【レッツ宝探しっ!】悠久なる樹海
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■ショートシナリオ
担当:深洋結城
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:01月09日〜01月16日
リプレイ公開日:2008年01月13日
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●オープニング
昼下がりのウィルの冒険者ギルド。
受付係が、先日得た知識を元に淹れたハーブティーを堪能していると‥‥。
――――ドドドドドドドド!!!
何かの足音と思わしき重低音が彼の耳に届き、次いでカウンターにひょっこりと顔を覗かせるパラの少女。
「やほっ、うっちゃん〜♪ あけおめやわっ♪」
「‥‥見なかった事にしましょう」
「ちょっ‥‥いきなりそれはないやろー!?」
と言う訳で、前回の魔窟探索から1ヶ月半程度の間を開けて現れたるは、自称トレジャーハンターのティーナ・エルフォンス。
あれから情報収集に走っていたらしく、今の今までなりを潜めていたのはその為だそうだ。
‥‥と、言う事は。
「まさか‥‥また、冒険者に手伝いを頼むおつもりですか?」
恐る恐る尋ねる受付係に――。
「当ったり前や! でなきゃ、何でウチが冒険者ギルドに居る思ってるねん!?」
「威張って言う事じゃないでしゅ‥‥」
狼狽える余り、舌を噛んでしまう受付係。
前回は前回で、危険かつ望み薄な場所に連れて行かされた挙句、カオスの魔物とまで出くわして宝らしい宝は無しと言う、かなり苦い経験をさせられている事もあって、認めたくは無いところなのだが‥‥。
とは言え、既に燃え上がっている彼女の熱意には、到底敵いそうも無く‥‥。今回も、泣く泣く首を縦に振る受付係であった。
「今回のお宝スポットは、『太古の樹海』言う場所や。なんでも、樹齢100年を超える大樹がざらに生えとって、薄暗く鬱蒼とした場所やねんな。そこの一番奥深くに、『生ある者の秘宝』言うんが眠っているらしいねん。イメージと違っとるけど、もしかしたらそれこそがウチの探し求めとる『太陽の瞳』やないか〜思うてな♪」
相も変わらず一気に捲くし立てるティーナの話を、要約して羊皮紙に書き写していく受付係。もしかすると、この二人の口と手の早さは互角かもしれない。
「ふむ、『太古の樹海』ですか。そこならば、たいして危ない魔物は棲息していないと聞きますし‥‥」
「分からへんで〜? その奥に眠る『生ある者の秘宝』言うんが、ほんまに価値の在るお宝なら、それを護るガーディアンみたいんが20匹や30匹おってもおかしくないと思うわぁ」
そんなに居る訳無いでしょう‥‥と言う突っ込みは飲み込む受付係。
だが、確かに今回の情報は前回に比べれば、遥かに信憑性がある。
もし本当にその奥に『秘宝』が存在するのであれば、守護者の様な存在が居ても不思議な話では無い。
「と言う訳や! あとは任せたで〜♪」
受付係が考え込んでいる間に、さっさと踵を返してギルドを後にしてしまうティーナ。
「ちょっと、ティーナさん! 報酬は‥‥‥‥」
それを引き止めようとするも、言いかけてやめる受付係。
「やっぱり‥‥現物支給なんでしょうな、今回も‥‥」
●リプレイ本文
●顔合わせ
「どうも、初めまして。今回は宜しくお願いしますね」
開口一番、そう言ってペコリと頭を下げるのは倉城響(ea1466)。彼女に続く様に、他の冒険者達も続々とティーナの前に歩み出る。
「よっ! 俺は鳳レオンだ。海の上の方が得意な船乗りだが、陸上でも少しは役に立てるはずだぜ。よろしく頼むな」
「お久し振りです、ティーナさん。相変わらず元気な様で安心しました」
「あ、レイやんにレオたん! 今回も手伝うてくれるんやね? おおきに〜♪」
