プラントパニック!〜新年会を護る為〜
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■イベントシナリオ
担当:深洋結城
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 99 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月27日〜02月27日
リプレイ公開日:2009年03月06日
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●オープニング
時期遅れながら新年会と言う名目のパーティーが、とある冒険者の主催の下珍獣屋敷で行われるらしい。
そんな噂が冒険者達の間に広まるまでに、そう時間は掛からなかった。
そしてその余興‥‥と言うか寧ろメインイベントとして、コスプレコンテストなるものも催されるらしい。
‥‥と言う訳で、ギルドのカウンターにはコスプレコンテストへの出場者の他に、審査員やその他スタッフを募集する旨の依頼が張り出されていた。
一体誰が、いつの間にこの様な依頼を申請していたやら‥‥まあ、想像に容易いといえば容易いかも知れない。
カオスの魔物との激戦が続くこのご時勢で、この様な依頼は不謹慎だと考える硬派な者もいれば、コスプレに興味があったり、息抜きに丁度良さそうだと考える者も居て‥‥冒険者達の反応は様々だ。
だが、ざっと新年会への参加者募集の旨を読み流し、その下に付け足される様にして張り出されてた羊皮紙の内容に目を通した途端――その誰しもの目付きが、がらりと変わる。
――と言うのも、遡る事数刻前。
「キャアァァァァァァァ!!!!」
ウィルの街の一角に響くのは、劈く様な悲鳴。
それも、一人だけの物ではない。次第に悲鳴は高低様々なトーンで不協和音を奏で始め。
「‥‥おいおい、うっさいぜ。一体何事なんだぜ?」
そんな悲鳴を背中越しに聞くのは、15歳と言う若さでありながらメイに佇む被服店『レイニーデイ』の店長にして、所謂天界流ファッションデザイナーとして有名になりつつある少女、マリ・ミストレイン。
月道を経由してウィルへとやって来た彼女は商談の為、ウィルのとある被服店に訪れていたのだが‥‥その余りの騒々しさに、思わず青筋を浮かべる。
「ったく、いくらセトタの中心都市って言ったって、賑やかにも程があるぜ。なあ、アリサ‥‥‥‥あれ?」
愚痴を漏らしながら、すぐ隣に顔を向けるも‥‥つい先程まで其処に居た筈の店員の少女の姿は無く。
――かと思えば。
「てんちょぉ〜‥‥此処ですよ〜‥‥」
店の外から聞こえて来た声に振り向けば、そこに居たのは大胆に四肢を広げた姿のアリサ。
「お、おいおい、何やってんだ。いくらチビでいっつも私の影に隠れてばっかだからって、そんなサービスカット狙った所で人気が出る訳じゃ――」
「ち、違います! って言うか言ってる意味分かんないしっ!! どうでも良いから、兎も角助けて下さいっ!!」
「助けるって、一体な‥‥‥‥‥」
硬直。
店の外へ踏み出したマリが見た物は――向かい合う建物を屋根まで覆い尽くしているばかりか、路地の一角までも埋め尽くす様に蔓延る、植物の塊。
「しくしく、何か分からないんですけど、この蔦に張り付いた服が取れなくなっちゃって、それでも引っぺがそうとしたら私まで〜っ」
涙ながらに声を上げるアリサ。見れば彼女以外にもこの蔦に捕われ身動きの取れなくなっている通行人もちらほらと見受けられ‥‥。
「ちょ、おま!? それ、私が貫徹で仕立てたコスチュームっ!?!?」
だが、それよりもマリの意識はアリサの周囲に張り付いている衣服の数々のみに向けられた様子だ。
‥‥しかも、それらはなんと、冒険者達が注文していた、コスプレコンテスト当日用の衣装の数々。
「うぅ、助けて下さい〜」
「あったり前だぜ! 万一破けたりでもしたら、私の信用に関わってくるんだぜ!! 良いかアリサ、今から人を呼んでくるから、動くなよ! ぜえぇぇぇぇぇぇぇったいに動くんじゃないぞ!!」
「え、あの、てんちょ‥‥?」
土煙を上げながら路地を駆け抜けるマリの耳には‥‥憐れな部下の声など届く筈も無かった。
