テロリストの黒き旗〜番外編の春節祝い
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■ショートシナリオ
担当:内藤明亜
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:9人
サポート参加人数:1人
冒険期間:02月10日〜02月15日
リプレイ公開日:2008年02月19日
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●オープニング
2月はもっとも寒さが厳しい。しかしここ、西ルーケイに住む元テロリスト達は寒さの中でも平和を謳歌していた。
西ルーケイに巣くい人々を苦しめた毒蛇団は討伐され、元テロリスト達と新ルーケイ伯爵との間に和解も成った。
かつて毒蛇団が支配した村は元テロリスト達の生活の場となり、彼らは畑を耕して種を巻き、家畜を育て、家々の手入れをし、暇な時には歌を歌ったり楽器を奏でたり。それは人間らしいのどかな暮らし。
「こういう生活も悪くはない」
と、寒空の下で薪を割りながら周和平(チョウ・ウーピン)が言った。彼は地球の中国出身。アトランティスに飛ばされて来たところをテロリストのシャミラに拾われて彼女の部下となり、悪王エーガン打倒のためゲリラ戦を戦って来た。しかしその戦いの日々も、今では過去のもの。
「俺は農民の出だ。こういう暮らしの方が性に合っている」
「だけど、刺激が欲しいよな。こんなのばっかりだと飽きてくるぜ」
と、口にするのはアレックス・フィルスマイヤー。こちらは地球のドイツ出身の若者だ。彼は山と積まれた薪の束の上に座り、細長く丸めた葉っぱを口にくわえ、地球から持ち込んだ百円ライターでそれに火を点けようとしていた。
カチッ‥‥カチッ‥‥。火が点かない。
「やべぇ、ついにガス欠かよ。地球人の放出品、どこかで買ってこねーとな」
ライターを放り投げ、アレックスは近くで焚かれていた焚き火の火で葉っぱに火を点け、煙草を吸うようにしてその煙を思いっきり肺に吸い込んだ。
途端にむせる。
「ゲ! ゲフッ!! ‥‥ひでぇ味だ、まるでキマらねぇ」
和平は手を休め、咎めるような目でアレックスを睨む。
「またそんな真似を」
「いいじゃないか、葉っぱくらい大目に見ろよ」
「どこからそんな葉っぱを拾ってきた?」
「近くの藪から取ってきたヤツさ。形がアレっぽいから試してみたんだけど、てんでダメだ」
すると彼らのリーダー、シャミラの声が飛んで来た。
「これが麻薬だったら即、縛り首だぞ」
シャミラはダーツを楽しむように、アイスチャクラの魔法を楽しんでいる。離れた杭を標的にして、氷の円盤を幾度も幾度も打ち付けている。
「煙草代わりの葉っぱくらいなら大目に見るが、そんな煙を吸うくらいなら新鮮な空気をたっぷり吸え。その方が体にいい」
「ロメル領のケシ畑はどうするのさ?」
訊ねたアレックスにシャミラは答える。
「あれはエーロン治療院預かりだ。これまで通り厳重な管理下に置かれる。春が来ればぐんぐん成長するが、植え替えを極端に嫌う植物だから、花が散って結実を迎えるまでは盗難の心配をすることはない」
毒蛇団がこの近辺を支配していた頃、テロリスト達も毒蛇団と手を組んで、麻薬の原料植物であるケシの栽培に協力していた。しかしその後に結ばれた冒険者達との協定により、彼らの育てたケシは麻酔薬の原料としてエーロン治療院に供されることになったのだ。
「ところで、合衆国軍兵士殿に冒険者達を招いての新年祝いの話はどうなった?」
和平が訊ねた。彼が言う合衆国軍兵士殿とはイラクでの戦闘中にアトランティスへ飛ばされて以来、シャミラ達を敵と見なして追跡を続けてきたゲリー・ブラウンのことである。
「和平が成った祝いにと何度か打診してみたが、向こうも色々と忙しいらしく、なかなか都合がつかない」
「そんな事言ってる間に、もう2月じゃないか」
と、アレックス。すると和平が言う。
「俺たち中国人にとっては、新年はこれからだ」
日本や欧米諸国とは異なり、中国では古来からの伝統に従って、太陰暦の1月1日に正月を祝う。中国では春節と呼ばれるおめでたい日だが、アトランティスの今年の暦では2月7日頃がこの日に当たる。
「シャミラさえよければ春節祝いということで、ゲリー達も招いて盛大にやるのもいい」
