山門異聞 僧殺し
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■ショートシナリオ
担当:松原祥一
対応レベル:17〜23lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 51 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:11月06日〜11月13日
リプレイ公開日:2006年11月20日
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●オープニング
比叡山延暦寺。
京都の北東にあるジャパン有数の霊山に神聖暦八百年頃、天台宗を伝えた伝教大師最澄が延暦寺を建立。
爾来、天台宗の総本山として、京の鬼門を守る王城鎮護の霊山として発展した延暦寺は、時の権力者ですら無視できない権威、影響力を持つに至る。
神聖暦一千一年十一月。
京都の政情不安を憂慮した延暦寺は、甲信の武田信玄に上洛を要請する。
源氏に連なる武田氏ならば摂政源徳家康の下で京都を守るに相応しく、また日頃より信仰に篤い信玄を頼りにしたのだ。
それまで静観していた延暦寺の行動は、京都の貴族達、雄藩諸侯を驚かせる。
源徳の上州征伐に参戦すると見られていた武田信玄は延暦寺のこの要請にどう応えるか‥‥。
そんな頃の話である。
延暦寺の修行僧が京都で何者かに殺された。
死んだ僧侶の名は光舜。27歳。僧正の使いで京都に来た帰りに襲われたらしい。下手人はすぐに判明した。
武田の話を聞いて延暦寺が源徳に与したと激怒した反源徳派の浪人者の犯行だった。
その浪人はすぐに捕えられ、処刑された。
背後関係は無く、単独の凶行と思われた。普通なら、そこで終わる話だ。
数日後、京都の冒険者ギルドに延暦寺の若い僧侶が訪れる。
「珍しい事もあるもの‥‥」
ギルドの手代は不思議に思った。
強大な軍事力と権威を持つ延暦寺は冒険者ギルドを頼る理由が無い。逆に寺院の治療などで冒険者の方がお世話になる事はあっても、延暦寺が無頼の徒を頼りにする事など滅多に無い話だ。
僧侶は光舜殺害事件のあらましを手代に語った。
「ほう、しかし話が見えませんな。事件は終わっているのでしょう?」
手代が言うと、僧侶は首を振った。
延暦寺が浪人の出身を調べたところ、元は大和の郷士、桑原某の係累と知れた。延暦寺は桑原某も浪人と同罪であるとした。
「うーむ」
手代は頷くしかない。無茶な話のようだが、この時代、権力者に逆らえば一族郎党皆殺しは珍しくない。ましてや僧殺し、しかも延暦寺。桑原某に力があればまだ立ち回りようもあろうが、地方郷士では望むべくも無いだろう。
大和領主の松永氏に桑原某を差し出すよう打診すると、延暦寺を恐れた松永は好きにしろという主旨の返答をしたらしい。延暦寺は桑原家に僧兵の一団を繰り出す気でいる。
「元主人とは言え、あまりに不憫。どうか桑原家の人々を助けて下さいませ」
依頼人の僧侶は、桑原家の皆殺しには反対したが位が低いため、相手にされなかった。そこでギルドを頼ったらしい。桑原家の者を僧兵達の手にかからぬように逃して欲しいという。
「なるほど」
有力諸侯に頼めば延暦寺の傷になるし、並の人間では延暦寺に対抗するなど不可能だ。冒険者は打って付けと言えるかもしれない。
「事情は良く分かりました。この依頼、お預かりしましょう」
大大名も動かす権力者が相手だ。この人選は慎重を期す。屈強な僧兵とも渡り合い、下手に騒ぎを大きくせず、事を収める人材が必要だ。