言いながら、満面の笑みを浮かべるティーナ‥‥まあ、その誰かしこにも仇名を付けたがる癖故に、今回依頼を請けた冒険者達の中で同じ名前を持つ鳳レオン(eb4286)とレオン・バーナード(ea8029)が混同される事は無くなったと言う事で。彼女の呼び方に則り、レオン・バーナードは以後レオたんと呼ぶ事にしよう。
「それにしても、太古の樹海とは‥‥魂を揺さ振られますね。最高の冒険になるでしょう」
嬉々と言うのはピノ・ノワール(ea9244)。普段はクールな彼とて、エルフとして何か惹かれるものがあるのか。出発前から、誰の目にも見えて活き活きとしていた。
「うん、前よりも太陽っぽい‥‥と言うか『太陽の瞳』って、そもそもどんな宝物なんだ?」
ふとしたレオたんの質問に、ティーナは。
「えっと、あくまで言い伝えに過ぎへんのやけどな? なんでも、ヒュージドラゴンだかどっかの偉い精霊だかの力を宿した宝玉で、それを握ればたちどころにどんな難病でも治ってしまうとか‥‥他にも色々言われてんねん」
彼女の答えに、ポンと手を打つ冒険者達。成程、それが今回のターゲットである『生ある者の秘宝』と言う言葉に、彼女が目を付けた理由だったと言う訳か。
「まぁ、真偽の程は確かではないのですから、現時点では半信半疑で良いのではないでしょうか。その方が見つかった時の感動もひとしおというものです」
アトス・ラフェール(ea2179)の言葉に、分かった様な分からない様な表情をするティーナ。そんな彼女に苦笑を浮かべながら。
「けれどやはり、トレジャーハンティングと言う響きには、心躍るものがありますね」
「うむ。このような普通の冒険者らしい依頼を受けるのは、初めてかもしれませぬ」
アトスに同意する様に言うのはセオドラフ・ラングルス(eb4139)。冒険者達にしてみれば、こう言った探索依頼は初心に立ち返る良い機会となっているらしい。
「まあ、ああ言った熱いバカに手を貸すってのも、面白いかも知れないな」
鳳の言葉に口元を綻ばせながら。
「ふふ‥‥今回も何か見つかると良いですね」
頭を撫でるレイ・リアンドラ(eb4326)の言葉に、「うん! 頑張るで!!」と元気よく返すティーナ。
かくして、『ティーナと愉快な仲間達第二弾・樹海探検隊』は、太古の樹海へと向けてウィルを発つのであった。
●樹海に潜む者
「ここが‥‥」
件の樹海に到着して一番に、感動の余り言葉を失うピノ。だが、浸っていられる程に余裕がある訳でも無い。
「聞いた話ですが、ここの精霊が火を嫌い、火を使う者へ罰を与えるという話もあるそうです。扱いには十分注意しましょう」
それは、事前に下調べをしてくれた導蛍石からの情報。言いながらルエラ・ファールヴァルト(eb4199)は、手回し発電ライトを取り出す。成程、それならば火気を用いずに灯りを得る事が出来ると言う訳だ。
「では、私がそれを持って、先頭に立って行きましょう」
「ええ。では、私はピノ殿と共に道案内を致しましょうか」
アトス、セオドラフを皮切りに、スムーズに纏っていく隊列等の相談。
そして、準備を終えた冒険者達はいざ、幽玄な樹海へと踏み込んで行った。
想像以上に光が差し込んでおり、幸い手回しライト一つだけでも十分に進める程の明るさの内部を、慎重に進む一同。――と。
「‥‥ふう、駄目ですね。木が多過ぎて、デティクトライフフォースでの魔物の感知は難しそうです」
残念そうに肩を落とすピノ。とは言え、動物や魔物達は皆こぞって冬眠中なのか、足跡を見付けても大分前に出来た物だったりと‥‥森の中は妙な程に静まり返っていた。
だが、だからと言って油断は出来ない。障害物の多い森の中で役に立つのは、視覚よりも聴覚。それの優れた響とアトスが、物音に耳を澄ませて居ると‥‥。
「‥‥? レオンさん、何をなさってるんですか?」
ふと尋ねるのは響。当のレオン‥‥もといレオたんは、獲物の剣を取り出していた。
「ん? ほら、迷わない様に目印を付けておこうと思ってな」
そう言って、傍らの木に数字を刻んだ――次の瞬間。
ギャアアアァァァ――!!
