ジューン・ロマンスへ向けて
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■ショートシナリオ
担当:深洋結城
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:4
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月15日〜05月18日
リプレイ公開日:2009年05月23日
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●オープニング
いつもの通り、忙しそうに教会の内部を右往左往するのは神父のヨアヒム・リール。
とは言えそれでもこの日は比較的大人しい方で、いつに無くゆっくりと礼拝堂の掃き掃除に勤しんでいると。
「おや、こんにちは」
そこに現れるのは、一組の年若い男女。
真っ直ぐヨアヒムに向かって来た彼らにヨアヒムが会釈すれば、相手もつられて頭を小さく下げ。
「あの、此方に相談室があると聞いて来たのですが‥‥」
「相談室‥‥ああ、懺悔室の事ですね。でしたら、そちらの部屋ですよ」
指差された方向に目を向けると、今度は深くお辞儀をして其方へと足を進めて行く二人。
「‥‥これで三組目、ですか」
おもむろに呟きながら、思い起こすのは先日押しかけられる形で弟子として迎え入れ、今は懺悔室を取り仕切っているヴィアの事。
懺悔室と言っても、先の事例の通りウィルの人々からは相談所と言った感じで認識されているらしく、元よりジ・アースにおける風習に基づいたものであるため、利用者は然程多くない。
‥‥筈なのだが、この所は特に先程の様なカップルが懺悔室を入用として足を運んで来る事例が多いのだ。
特にこの日に至っては既に三組目。
――他人のプライベートに関わる事とは言え、こうなると気になってしまうのが人の性。
それは神父たる者とて例外では無いらしく、先の男女が去っていったのと入れ替わりで、ヨアヒムはヴィアの元に足を運ぶ。
「‥‥今の方々は、何と?」
「はい! 来る六月に向けて、結婚の相談にいらっしゃったそうです」
「あ‥‥!」
言われて思い出す。
そう、来月は所謂ジューンブライドの時期。神職に就いてから今に至るまで、数々の新たな夫婦を祝福し続けてきたでは無いか。
「いけないいけない、すっかり失念しておりました。となりますと、今からでも準備を始めなければ‥‥ん?」
と、その時背後に気配を感じたヨアヒムが振り返れば、其処には何処か難しい顔をしたエルフの騎士アレックス・ダンデリオンの姿があった。
「お忙しい所申し訳ない、神父様。少々相談に乗って頂きたいのだが‥‥」
そう切り出す彼の顔は真っ赤。
――それだけで、大体の事情は把握できた。
彼らだけでなく、来る六月に向けて結婚式を挙げようと考える者はウィル全体を通しても少なくはない。
今年は教会の壁に刻銘を残すことこそ出来はしないが、それでもこの時期に婚姻の誓いを交わすと言う行為にこそ、彼等にとっては意義があるのだろう。
ならば、そんな世の夫婦予備軍の為、最高の式場を用意するのが神父たるヨアヒムの仕事。
丁度先日ヴィアが冒険者達と共に作り上げてくれた花畑も、その頃には植えられた花々が咲き誇っている頃であろう。
それらも鑑みて、プランを練らなければ‥‥。
――その日の午後、ギルドには新たな依頼が張り出された。
ジューンブライドに向けての企画立案者募集。
とは言え、いつもの祭りの様に大騒ぎになってしまってはいけない。
その加減を考慮してか、他のものに比べて依頼書は小さめ‥‥けれど、色々と思う所のある冒険者達の目には、一際目立って映ったらしい。
