【新隊設立】見分役、土方歳三
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■ショートシナリオ
担当:御言雪乃
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:11月20日〜11月25日
リプレイ公開日:2005年12月01日
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●オープニング
祇園を過ぎ、町屋の灯りが途絶えだしたところ。
わらわらと現れた浪人風の侍達が、別の侍の集団を取り囲んだ。
その侍の集団の数は四。浪人達の数は、およそその三倍はある。
が、四人の侍達には動揺はない。むしろ、数で凌駕するはずの浪人達の面が強張っている。
「俺が誰か、わかっての狼藉だろうな」
四人の中央、一人着流し姿の侍が口を開いた。
刹那、一語も発することなく浪人達が刃を舞わせ、殺到する。
迎え撃つ刃光は四。秋夜を斬り裂いて。
瞬時にして四人の浪人が弊れ伏した。続けて、また二人――
圧倒的な。
それは技量の、戦力の差。中でも着流しの侍の鬼神の如き強さはどうだろう。
最後の一人を斬り伏せて、着流しの侍は刃の血をふるった。ぱちりと鞘におさめて後、何事もなかったかのようにすたすたと歩き出す。
その後を追うように。浅葱色の羽織を纏った三人の侍もまた冷たい風の中に足を踏み出した。
幾許か後。
横たわる浪人達からやや離れた暗闇の中。
ふっとわいた気配のひとつから声が流れた。
「やはり、ただでは討てぬ」
「思えば祁蔵を始末したこと、早計ではなかったか」
「馬鹿な」
最初の気配の主が嗤ったようである。
「ガキに同情するような腑抜けはいらぬ。それより、何か策を講じねばなるまいな」
云い捨てて、気配がすいと消えた。そして、別の気配もまた――
入り口をくぐった侍を見とめて、冒険者ぎるどの受付の少女の眼がすっと細められた。
「これは高島様。此度はどのようなご用でしょうか」
「嫌味を云うねえ」
にんがりと笑い、一升徳利を担いだまま平手造酒は少女の前にどっかと座った。
「今度は新撰組十一番隊組長、平手造酒としての依頼だ」
「承知しました」
真顔に戻ると、少女は促した。
「では、ご依頼を受けたまわりましょう」
「ああ」
頷くと、平手は酒で唇を湿した。
「前回の依頼があったろう」
「はい」
少女は白く形の良い顎をひいた。前回の依頼とは、抜けた新撰組隊士捕縛を装った新隊士の見分のことである。
「確か、入隊はお預けとなったとか」
「そうよ。上からのお達しでな。で、だ。此度は、その上が見分することになった」
「上の方が? ということは、再度新隊士の募集でいらっしゃいますか?」
「そう。その再度って奴だ」
にんまり笑うと、すっと平手は立ちあがった。
「此度も必ずしも新撰組に入る必要はねえ。まあ腕試しっていうか、遊びのつもりで来てくれりゃあいい。それと――」
何を思い出したか、平手が云い継ぐ。
「前回で思い知らされたが、野にどんな手練れがひそんでいるか知れたものじゃねえ。依頼は冒険者だけじゃなく、ひろくふれてもらうぜ」
「ち、ちょっとお待ちを」
踵を返す平手を、慌てて少女は呼びとめた。
「ひとつお聞かせ願いとうございます。その見分役をおつとめいただく方のお名前は?」
「新撰組副長、土方歳三」
応えは、背を向けたままの平手から響いた。
まるで旋風が吹き込んできたよう。
ややあって、ほっと息をつくと少女は帳面に平手の依頼を書込みはじめ――覗き込む顔に気づいた。
やや薄くなったお頭の、にこにことした侍。身なりからして浪人者であろう。
「あの、何か‥‥」
「拙者、庄司八郎と申す浪人者でござるが‥‥。今うかがったが、新撰組の試験を受けるのに、浪人者でもかまわぬのでござろうか」
「え、ええ」
食い詰め浪人らしき侍――庄司八郎の勢いにおされるかのよう少女が肯首すれば。庄司八郎は瞳輝かせ、ぐっと拳を握り締める。
「よし、此度こそは必ず我が腕前を天下に示し、必ずや仕官してくれようぞ」
●リプレイ本文
浅葱の羽織をはおった侍が、用意された駕籠に乗り込んだ。
一瞬だが、ちらりと見えたその横顔は端正ともいえなくはない。それよりも、鞘の内の名刀のような凄みはどうだろう。
あれが――
あれが新撰組副長、土方歳三か!