突然に四方八方から響く、耳をつんざく様な悲鳴。
あまりの騒々しさに、一同は溜まらず耳を塞ぐ。
しばらくそのまま硬直していると‥‥段々と慟哭は収まっていき、やがて森の中に元通りの静寂が訪れた。
今のは、森を荒らすなと言う、精霊達からの警告だったのかも知れない。
ともあれ、何となく足を進める事に躊躇いを感じた一同は、この日はもう動かずに、その場で野宿をする事にした。
●貪欲な木
翌日。気持ちも新たに一同が森の奥へと向けて足を進めていると――彼らの目の前に、沢山のツタの絡まった大木が現われた。
中央に巨大なうろの様な穴がぽっかりと開いており、何処と無く不気味な雰囲気のそれの横を抜けようとすると‥‥なんと、その木は枝をくねらせ、彼等目掛けて振り下ろして来た。それを間一髪で避けると、距離を取る冒険者達。
「あかん、やっぱりガヴィッドウッドや!!」
「なるほど、となればここまでほとんど動物の姿が見えなかったのも‥‥」
ルエラの言葉に顔を伏せながら、戦闘の準備をする一同。その時、周囲から沢山の視線が彼らに注がれていた事を――冒険者達の誰しもが気付いては居なかった。
「木のモンスターか。剣は通じるかな‥‥!」
真っ先に飛び出して行くのは、逸早く剣を構えたレオたん。迫り来る枝の攻撃を華麗に避け、鳳やティーナによる弓とアイスチャクラムの援護を受けながら、素早く渾身の三連撃を叩き込む。
それに続く様に、飛び込むのはレイ。彼は後衛に攻撃が行かない様、気を引きながらスマッシュを叩き込むも‥‥ガヴィッドウッドのリーチの長さは、そう遮れたものではなく。
セオドラフとピノ、そしてルエラに向けて振り下ろされる枝。
「くっ! させませぬっ!!」
「えぇいっ!!」
片やレイピアで攻撃をいなすセオドラフと、片や微風の扇で受け止めるルエラ。次いで二人同時に叩き込むのは、強烈なカウンターアタック。
「危ないっ!!」
そして、詠唱の為動けないピノは、刀を構えた響によって庇われ――。
「恨みはありませんがこれも仕事です。滅せよ!」
彼の手から放たれた黒い光は、ガヴィッドウッドのうろに命中し、大分動きを鈍らせた。
「コアギュレイトッ!!」
次いで唱えられたのは、アトスによる拘束の呪文。これにより、完全に動きを封じられた貪欲な木は――。
●生ある者の秘宝
「何処に連れて行く気なんでしょう‥‥?」
巨木の魔物を倒した直後に現われたのは、森の精霊アースソウル。彼らに連れられながら、呟くルエラ。
彼女を含む土地勘のある者達の判断によれば、別に迷わせるつもりでは無さそうではあるものの‥‥昨日の事もあるので、不安は拭いきれない。
ともあれ、導かれるまま一行が足を進めていると‥‥現われたのは、林立する木の魔物トレント。先程のガヴィッドウッドとは違って森に害を加えない者に対しては温厚な彼らの間を抜け、更に進むと――やがて、これまでに無い程に巨大な大樹が、一同の前に姿を現した。
「これは――!」
「あらぁ、大っきいですね〜」
見上げれど天に向けてどこまでも続く入り組んだ幹。その所々には苔が生え、無数に伸びる枝の上では小動物や精霊達が戯れている。
その雄大な姿を目にした時、誰しもが理解した。この大樹こそが、太古の樹海の奥深くに在ると言う『生ある者の秘宝』である、と――。
アースソウル達が彼らをこの場所に案内したのは、森の住民達を苦しめていたガヴィッドウッドを退治してくれたお礼だったのかも知れない。
そして、秘宝たる大樹を前にしばし言葉を失って居た一同は――精霊達に促されるまま、そこで一夜を過ごすのであった。
●不満?
その翌日、アースソウル達の案内で、入った時よりもウィルに近い場所から樹海を抜ける一同。
彼らに見送られながらウィルへと向かう途中、お土産の香木を弄りながら口を開くのはティーナ。
「あ〜あ。それにしても、秘宝言うからどんな大層な物かと思えば、あんなでっかい木が一本だけやったなんてなぁ」
すると、彼女の後ろを歩くピノが。
「いえ、あの環境こそ何にも代えがたい宝です。ティーナさんにも分かってもらえれば良いのですが」
と嗜めるも、本気で諭している訳ではない。それは、ティーナとて同じ事。
むしろ一行の誰しもが、悠久の時を経て育まれた余りにも雄大な秘宝に癒し尽くされ、今は心身ともにとても軽い心地で居た。
「まあ、こんなこともあるさ。今度、海や島のお宝を探す時なんかは、是非呼んでくれよ」
言いながら、ティーナに並んで方をポンポンと叩く鳳。
「うん、任せときい! ウチは『太陽の瞳』を見つけるまで絶対諦めへん! いずれまた、皆の力を貸してもらう時が来ると思うわ!」
「そうそう、その意気です。今まで通りに目的に向け迷わず行動していれば、きっといつかは見付けられますよ」
意気込むティーナの頭を撫でながら、微笑むレイ。
そして一同は足取りも軽く、帰路を辿って行った。