しんぷるけーす 牛鬼襲来

■ショートシナリオ


担当:松原祥一

対応レベル:13〜19lv

難易度:難しい

成功報酬:7 G 78 C

参加人数:10人

サポート参加人数:5人

冒険期間:02月08日〜02月14日

リプレイ公開日:2006年02月28日

●オープニング

 嵐の夜。
 和泉のとある漁村が怪物に襲われた。
 翌日、隣村に用事で出かけていた男が帰ってくると、村の建物は跡形も無く破壊され、引き裂かれ千切られた村人の無惨な死体があちこちに転がっていた。
 慟哭する男が京の役所に駆け込んで事態が発覚する。
 まるで嵐が村を殺害したような事件だが、陰陽寮の記録に該当する怪物の名前があった。
 「牛鬼」である。
 鬼の顔に巨大な蜘蛛のような胴体を持った怪物だ。
「これは‥‥大変だ」
 陰陽師が占った所、こたびの災難はまだ終わっていなかった。
 次の嵐の晩に隣の漁村も再び現れる牛鬼に壊滅させられるという卦が出た。だが牛鬼は並の武士や侍では歯が立たぬ怪物。未来が分かっても対応は容易ではない。
 すぐさま陰陽寮から冒険者ギルドに依頼が飛んだ。
 漁村に選りすぐりの冒険者を送り込み、牛鬼を撃退するようにと。
「伝え聞くところによれば、牛鬼は海の精霊であるとか。荒々しい海の化身と言われ、ひとたび姿を現した時には破壊の限りを尽くすと言います」
 海は様々な恩恵をもたらすが、時には牙を剥いて無情にも人の営みを破壊する。牛鬼はその破壊の一面の化身であるという。原型を止めぬほど破壊された村の惨状がそれを証明している。
「容易ならざる相手です。もし無理と思ったら、その時は躊躇わず逃げて下さい」
 死ぬ気で闘えば成果が上がる等と世迷言は言わない。
 困難な依頼である。

●今回の参加者

 ea0984 平島 仁風(34歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea2929 大隈 えれーな(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8545 ウィルマ・ハートマン(31歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 ea8802 パウル・ウォグリウス(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

流水 無紋(ea3918)/ キサラ・ブレンファード(ea5796)/ リリル・シージェニ(ea7119)/ アゴニー・ソレンス(eb0958)/ シャルロット・プラン(eb4219

●リプレイ本文

 嵐の夜に、牛鬼が来る。
 陰陽師のお告げに導かれ、ギルドの冒険者10名が漁村に急いだ。
 
「おい、村長の家はどこだ? 火急の用向きてぇのがある」
 漁村には魔法の靴を使って先行した平島仁風(ea0984)、大隈えれーな(ea2929)、パウル・ウォグリウス(ea8802)、楠木麻(ea8087)の四名が先に到着した。
 冒険者達は村人に村長の家まで案内して貰う。異国人と武士が物々しい武装をしてやってくるなど村にとっては初めての事で、冒険者らは好奇と恐れの入り混じった視線を感じた。
「ひっ‥‥な、ななんですってぇ!?」
 平島らは村長に単刀直入に話した。隣の漁村を壊滅させた牛鬼という化物が次の嵐の晩にこの村を襲い、壊滅させると予知が出た、自分達はそれを阻止する為に冒険者ギルドから来た者だと。
「驚かれるのも無理はありませんが、今は時間がありません。牛鬼が現れる前に、皆様にはこの村からどこか安全な場所に避難してもらえますか?」
 えれーなが言う。村の外で、村人が避難できる寺院などは無いかと聞く。
「村人全員‥‥そんな大変なことに何故‥‥誰がそんな酷いことを」
 すっかり気が動顛して口篭る村長に、仁風が言葉を浴びせた。
「すげぇ化物らしいんでな、俺達全員でもこの村が無事か分からねえ。病人や年寄りも全部、背負って運んでもらわなくちゃならねえがどうだ?」
「ほ、本当に牛鬼はこの村に来るのでございましょうか?」
 化物が出ると言って、狙いは火事場泥棒というのも無い話ではない。
「村長、俺達の言うことが信じられないか!」
 この四人は数々の異名を持つ世に知られた強者だが、この村のような閉鎖的な社会では通用しないようだ。誰か京都に明るく話の分かる人物を仲介にする手段も浮かぶが、回り道をする暇が彼らに与えられているか疑わしい。
「そういえば依頼は牛鬼退治であって、考えてみれば、この村がどうなろうと僕達には関わりの無いことだ」
「そんな寝覚めの悪い真似は御免だ。嫌というなら、力づくでも従ってもらう」
 麻とパウルが物騒な事を話すと家の外で聞き耳を立てていた村人が中に入ってきた。
「村長、気が狂った石蔵が言ってたのはこの事だ。化物がここにも来る‥‥逃げなきゃこの村の皆も石蔵のところと同じ運命だぞ」
 石蔵とは壊滅した隣村の男の名前らしい。惨劇の夜、この村に来ていて難を逃れた彼は村の惨状を見て、半狂乱で戻ってきて喚き散らし、その足で京のギルドまで駆け込んだようだ。
「全滅か‥‥まあ、そういう目も無くはない」
 冒険者の訪れる前から、この村には牛鬼が影を落していた訳だ。話を聞きつけた村人達が次々と集り、村長の家で喧々囂々の議論を始めた。
「こんな事で時間食ってる暇はねぇんだ」
「反対するなら邪魔ですから排除しますよ」
 四人は脅して村長と村人達に避難を認めさせてしまった。
「あと、私達が戦っている間、馬と猫を預かってもらえます?」
「海岸線に篝火を並べるから薪と、あと監視用に使える小屋を借りたい」
 冒険者達は村長に色々と注文をつける。村にとってはふって湧いた災難だ。