さすがに身を強張らせる冒険者を含めた新撰組入隊希望者の前で、駕籠がすっと持ちあがり、駕籠舁きの手によって屯所の奥に運ばれて行く。
何事かと戸惑う彼らであるが。すっと現れた一人の侍に、慌てて眼を戻した。
その侍は――
十七、八の、大きな黒の瞳が可憐な娘。まとう羽織は土方と同じ雁木模様。
「十一番隊伍長、神代紅緒といいます」
娘――紅緒は軽く会釈した。
「見分はここではおこないません。皆さんには、裏口から出ていただきます」
告げると、紅緒はにこりと微笑んだ。それは少女のように邪気のないものに、見えた。
「‥‥やはり、面白い」
前をゆく駕籠を見つめつつ、眞薙京一朗(eb2408)がふっと笑った。
聞きとがめた小柄の娘――和泉みなも(eb3834)の金銀妖瞳が薄く光る。ややすました顔立ちは大人びて見えるがその実、彼女の歳は三十路。それも当然だ。
「何が面白いのですか?」
「ああ――」
斜め後を歩くバラの志士に歩調を合わせると、京一朗は前回の依頼の内容について、かいつまんで説明した。
「法度破りを行った者達と、其れを知る上に何時口を滑らすか解らない者達を同じ隊士――屯所に住まわせる。‥互いの喉笛に刃を突きつけるのと同意の厳しさに興を引かれての協力だったが――」
此度は隊士を広く募る。それも公示とは――。
「不穏な者の出入りを許す事にも繋がるだろうに‥‥面白い。全くもって面白い御仁‥いや、隊‥というべきか」
「ほんまや」
相槌を打ったのは京一朗と同じ年頃の浪人。名を将門司(eb3393)という。
ニンマリ、と。玩具を見つけた子供のような笑みで、
「谷はんや、一杯喰らわしてくれた平手はんらを見てもうたら、こんなものごっつ面白ろい所に入りとうてしょうないようになってもうてなあ」
「とはいえ、気にくわないぜ」
ふん、と。朱鳳陽平(eb1624)が口を歪めた。
「組長ともなれば測るは当然だ。しかし――」
ある決意を込めて、陽平はかろく大刀の柄に手をそえた。
と、その手をそっと別の手がおさえる。
「一筋縄では行かぬ。しかし、それもまた面白くも有る。それで良いではありませんか」
季節はずれの春風のように云い置いて、日下部早姫(eb1496)は陽平から司に眼を転じた。
「私は、幼き頃より武士としての道を教えられ、そして主君に仕える事こそ武士の本懐と教えられて来ました。人は誰かの為に生きる事が出来れば幸せといいますが、それが私にとっては源徳様だったと言う事でしょう。その道に生き、その道に殉ずる。新撰組はそれに相応しい場所だと思っています」
告げる。
直接の相手は司だが、その実早姫は願っていた。
届け、と。
おそらく見分の内容は剣技。ならば、できるだけ伝えたい。我が魂が抱くものを。土方に――
ざあ、と一陣の風。
緑と銀が躍り。
そこは新撰組の屯所からやや離れた林の中であった。すでに駕籠は下ろされ、駕籠舁きの姿は消えている。
傍らに立つのは、長い髪を後ろで結わえた二十歳そこそこの秀麗な美貌の娘。名を伊集院静香といい、十一番隊組長補佐であった。
そして――今だ平手造酒の姿は見えない。
そのとき、影が交差した。
光波の閃きは一瞬。風が再びざわめいた後、地には浪人であるという受験者が這っていた。
「次。竜造寺さん」
紅緒が呼んだ。
おう、と。
紅緒の声に応じて進み出たのは、大岩がごとりと動いたかのような印象すら与える巨漢。竜造寺大樹(ea9659)である。
「本当は土方さんとやりてぇんだが、まあアンタで我慢しとくぜ」
ニンマリと笑う大樹であるが。その後頭部がごつと鳴った。
打擲の主。それは付添いとして同行した蛟静吾である。
ひでえなあ、と顔を顰めた後、大樹は大薙刀を八双にかまえた。対する紅緒は青眼だ。
今、相対する二人。それはさながら巨象と豹の対決である。
強い奴と戦いたい。それのみ願う大樹にとって、新撰組入隊などは眼中にない。それよりも、今はこの女豹をいかように料理するか――
その想いの先をとるように紅緒が動いた。
迅い。
ほぼ反射的に大樹は大薙刀を横薙ぎに払い――
かっと紅緒の木剣が受けとめている。のみならず、そのまま刃を滑らせるように大樹に迫り――たまらず大樹が後方に飛んだ。
が、同時に紅緒の身も宙に舞い――風を巻いた衝撃が大樹の胴を襲った。
「ふう」
脇を押さえてうめく大樹を見下ろし、紅緒は大きな吐息をついた。
「強いですねぇ」
早姫と紅緒。
体躯のさほど変わらぬ二人であるが、構えはまるで違う。紅緒が青眼であるのに対し、早姫は無手だ。
「いきます」
わざと一息、遅らせ。紅緒が袈裟に斬り下げた。が、その一閃は拝むかのように上げられた早姫の手に吸い込まれている。そのまま――
彫像と化した二人に。そこまでと静香が声をあげた。
呼ばれ、陽平が足を踏み出そうとし、袖を引かれた。
引いたのは来須玄之丞であり、彼女は陽平の耳元に口を寄せるとひそと囁いた。
「深編笠の武士が林の中にひそんでいた。凄まじい手練れ。気を付けとくれ」
「承知」
小さく頷き、陽平は狼のように足を踏み出した。
刹那、彼の腰から白光が噴出し――意趣返しというよりも、彼独特の座興なのだが――、それはそのままの切れ味をたもちつつ疾る。どこへ。土方の駕籠へ。
戛然!