かくして、人々の新たな門出を祝福するべく――ヨアヒムは、協力者が集まることを切に祈るのであった。
●リプレイ本文
●馳せる想いはそれぞれ
「にゅふふふふふ♪」
ギルドから教会へと向かう道中、足を進める冒険者の中からそんな声が聞こえてくる。
道往く人が振り返ってみれば、其処には頬に手を当てながら蕩けた表情で身をくねらせるシャリーア・フォルテライズ(eb4248)の姿。
「幸せそうだね、シャリーア殿」
「はい、それはもう♪ にゅふふふふふふふ♪」
モディリヤーノ・アルシャス(ec6278)が尋ねれど、その頬の緩みは留まる所を知らない。
そんな彼女に並んで歩くはジュディ・フローライト(ea9494)。
今回の依頼人ヨアヒムと同じく聖職者の彼女は、どちらかと言えば祝福する側。故に、その顔には朗らかで嬉しげな笑みを浮かべながら。
「二人の新たな一歩を歩み始める、大切な時。フォルテライズ様達を始め多くの恋人達が迎えるその時を、シッカリキッチリバッチリと祝福するのがわたくし達の務め‥‥」
(「‥‥そして‥‥」)
ふと浮ぶのは、只ならぬ決意を秘めた表情。その故を、知る者は少なく‥‥決して少なくないのだが(ぁ) それでも彼女の心に決めた先にあるであろう結末を思えば――後ろを歩くアシュレー・ウォルサム(ea0244)も、流石にいつも通り朗らかな表情を浮かべてはいられなかった。
だがそれも一瞬の事。彼は居住いを正す様に笑みを浮かべ、道すがら「必要物資を調達してから向かいますね〜♪」と言って分かれた倉城響(ea1466)の向かった先をふと見遣りながら、再び前を往くうら若き乙女二人に視線を向ける。
「それにしても、ジューンブライトかあ‥‥懐かしいねえ」
――思わず遠い目をしてしまった。
●花咲ける門出
教会に集まり、卓を囲う冒険者達。
その中で最初にジュディが、淑やかに口を開きながら立ち上がる。
「教会内にて挙式、場所を移してのパーティー‥‥まず、大まかにはこの様な流れにしては如何でしょう」
「そうだね。当日は式と披露宴と言った段取りで、披露宴は賑やかに、対して挙式の方はある程度形式を整えた形で進めるのが良いかな」
アシュレーが言えば、仲間達も賛同の意を唱える。
かくして形式はある程度可決された所で、今現在考えるべくは厳かに執り行う挙式に関して。
「それで、わたくしが考えましたのは『花咲ける門出』と言った内容の演出です。先日教会の中庭の方へ植えさせて頂いたお花も存分に活かせるように‥‥」
「なるほど、良いと思うよ。さっき見た限りだと、どの花も良い感じに咲き始めているし‥‥きっと素晴らしい演出になると思うよ!」
そう言うモディリヤーノの顔は泥だらけ。
それはつい今しがたまで、教会の備品を手に有らん限りの知識と技術を振り絞って、一生懸命花々の手入れをしていた為だろう。
彼の様子に、ジュディは顔を綻ばせる。
――その後暫くは、花を扱った演出について談義を進めていた一同。
その結果纏まった内容は、以下の通りだった。
・基本はしつこくならない様白い花を中心に使う。
・礼拝堂の中もウェディングリース等で装飾。
・バージンロードは礼拝堂の祭壇から教会の前にかけて敷き、その両端を花で飾る。
・参列者はそれぞれ花を手に、誓いを交わした新郎新婦を門の外で迎える。
・式場から披露宴へ移る際に、馬車でパレードを行いながら道沿いの建物の住人達に花弁を撒いてもらう。
「つまりは、徹底的に花咲く様に飾り立てる、と」
それら全てが実現すれば、清楚ながら華やかな雰囲気の下で新郎新婦は新たな門出を迎えられるだろう。