話していると、空を影が過ぎる。翼の生えた蛇のような影が2つ。うち1つは背中の腰のあたりに少女を乗せている。
「あれはナーガ娘とカーラじゃないか。竜人とは縁起がいい」
空を見上げて和平がつぶやく。伝統的に竜を尊ぶ中国人ならではの言葉。
空を飛んでやって来た3人は高度を下げて茂みの中に舞い降り、しばらくごそごそやっていたが、やがて着替えを終えて茂みの中から現れた。見かけだけは人間そっくりな女が2人に、浅黒い肌のほっそりした少女が1人。女2人は人間に変身したナーガ娘で。少女は地球のインド出身のカーラだ。いずれもシャミラの元同志達である。
「『怒れる者』に『憎む者』か。久しぶりだな」
シャミラはかつての呼び名でナーガ娘達に声をかける。すると、黒い髪のナーガ娘達がこう言った。
「これからは新しい名で呼べ。私の名はキリーナだ」
赤い髪のナーガ娘も言う。
「私の新しい名はヴァレリーだ。ここへは様子見に立ち寄った」
聞けば3人は、ロメル領で冒険者達が催した新年祭に飛び入り参加して、帰ってきたばかりだという。
「祭は楽しめたか?」
「散々だ。のっけから我々はカオスの手先扱いだ」
冒険者達は2人のナーガ娘を主賓扱いでもてなしたが、本来の主賓として王都からやって来たナーガの特使達3人は、彼女達を見るなりこう言ったのだ。
「カオスの手先の片棒を担ぐという馬鹿者どもはお前達か!?」
以前、ナーガの特使達は冒険者達から聞かされていたのだ。テロリストはカオスの手先で、ナーガ娘達もその仲間なのだと。その場は冒険者達の取りなしで穏便に治まったが、祭が終わった後で特使達から根ほり葉ほり問い詰められることかれこれ3時間。冒険者達が特使達をさっさと王都に連れ帰らなければ、そのまま3日間はぶっ続けで問い詰められていたかもしれない。
「おまけに占い師の薦めでタロット占いをやってみたら、魔物のカードを引いてしまった」
引いたカードは『死神』に『悪魔』。まったく縁起でもない。
「そういうわけで、新年祭で良かったことといえば、豚肉を腹一杯食えたこと。それに珍しい貢ぎ物をもらったことくらいだ」
不平がましくそんな事を口にするキリーナもヴァレリーも、共に色鮮やかな着物姿。カーラもゴシックロリータなドレス姿。衣装はみんな、冒険者からの貢ぎ物である。
「近々、ここでも祭をやろうと思う。我々の仲間達と冒険者達とで祝う春節の祭だ。おまえ達も来るか?」
シャミラが誘いをかけると、ヴァレリーがこう答えた。
「悪くはない。シャミラとは気が合うからな。だが、あの竜の子連れた三馬鹿は連れてくるな」
そしてキリーナも。
「あの特使どもとはまるで話にならん」
「では、そのように計らおう。次の祭では冒険者達と心置きなく話すがいい。私も彼らと話すべき事が色々ある」
せっかく冒険者達を祭に呼ぶのだから、ついでに重要な案件の話し合いもやってしまおうとシャミラは考えている。ロメル領の今後とケシの利用についての話もそうだが、それ以上にシャミラが重要視しているのが、今後に予想されるカオスとの戦いだ。
日々、勢いを増すカオス勢力に対し、シャミラの育て上げた地球人魔法部隊は強力な対抗手段となるだろう。なにしろ全員が魔法の使い手なのだから。
フオロ分国の東部では、悪代官フレーデンの討伐に向けた動きが活発化しており、場合によってはシャミラ達にも冒険者から参戦の求めがあるだろう。
今は長閑に暮らす元テロリスト達だが、再び戦いの場に赴く日は近いのかもれしない。
●リプレイ本文
●大河を西へ
とにかく冬の朝は寒い。
むちゃくちゃ寒い。
だが、その寒い中、熱気を撒き散らして進み行く川船が一隻。
「それ、漕げ! やれ、漕げ! それ、漕げ! やれ、漕げ!」
掛け声と共に、漕ぎ手の野郎どもはひっきりなしにオールを漕ぎ、川船は馬が走る程にも早く大河を西へ進む。
この川船はルーケイ水上兵団の高速船だ。ゴーレムならざる船だが、大河の交通手段としては重宝する。風を受ける帆の力とオールを漕ぐ人力とで進み、途中で漕ぎ手を丸ごと入れ替えて夜もなお進み行く。この船ならば王都から目指す西ルーケイまでは、1日半もあれば十分。
船には冒険者達が乗っていた。王都で仕入れた数々の食材と共に。
「チーズにソーセージ、取れ立てのタラにニシン、それにカキもどっさりですか。酒はエール酒とワインの大樽で。これだけ揃うと豪勢なものです」
と、船に山と積まれた食材にチェックを入れつつ、信者福袋(eb4064)は感心している。