「しかし、難しい依頼です。はたして集るかどうか」
●リプレイ本文
比叡山から続く街道に、派手なマントをなびかせた金髪の青年がひとり立っていた。
「そろそろか‥‥」
見るともなく霊山を眺めていた青年の双眸に、徐々に近づいてくる物々しい一団の姿が写る。依頼人円黄に聞いた通りの出で立ち、延暦寺の僧兵達に間違いない。
「待っていたぞ。貴殿たちは延暦寺の方々とお見受けする」
道の真ん中を塞ぎ、青年は一団を止めた。その厚顔不遜の態度に僧兵達は訝しみつつ応える。
「何者だ? 延暦寺の者と知って何とする?」
「申し遅れたな。私はデュラン・ハイアットだ。貴殿達に少し話がある」
デュラン・ハイアット(ea0042)の名乗りに僧兵達は顔を見合わせた。
「奇妙な格好をしておる。冒険者というものであろうか」
「何者か知らぬが、我らは先を急いでおる。用件があれば後日お山に来るが良かろう」
淡々とした反応にデュランは嘆息する。
「ふん、山寺で修行漬けの貴殿らに名乗ったのが間違いか。然らば、順を追って説明しよう。
おっと、その前に一つ確認するが、貴殿たちはこれから光舜殿の敵討ちに行くのだな?」
デュランが光舜の名を出すと、僧兵達の顔色が変わる。僧殺しの一件は、世間に口外された話ではない。知る者は多くはない筈だ。
「‥‥貴様、何れの手の者だ?」
デュランは常と変わらぬ笑みを浮かべた。
「さっき名乗ったばかりだがな。このデュラン・ハイアット、天上天下に己以外の主人など持たんぞ」
その態度は堂に入ったもので、数十人の僧兵を前にしてさすがと言ってよかった。
一方その頃。
考古学者のゼルス・ウィンディ(ea1661)、志士の山王牙(ea1774)と御神楽澄華(ea6526)の三人は、依頼人の円黄を連れて京都を出ようとしていた。
「先を急ぎましょう。デュランさんが足止めをすると言ってますが、万が一、道中で姿を見られては台無しですからね」
そう言って山王は円黄に韋駄天の草履を渡した。
「これを履けば、並の馬よりも速く歩けますよ」
山王は別にあと一足を用意し、ゼルスも魔法の靴を準備。御神楽は愛馬の金剛に乗っていく。これなら4人は僧兵達より一日、上手く行けば二日早く大和の桑原家に着けるだろう。
「‥‥この人数で大丈夫なのでしょうか?」
円黄は不安を口にした。冒険者に頼んだのは彼だが、僅か6人で屈強な延暦寺の僧兵に対抗するのだから不安が無いと言えば嘘になる。
「僧兵については、幾つか策があります。詳しい事は道中相談する事になりますが‥‥」
ゼルスは円黄を安心させるように言った。
「少なくとも、私達が難を知らせれば桑原家の者達を逃す事は出来るでしょう」
とはいえ桑原家の状況は現地に行かねば分からない。何より時が重要だ。
「同僚を殺されたのに、その元主人を救いたいという円黄様の思い、必ず私達が叶えて見せます」
澄華はまだ不安顔の円黄を励ます。
「そういう事だ。物騒な事にはならぬようお仲間が考えている。もっとも、面倒になった所で私は墓守坊主如きに遅れを取る気は無いがな」
憎まれ口を叩くのは、女騎士ウィルマ・ハートマン(ea8545)。ウィルマと薬草師のステラ・デュナミス(eb2099)は大和まで強行軍の4人とは別行動を取る。
「遅れを取るとかじゃなくて、物騒な事になったら拙いんだけどね。私達は、道中で僧兵を足止めしてみるわ。どこまで出来るか分からないけど、延暦寺のやり方には納得出来ないし」
ステラの言葉に円黄は顔を伏せた。それを見てウィルマは嘲笑を浮かべる。
「ふん、今更悩むくらいなら依頼など出すな。まったく、面倒の多い仕事だな」
ステラ達と分かれた道中、ゼルスは円黄に唐橋良次郎の最期を聞いた。
