【レッツ宝探しっ!】海原からのSOS
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■ショートシナリオ
担当:深洋結城
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月04日〜03月11日
リプレイ公開日:2008年03月11日
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●オープニング
「‥‥そう言えば、この所ティーナさんを見掛けませんね」
平和な昼下がりのギルドで、ハーブティーを啜りながらふと呟くのは受付係。
以前に『太古の樹海』の探索をして以来、彼女は情報を求め頻繁にギルドに出入りしていたのだが‥‥ここ半月程ぱったりとその足取りは途絶えていた。
ディフォルトで必要以上に元気の良い彼女の事だ、心配する事は無いだろうとは思いつつも‥‥何とはなしに胸騒ぎを覚えていた受付係。
そのきっかけは、先日の遺跡の探索依頼が掲示された時からだ。
宝と聞けばその匂いを嗅ぎつけて、ひょっこり姿を現すものとばかり思っていたのだが‥‥報告書に目を通した限りだと、それも無かったらしく。
「何事も無ければ宜しいのですが‥‥」
受付係は一言呟き、ハーブティーに口を付ける。
ふとその拍子に目に入るのは、ウィルの東方向の海上における海賊の目撃情報。
度々近隣の漁船を襲う彼等の討伐依頼が沿岸の貴族から舞い込んで来たのはつい先日の事だが‥‥どうにも情報が少なく行動範囲を絞り込めないで居る為に、依頼として正式に公開するに至っていない。
「とは言っても、放っては置けませんよね‥‥」
一言呟くと、受付係はティーナの事を一先ず頭の片隅に追い遣り、寄せられた情報の整理を始めた。
と、そこに飛び込んで来るのは手紙を抱えたシフール便。
他の宅配の為に忙しなく飛び出していく彼女を「ご苦労様です」と声を掛けて見送った後、届けられた手紙に目を通してみると――それはなんと、ティーナから宛てられた物であった。
***
うっちゃんへ。
前略
今、ウチはウィル近郊の海上に浮かんではる『宝島』言う存在を求め、大海原に出とる。
そこには大昔の大海賊が隠した財宝が眠ってはるって話やから、そー言う事はやっぱり『本職の人達』に聞くのが一番思ったんや。
せやけど、カルム沖で漸く見付けた思たら、良う分からへん内に縛り上げられてもうて‥‥今は船の上で悠々お縄生活送ってはる。
‥‥悠々言うても、海賊のおっちゃん達は皆ものごっつ人相悪うて、いずれ取って食われてまうんやないかって気が気じゃないんやわ。
お願いや、助けに来てなー!
***
「‥‥‥‥何をやって居るのですか、あの娘は‥‥」
手紙を読み終えるや否や、深い溜息を吐く受付係。
捕まっていると言うのに、どうやって手紙を出したのやら‥‥。
そんな疑問の答えは、その先に記されていた。
***
追伸
なんや海賊のおっちゃん達はウチに冒険者の知り合いが居ると知ったら、すんなり手紙を出させてくれはったんや。
きっと何か企んではるで、気を付けてや!
草々
***
「‥‥‥‥」
開いた口が塞がらないまま、硬直する受付係。
何か企んでるも何も‥‥この状況で考えられる海賊側の思惑と言えば、一つしか無かろう。
即ち、ティーナを人質にして何かを要求するつもりなのだ。
それは身代金か珍品か‥‥何が目的で冒険者達を誘き寄せて居るのかはっきりとは知れないが、少なくともかなり厄介な状況である事には違いない。
「やれやれ‥‥本当に何をやっているのですか、あの娘は‥‥。ともあれ、これで海賊達がカルム沖で待ち構えて居るであろう事は分かりましたし、後は冒険者の皆さんにお任せしますか‥‥」
受付係は大きな溜息を吐くと、羊皮紙にペンを走らせ始めた。
●リプレイ本文
●船に揺られ
ウィル東方の沿岸から、依頼人の貴族の用意してくれたゴーレムシップに乗り継ぎ、カルム沖へと向かう冒険者達。
「しかし、ペットを預かって貰えて良かった。流石に何の用意も無しに馬とかを船の上に連れてくる事は出来ないからな」
苦笑いしながら言うのはルクス・ウィンディード(ea0393)。そんな彼の隣で微笑み。
「出発の時は慌しくて、置いてくる余裕もありませんでしたからね。あ、それとウィン。良かったら私の保存食を使って下さい」