「‥‥その蔦は、きっと先日ウィルの郊外で群棲して居るのが見付かった、謎の植物ですね。しかし、何だって街中に‥‥」
所変わって冒険者ギルド、血相を変えたマリの相手をする受付係は、該当する依頼の報告書を片手に説明する。
「そ、そーなのか!? それで、アレからコスチュームを救い出すには如何すれば!?」
「そうですね、あの植物は布や革にのみくっ付くそうなので、人を助けるのであれば服を脱いで貰う、と言う手もありますが‥‥衣装となると、難しいかも知れませんね。一旦蔦を切り落として、別の場所でゆっくり慎重に剥がす他無いと思いますが‥‥」
「‥‥! そうか、服を脱げば人は脱出できるんだな!? 分かったぜ、それじゃあ私は私で出来る限りの手を打っておくから、増援宜しく頼んだぜ!!」
「え、あの、ちょっと?」
受付係が引き止めるのも聞かず、土埃を上げながらギルドを去っていくマリ。
‥‥しかし、出来る限りの手って。
「まさか、これ以上コスチュームに蔦が張り付かない様、絡まっている人達全員を裸にするつもりじゃないでしょうね‥‥?」
彼女ならばやりかねない。
これは、早急に手を打ったほうが良さそうだ‥‥。
と言う訳で、内容も新年会に関わるものと言う事で参加者募集要項と平行して、謎の蔦への対応と言う目的の依頼が張り出されたのであった。
●リプレイ本文
●先立って
一角で、阿鼻叫喚が響き渡っている頃――。
街中を沈鬱な面持ちで歩く一人の青年の姿があった。
ガルム・ダイモス(ec3467)。ゴーレムニストである彼は技術者としての壁に突き当たり、気晴らしの為ウィルに足を運んだらしい。
「ブツブツブツブツブツ‥‥‥」
それでも意識しなければ、出て来るのはゴーレムに関する事ばかり。
誰かと肩がぶつかろうとも、水溜りに足を踏み入れようとも、すぐ横で多数の悲鳴が木霊していようとも、決して気付く事無く――。
「皆、裸になるんだぜ!!」
――ピタッ。
「‥‥は?」
思わず足を止めたガルムが振り返ってみると、そこで繰り広げられていたのは道沿いの建物一つをまるごと埋め尽くさんばかりの蔦の塊、そしてそれに身動きを封じられ助けを求める人々、と言った光景であった。
そしてその正面には金髪の少女の後姿‥‥どうやら先程の爆弾発言は、聞き間違えでなければ彼女による物らしい。
「この蔦は服にくっ付くんだぜ! だから、服を脱げば脱出できるぜ! 大丈夫、皆で裸になれば、恥かしくないZE☆」
「そ、そんな事出来る訳無いじゃないですかーーーっ!!! 幾らなんでも、こんな人通りの多い場所で‥‥!!」
「でも、何人かもう脱いでる奴も居るぜ?」
「ちょ、ちょっとみなさーーーーーん!!?」
「さあ、アリサ。さっさとお前も脱ぐんだ。これ以上動かれてコスチュームが傷付いたりでもしたら、洒落にならないんだぜ」
「詰まる所やっぱりそこですかーーーーーーーーーーっ!!!!」
「‥‥何やら騒がしいな」
そんな二人の会話に耳を傾けるのは、同じく蔦に絡まっているアレッ‥‥‥‥あれっ?
ええと‥‥エルフの騎士アレックス・ダンデリオンには間違いないようだが、何だか格好がおかしい。
と言うのも、妙に首元が苦しそうな襟巻きを巻いていたり、妙に形のピシッとしたジャケットを着ていたり、妙な色眼鏡(天界製品)をかけていたり――。
「や、こんなのぃやぁっ、アレックス‥‥助けてぇ」
‥‥その頭上から聞こえて来る声の主は、シャリーア・フォルテライズ(eb4248)。
どうやら二人は来る新年会‥‥そのメインイベントとも言えるコスプレコンテストにおける衣装合わせをしている最中、運悪く蔦の魔手に掛かってしまったらしい。
と言う訳で、アレックスの格好は天界における人気のアニメーションと言うものをモチーフにした格好であり、シャリーアもそれにちなんだ格好を――。
「シャリーア!? くっ、無事か‥‥‥‥‥‥‥」
――反射的にアレックスが視線を上げると、目に飛び込んできたものは白い絹の様な柔肌。
シャリーアは元々水色を基調とし、身体のラインをこれでもかと言う程強調する全身タイツをモチーフとした衣装を着込んでいたのだが‥‥その丈夫さはお察し。
何とか抜け出そうと力を篭めれば、蔦が凄まじい粘着力でそれを拒み‥‥綱引きの結果、胸元とかその他諸々、やばい感じに破けてしまっていて。
「‥‥‥‥」(ぐったり)
現時点では、主にアレックスが無事では済んでいなかったり。
