼、不安要素は微塵もないはずだ。
「そうじゃのう。簡単すぎて、何やら裏があるのではと勘繰るのが逆に良くないかもしれん」
 分かったような事を言う太猛。
「氷雨殿も、そう思うじゃろ」
「いや‥‥俺は、何も思わん‥‥」
 氷雨雹刃(ea7901)は口数が極端に少なかった。元はといえば、小鬼の事を良く知らなかった氷雨がそれとなく話を聞こうとしたので琴宮が説明を始めたのだが、1人で得心すると沈黙を守った。
「ともかく、小鬼と言っても人々が困ってる事を片付けるのが私達のお仕事ですものね。誠心誠意がんばらないと」
 琴宮の言葉に仲間達は頷く。

 冒険者達はちょうど二日で村に着いた。村人に案内されて村長に会う。
 村長は冒険者らの姿を見て大変吃驚した。
「はぁ、こんな偉い人達が来て下さるとは鬼に金棒、いやや‥‥まことの村の救い主でございます」
「いえいえ〜、こちらこそ〜小鬼退治でこんな〜報酬貰っちゃっていいのかな〜って、私達の方が〜驚いているんですよぉ」
 桃がおっとりとした口調で挨拶する。村長が恐縮するのも当然で、何れも江戸で名の通った面々。屈強な冒険者が8人。足軽を付ければ砦の一つぐらいは落せそうな勢いである。
「村長さん、ずた袋か何かをくれると嬉しいんだがな。そいつに小鬼の首を持ち帰るから」
 桃に任せていては日が暮れると、代わりに緋邑が交渉を始める。
「そういえば、氷雨さんの姿が見えませんけど?」
「森を見てくるって‥‥」
 言伝を聞いていた高村が言うのを、雨宮は眉を顰めた。
「一緒に行動した方がいいと、言ったのに‥‥動きの速い人ですね」
「一人で行ったなら、すぐ戻ってくるでしょう。私達は、村人から話を聞いていましょう」
 ルーラスがフォローする。今回は作戦の話し合いは殆ど無かった、このくらいの行き違いは最初から想定している。
「どっちに行ったか分かるから‥‥私も、偵察に」
 綺羅は隠密行動に優れている。
「俺も俺も」
 緋邑も手を挙げて、森に入っていく。
「では小鬼の話を聞かせて頂けますか?」
 残った冒険者達はルーラス、桃、太猛らが中心になって村人から話を聞いた。

「あの〜森のどの辺りから〜小鬼は出てくるのでしょう〜?」
 桃の質問に、農作業の合間に一服していた村人は頭を捻る。
「そうだのう、あの辺りかな〜」
 煙管で村から見える森の一角を差した。
「あの辺りですか〜」
 森の側の畑で忙しく村人が働いているのが見える。その村人の話では、これまでの小鬼の被害は畑一反と田二反、それに鶏が二羽。続いてルーラスは小鬼達の様子を聞いた。
「小鬼達はどんな風にやってくるのですか?」
「こそっと夜中に来てよ、田畑を荒らしてくんだ。盗人かと思ってな、若い者が捕まえようとしたら、怪我しちまってなぁ」
「それは災難じゃったのう」
 太猛が相槌を打つ。小鬼が来た回数を聞くと、村人は二回だと答えた。
「二回か。ふむ、出来れば畑で待ち伏せて退治したい所じゃが、都合よく襲ってくれるとは限らん訳じゃな。となれば、こっちから討って出るしかあるまいの」
 太猛は森に偵察に行った仲間達の情報を元に、森の小鬼達の根城を襲う案を仲間達に話した。
「でも〜、森には罠が仕掛けてあるかもしれないですよ〜?」
「小鬼が現れたのはつい最近という話じゃから、それほど心配せんでも良かろう。それに罠があれば小鬼を探しやすい」
 どちらかと言えば、問題は小鬼を発見出来ない時の方だ。森に詳しいレンジャーや探し物の名人である陽月系の術者が居れば心強い所だが、忍びが居るので森に入る不安はまだ少ない。
「被害の規模から見ても、そう手強い相手でははないじゃろ」
 小鬼の中に希に強力な個体が存在するが、村人の情報では相手が王や戦士級の小鬼の可能性は極めて低い。少なくともこの面子なら、戦闘に不利は無い筈だ。

(「戦えそうなのが6、子鬼が4か‥‥」)
 森を捜索した氷雨は赤樫の木の下で休んでいる小鬼の集団を発見した。数が多いので術で眠らせる考えは捨てる。近づく内に気付かれる恐れの方が大きいし、全員を眠らせるのは無理だ。
(「ここが巣とも思えんが、群れで移動しているのか‥‥」)
 仲間を呼びに戻ろうとした氷雨は、近づく足音に気付いて再び茂みの中に隠れた。小鬼達も物音に気づいたようだ。
「お、小鬼見つけたぜっ」
 嵐天丸は大木の側に小鬼の姿を見つけて、走った。
『ギャギャッ』
 手斧を振りかざした小鬼が接近する嵐天丸を威嚇する。
「ほいっと」
 まだ六間は離れた位置から嵐天丸は刀を振るった。衝撃波が小鬼を斬り、鬼は驚愕の表情を浮かべる。
「余裕っ」
(「俺一人でも殲滅できそうだ」)
 嵐天丸は刀を構えた。重傷を負った小鬼は手斧を捨てて背中を見せた。
「チッ‥‥」
 茂みから様子を見ていた氷雨は舌打ちした。小鬼達は一斉に逃げ出した。追えない事も無いが、疾走の術のかかった自分を緋邑に曝したくない。氷雨は小鬼を追いかけて嵐天丸が去った後に姿を現した。
「‥‥依頼終了か」

 偵察の三人は先に高村が戻り、そのあと氷雨と、暫く経ってから緋邑も戻った。嵐天丸は小鬼を二匹斬ったが、残りは逃げられた。
「とすると、もう森には居ない訳ですか」
 森に入る準備をしていたルーラスは肩の力を抜く。一応は、村の平穏は守ったことには違いない。
「戦うまでもなく終わっちゃいましたね〜それなら、私は〜歌います〜♪」
 依頼は小鬼退治だから成功かと言えば微妙だが、桃は気にしない。得意の歌を村人に聴かせる時間が出来たことを素直に喜んだ。
「うーん、これで良いのでしょうか?」
 雨宮は釈然としない。しかし、今から逃げた小鬼達を探しても見つける事は困難だ。
「‥‥」
 これで良かったのかもと綺羅は思った。小鬼達は人里を襲った報いを受けて退いた。その一面で見れば、妥当な結末である。
「村長さんに報告して、江戸に戻ろう‥‥」
 冒険者達は仕事を終えて、帰還した。
 ギルドに報告に戻ると、手代が平身低頭で出迎える。どうやら本気で手配間違いだったらしい。