「そりゃ、新ルーケイ伯殿が直々にお越しになる宴会だ。ルーケイ水上兵団としても、ここぞとばかり奮発させてもらったってぇわけさ」
と、付き添う水上兵団の男が言う。今でこそ新ルーケイ伯の傘下に収まっているルーケイ水上兵団も、元はといえば大河を縄張りとして流通を取り仕切ってきた河賊。大河を利用しての物資調達はお手の物というわけだ。
「私も生憎と新年会に参加できなかったので、この時期の春節祝いとはありがたいですねぇ」
「おう、存分に楽しんでくれよ冒険者殿」
今回の春節祝いには、セオドラフ・ラングルス(eb4139)が自腹切って20G出して、アレクシアス・フェザント(ea1565)も10G出して、トルク王家とフオロ王家からも幾ばくかの金が出て、ルーケイ水上兵団も出血大サービス。それで、かくも豪勢な仕入れとなった。
しかも現地家臣の一人としてルーケイ水上兵団を束ねるリリーン・ミスカも、船に乗り合わせている。アレクシアスが自ら招いたのだ。婚約して間もないアレクシアスとリリーンだが、リリーンの育ての母とも言うべきルーケイ水上兵団の重鎮ムルーガ・ミスカも2人を祝福し、西ルーケイに向かう船の中でも至れり尽くせりのもてなしぶり。王都を発ったその日の夜も、船内で盛大な祝宴が催され、皆で大いに盛り上がったものだ。
あまりにも盛り上がり過ぎて、西ルーケイでの春節祝いに飽きがきては困るからと、船での祝宴は程々に切り上げ、大河の波に揺られて眠りについた次の朝。
夜も明けぬうちから、船の甲板にはアレクシアスとリリーンの姿がある。
後から目覚めたシフールの2人、ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)とディアッカ・ディアボロス(ea5597)がやって来て、ユラヴィカの方から声をかけた。
「おや、これはまたお早いのう」
「昨夜の宴の興奮もあってか、直ぐに目覚めてしまってな」
と、アレクシアスは言うが、それは他の者達にしても同じこと。ことにユラヴィカとディアッカは宴の盛り上げ役として、歌い続け踊り続けていたのだし。
だけど、屈託のないユラヴィカに対し、ディアッカはどこか本調子でない感じがして。
「おぬし、何をぎくしゃくしておるのじゃ」
その様子に気付いたユラヴィカが背中を押し、ディアッカはアレクシアスの前に押し出されてしまった。
「あ‥‥アレクシアス様とは久々というか‥‥全然お役に立てていなくて申し訳なく‥‥」
しおしおと謝るディアッカを見て、アレクシアスが何か言おうとしたが、リリーンに先を越されてしまった。
「何をそんなしおしおしている? シフールにそんな湿った顔は似合わない」
先を越されて一瞬戸惑うアレクシアスだが、とりあえず思いついた言葉をそのまま口に出す。
「俺も‥‥リリーンの言う通りだと思う」
すると、リリーンがまた言った。
「落ち込んでいるなら、私がアレクと一緒に慰めてやってもいい」
「あ‥‥」
アレクシアス、言葉に詰まる。その様子を見て、リリーンはぺこりと頭を下げ、
「失礼をば、閣下。昨日の宴でしこたま飲んだ祝い酒の酔いが、まだ抜けきってはいないようで」
「いや、俺の方も起きたばかりで、眠気が完全に抜けきっていないようだ」
リリーンがくすっと笑う。
「昨晩はお互い、なかなか寝付けませんでしたもの」
まあ昨晩は宴が終わった後も、まあ色々と‥‥。
「あの、よろしければ眠気覚ましに‥‥」
と、ディアッカが2人に葉巻と紙巻タバコを示す。
「リリーンはどっちがいい?」
「大きい方を」
リリーンは葉巻を選ぶ。アレックスは紙巻タバコを手に取り、火を点けて紫煙をくゆらせていると、リリーンが葉巻の先っちょをタバコの火に近づけてきた。
「天界の流儀では、こういう風にやるのだったな?」
「ん‥‥?」
一瞬、その動作の意味が分からずキョトンとしていたアレクシアスだったが、やがて自分の為すべき事を悟り、リリーンの葉巻に火が点くまでじっと待つ。
そしてリリーンは葉巻の煙を大きく吸い込み、思いっきりむせた。
「げ! げふっ!」
呆れたような驚いたような周りの視線に気付くと、ちょっと恥じ入るような表情を見せ、今度はゆっくりと吸い直して一言。
「強烈だが、悪くはない。アレクも試すか?」
言われるままにアレクシアスはリリーンから葉巻を受け取り、口にくわえる。これって間接キッス? ‥‥ま、いいか。