そして別の場所‥‥蔦の伸びる建物の程近くにも、新年会に参加するつもりであったものの、運悪く蔦に絡まってしまった冒険者の姿があった。
「天界渡来の可愛らしい服は、僕のお気に入り‥‥なんだけど」
大きく溜息を吐きながら、自身の周囲に散在するコスチュームの数々を見遣るイリア・アドミナル(ea2564)。
卓越した植物知識を持ち合わせる彼女でさえ、この蔦は初めて見る植物であった。
だが、観察してみるに、この植物の表面を覆っている粘液に絡め取られた布や革は、早々簡単には剥がれそうにないと言う事は分かる。
マリの言う通り一切の衣服を取り払ってしまえば、脱出も可能であろうけど、流石にこんな人の往来の多い場所で素肌を晒すのは如何なものか‥‥。
けれど、確かにこのままでいようにも、絡まっている者達が動けば動く程蔦も不規則にわしゃわしゃと蠢き、コスチュームへの被害も段々と拡大して行く。
「皆さん、落ち着いて下さい。きっと間も無く、ギルドから派遣された冒険者が助けに来てくれます。それまでは、出来る限り動かずにじっとしていて下さい」
冷静にそう声掛けするイリア。されど多くの者達は気が動転してしまっていて、中々暴れるのを止めようとはしない。
そんな中漸く、お待ち兼ねの冒険者一行が現場に現れた。
●鉄壁の騎士
「何故、自分はここに‥‥。アシュレー殿の力か‥‥」
ウィルの街中で事件発生と聞き付け、遠方から大急ぎで駆け付けて来たリール・アルシャス(eb4402)は呟く。
‥‥何故そうしてまで此処に来たのか。その行動動機を自問自答した結果が、西萌不敗・マスターウィルことアシュレー・ウォルサム(ea0244)の存在があってこそ、と言う事らしい。
そのアシュレーはと言うと。
「ふむ‥‥まあなかなか楽しい光景が拝めそうだけど」
飄々とした様子で蔦の塊を見上げ、その中の被害者(主に女性)をざっと見渡した後、間近の衣装‥‥マリが手掛けたコスチュームを見遣る。
「あいにくとこの衣装には新年会の成否がかかってるからね」
「‥‥と言いつつ、その手に持ったデジカメは何なのだろうか?
――――。
彼の背後には、すっごい満面の笑みのリール。
擬音を付けるならば『ゴゴゴゴゴ』とか『ドドドドド』とか。
さしものアシュレーも、これには腰が引けていた。
「あ、いや‥‥ほら、新年会成功祈願って事で、縁起物をカメラに収めておこうと」
「意味が分からないっ!!」
バッ! と、デジタルカメラを取り上げてしまう。
‥‥彼女、リールの今回の行動指針、それは。
全ての面で女の方の安全を優先、男の方を犠牲に。(笑)
無論、脱衣なんて持っての他。
自身のサービス精神の無さに少しだけ反省したりもしたが、この意志は傍から見れば非常にオイシイ。(ネタ的な意味で)
その犠牲者の筆頭、と言うか要注意人物と言う事で、アシュレーがマークされるのは至極当然と言うか何と言うか。
ゴネてデジタルカメラを取り返そうとするアシュレーを片手で制しながら、リールは改めて蔦の方へ視線を向け。
「これより自分達が救助に当たる! それまでは極力動かず、落ち着いて待っていて欲しい。尚、周囲の者達も余り近付かない様!」
大きな声で注意を促せば、皆が皆漸く安心したと言った感じで、漸く今まで暴れていた者達も動くのを止めた。
「ところで、メイから来るマリさんの迎えには、ミーヤさんが向かっていたのですよね? ジャックさんの様子見も兼ねて、彼女に話を聞こうと思っていたのですが‥‥一体何処に?」
ファング・ダイモス(ea7482)が蔦の至る所を見回してみれど、有人無人の服の群の中に、その姿は見えない。
ならば難を逃れて辺りに居るのかと思えば、それでもやはり見当たらない。
マリにも尋ねてみたが。
「ミーヤ? さあ、月道では会ったけど‥‥そう言えば、蔦が出てきてから見てないぜ」
とのこと。
‥‥何となく胸騒ぎがするが、今この状況を放っておいてまで彼女を探しに行く訳にも行かない。
一先ずファングはテンペストを鞘から抜くと、今一度蔦の塊を厳しい目付きで見据えた。
一方で。
「天界の衣装のコンテストか、気晴らしには持って来いです。ウィルの文化は進んでいると、このような催しが有る度に思います」