言いながら保存食を差し出す倉城響(ea1466)。夫への気配りを忘れない辺り、流石大和撫子。
一方、ゴーレムシップの操舵を担当する鳳レオン(eb4286)(レオンが二人居るので、こちらのレオンは以下『鳳』)は。
「それにしても‥‥ティーナの奴、わざわざ海賊に聞きに行かなくてもいいだろうに。俺も宝島と聞いたら胸躍る方だが、ちょっと真似できないな」
そう言って大きな溜息を吐く。そして、彼の横に居るレオン・バーナード(ea8029)(以下『レオたん』)も呆れた様に口を開き。
「おまけに、めぼしいお宝があるわけでもない漁船を襲う海賊なんて、みみっちくて性質悪いのに捕まっちゃってるし‥‥。せめてどんな海賊かぐらい調べて行けば良かったのに‥‥」
「ええ。今回の無謀な行いについては、みっちり注意しなければ。その為にも、ティーナさんを無事救出しないといけませんね」
さしものレイ・リアンドラ(eb4326)も、今回のティーナの行動を笑って許すつもりは無いらしい。
「しかし、割符を使ってサイレントグライダーを利用する事が出来れば、やり易かったのですが‥‥」
レイのふとした呟きに、応えるのはレオたん。
「まあ、今回は出発前に余り時間があった訳じゃないから、仕方ないさ。いつだかに嘘吐き三人組の相手をした時には、ウィルを離れる前に時間があったから、割符を使った人も居たんだけど」
そう言うと、二人は顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
その傍らで、オラース・カノーヴァ(ea3486)は黙々と籠に入れたペットのルージュの世話をしながら、時間を潰していた。
●交渉芝居
目的の海域に到着して間も無く、件の海賊と遭遇する事の出来た冒険者達。
接舷させた船縁越しにレイを中心として交渉(勿論芝居)を持ち掛けると、海賊側もやはりそれが目的であったらしく、あっさりと受け入れてきた。
「もっとも、相手がどこまでそれを守ったものか怪しい所ですけれどね」
言いながら、水面ギリギリの位置を飛んで船主側から海賊船の反対側に回り込むのはシフールのディアッカ・ディアボロス(ea5597)。
同じくシフールのユラヴィカ・クドゥス(ea1704)も、反対の船尾側から同じ様に回り込み、ディアッカと並ぶ。
「見た所、小船等を用いて伏兵を用意していたりはしないようじゃな。だが、彼奴等が海洋生物を手懐けている可能性は十分に考えられよう」
「分かっています。もし発見した際には、テレパシーで皆さんに伝えますので」
二人は頷き合うと、シフールと言う種族の特性と精霊魔法を生かし、各々偵察を始めた。
「こちらは、身代金として300Gを用意しております。ですが、まずは人質の無事を確認する為に、ティーナさんを甲板まで連れて来ては頂け無いでしょうか?」
レイが言うと、船長らしき男は見下す様な視線を彼らに向け――た直後。
「その声はレイやん!? 良かった、やっぱ助けに来てくれたんやね〜!!」
「「‥‥」」
船室から聞こえて来た声に、言葉を失う双方の代表者。
「‥‥人質の無事は、確認出来たろう?」
「‥‥はい、存分に」
互いにげんなりしながら言い合う様を、他の者達は苦笑いを浮かべながら生暖かい目で見守る。
ともあれ、彼女が目視できる位置に居ない事には、救出は困難を極めるだろう。
「オレはティーナの知り合いだ‥‥。頼む、オレを‥‥ティーナに会わせてくれ」
深刻な表情で懇願するのはオラース。だが、船長は気を取り直して彼を一瞥すると。
「そいつぁ、そっちの誠意次第だなぁ」
下卑た笑みを浮かべながら言った。
「つーか、あんたらは人質をとってまで何が欲しいんだよ?」
ルクスの質問に、海賊達はそうだなぁと考える素振りを見せると。
「まず、身代金はありがたく頂戴するとしようか? それと、貴様らの持っている武器やら珍品やらを全部よこしな。それと‥‥」
まだあるのかよ‥‥と、呆れた表情を浮かべるレオたん。
「そうだなぁ。帆が無くても動くその船を、こっちに渡して貰おうか?」
「それは‥‥さすがに無理だな。ティーナだけでなく俺達の首も飛びかねない。それにゴーレムシップが奪われたなんて知ったら、海戦騎士団や鎧騎士団が本気で潰しに来る。そうなったら、あんたらだって都合が悪いだろう? な、お互いの為にやめとこう」