そしてリリーンはユラヴィカから2本の紙巻タバコを受け取り、アレクシアスの葉巻を使って火を点けると、2人して並び合って再び紫煙をくゆらせる。
こんな光景、滅多にお目にかかれないかもしれない。
「お‥‥! 朝じゃ!」
朝がやって来た。空が虹色に染まるアトランティスの朝が。降り注ぐ七色の光りを受けて、ユラヴィカが感嘆の声を上げる。
「あ‥‥あれを!」
大河の川面に何かの姿が見える。それにディアッカが気づき、指さした。
それは水面から首をもたげた大蛇のように見えた。だが、船が近づくにつれ、水面に隠れた手足も見えるようになった。
「あれは、ウォータードラゴン」
リリーンが呟く。ウォータードラゴンは蛇のような外観をしたドラゴンで、長い胴体には鉤爪と水掻きのついた手足を生やしている。大海や大きな湖に棲息するが、大河でも時おりその姿を見掛けることがある。水域の守護者として恐れられ、かつ崇められるドラゴンだ。
そして大河に暮らす者達の間では、七色の光が降り注ぐ朝にウォータードラゴンの姿を目にすることは、吉兆だという言い伝えがある。
やがてウォータードラゴンの姿は船から遠ざかっていった。
「竜のご加護を」
リリーンは頭を垂れて胸に手を合わせ、ドラゴンに向かって頭を垂れた。それが竜と精霊を崇めるアトランティス人の習わしなのだ。他の者も感じ入るところがあり、リリーンと同じく胸に手を合わせ、それぞれの信じるものに祈りを捧げた。
●贈り物
一行を乗せた川船は、西ルーケイの船着場に到着。そこからシャミラの村までは、さほど遠くはない。
船着場からシャミラの村までは、平坦な平野が広がっている。そこはかつての毒蛇団平定戦において、数多のフロートチャリオットが進撃した戦場。しかし今、かつての戦場は平穏の中にある。船着場から村までの短い道中、王都を発つ際に冒険者仲間から聞かされた言葉が皆の胸中に甦る。
「最前線に居た兵士とかは、武装テロ組織のアルタイルを異常に敵視してもしゃあねぇわな」
と、その冒険者仲間は、アルタイルの一員であったシャミラに対してゲリーが未だに抱いているわだかまりについて触れた。アメリカのイラクでの兵士の確執は、かくも拭い去り難い。テロリストに仲間を殺された身であれば、尚更のこと。最後に彼はこうも言った。
「だけど、ここでは地球と違って言葉が通じるし、話せば互いの誤解は少なくなるさ」
村ではシャミラが村人達と共に待っていた。2人のナーガ娘とカーラも一緒だ。
冒険者達が一通り挨拶を終えたその後で、シャリーア・フォルテライズ(eb4248)は2人のナーガ娘に謝罪した。
「キリーナ殿、そしてヴァレリー殿。我々がナーガの特使殿らに要らぬ先入感を植えつけてしまった事を、深くお詫びする」
「何を今更‥‥」
「そんな話を今頃になって持ち出すのか」
2人のナーガ娘、キリーナもヴァレリーもずけずけと物を言う。しかし2人はすぐに、山と運ばれて来た数々の食材に関心を向けてこう言った。
「だが、今回の貢ぎ物に免じて、過去のつまらぬ過ち許してやる」
「今度の宴は心ゆくまで楽しませてもらうぞ、人間ども」
そんな会話をしているところへやって来たのがディアッカ。
「贈り物はまだまだあります」
と、馬に積まれた女性陣への贈り物を示す。皆紅扇にスリーピングビューティにナイトミスト。
「これは‥‥!」
「いけるかも‥‥!」
好奇心も手伝って、キリーナとヴァレリーの手がさっと贈り物に伸びた。
「ところで、アレックス殿は葉巻は吸われるのであろうか? よろしければ‥‥」
と言って、ユラヴィカがアレックスに葉巻を差し出す。買い込んだ福袋からたまたま出た品だ。
「葉巻か? キューバ産ハバナ葉なら大歓迎だ」
アレックスの手が葉巻に伸び、火を点けると少しむせながらも美味そうに吸い始めた。
「げふっ‥‥まさに革命の味だ」
●まだある贈り物
コッ、コッ、コッ、コッ。
メェェェェ〜。
鳴いているのは村で飼われている家畜、ニワトリとヤギだ。早速、福袋がチェックを入れている。家畜の数とか、それぞれの育ち具合とか。
「見事な育ちぶりですねぇ」
シャミラが言う。
「ニワトリは育てるのにさして手間がかからないし、ヤギは大抵の草なら何でも食べる。将来的には牛や豚も飼いたいのだが、生憎と予算がな」
「アルコール類はどうです? 村で醸造なんかしているんでしょうか? シャミラさんは元々、イスラム圏の団体の人だったはずですから、あまり嗜まないとか‥‥」
