シンプルケース5 山道の配達

■ショートシナリオ


担当:松原祥一

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 97 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月19日〜07月29日

リプレイ公開日:2004年07月26日

●オープニング

 依頼内容は手紙の配達。
 キャメロットに住む商人からの依頼で、手紙は離れて暮らす彼の兄にあてたものだ。
 商人の兄は樵で、人里離れた山小屋に家族と暮らしている。他に民家は無い所なので連絡を取るのは大変で、これまでも必要な時には何度か冒険者に配達を頼んでいた。
 配達するのは文字通りの手紙と、山暮らしをする親族を気遣っての雑貨類などの仕送りだ。
 一抱えほどの量だから、馬に積んでいくのがよいだろう。
「楽な依頼で申し訳ないが、これも冒険者の仕事のうちだ。よろしく頼むよ」
 手紙を配達するだけの簡単な依頼には違いない。
 キャメロットから樵の山小屋まで片道5日、往復10日の小旅行。
 しかし、人里離れた山道は、モンスターの巣窟でもある。そこでは様々なオーガ種や野生動物、クリーチャーや彷徨い歩くアンデット等に出くわす危険と、常に隣り合わせだ。
 件の山道も、時々旅人がモンスターに襲われるらしい。
 運が悪ければ冒険者達も、何かに出くわすかもしれない。

●今回の参加者

 ea0403 風霧 健武(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0418 クリフ・バーンスレイ(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea0714 クオン・レイウイング(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0823 シェラン・ギリアム(29歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1024 曹 天天(23歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1314 シスイ・レイヤード(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea1333 セルフィー・リュシフール(26歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1757 アルメリア・バルディア(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)
 ea2253 黄 安成(34歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 ea4844 ジーン・グレイ(57歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文


●勉強会
「誰からだ?」
 神聖騎士のジーン・グレイ(ea4844)は年長者らしく、円座の顔ぶれを見回して聞いた。
「では私からにさせて貰おうかの」
 袈裟を着た黄安成(ea2253)が言って、手元に目を落とした。隣にいた武道家の曹天天(ea1024)が覗き込む。手の中に羊皮紙の切れ端が見えた。
「それ、あんちょこネ?」
「貧道の身じゃからの、図書館で少しな」
 安成は書物の読解は得意ではない、難儀した割に成果は薄かった。
「今度ご一緒しましょうか? 僕もまだ専門書は読めないですけど」
 ウィザードのクリフ・バーンスレイ(ea0418)は笑みを浮かべて言った。
「あ、みんなで行くならあたしも誘ってね。もちろん、お弁当持参でよ」
 セルフィー・リュシフール(ea1333)は身を乗り出す。少女は料理の話題が好きだ。実物があればなお良い。
「食べ物の話をしてたのだったか?」
 忍者の風霧健武(ea0403)は脱線を止める。
「そうじゃな。始めるかの‥‥」
 冒険者達は山道を行く前、彼らの持つ知識を元に怪物が現れた時の心構え等を話した。
 安成はアンデッドについて、ジーンは毒草とオーガ、シェラン・ギリアム(ea0823)はドラゴンと精霊のこと、クリフはそれらを含めた全般について。彼らの知識はどれもまだ素人知識の域を出なかったが、やがて成長した時には、それが真の勉強だったと知る事だろう。
 今は三流詩人の詠う怪物話と代り映えはしなくともだ。

●山へと続く道
「離れて暮らす樵の兄に仕送りを送る商人の弟‥‥ちょっといい話しネ。こういうの嫌いじゃないのヨ」
 歩きながら、嬉しげに話す天天。
「お兄さんも、きっと良い人なのでしょうね」
 並んで歩くアルメリア・バルディア(ea1757)は遅れないよう足を速めた。彼女は体力の無さを気にしていた。今回はウィザードが彼女を含めて5人。休憩は小まめに取った。
「‥‥た方がいいネ」
「え?」
 歩くのに集中して会話が飛んだ。聞き返すアルメリアに、天天は顔を近づけて言う。
「だから今回、男だらけヨ。気をつけた方がいいネ」
「はぁ」
 気をつけるといえば‥‥余談になるが最近キャメロットは変態が多いという噂だ。‥‥根も葉もない噂であって欲しいものだが、冒険者の中にも混じっているとも言われている。
「セルフィーも気をつけるヨ。ロリコンは恐いネ」
 15歳のウィザードの心配をする天天。自分の事は気にしていないらしいが。
「‥‥曹様、何か?」
 何故か視線を感じるシェラン。
「何でも無いネ」
 横を向く天天。
「‥‥そう、連中は‥‥どこにでも。山は‥‥人込みよりは‥‥マシだな」
 シスイ・レイヤード(ea1314)が呟く。彼は数日前に筋肉男達の饗宴を体験したばかりである。

「大人しい馬だな」
 先頭を行く風霧は、馬の手綱を牽くジーンに話しかけた。
「ああ、よく言う事を聞いてくれる。だが臆病でな、戦場には連れていけんのだ」
 戦場を縦横に駆け巡る戦闘馬は騎士の夢、だが高価なので持っている者は少ない。
「あのじゃじゃ馬娘もこれくらい大人しければ、苦労も減るのだが‥‥」
「‥‥一体、何の話をしとる」
「あ、いや‥‥その」
 無意識に呟いていた、忍者は動揺する。
「後ろの長閑な会話に当てられたか」
 常ならば賊や怪物が徘徊する山道、冒険者一行はゴブリンの影さえ見なかった。となれば風が心地好い7月、ピクニック気分も仕方がないか。
「だが依頼の途中だ。気を抜き過ぎるなよ」