 後の6人が漁村に入った頃には、荷物を背負った村人たちが避難の準備を始めていた。
 志士が二人‥大宗院鳴(ea1569)と山王牙(ea1774)、弓騎士が同じく二人‥アイーダ・ノースフィールド(ea6264)とウィルマ・ハートマン(ea8545)、それに重装騎士デュランダル・アウローラ(ea8820)、最後にエルフのウィザード、ステラ・デュナミス(eb2099)。
 芝居役者か強盗団でなければ、怪物退治屋にしか見えないだろう。
 10人が揃い、半信半疑だった人々も牛鬼出現を事実かもしれないと思うようになった。
 恐ろしい災厄から逃れようと村人は急ぎ、彼らの村から離れた。

「一通り、海岸は調べといた。篝火の用意をするから手伝ってくれ」
 パウルと仁風が村人から調達した資材を皆に配り、海岸に篝火を設置する。
 村は、半円の海岸線に沿って約三十戸の小屋が立ち並んでいた。海岸を見渡せるやや高い場所に村長の家があり、先着の四人がこの家を見張り小屋兼詰め所に決めていた。
「皆さん、怯えていたようだけど?」
 支度を手伝いながら、ステラはどんな説得をしたのかという顔を向ける。ウィルマも手を止めた。
「ああ、まるで親の仇を見るように睨まれたなぁ。私には、あれがこの地方の風習かと思ったがね?」
「力づくで説得した」
 答えたのはパウル。眉を顰めたステラが何か言いかけるが、ウィルマが先に話した。
「なるほど、それは合理的なやり方だな」
「仕方ありませんわ。予知と言っても、信じて貰えるとは限りません‥‥」
 寂しそうに鳴が言う。彼女は説得が聞き入れて貰えない時には稲妻で威嚇しようと考えていた。冒険者達は予知を元にした強行軍でここまで来た。無茶は承知で是が非でも通す気でいる。
「これで予知が外れたら私達笑い者よね。いいえ、すごく怒られるわよ。‥‥もしかして大赤字? 依頼人は保障してくれるかしら」
 アイーダは自分の想像にげんなりして、大げさに溜息をついた。アイーダは日頃から金に細かい。彼女の言に依れば弓を使う冒険者は大体そういう風になるのだとか。真偽は不明だが、同じ弓使いのウィルマもそういえば経費には煩い。
「結果で示すしかないわね」
「そういう事ですね。神皇様の地で、これ以上の被害を出す訳には行かない」
 山王は言葉にする事で志士としての使命を肌で感じた。負ければ、志士の名折れにもなる。
 その日は深夜まで見張っていたが、少し風は強かったが牛鬼はやってこなかった。
 何事もなく朝を迎え、徹夜の疲れが眠気を誘った。ことに体力に劣るステラは辛そうだ。
「今夜も夜通しの警備になる。昼間は寝ておいた方がいいだろう」
 村人の居ない村で全員が一度寝る訳にも行かないので交代制で眠る事にした。起きている者は篝火の薪を調達したり、見回りを行う。昼過ぎに一度、数人の村人が様子を見に戻ってきた。昨晩牛鬼は来なかったというと、複雑な表情で避難所に帰っていく。