「そうですね、それにこの衣装と言い、こっちの物と言い‥‥デザインもさることながら、機能性も良さそうです。メイのゴーレム化推進の為、ウッドゴーレムにこの衣装を参考にした装甲をつけて、カスタム+見栄え重視のゴーレムを作れないでしょうか‥‥」
「い、いや、流石にそれは‥‥どうかと」
蔦対処の為にと訪れた冒険者の一人アルファ・ベーテフィル(eb7851)は、ガルムの発言に苦笑を浮かべながらツッコミを入れる。
二人とも新年会で行われるコンテストが楽しみでウィルに訪れたのだが‥‥その結果としてメイに『魔法少女型ストーンゴーレム』とか『天使メイド型ウッドゴーレム』が跋扈し始めた日には――――本当にどうなることやら。
「ま、まあ一先ずはこの蔦を取り除きコンテストを無事に開催させて、気を晴らしましょうよ」
「‥‥そうですね。こんな邪魔な蔦、さっさと切り払ってしまいましょう」
一転して、何やら不機嫌そうな調子で言うガルムに、アルファは首を傾げる。
冒険者達の思惑は様々だが、する事は一つ。
各人はそれぞれ伐採の為の道具を手に、蔦の塊へと向かって行った。
●伐採時々ポr(規制)
――その気になった冒険者達の手際は、凄まじかった。
自らも絡まった状態でありながら指示を送ってくるイリア、彼女の言う通りに蔦を切っては避け、取り除き、徐々にその体積が減って行く。
だが、切り落とせど切り落とせど蔦の中枢に埋まっている者は尽きず、下手をすれば彼ら(もしくはコスチューム)を傷付けてしまいかねない。
慎重に、身長に蔦を取り除いていく冒険者――と、その時。
「‥‥ん? 指輪?」
「あぁ! それ拾って下さい!」
ガルムが拾ったのは、青色と銀色の二種類の金属の絡み合った様な、奇妙な指輪。
直後聞こえた声に、視線を上げると‥‥‥‥。
「!?!?!?!?!?!?」
其処に居たのは、大事な部分が色々と破け、文字通りあられも無い格好で宙吊り状態になっているシャr
――ゴッ!!
「‥‥あ。い、いかん、つい‥‥」
鳩尾に一撃を受け、気を失ってその場に倒れ落ちてしまうガルム――と、その横にはアレックス。
‥‥やっちゃったらしい。
「すまぬ。今リカバーを‥‥」
「キャアァァァ!!」
唐突に響いた悲鳴に顔を上げれば、其処には‥‥身を捩って何とか内股を隠そうとしているシャリーアの姿。
今のアレックスの動きに連動した蔦により、今まで辛うじて無事だった一番拙い部分にまで魔手が及んでしまったらしく‥‥。
――アレックスは考えた。(鼻血を堪えて)
暫く待てば、冒険者達が助けに来てくれる‥‥が、この様な彼女の姿を見せられるか?
否、断じて否!!
意を決した彼は、腕に力を込めて服を引きちぎる。すると、現れるのは若干ラインは繊細でありながら、やはりエルフらしからぬ程に逞しい身体つき。
‥‥左肩から右わき腹にかけての大きな切り傷、その存在を唯一知る者は、頭上で助けを求めている彼女――。
「シャリッ‥‥‥おや?」
――居なかった。
先まで其処でけしからん姿になっていたシャリーア、その本人どころか布切れ同然になっていたコスチュームまでも、忽然と姿を消していて‥‥。
ポスッ――。
と、アレックスの胸に何か飛び込む様な感覚。
「お願い‥‥私を蔦の無い所まで連れて行って。あなた以外に見られたくないの」
「シャリーア‥‥か?」
――――桃色結界(ホーリーフィールド)発動。
「‥‥もしかしてお邪魔?」
いえ、そんな事ないと思いますよ、リールさん。
ともあれ、リールによって蔦を処理して貰えた事により、戒めから解放されたアレックスは、シャリーア(透明状態)と共に何処かへと消えて行った‥‥。
「‥…って、ガルム殿!? 如何した、何故こんな所で倒れているッ!?」
一方その頃。
「う〜ん、壮観壮観。後でウルティムにでも‥‥いや、神父に見せた方が面白いかな?」
パシャパシャ。
って、アシュレーさん? デジカメはさっき取り上げられたんじゃ‥‥。
「‥‥スリましたね」
「当然♪」
と言う訳で、アシュレーはストームサイズで蔦を切り裂きながら、もう片手でしきりにデジタルカメラのシャッターを切っていた。
「やれやれ、程ほどにしておいて下さいよ‥‥‥‥あれ?」
隣のファングのテンペストを振るう手が止まる。
彼が視界に捉えたのは――淡いピンク色のヴェールを纏った、白のワンピース。
「‥‥あの服、何処かで見た様な‥‥あれ、アシュレーさん?」