●野営にて
 陽が傾き、冒険者達は手頃な場所を見つけ、野営の準備を始めた。
「メインディッシュを獲ってくる、用意は頼むぜ」
 レンジャーのクオン・レイウイング(ea0714)は弓を掴んで出ていく。助手としてクリフが同行した。二人は足りない食糧を補充するための調達係だ。
「分け合えば何とかなるヨ。無理しなくてもいいと思うけど‥」
 調理担当の天天は不安を口にする。
「かもしれないが、腹をすかせたセルフィーを放っておく訳にもいかないよ」
 食いしん坊のセルフィーは成長期。少女は人一倍食うので、クオン達の任務は責任重大だ。だが結果は‥‥獲れる時もあれば零の日もあり、セルフィーの機嫌は山の天気のように変わった。
「レイウイング様、火の準備が出来ましたよ」
 料理はクオンと天天が共同で行う。火はシェランが魔法で作った。クリエイトファイヤーは魔法の便利さを身近に感じさせてくれる。一家に一台欲しいものだ。
「魔法は、便利なだけではありませんから‥」
 流血を嫌うシェランも攻撃魔法を覚えている。物腰柔らかなウィザードの顔に焚火の炎が影を作った。
「ところで見張りの事ですが、僕が予定表を作って見ました」
 食事の後で、クリフは皆を集めた。事前に話し合い、二人ずつの五直交代に決められていた。最初がシュランと天天、以後ジーンとアルメリア、クリフと健武、安成とセルフィーと続いて、最後はクオンとシスイ。
「見張りの人には火の番もお願いします」
 冒険者は各々持ってきた毛布や寝袋に包まって眠る。シスイは2人用のテントを持ってきていたが、これは体力の無いアルメリアとセルフィーが使った。シスイも体力は無いが女性が優先され、代わりに焚火の近くで彼は眠った。7月と言え、イギリスの夜は寒い。

 夜明けにちょっとした事件があった。
 ジーンが荷物を馬に積もうとするのを、血相を変えてシスイが止めた。
「あ、あぶないですよ。‥‥下がってください」
「なんだ?」
 見当がつかずジーンが荷物から離れると、シスイは騎士の前に立って懐からダガーを取り出した。何をするのかと仲間達が見守る中で、彼は短刀を荷物に向って投げた。
 バシュッ!
 一瞬、短刀が輝いて火花が散る。
「‥‥見張りの時‥‥モンスターが近付くのを防ぐのに‥‥隙を見て、荷物の周りに罠を仕掛けておきました」
 ライトニングトラップ。この魔法は覚えたてでも威力が大きい。ジーンでも下手をすれば重傷、普段着のセルフィーなら最悪、命に関わる。
「スキを見て荷物に? 危うく黒こげになる所だ!」
 大事にはならなかったがシスイはその日は一日、ジーンの説教を受けた。

●遭遇
 昼間は健武が依頼人から聞いた道順を確かめながら進み、夜はシェランが星の位置から現在位置を確かめた。それが正確かは街道では無いので確かめようが無いが、概ねは合っているだろうと思って進んだ。

「何か、来る」
 道の確認と索敵を兼ねて日に何度か斥候に出た健武は、遠くに人影らしきを発見した。旅人や狩人か、それともオーガか山賊か。確かめようと彼は木陰にじっと姿を隠して待った。
「4、5人で弓を持っていた。おそらく土地の狩人だろう」
 戻って仲間達に見てきた事を話す。
「山賊かも」
 クリフは疑念を口にした。遠目に山賊と狩人の見分けはつかない。
「可能な限り、面倒は避けたいのう。やり過ごすか?」
 慎重派の安成が言うと、ジーンがそれに賛成した。
「ですがその人達が狩人なら、現在地の確認ができます」
 シェランの言葉に健武は頷く。忍者も同じ事を考えていた。
「クリフ‥‥もう少しやる気を見せたらどうだ?」
「心外な事を言いますね」
 結局、冒険者達はやり過ごすことはせず接触を選んだ。仮に山賊だったとしても、人数はこちらが多いのだから、交渉も可能だろうと判断した。

「いや、樵の山小屋ならこっちじゃない。山一つ向こうだよ」
 土地の狩人達は冒険者達に快く道を教えてくれた。彼らとその仲間達はこの数日大猟で、とても機嫌が良かった。冒険者達の食糧が乏しいと知ると、少しだけ獲物を分けてくれた。
 無事に方向を修正した冒険者達は何とか山小屋へ到着する。
「宅配便でございます。何か御用はございませんか?」
 木の扉を開けて出てきた髭面の主人に、アルメリアは上品に挨拶した。
「弟から?」
「そうヨ。これがお届け物ネ。私達仕事キッチリがモットー、受け取りの代わりに弟さんに手紙書いてほしいヨ」
 天天は羊皮紙を差し出した。
「‥‥ああ、今すぐ書くよ。それまで中で休んではどうかな」

 冒険者達は無事に手紙を届け、キャメロットへと帰った。
 復路も幸運が続いたのか、それともあの狩人達が代わりにやっつけてしまったのか、一度もモンスターに遭うことは無かった。