 見張り二日目の晩。
 10人には天候予知の技能も魔法も無かったので、いつ嵐が来るか検討がつかない。海を監視して一晩中の警戒態勢は疲労を蓄積させた。二交代で海岸線を巡回し、半分は村長宅で休むが待機中も気は抜けない。全員で戦わねば勝てぬ相手と思っていた。
 亥の刻を過ぎた辺りで、急に海から吹く風が強くなった。徐々に雨も降り始め、もしやと冒険者達の間に緊張が走る。風と雨は日付が変わる頃には暴風雨に変わった。
 二月の冬の雨である。体力を一気に奪われ、防寒着は重く動き辛くなる。まだ見ぬ牛鬼の圧迫に冒険者は震えた。
「この雨も、牛鬼が降らせているの‥‥?」
 水使いのステラにも嵐は等しく襲い掛かる。女エルフは挫けそうな体を抱き締めて、魔法で気力を上げた。
「いかん。このままでは篝火が、消えるっ‥‥」
 深夜になり、村長宅にいた牙は雨で弱まった篝火を心配して資材を手に取り、駆け出す。同じ班の仁風、鳴が続いた。
「わたくし達は待機してた方がいいのでは?」
「‥‥まぁな。しかしこの雨だぁ、牛鬼はすぐ近くまで来てるかもしれねぇ」
 雨風、それに暗闇で視界が酷く狭い。音も嵐にかき消されて、村長宅と海岸のわずかな距離が遠く感じた。村長宅にはステラ、麻、ウィルマ、デュランダルが残る。海岸はアイーダ、えれーな、パウルが巡回中だ。

「あれは!?」
 最初に発見したのはえれーなだ。目の良い彼女は交代時間を削って警戒していた。
 波の合間で何かが動いた気がした。だが忍者と言えど遠く暗闇の奥は見通せない。それは人間の限界を超える。しかし、逆に暗闇のヌシには篝火で照らされた海岸で蠢く人々は良く見えた。陸の篝火があたかも船幽霊の鬼火の如く、妖しを誘う。
 ヌシは一目で全てを諒解した事であろう。
 あそこに居るのは、己に挑む者達だと。

「どこだ?」
 えれーなの報せに、パウルとアイーダが集った。えれーなは海上に何か大きな影が見えたと話すが、今は何も見えない。
「見間違いじゃないの?」
「私が術を使う間に見えなくなったのですが‥‥恐らく、いいえ間違いなくあれが牛鬼」
「それなら、皆に知らせとく?」
 愛馬クランの手綱を握ったアイーダだが、波飛沫の音が少し違う。高速で海岸に接近した牛鬼の巨体が三人の間近に迫った。
「あぶねぇッ!?」
 パウルは女騎士を突き飛ばして牛鬼の突撃を正面から受け止めた。楯で受け流したつもりだったが吹き飛ばされ、牛鬼の巨大な爪を受けたペンタグラムシールドが二つに割れる。
「‥‥ちぃっ、化物が」
 グオォォォ。
 傷つきながらも立ち上がるパウルに、必殺の突撃を見舞った相手が不満の息を漏らす。篝火に照らされて、鬼の頭を持った異形、巨大蜘蛛の姿が闇に浮かび上がる。
「こっちです!」
 えれーなが牛鬼の眼前に無防備な姿を曝した。捨身の囮だが、分身の術と疾走の術をかけて回避力はあげてある。彼女に反応した牛鬼の爪の攻撃を躱し、噛み付かれた。
「きゃああああっ!」
 鬼の牙がえれーなの腹に食い込む。噛み付かれたまま、牛鬼が顔を上げたので彼女の体が宙に浮いた。視界の端に仲間達がこちらにやってくるのが見えた。
「私のことは‥‥構わず‥‥作戦通りに‥‥」
 えれーなを助けようとアイーダは梓弓で牛鬼の背中を狙った。的がでかく、至近距離故に目を瞑っても当たる。しかし‥‥。
 放った矢は悉く弾かれた。怪物にはカスリ傷程度、煩そうに身を捩ったが牛鬼はアイーダの方を見ようともしなかった。パウルもワイナーズ・ティールを叩きこむが普通の打撃では効きそうに無かった。
 えれーなは身を捩るが腹の傷が深く、思うように力が入らない。牛鬼は更に深く牙を食い込ませ、えれーなの口から赤い血が零れた。死を意識する。
(「‥迂闊でした。このままでは、私のせいで皆様が‥‥」)
 常人ならとうに気絶している所だが、強靭な精神力がえれーなの意識を繋ぎ止めている。