「武士らしい最期と聞いています」
光黄によれば良次郎は光舜を殺害した後、酒場で酒を飲んでいた所を役人に捕まった。目撃者も居り、本人も犯行を認めた。だが延暦寺の僧殺しというので最初は黒幕の存在が疑われ、苛烈な取調べが行われたらしい。結局斬首を言い渡され、良次郎は穏やかに刑を請けたという。
「何か言い残される事はおありか?」
「忝いが、主家を退転し、天涯孤独の身ならば思い残す事もござらん」
斬首役は延暦寺の僧兵だったが一撃では首が落ちず、良次郎の首は五度目でようやく落ちた。
「‥‥」
話を聞いた澄華の顔に不快感が表れた。一撃で首を斬り落すには技量が必要だが、斬首役に彼女ほどの腕があれば、せめて苦しめる事は無かったろう。
「わざと苦しませたのかもしれませんね。しかし、そのくらいでは一介の浪人に僧侶を殺された延暦寺の怒りは収まらなかった‥‥」
ゼルスは推察する。さしずめ桑原家は、延暦寺が権威を守る為に探し出した生贄という所か。
「私自身は親源徳派ですが、延暦寺の動きはあまり面白いものではありませんね。無駄に争いや恨みを増やすような真似は」
「ええ。浪人の処罰は自業自得ですが、縁故なだけの桑原氏が皆殺しとは余りに惨い。この惨劇は必ず回避しなければ」
重々しく山王が言うと、円黄は彼の手を押し抱くようにした。
「その通りです。何卒、お力をお貸しください」
頷いて山王は円黄に聞いた。桑原家が謝罪して一命を取り留める方策は無いものかと。
「例えば、桑原家の人々が髪を剃り、出家の意思を篭めて、丁重に僧兵を迎える意思を見せたらどうです?」
円黄は躊躇いがちに首を振った。僧兵達は意に介さないだろう。逆に、桑原家が僧侶殺しの罪を認めたと思われる恐れすらある。
「方法は無いのか?」
手段を選ばなければ、無い事も無い。例えば権力者を恃む事だ。京都の実質的な最高権力者は関白藤豊秀吉。この秀吉に縁故があるなら三千両も積んで仲裁を頼めば、取り成してくれるかもしれない。延暦寺とて血を好む悪鬼では無いから、惨劇よりも金で新しい寺を建てた方が良いに違いない。
「そのような力、桑原家の方々にあるはずが無い‥‥」
冒険者達は和解を諦め、円黄に救出作戦のあらましを語った。あまりに簡単な手だったので円黄はまた心配したが、既に京を出発している。こうなれば下駄を冒険者達に預けるしかない。
先行する4人に遅れること一日、ステラとウィルマも大和に入った。
「で、問題の足止め策だけど、どうしたものかしら?」
ステラが言う。デュランの策が功を奏したのか、これまで二人は僧兵達に出会う事も無く、風聞も聞こえない。どうやら彼らの方が先行していると思って良さそうだ。
「焦ることは無い。‥‥のったり行けばいいさ。どうせ仕事は最後まで無いんだから」
「最後どころか永久に御免よ」
むきになるステラに、ウィルマはくすくすと笑う。
「高望みはしない主義だ。最悪の覚悟はあるのだろう?」
「私は嫌。青臭いって言うかもしれないけど、最後は戦うだけなんて血生臭い世の中は納得できないわ」
真剣な顔でそう言ったステラに、ウィルマは一瞬驚いた表情を向ける。
「まさかな。曾祖母ほどの歳の女をつかまえて、青臭いとは言わんよ」
「失礼ね。まだ80よ」
ステラはエルフだ。ツボにはまったのかウィルマは暫く笑っていた。
二人は足止め工作を開始する。京都から桑原氏の居る村へ至る街道沿い、僧兵が立ち寄りそうな宿場で二人は噂を流した。
曰く、
「桑原家の人たちは延暦寺の断罪があるかもしれないと恐れて逃げたそうだ」
だの、
「伊勢の方に向う街道で人目を忍ぶ格好をした旅人を見かけた」