「確かに、私は数あるアルタイルのセクトのうち、その1つに所属していたが、根っからのイスラム教徒というわけではない。思想的にはマオイスト(毛沢東主義者)だと自分では思っている。ということで酒も基本的にはOKだが、酒も歴然としたドラッグだ。乱用防止のため部下に酒飲みを奨励はせず、村でも今のところ酒造りは行っていない」
すぐ近くでは、シャルロット・プラン(eb4219)がカーラと話し込んでいる。村の材木置き場に置かれた丸太を腰掛け代わりにして。
「‥‥そうですね。今一緒にいる人たちに気持ちを伝えておくことが、大事じゃないでしょうか?」
「‥‥‥‥」
色々と話しているうちに、シャルロットはそんな事まで口に出して喋っていたが、カーラはもっぱら聞き役で、シャルロットに何か訊ねられても答え方が分からない様子で沈黙している。
カーラは元いた場所に帰りたくないのかもしれない。
ふと、シャルロットは思った。
だが、先のことは見通せない。シャルロットが今こうしてカーラに話しかけるのも、いつか来るであろう別れ道に備えさせるため。そんな気持ちがシャルロットの心のどこかにある。
「カーラ」
不意に名前を呼ばれ、カーラが顔を上げると、目の前にキリーナとヴァレリーが立っていた。その姿をカーラは不思議そうな目でじっと見つめる。だって2人のナーガ娘はディアッカから贈られたドレスを身にまとい、手にしているのはトランプ・コンパクトディスク・ニョルズの釣竿の3点セット。ちなみに3点セットはシャリーアからの贈り物だ。
「天界から来たおまえなら、この使い方が分かるだろう?」
キリーナはそう言ってカーラにトランプとコンパクトディスクを渡したが、カーラは悲し気な目をして黙って首を振るばかり。
「私が教えてあげましょう」
ゾーラク・ピトゥーフ(eb6105)が助けに入り、最初にコンパクトディスクを手に取ったが、これは再生機器が無いと使えないからと説明。続いて手に取ったトランプで、簡単なゲームのやり方を説明する。
「最初はババ抜きから始めましょう」
そうして始めたババ抜きゲームだが、
「なるほど、やってみると面白いものだ」
気がつけば、いつの間にかナーガ娘達もゲームに熱中している。
で、シャリーアはシャミラにもプレゼント。
「御顔の隠し方も、たまにはいま少しオシャレにされてみてはと」
そう言って差し出したのが羽根付き帽子、ファー・マフラー、ブルースカーフ、エクセレントマスカレード、チャイナドレスの三点セット。
「これを身につけろと?」
「‥‥余計だったらすみません」
「いや、貰っておいても悪くはない」
早速、シャミラはプレゼントを手にしてその場を離れ、やがて着替えを終えて戻って来た。皆はその姿のあまりの変わり様に、ただ呆然。目の前に立っているのは、マスカレードで顔を隠したチャイナドレスの女性で、しかもその手にはディアッカのプレゼントした皆紅扇。加えて羽根付き帽子とファー・マフラーとブルースカフーの派手派手ファッション。
「元テロリストがそれをやるか?」
いつの間にかシャミラの後ろに立っていたゲリー・ブラウンがそう言った。そういうゲリーだって、ゾーラクから贈られたホワイトクラウドを身につけている。
すると、シャミラはマスカレードを外して言い返す。
「私だって、生まれた時からテロリストだった訳じゃない。何だか学生時代のパーティーを思い出すな」
ついでにシャミラはもう一言。
「ゲリー。その純白のコート、よく似合うぞ。これで白馬にまたがれば、まさしく白馬の王子様だ」
「‥‥ほざくな」
まあまあと、ゲリーのパートナーのエブリーが2人の間に割って入る。
続いてゾーラクがシャミラのところへやって来た。ホーリーキャンドルのプレゼントを携えて。
「これは春節に用意される元宵や、春節の最後に願い事を書く蝋燭ではありませんが、これもキャンドルの一種ですので、受け取って頂ければ幸いです。そのキャンドルにはカオスの魔物を遠ざける効果があります」
続いて取り出したのがダークトーガ。蛮族の呪術により作られたと言われる黒い布状の服だが、シャミラは面白がってそれを着込み、ゲリーに向かって芝居っ気たっぷりに一言。
「息子よ、私はお前の父だ」
は? 意味が分からず、その場にいた大勢の者がきょとんとする。するとシャミラは言った。
「映画を観ていなければ分からぬシャレだ」
「おい、もうやめてくれ」