「この野郎、今すぐ大隈のネェちゃんを離しやがれ! でねぇとだるまにしてやるぜ!」
 両の手で十文字槍を握った仁風が牛鬼に突っ込む。気合いの一撃は牛鬼の足を突き刺すが、手応えが尋常ではない。そうとは見えないが鋼のようだ。
「早く助けないとっ」
 鳴は雷撃の詠唱を始めたが、どう撃ってもえれーなか他の仲間に当たる為に断念する。鳴は斬り込んでいきたい気持ちをぐっと抑えた。自分ではあの猛威の前に立てば足手まといにしかならない。
「私に任せて下さい」
 七支刀を抜いた山王が牛鬼の正面に立つ。牛鬼は新たな獲物に爪を振り下ろす。山王は盾と左腕を犠牲にして渾身の力で七支刀を叩きこんだ。精霊調伏の霊刀は牛鬼の魔力を打ち破り、肉を切り裂き深く突き立った。
 ガァァァ!!
 想像もしない傷を付けられて牛鬼が初めて怯む。その一瞬に、瀕死のえれーなは全てをかけて松明を鬼の眼に叩きこんだ。その攻撃自体は意味のないものだったが、驚いた牛鬼の口が開いてえれーなの体が落ちた。
 パウルが彼女を掴み、牛鬼から離れる。獲物を奪われた牛鬼は山王の追撃を避け、仁風を弾き飛ばして冒険者達と距離を取った。
「一端逃げるぞ!」
 えれーなを抱えたパウルが走り出した。牛鬼は山王の攻撃で深い傷を負ったが、同じ手が二度効くか分からない。となれば此方も人数を揃えて態勢を立て直す必要があった。
「はい! これでどうですっ」
 鳴は仲間達が離れた隙に、雷撃の呪文を完成させた。一直線に伸びた電光が牛鬼を貫くが、これも効果は殆ど無いようだ。牛鬼を倒すには対精霊武器か圧倒的な力が必要だ。
「あと少しだよ」
 撤退する味方を援護してアイーダが牽制の矢を放つ。合流すべき仲間達も此方に急いでいた。愛馬ディスティニーに乗るデュランダルの姿が見えた。
 しかし、その前に追いつかれそうになり、山王が振り返る。
「ここは私が食い止めます」
 再び七支刀を牛鬼に向ける山王。先刻その霊刀の威力を味わったばかりの牛鬼は一瞬怯んだ。そこに山王は斬撃を振り下ろす。牛鬼の口から僅かな呟きが洩れ、青い光が蜘蛛の体を包む。
「アイスコフィン!」
 仲間達に追いついたステラは、氷の棺に捕えられた山王を目撃する。
「‥‥すまん、急いだのだが」
 その後にデュランダルと麻が到着した。
「下がって下さい。まず私が」
 冒険者の人数が増えた事で立ち止まった牛鬼を凝視して、ステラが呪文を唱える。嵐の中という悪条件では成功率は高く無いが、運が味方して魔法が完成する。
 アイスブリザード。
 達人級の術者による特大の吹雪が牛鬼を襲った。この魔法は屈強の戦士団を壊滅させる程の威力を持つ。いかに怪物と言えど、無傷では済まない筈だ。
「‥‥まさか?」
 しかし、吹雪の後に平然と歩を進める牛鬼の姿を見つめてステラは震えた。
 魔法の無効化。
 高位精霊の中には属する精霊力による魔法が一切効かない者が存在するという。或いは絶対的な魔法防御力を持つのかもしれない。
「もう一度‥‥」
「いや。今度は、あっちから来るみたいです。援護を頼みます」
 牛鬼の突進を見て、麻が詠唱を開始した。普段は高速詠唱からの連射を得意とする麻だが、今回は一句ずつ丁寧に呪文を唱えた。威力を高めたグラビティキャノンが牛鬼の顔面に命中した。
「どうだー!」
 牛鬼は一瞬顔を顰めたが速力は殆ど緩めない。
「まさか地魔法まで無効化?」
 というよりこの怪物には威力不足なのだろう。先程から並の攻撃では全く歯が立たないでいる。牛鬼は正真正銘の怪物だ。転倒しそうにもない。
「ふん」
 冒険者に肉薄した牛鬼の側面にウィルマの矢が命中した。長射程の鉄弓により可能な遠距離攻撃だ。相手が魔法使いなら二発で大抵は無力化できる。しかし、鉄弓の攻撃も牛鬼にはカスリ傷だった。
 この怪物との戦いは冒険者達には不利だった。殆どの攻撃は牛鬼には効かず、しかも瀕死のえれーなを庇って戦うのだ。最後の抵抗で意識を失ったえれーなはポーションも飲ませられず、このままでは本当に死ぬ。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
 焦りもあってデュランダルの怒りが爆発、狂化した。防御を捨てた偃月刀の一撃が牛鬼を捉え、牛鬼の巨体が傾いだ。反撃の爪がディスティニーに当たり、人馬は転倒する。
「まだまだー!」
 髪を振り乱して起き上がったデュランダルから牛鬼は離れて、そのまま後退した。
「逃げる気か?」
 デュランダルは駆け出したが重武装の彼では追いつけない。一度えれーなの治療が必要な冒険者達は追撃を諦めて村長宅に戻った。再襲撃を警戒して寝ずの番を行ったが牛鬼は現れず、夜があけた。
 何とかえれーなも回復し、皆の傷も治療する。
 昼には村長が十人ぐらいの村人を連れてやってきたので、牛鬼を撃退した事を告げると非常に喜ばれた。そのまま冒険者達は追い立てられるように漁村を後にし、京へ帰還した。