など、情報を撹乱すると共に僧兵達に村へ行っても無駄足と思わせる内容だ。僧侶殺しは旅人の興味をそそるには十分な話だったから、噂は瞬く間に広がった。街道の噂は風より速い。程なく僧兵達の耳にも入るだろう。
先行した4人は強行軍で二日目の朝には村へ辿り着いた。御神楽は愛馬を村の外に繋ぐ。
「暫くここで待っているのですよ」
馬が心配だったが、戦闘馬を村に入れて、目立つと後で支障が出る。4人はその足で桑原家を訪ねた。
「何用ですかな?」
現れたのは中年の武士。名前を桑原利康といい、現在の桑原家の主人である。
黒子頭巾で顔を隠したゼルスが前に出る。
「水月と申します。顔を隠して失礼とは思いますが、この下は先の乱にて負った傷にて醜く変わり果てております故、どうかお許しいただきたく思います」
偽名である。
「実は」
ゼルス改め水月は利康に事情を全て話した。
「‥‥あの良次郎が。信じられぬ‥‥何かの間違いでは」
「ご尤もです。しかし、明日になれば延暦寺の僧兵がこの村に入ります。貴方がたを皆殺しにする為に」
利康は冒険者の言葉を怪しんだ。無理も無い話で、信じる方がおかしい。
ここからが正念場だ。説得出来なければ、何の為に来たのか分からない。
「それでは我々の依頼人の話を聞いて頂きたい」
山王が円黄に説得を頼む。
「円黄さんは、延暦寺の修行僧です」
山王に促されて円黄が前に出る。震える声で彼は経緯を話し、もはや僧兵達を止める手立てが無い事から逃げて欲しいと懇願した。利康は良次郎の事や延暦寺の事を幾つか円黄に尋ねたが、円黄の答えに不審な所はなく、利康は低く唸り声をあげた。
「当事者の話ならば、信用頂けよう」
さらに山王は利康に逃亡資金として五十両を渡した。
「しかし、逃げれば罪を認めたも同じこと。私には良次郎が左様な凶行を行ったとは思えない。また罪がまことであったなら元主人として罰を受けるも已む無きこと。されば僧兵達を迎えて同行を願い、京都にて申し開きをしたく存じます」
武士らしい潔い決断に澄華は心動かされたが、山王とゼルスは反対した。
「ここで死んではいけません」
「立派な心がけですが、果たして彼らに通じますでしょうか」
ゼルスは怒りに震えつつ、説得した。
「彼らは今までの乱の時も静観を決めこみ、自分達の手は汚さなかった卑怯者。それが今度は、弱った相手に止めをさそうとする。これが仏に仕える身のやる事でしょうか? できるなら、私も今すぐにでも彼らに一矢報いたい。しかし、今は耐えねばなりません。正義を貫くには力を蓄えることも必要です」
ゼルスと山王、円黄で半日がかりで説得し、利康はやっと逃げる事に応じた。
さて、話を比叡山の僧兵達に戻そう。
僧殺しを知る冒険者、デュラン・ハイアットに行く手を阻まれた彼らは、ともあれこの不審な若者を確かめずにはいられなかった。街道では人目を憚ると、近くの雑木林に場所を移動する。
「貴殿、何処で光舜の事を知ったのだ?」
「何処と言われてもな、冒険者という稼業柄、情報は色々と流れてくる。特に血生臭い事件、それが比叡山の事となれば尚更だ」
嘘では無い。デュランは危険を感じていた。もしもの時は騒ぎを起こしてでも逃げねば、二度と日の目は拝めぬだろう。
「光舜殿にはちょっとした恩があってね。どうか私も同行させて欲しい」
その時、何事か呟くのを聞いてデュランは振り返った。背後に居た僧兵の体が黒い光に包まれている。
「各々、曲者じゃ。‥‥この者、嘘を付いておるぞ!」
僧侶は人の心を読む。比喩でなく、黒僧に伝わる魔法にその技はある。即座に武器を構え、印を結ぶ僧兵達。
「ちぃッ」
四方からデュランめがけて数mも腕が伸びて来た。これも黒僧の技、長槍を拳で越す戦闘魔法だ。