ゲリーがぼそっと呟いた。
●宴会芸
宴会料理の食材にはゾーラクの提供した新巻鮭に、シャリーアの提供した缶詰が加わって、にわか料理人として腕を振るうのはシャミラの村の周平和。手に握る包丁はディアッカがプレゼントした万能包丁。
「包丁は便利だ。料理も作れるし、人も殺せる」
とか言いながら器用に包丁をくるくる回していた平和だが、端で何か言いたそうにしているディアッカの視線に気付いて言い足した。
「気にするな。後の半分は冗談だ」
沢山の食材に混じって、ゾーラクが平和にプレゼントしたきび団子がさり気なく置かれていたり。
きりがないので食材の説明はここで切り上げ。宴会の挨拶の説明もかっ飛ばし。
唐突だが、報告書はいきなり宴会芸のシーンに突入する。
「私は特に芸がないので。‥‥あ、最近天界のダンス教わりましたが。こう手を頭に当てて」
と言いながら、シャルロットが両手で耳ポーズ。
「ウウ、美味馬〜♪ ウウ、美味馬〜♪ というの。一緒にやってみましょうか」
周囲を見渡し、幸か不幸かばっちりと視線の合った相手がリリーン。そう言えば、リリーンとアレクシアスはまだ芸を披露していない。
「ところでこの芸の名前は何と言うのだ?」
リリーンが訊ね、シャルロットが答をリリーンの耳に囁く。地球人から教わったらしい言葉だが、アトランティス世界に特有な精霊力による自動翻訳で、なんとな〜く言わんとするところは伝わった。
「つまり‥‥『黒くて小さくて四角い甘菓子がぶっ千切れた』芸ということか? 奇妙な名前もあるものだな」
さっそく、シャルロットとリリーンとで芸をやってみた。
「ウウ、美味馬〜♪」
「ウウ、美味馬〜♪」
こんな光景、滅多にお目にかかれないかもしれない。
「さあ、アレクも一緒に‥‥」
と、婚約者に誘いをかけるリリーン。
「今のを、一緒にやれと?」
なぜかボケが入るアレクシアス。
「恥ずかしいのか? ならば船の上でやったアレを、もう一度」
急遽、芸は変更。ブツは揃っている。ゾーラクがアレクシアスにプレゼントした高級葉巻に紙巻タバコ、ついでに固形燃料も。
で、固形燃料に火をつけると、最初にアレクシアスが葉巻に火を点け、続いてその火でリリーンの紙巻きタバコに火を灯し、そして2人してゆっくりと紫煙をくゆらせ‥‥。
(「なんだかな〜」)
と、宴会場で独り取り残されたように、ゲリーが心中でつぶやく。すると横からエブリーが言葉をかけた。
「もしかして、『来るんじゃなかった』とか思ってない?」
「‥‥放っといてくれ。シュールすぎる展開に頭がついてこれなくなっただけさ」
デジタルカメラを手に、シャリーアが立ち上がる。
「では、ここで記念撮影を」
ぷちっ、ぷちっ、ぷちっ。
デジタルカメラに収められた画像には、しっかり耳ポーズやってる姿が何人も。
●竜の力
記念撮影の後、シャリーアはダーツの的投げで腕前を競ったり。借りたサッカーボールで、ゴーレムサッカーで培った空中シュートの技を披露したり。
やがて宴会芸やアクションで盛り上がった時も過ぎ、宴会の楽しみは会話に移る。
「キリーナ殿やヴァレリー殿、以前からお訊きしたかったのだが、シーハリオンの異変の詳細をご存知だろうか?」
「異変の真実を知る者は、世界の監視者たる7匹のヒュージドラゴン、そしてヒュージドラゴンより真実を明かされし、ごく一部のナーガの賢者のみだ」
と、最初にキリーナが言い、続いてヴァレリーも言う。
「我等のような未熟者に、真実は明かされぬ。だが、我等は真実を知りたい。シーハリオンで何か重大な事件が起きたことに、間違いはないのだから」
シャリーアは言葉を続けた。
「その異変に関して、我々の側に何らかの非があるならば、償うべく原因を探るのに協力する。だが、たとえ異変が一部の人間によって引き起こされたにせよ、その事で人間全てを憎まないで欲しい」
だが、キリーナとヴァレリーは言い返す。
「思い上がるな、人間ごときが」
「そもそも人間ごときに、斯様な異変を起こす力があってたまるか」
話していると、ディアッカが会話に加わった。
「お二方はジ・アースのインドから来られたナーガの方だと聞きましたが‥‥」
その言葉に、ナーガ娘2人は露骨に嫌な顔をする。
「間違えるな、我々の故郷は聖山シーハリオンの麓だ。ジ・アースなどという別の世界からではない」
「あ‥‥失礼しました」
ディアッカは頭を下げる。
それにしても、何故にこんな勘違いをしたのだろう?