反対意見など、あろう筈も無い‥‥が、ヨアヒムには一つの懸念があった。
「演出としては申し分ありませんが‥‥ここの中庭にある分だけでは、お花が足りなそうですね」
言われて見ればその通りである。
特にモディリヤーノ等からすれば一生懸命育ててきた手前、それら全てを摘み取ってしまうと言うのも気が引けた。
如何すべきか‥‥一同が頭を抱える中、ふとヨアヒムが口を開き。
「‥‥私の知り合いに、花を分けて下さいそうな方の心当たりがおります。ご迷惑でなければ、そちらの方にお話を付けてみましょうか」
迷惑でなどあろう筈も無い。冒険者達の快諾を受け、かくして花の調達に関してはヨアヒムに一任される事となった。
さて、次に上がってくる問題は会場に関して。
これに関しては、ほぼ全員が同じ事を考えていた様だが‥‥思わず苦笑を浮かべる一同。
と言うのも、その場所とは――。
●珍獣交渉
「ひさしぶりーーー響たんげふぉるっ!!?」
「あーら、ごめんなさい? 手が滑っちゃいましたわ」
手が滑った位で、人が壁まで吹き飛ぶだろうか。
所変わって珍獣屋敷。
今まで様々なイベントにおいて会場として機能してきた此処ならば、披露宴会場としても最適であろうと言う事で、冒険者達の意見はほぼ一致していた。
もっとも、それも家主の素行に関して目を瞑る事が出来れば、と言う前提条件付きだが。
「お久し振りですね。相変わらずの様で、何よりです♪」
口元に着物の袖を持ってきながら、慎ましい笑み交じりで言う響。
「それで、今日は何の用です?」
レモンが尋ねれば、響は笑みを浮かべながら――僅かにその表情を真剣なものにして。
「はい、実は少しお願い事がありまして‥‥。と言うのも、このお屋敷をジューンブライドのパーティ会場として、使わせていただきたいのです。勿論、準備や片付けはこちらでしますので考えていただけませんか?」
するとレモン、驚いた様に目を見開いた。
と言うのも‥‥そもそも彼女、どうやら『ジューンブライド』と言う言葉を知らなかった模様。
そこで、冒険者達は彼女にその習わしの簡単な概要を説明する。すると――。
「なるほど、6月に結婚した夫婦は、幸せになれると言う言い伝えがあるんですね。幸せな夫婦かぁ‥‥」
「――もしもーし、レモンさーん?」
「‥‥返事が無い、ただ妄想中の様だ」
蕩けた表情で立ち竦んだまま動かなくなる彼女に冒険者達は苦笑を浮かべると、止む無く今まで忘れ去られていたウルティムに視線を向ける。
「うーん、ジューンブライドかぁ。けど、僕には縁の無い話だしなぁ」
そ れ は そ う だ。
「まあまあ、そう言わずに。ほら、アレックスだって結婚するつもりでいるんだろ?」
「!? ア、アシュレー殿!!」
突然話題に上げられた事で、耳まで真っ赤にしながら叫び声を上げるシャリーア。
「だったら、配下の者の願いに報いてあげるのも、上の務めだよ」
「分っては居るんだけどー‥‥」
言いながらウルティムが視線を向けるのは屋敷内を忙しそうに駆け回っているメイド達。
準備や後片付けは冒険者の方で行うと申し出てくれてはいるが‥‥やはりこの屋敷を使うとなると、必然的にメイド達にも負担を掛ける事になってしまうだろう。
それが、ウルティムにとって唯一の気掛かりでもあった。
「その‥‥少しでも不都合があるのでしたら、無理して引き受けて下さらなくとも宜しいのですぞ?」
口を開くのはシャリーア。
「無論、此方を貸して頂ければそれに越した事はありませんが、それで誰よりもアレックス、ひいてはその主のウルティム殿に迷惑を掛けてしまうのも気が引けますし‥‥。私は彼と二人で納得できる場所で式を挙げたく思っています、ですから‥‥」