「違う、誤解だ!」
言い訳しつつデュランは掴みかかってきた僧兵の腕を紙一重で躱す。ウィザードながらデュランの体術は戦士並だ。更に振り向きざまにストームを放った。背後に居た数人の僧兵が暴風で飛ばされる。
「手向かうか! さてはおぬし、死んだ浪人の仲間っ」
仲間達の思惑を超えて、事態は秒刻みで悪化する。
前後から白と黒の聖なる光が放たれて罪人を撃つ。四方から鞭のように迫る腕もいつまでも避けきれるものではない。
「くっ」
デュランは攻撃を必死に避けながら、懐からスクロールを取り出し広げる。魔力を注がれた巻物の上に精霊碑文が浮かび上がった。
音もなく、デュランと僧兵達を暗闇が包み込む。
「逃げる気か!?」
デュランは闇の中で音に神経を集中した。羽ばたきが聞こえる。恐らくミミクリーを使っていた僧兵達が大鳥に変じたものか。さすがに僧兵達は自身も光と闇を使うからか突然の暗闇にも対応が早い。
万策尽きた。ストリュームフィールドをかけ、音から手薄と判断した方向より突破を図る。頑張ったが、圧倒的な戦力差は如何ともし難い。徐々に追い詰められ、呪縛されてデュランは僧兵達に拘束された。
そして大和では、デュランが捕まった事は知らない冒険者達が桑原家の人々を逃がす算段をしていた。
ただ逃げたのではすぐ追手がかかる。冒険者達は桑原家が盗賊に襲われた事にするシナリオを用意していたのだが‥‥。
「屋敷に火をかけられて一族全員焼死ですよ」
「いや、逃げる為に街道を進んだ所を野盗に襲われて皆殺しだろう」
「賊に押し入られて全員連れ去られた事に」
三人の冒険者はそれぞれ違う方法を考えていた。思案するうちに、近くの村人が桑原家に駆け込んできた。
「桑原さん、た、大変だ。今、そこで旅人に聞いたんだが、延暦寺の僧兵が村に来るって話だ! 奴ら、村人皆殺しにする気だそうじゃ」
ステラ達の流した噂は村まで届いた。事態は急を要した。
「この村の武士は桑原さん所だけじゃ。何とかしてくれぇ」
「‥‥心配要らぬ。延暦寺の目当ては私達だけだ。皆には、危害は無い」
噂を聞いて村人達が次々と桑原家を訪れる。
冒険者達は利康とその家族に今すぐ逃げるよう話したが、利康は覚悟を決めた様子だ。この状態で逃げれば村人に利康達を逃した嫌疑がかけられるだろう。
「そんな‥‥」
冒険者達の策はあちこちで破れた。その夜には騒ぎを聞いて領主の使いも村にやってきた。利康は旧知の仲である領主の使者を穏やかに迎え、死す覚悟を話した。
「すまぬ。わしも殿にお主を救ってくれるようお願いしたのじゃが」
「何の。我らの不始末で松永様には迷惑をかけてしまった。頼めるなら、私の代わりに松永様にお詫びを」
翌早朝、桑原利康は腹を切った。
その死に痛く感じた円黄は家族にまで累が及ぶのを恐れて、自分が僧兵達を説得すると言った。冒険者達は村の外で隠れて僧兵達の到着を待ったが、代わりにやってきたのは冒険者ギルドの使いである。
「何で此処に?」
「実はですな‥‥」
デュランを捕えた僧兵達は冒険者ギルドに事の説明を求めた。如何に延暦寺といえど、冒険者ギルドが依頼内容を他に漏らす事は無い。が、事が事だけに大和へ使いを送る。
「ふーむ」
冒険者から話を聞いた手代は円黄にも会い、そこでこの依頼は終了となった。
遅れて到着した僧兵達に円黄が何もかも話すと、僧兵達は驚いたが利康の亡骸を確認すると納得し、円黄に縄を打ちすぐ村を去った。
その後裏で何があったのか不明だが、デュランは解放される。
「残念な結果ですが、こんな事もありますよ。仕方ありませんな」
冒険者達は手代と一緒に京都に戻った。