そう言えばいつぞや、ゴーレム工房から漏れ出たという噂話を聞いたような覚えがある。それと混同してしまったのかもしれない。
その噂によると、ゴーレム工房内にはジ・アースのインドから来たナーガがいるらしく、名前は確か‥‥。
だが、横から聞こえてきたシャリーアの話し声が耳に入り、ディアッカの思考は中断された。
「カーラ殿、ゴーレム二ストや鎧騎士を目指す気はないか? もしかしたらナーガの方と一緒に空を飛んだり、一緒に何かを作ったりできるかもしれない。竜を好まれるあなたならばと思ったが‥‥いかがか?」
問いかけられたカーラは、ひどく驚いた様子。戸惑いながらも言葉を発した。
「竜の力を‥‥この私が、竜の力を?」
まるでシャリーアの言葉に呪縛でもされたかのように、カーラはじっと自分の手を見つめたまま、身じろぎもせず呟く。
「こんなに小さな私の手で、竜の力を?」
ふとディアッカが2人のナーガ娘を見ると、どちらも酷く険しい面もちでカーラを睨んでいる。カーラの返答次第では、手酷い罰を与えるぞと言わんばかりに。
「シャルロット殿はどう思われる?」
シャリーアから意見を求められたシャルロットは、とりあえず常識的な答を返す。
「もしも真剣にその道を究めたいのなら一度、ゴーレム工房のオーブル工房長か冒険者ギルドのカイン総監に相談すべきかと」
加藤瑠璃(eb4288)が横合いから、ナーガ娘達に飲み物を差し出す。
「天界産の甘いジュース、いかがかしら」
綺麗な水で溶いた粉末ジュースだ。
「天界の飲み物は奇妙な味がするな」
と、ジュースに口を付けてナーガ娘は言う。
「みなさんは何の目的で旅をしているの?」
訊ねた瑠璃に、ナーガ娘達は答える。
「シーハリオンの異変の真実を知る。それが我々の目的だ」
「その為に、人間達とも接触して情報を集めている」
やはり、瑠璃の予想通り。
「つまり‥‥調査って事ね。だけど、調査はあまり上手く行ってなさそう」
「人間ごときが口を出す筋合いはない」
キリーナにそう言われたが、構わず瑠璃は続ける。
「調査が進展しない時には、多少のお金があれば冒険者を雇って調査する事もできるわよ。確かシーハリオンから落ちてきた血まみれの巨大な竜の羽について、冒険者を雇って調査させた人も居たらしいもの」
ハッと悟らされたキリーナが瑠璃を見つめる。そしてヴァレリーも。
「どうかしら?」
「‥‥考えておこう」
2人から返ってきた答は短かったが、その反応を見て瑠璃は満足。
(「冒険者付きで調査活動に専念してもらえれば、悪党に利用される危険も減って、多少は安心だものね」)
●占い
「さて、お二方‥‥」
と、神秘のタロットを手にして近づいてきたユラヴィカに、キリーナもヴァレリーもうんざりした顔を向けた。
「また、それか」
「もう魔物のカードは御免だ」
でも、ユラヴィカは2人に言い聞かせる。
「託宣の解釈までせねば占い師の仕事は完了せぬからの。カードはあくまでイメージの示唆じゃから、見た目そのままを文字通り受け取るというものはないし、先の結果を確定してしまうものでもないのじゃ。それを受け止め、そこからの選択をするのはあくまで本人次第なのじゃから」
そして、以前に2人が引いた不吉なカードに対する次のような解釈を披露する。
「まず死神、これには過去のしがらみやこだわりを断ち、仕切りなおすという意味があるのじゃ。次に悪魔、これには気持ちの方ばかりが逸って、周囲と軋轢を生じたり空回りしている状態を示すことがあるのじゃ」
すると、2人は反発するように訊ねる。
「では近頃、この国で勢いを増しているという、カオスの魔物が意味するところは何だ?」
「この国は周辺国との軋轢や空回りを繰り返し、やがては国そのものの仕切り直しが行われるということか?」
どうもユラヴィカとは受け止め方にズレがある。
「そこまで考え込むな、たかが占いだ」
と、シャミラが言った。
「当たりもすれば外れもする。‥‥おっと、占い師殿には失礼。私も占ってみよう」
試みにシャミラがカードの1枚を引くと、それはまたも悪魔のカード。シャミラはニヤリと笑って言う。
「魔物への警告と受け止めておこう」
●話し合い
宴会の日の翌日は、シャミラ達との話し合いの日。
「元テロリストを警戒すべき最大の理由は、彼らが思想と武力を兼ね備えた集団である事です。『思想』と『武力』を分断できれば、思想に縛られぬ傭兵と武力を用いぬ教会のように、脅威はぐっ押さえられましょう」
と、セオドラフはシャミラ達に聞こえぬ場所で、仲間達に自分の見解を示す。
「元テロリストの中で争いを好む者は、冒険者や傭兵部隊のような扱いにしてカオスとの戦いに従事してもらい、そうでない者には村に残って開拓などに従事していただけば良いのですがな」
セオドラフが目論むのは、元テロリスト勢力の分散を不自然でない形で行う事だ。
シャミラの村には集会所がある。かつて、毒蛇団が使っていた大きな建物を補修したものだ。シャミラとその部下達はそこに集まって待っていた。
「ささ、今日は真面目な話ですね。頭を切り替えていきましょう」
と、福袋が話を切り出す。
「今まで私が見てきた限りでは、ウィル解放戦線は純粋に政治的な目標を掲げて活動しているようでした。それで正しいですか?」
その言葉にシャミラが応じる。