そう言われると、何とか応えてあげたくなるのが人の情。けれど、やはりメイド達のこの所の忙しさに拍車を掛けてしまうのは気が引けて。
「良いじゃないですか〜、使わせてあげましょうよ〜」
のんびりした声と共に現われるは、パラメイドのミルク(毒入り)。
「私達なら平気ですよ〜、もうイベントも慣れっこになっちゃいましたし〜。それに折角の結婚式ですも〜ん、初々しい新郎新婦を死愉苦腐矩(しゅくふく)してあげたいじゃないですか〜♪」
―――気にしないが吉だろう。
ともあれ、彼女の言葉にそれでも尚頭を抱えるウルティム‥‥そんな彼に。
「それに、披露宴だと新婦の友人って事で、可愛い子が沢山来るかもよ?」(ボソッ)
「この屋敷の何処でも、好きに使ってください」(キリッ)
と言う訳で、披露宴会場として珍獣屋敷の確保に成功した冒険者達。
ついでに聖歌隊を務めてくれそうな子供達にも心当たりがあり、メイド達の全面的な協力体制も得る事が出来て、いよいよジューンブライドの計画が現実的なものとなってきた。
モディリヤーノは意気込みながら、ふと去って行くミルクに視線を留めて。
「‥‥ところでアシュレー殿。ミルク殿、また‥‥」
「ああ、特盛りだね。またパンでも入れて――」
「はっずれ〜。今はパンなんかじゃありませんよ〜♪」
「「アッー!!?」」
●会議の後で
「で? 結局どうするんだい?」
依頼最終日。この日冒険者達はそれぞれ思い思いに教会などで過ごしていた。
‥‥とは言っても、アシュレーの考えていた挙式のリハーサル(新婦役はミーヤ)を行うには圧倒的に時間が足らず、断念せざるを得なかったという経緯もありきなのだが。
そうして今、ヨアヒムの前に両腕を組みながら仁王立ちをする彼は、決して八つ当たりをしている訳では無いと思う。うん。
だが対するヨアヒムも、何処か沈んだ様子で手を組みながら床を見詰めるばかり。
そうして暫くの間の後、彼の口から出てきた言葉に。
「ッ!! 歯ぁ食いしばれっ!!」
――ドガッ!
「――すまない、待たせてしまったな」
「ううん、お気になさらず‥‥私も今来たばかりですから」
息を切らせながら現れたアレックスが言えば、教会の扉の前に寄りかかっていたシャリーアはその正面に歩み寄る。
「それで、お話とは?」
「ああ、ええと‥‥‥‥歩きながら話そうか」
彼が促すと、どちらとも無く二人は手を繋ぎ、ウィルの夜道を歩き出す。
――そうして気が着けば、正面には月道の建物が聳えて‥‥って、幾らなんでも歩き過ぎだと思う。
「シャリーア」
ふとここで、漸くアレックスが口を開くと。
「ありがとう」
「え? と、突然どうしたんです?」
「いや、きちんと礼を言っていなかった気がしてな。‥‥リチャードの事、本当に感謝している。貴女達が居なければ、きっと私か彼のどちらかが‥‥ッ」
「ああ、その事でしたら――」
言い掛けて止まる。と言うのも、咄嗟に顔を逸らすアレックス――その目には。
「アレックス? 泣いて‥‥いるのですか?」
「い、いや‥‥っく‥‥すまぬ、感極まってしまい‥‥」
振り払う様に、目を拭うアレックス。
そして向けられた顔には、既に涙の跡さえなく‥‥異様に目立つ傷跡だけが、ただ残っていた。
すると、シャリーアはふふと微笑を浮かべ。
「どういたしまして。けれど、今この様な形に収まることが出来たのは‥‥何よりも貴方の心ありきですよ。人を憎もうにも憎みきれない‥‥修羅となろうにも、人らしさを捨てきれない」
「それは‥‥私が甘いと言っているのか?」
「そうかも知れませんね♪ けど、私はそんな貴方だから‥‥心根は優しい貴方だからこそ――」
「シャリーア」
慌てて切られる言葉、そして。