気が付くと、傍らにアシュレーの姿は無くなっていた。
――蔦の蔓延る建物の内部、其処に一人の人影があった。
ランジェリーセット「聖夜」で辛うじて隠す部分を隠している彼女こそ、新米冒険者ミーヤ・フルグシュタイン。
この蔦の事は別の依頼の報告書で知っていた彼女は、マリの「脱げ!」発言の前の時点で自ら衣服を捨てて蔦から脱出し、事件の原因究明の為に建物の中に侵入していたのだ。
そして屋内まで埋め尽くす蔦を掻き分けながら、漸く見付けたのは一枚の羊皮紙。
『ごめんなさい、珍しい植物だと思って研究していたら、突然変異を起こしてしまいました。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、後始末をお願いします』
「‥‥‥‥」
ちなみに言うと、建物の内部は既にもぬけの殻。
やるせねぇ。
「はぁ‥‥仕方ありませんね。少しずつ地道に、処理をしていくしか」
パシャパシャパシャ――。
「‥‥へ?」
「やあ、ミーヤ。無事かい?」
アシュレー推参。
パシャパシャパシャパシャ――。
「いっ‥‥‥‥いやああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――ちなみにこの後、リールの鉄槌が下された事は言うまでも無い。
●いざ新年会!
元凶の捕縛、及び再発の防止まで完璧にとはいかなかったものの、街の一角を覆っていた蔦を完全に片付け、イリアの指示の下でその種も除去した冒険者達。
その数日後、新年会は無事執り行われる事となった。
主催者のアシュレーをはじめ、今回蔦の対処に当たったファングやイリア、アルファ、ガルムによる尽力もあり、短期間の内に即席のステージまでをも作り上げ、立派なパーティー会場として仕上がった珍獣屋敷のダンスホール。
問題のコスチュームはと言うと、シャリーアの発注していた数点を始め、何着かが期間中における修繕が不可能なまでに破損してしまったものの‥‥一先ずは最低限コンテストを進行する上で問題が無い程度に確保する事が出来た。
――無論、無事では済まなかったコスチュームの分だけ、マリが悲鳴を上げた訳だが。
ともあれ、今回蔦の除去に当たった中で、コンテストへの参加者としての飛び入り参加を申し出て来たイリア。
参加者として正式な手続きをするのには間に合わなかったので、余った天界流魔法少女(?)のコスチュームを着ざるを得なくなった訳だが‥‥。
「私が幾つかのパターンをマリ殿にお願いしていたからな。‥‥この間で殆ど駄目になってしまったが、二組分の体裁が整う程度には無事で良かった」
「そうですね、シャリーアさんには感謝しています。こんな可愛い服を貸して頂けて‥‥」
「なに、礼ならば我侭に応える為、徹夜して全ての衣装を仕上げてくれたマリ殿に‥‥と、言えないのが人情と言う物か」
「‥‥そう言う事です」
そう、マリが最初に被害者に「脱げ」とさえ言わなければ‥‥。
自ら脱いで壮絶な後悔をする女性も、それに伴いリールに撃沈させられる男性も、殆ど出なかった事だろう。
それもこれも、マリのコスチュームに対する執心によるもの‥‥果たして感謝して良いものか、微妙な事この上ない。
だがしかし、イリアの登場は結果として大いに会場を盛り上げる事となった。
「4番、イリア・アドミナルです。コスプレコンセプトは、『桜の魔法少女』‥‥でしたっけ?」
これも、シャリーア曰く天界のアニメーションを元にした物らしいのだが‥‥マリは兎も角として、一体シャリーアがそれをどうして知っていたのかと言う疑問が(略)。
ともあれ、コンセプトからも察せる通り彼女のコスプレは参加者中最もキュートなものとなっており、これにより結果を見てみれば『萌え』要素の得票率が最も高かったりする。
何にしても、誰しもが心待ちにしていたコンテストも含め、新年会を大いに楽しむ事の出来た冒険者達。
新年と言うには少々時期が過ぎて久しいものの、これからのアトランティスを担っていく者達――その上での景気付けとしては、最高の催しとなったことだろう。
会の翌日、改めて一度ダンスホールに集った参加者達。
その中央、コスプレコンテストに用いたステージ上で、此度のパーティーを主催したアシュレーは満足そうな笑みを浮かべ、高らかに声を張り上げた。
「それじゃあ、改めて。皆、今年も宜しく!!」