「元から我々は政治的だが、何をもって純粋と見なすのか?」
「つまり、母体がイラクの団体だということで宗教的な要素もありそうですが、ここでは宗教色は出さないと?」
「確かに地球でアルタイルのセクトに所属していた頃は、イスラムの力に頼りもした。だが、この世界には竜と精霊を核とする信仰が根付いている。我々の世界の一神教と比べた場合、それを宗教と呼ぶにはあまりにも素朴だが、その代わりこの世界の信仰の核となる存在は、我々の世界における神と違って実態を持った存在だ。郷に入れば郷に従え。我々は地球での宗教をこの世界に持ち込み、事を荒立てるつもりはない。あくまでもこの世界の竜と精霊とを尊重する」
「つまり、ウィル解放戦線は宗教色を排除した政治的団体であると? それなら共存は可能なはずです。政治団体にとって闘争は手段でしかありませんからね。まずは、シャミラ様たちにとってのウィルのあるべき姿をお聞きしておきますか」
「それは構わぬが、長演説になるぞ」
「では、その話は先に延ばすとして‥‥とは言え当面は暗躍するカオス勢力の排除、これも政治目的と見做す事はできますね。共同戦線を張るうちにお互い相手のこともわかってくるでしょう、夫婦みたいにね」
続いてセオドラフが提案する。
「皆様は当分、何処かの領主に仕える気はありますまい? ですが、そうなれば村を発展させる資金の調達は容易ではないでしょう。そこで、一つアイデアを持って参りました。対カオス戦を主眼とした傭兵団を組織してみるのはいかがですかな?」
シャミラはその話に乗ってきた。
「詳しい話を聞かせてもらおう」
「かつて、天界には傭兵を各地に売り込むことで成り立っていた国家もあったとか」
セオドラフが例に挙げたのは、現在の地球では永世中立国として知られるヨーロッパの傭兵国家スイスのことだ。
「それと同様に、傭兵団としてカオス討伐に参加し、得られた報奨を用いて村を発展させる。多少、物騒な出稼ぎだとお考えください。もちろん村を空にしては発展どころか荒廃してしまいますからから、村を守る者も必要でしょう。誰が傭兵に出るかは本人の希望も含め、話し合って決めると良いでしょうな。皆様さえ良ければ、わたくしから陛下に奏上いたしましょう」
「その話、是非とも検討させて貰う。時が来たら陛下への奏上を宜しく頼む」
シャルロットからも提案が出される。
「一度、ウィルの騎士団あるいは学院を訪れ、組織運用の教授を行って頂けませんか? というのも、以前から注目していたことですが、貴殿が迅速な組織運用編成のスキルをもっていることにあります」
「私一人の力で成し遂げた事ではない。旧ルーケイ伯遺臣軍のバックアップがあったからこそ、成功もした」
「ですが、素養があるとはいえ数ヶ月で天界人に魔法を教え、組織化した手腕は目を見張るものがあります。無論、上からの命令に絶対服従というような組織論を、団に適用するつもりはありません。ただ、物事は『別の考え方』があるということを伝えるいい機会ではあるのです。どうでしょう?」
シャミラは否とは答えなかった。
「考えておく」
その一言で、検討する意志を示した。
シャミラの上位領主にあたる新ルーケイ伯アレクシアスも、自らの意思を表明する。
「この村に住む者の希望はさまざまな事と思う。カオスの魔物との戦いを望む者、戦いからは離れ普通の生活を送りたい者、それら全員の意見を聞き、それぞれに今後歩む為の道を用意することが必要となろう。但し、この村そのものの存続は保証する。戦いを望まぬ者が領民としてそこに留まる分には、周囲からも反対は出まい。さて‥‥『アルタイルの元テロリスト』では響きも悪い。『ウィル解放戦線』というのも聞いた感じが物騒だ。何か新しい呼び名を考えねばな」
「私もそう思う」
と、シャリーアも同意。
「それらに代わる何か別の名前を」
「ではとりあえず、我等の呼称は『対カオス傭兵団』としよう」
シャミラの一言で、決定が下された。
この後、ゾーラクからは彼女の管轄となる麻酔薬についての説明が為された。ロメル子爵領で栽培されるケシの実を原料としたものだ。
「ケシの実から採れる『あへん』の純度を高め、モルヒネとして使用する予定ですが、麻酔への使用は錠剤を飲み下したり、蒸気を吸飲する形になります。今後は私が担当になりますので、改善すべき部分があれば御助言の程お願いします」
さらにゾーラクは、過去に地球で行われた輪栽式農法について説明。これは小麦等の穀物を、クローバーなど地力を回復させる性質の牧草と組み合わせ、ローテーションを組んで交互に栽培する事で収穫を増す農法だ。その実施に役立つ農業技術を持った者がシャミラの村にいないか訊ねたところ、農業に心得のある者が幾人かいた。いずれもシャミラに共鳴して戦いに加わった、地元の人間だった。
●王への進言
西ルーケイから王都に戻ると、アレクシアス、セオドラフ、ゾーラクの3人はエーロン王に報告を為し、それぞれの思うところに従って王に進言した。シャミラ達が対カオス傭兵団として再出発することをエーロン王は認め、シャミラ達がフオロ分国東部で行われる悪代官フレーデンの盗伐戦に参戦する道が開けた。
ゾーラクが企画した農作物収穫量向上計画については、フレーデン討伐戦の後に本格的な動きが始まろう。