「‥‥それは、私も同じだ。最初は正直、煩わしいだけでしかなかったが‥‥今となっては最早、私にとって貴女の居ない世界など考えられはしない」
「アレックス、それは――」
「結婚してくれ、シャリーア」
――。
時が止まった様な感覚、足下に散らばる手製の菓子の詰められた箱の数々にも、意識が向かない。
そして、シャリーアの口から幾言か紡がれると、そのまま二人の顔は近付いて行き――。
「‥‥あ、ヨアヒム様。来て下さって‥‥ど、どうなさったのですか!?」
「あ、いえ、大した事ではありません、どうかお気になさらず‥‥」
その頃の教会の懺悔室、現れたヨアヒムの左頬が腫れ上がっているのを見て、ジュディは慌てて駆け寄る。
幸い、この程度ならばリカバーで簡単に治る。手早く治療を済ませた二人は、改めて向き直り‥‥そして、沈黙が訪れた。
「‥‥幼い頃、夢見ていた事が御座います」
そんな中ふと、語り出すのはジュディ。
「殿方と恋をし、結ばれて、子を授かり、幸福な家庭を築く‥‥ごくごくありふれた夢を」
――ヨアヒムは、胸が締め付けられる様な想いに捉われた。
それはきっと、全ては叶わない夢――その理由を、彼はよく知っていたから。
「今こうしてお側に居られるだけでも、身に余る幸福ですのに。‥‥それ以上をと望んでしまう、浅ましい自分がいるのです‥‥」
以前、酒場の大ホールで彼女は思いの丈を打ち明けた。
神父ヨアヒム・リール――彼の事を慕っている、と。
だが、それに対する彼の答えは。
「しかし、残り少なくとも偽らず『活きる』と、あの夜心に決めました、から」
そう、説法をしただけ。
‥‥彼自身、答えを出していなかった。いや、答えられなかった、と言う方が正しい。
願わくば、神に遣えるが故身の操さえも自由に出来ない自身への好意は‥‥気の迷いであって欲しかった。
だが、それをはっきり口に出せなかったのも事実‥‥彼女の事を案じて、と言えば聞こえは良いが、実際はそうでは無い。
「神父様‥‥いえ、ヨアヒム。せめて、ジュディ・フローライトのこの気持ちは、気持ちだけは‥‥受け取って、心に留めていて、下さい」
――言い終わって暫く、無言で立ち上がり、懺悔室を後にしようとするジュディを。
ヨアヒムは、引き止めた。
そして、そっと、慎ましい額に顔を近付けると。
――チュッ。
「っ!?」
突然の事に、何が起こったか分からず顔を真っ赤にするジュディ。
そんな彼女に、ヨアヒムはいつも通りの笑みを浮かべ。
「‥‥ご存知の通り私には、貴女の夢を叶えて差し上げる事が出来ません。‥‥司祭としての地位を無くせば、それも不可能では無くなりますが‥‥」
「そ、それはいけません!」
思わず、声を張り上げるジュディ。
犠牲を払ってまで得るべき幸せなど、虚無でしかない。後悔を残す決断をする事は‥‥彼女の吟持に反するのだ。
「ありがとう御座います‥‥私にも、その様な事をできる程の度胸は御座いません。ですが――」
ヨアヒムはそっとジュディの手を取り、自身の左胸に当てる。
「私の心は、決して此処から揺らぎません。夫婦とはなれなくとも、いつまでも貴女の傍に在り続けます‥‥最後の期、その先においても、きっと」
「ヨア、ヒム‥‥様ッ‥‥」
気が付けば、小さく鳴咽を漏らしていたジュディ。
そんな彼女の額に、ヨアヒムはもう一度、そっと口付けた。
――礼拝堂では、青年が祭壇に向け祈りを捧げていた。
モディリヤーノだ。
彼はアトランティス出身ながら、天界の流儀に沿って祈っていた。
そんな彼の後ろから響、そしてアシュレーも加わり、三人は厳かな雰囲気の中ただ黙々と祈りを捧げる。
――願わくば、誰しが笑顔で思い出せるような。
そんな、幸多き結婚式となります様に。