鳳がそう説いて宥めるも、海賊側は聞く耳持たず。挙句に向こうが「要求を呑まないってんなら、この娘は鮫の餌食だぞ」とばかりに、簀巻きにされたティーナを引っ張り出し――た所で。
「――今です!!」
声を上げるのは、今まで船縁の陰に隠れていた響。ティーナに向けて相手の船に飛び移った彼女に続く様に、ルクスとオラースも一斉に駆け出した。
●船上戦
「大事な依頼人を人質にしやがって。ぶっ殺す!」
言いながら、オラースは手に持った長巻を高く振り上げ――。
「ティーナ、伏せろ!」
「うおおお!!」
掛け声と共に広がる衝撃波が彼女の頭上を通過し、その後ろに居る海賊数名を吹き飛ばした。
「やれやれ‥‥無茶苦茶やんのは反対だがね。ギャンブルじゃないんだ、命がかかってんだよ」
そんなオラースを嗜めるのはルクス。されど、彼は聞く間も無く他の海賊の元へ飛び込んで行き。
「これがホンモンの斬撃だぜッ!」
――ドカーン。
装備品ごと、その身体を薙ぎ払って行く。
苦笑いを浮かべるルクスの元に、歩み寄るのはティーナを抱えた響。
「ティーナさんは確保しました。これから船に戻りますので、ウィンは援護をお願いできますか?」
「あいよ、任されてっ」
直後飛来した矢を武器で払い退けると、船に向けて走る響の背面を固めるルクス。
そして、次の矢を番えようとした弓兵を。
「させんわ! サンレーザー!!」
その背後から飛び出してきたユラヴィカが、陽魔法の光線で撃退した。
「ティーナさんは救出できたぞ! 皆、船に戻ってくれ!!」
船縁伝いに飛び込んでくる海賊を、スマッシュで叩き落しながら言うのはレオたん。
その後ろでは、ロープを伝って船に飛び込んで来た海賊相手にレイと響が剣を振るっている。
そこに現れるのは――何と、全長8mにも及ばん巨大なドラゴンの姿。
流石にこれには、海賊達も度肝を抜かれた様子で。
「ぎゃああぁ!? な、何でこんな所にウォータードラゴンがぁぁっ!?」
「ひいぃ!! お助けぇっ!!」
船上で指揮を乱し、右往左往し始めた。
とは言え、その正体はディアッカのファンタズムによって生み出された幻影。現われたままの姿で一切の動きを見せないそれに感付かれるまで、余り時間は掛からなかった。
それでも、全員が帰還したゴーレムシップが海賊船から距離を取る為の時間を稼ぐには十分で。
「エレメンタルキャノン、発射っ!!」
ズドォン――!!
爆音と共に、海賊の帆船は水面下へと姿を消して行った。
●約束
沈没した船に乗っていた海賊達を甲板に引き上げ、一人残らずロープで簀巻きにした後‥‥。
ウィルへと帰る航路の途中で、頭を垂れながらレイと響の説教を聞き入れるのはティーナ。
「うう‥‥ほんまに、迷惑を掛けて済まなかったわ。もう金輪際、こんな無茶はせえへん‥‥」
「分かってくれれば、宜しいのです。ですが、もし約束を違えればその時は‥‥良いですね?」
ティーナの頭を撫でながら、にっこり微笑む響。だが、その笑顔にかえってティーナは怯えていたりするのだが‥‥。
「ふう、ともあれティーナさんが無事で良かったです。そう言えば、この間の依頼で‥‥」
そう切り出してレイが話すのは、とある遺跡の奥に居る『アルテ』と言う精霊らしき存在が『瞳』を探して欲しいと伝えて居た事。その話を聞くや。
「な、なんでその時ウチに声を掛けてくれなかったんや!?」
「いや‥‥おぬしは今まで海賊に捕まっておったのじゃろう?」
ユラヴィカの突っ込みに、口ごもるティーナ。まさしく身から出た錆。
ともあれ、レイに勧められた通り遺跡の探索を決意した彼女の前に、ぬっと歩み出るのはオラース。
「それにしても、あんたの探してるモノってそんなに大切なのか?」
すると、ティーナは僅かに目を伏せ。
「‥‥せや。ウチにはどうしても『太陽の瞳』を探し出さなならん義務がある。それも、出来る限り早い内に、どんな手を使ってでも‥‥や」
その何処か思い詰めた様な彼女の答えに、戸惑いの色を浮かべる一同。その中で、オラースは笑顔を浮かべ。
「じゃあ、オレも手伝ってやるよ! 暇だったらな!」
そう言って、ティーナの細い小指に自分の小指を絡ませた。所謂ゆびきりと言う奴だ。
すると、ティーナもつられる様に。
「‥‥うん! 宜しゅう頼むわ!」
笑顔で小指を握り返すのであった。
「それとな‥‥弱いくせに一人で海賊に会うな、馬鹿」
――その後、船が港に停泊するまでの間、船上にはずっと怒鳴り声が響き渡っていた。