まるで鋼と鋼が相うったとしか思えぬ響きを発して、陽平の放った衝撃波は舞い立った静香の刃によってはじかれている。
あっと声をもらした陽平に、さすがに顔色を変えた静香が冷たく云い放った。
「貴方の見分はここまでです。今のそにっくぶーむで腕の程は分りました」
四人目の冒険者、京一朗は紅緒を見据え、思う。
己の本分は個よりも団の内での中での差配だと。が、新撰組は武の集団。個での立ち会いを見るは必然であろう。
その見地において、すでに京一朗は己が戦術を見透かしている。
――如何に己の間合い内で刀を振るわせずに弊すか。
剣の戦いとは、とどのつまりは間合いである。敵の間合いを外し、己が間合いとすれば、即ち勝つ。
しかし、云うは易く、行うは難し。今も――
紅緒に踏み込まれ、京一朗はすずっと退った。
間合いを詰める。それを外す。流れはまさに想定の中。
そして機は熟し――
京一朗が逆に攻めた。狙うは紅緒の木剣のみ。が――
京一朗の刃は空をうち、その剣影を上回る速度で疾った紅緒の木剣が京一朗の胴を薙いだ。
静守宗風(eb2585)はゆっくりと右手の木剣をあげた。
片手青眼。左手の十手は逆手に。
対する紅緒は平青眼。常ならば仕掛けの早い彼女が、今は吹く風に寂として。
動かぬ。いや、動けぬ。
宗風の技量は達人の域に達している。のみならず、瞑目するが如くにうっそりと立つ彼の心魂は生きるを忘れ――即ち不惜身命。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。
その時、宗風の剣尖が揺れた。鶺鴒の尾のように。
並の者なら、その剣の動きに惑わされ、知らず打ち込んでいることだろう。
が、紅緒は仮にも新撰組伍長。その誘いには乗らぬ。
「来ぬか‥‥」
宗風の口が静かに開いた。
「ある奴に剣の先にあるものを目指せと云われた。まだそれが何だかは解らないが、新撰組ならその答えを得れそうな気がする。だから、俺は勝つぞ」
云った。八幡伊佐治やアルディナル・カーレスから新撰組に関する情報を得てはいるが、今このとき、宗風の脳裡からは翔け去っている。
すると紅緒がニコリと笑った。楽しくてたまらぬような。
刹那、鉄扇がぽとりと両者の間に落ちた。
「そこまで」
鉄扇の投擲の主――静香が宣した。
椿為朝(eb2882)の放った矢は、彼女の闘気をまといつかせてさらに迅く、つよく。
びゅうと空間が鳴った。
さしもの紅緒がかろうじて身をかわし、引きずられるように黒髪が翻り――
そして、飛んだ。
弓対剣。
個の対決において、その優劣は明かだ。彼我の距離にさほど差がない場合、弓者の第一矢さえしのぐことができれば、所詮弓は剣の敵ではない。
まさに――
為朝の手から幾筋もの流星が飛んだ。が、それは所詮牽制の意味合いしかもたず。
抜き胴。
身を折りつつ、しかし為朝の顔は朗らかだ。
己は負けたが、それは隊の負けにはならぬ。そう確信しての笑み。
「‥‥私は、椿流弓術の完成を求めて生きてきました。腕を磨き士道を貫くのが人生の目的だと思っていたのです。が、違うのですね。それは生きる手段方法であり――私は、源徳公の、京の民の、そして己の弓に対して、『誠』を背負うつもりでいます」
「有難うございました」
紅緒は腕をさしのべた。
「試験やし、緊張するわ」
進み出た司は、ちらと背後に佇む妹の将門雅と視線を交わす。
参加者の中に土方が紛れ込んでいないかと雅が調べてくれたものだが、すでに当の土方――人相は雅が確かめた――が駕籠に乗るのを確認している。故に、遠慮なく司は紅緒と相対した。
「これはええやろ」
『オロチ』」と『「ミカヅチ』。ともに霊降る妙剣を雅に手渡し、司は二振りの木剣をかまえた。
奇剣。左構え。
が、かまわず紅緒は斬りかかる。其れ、剣は瞬速。構えなど関係ない。
がっきとばかりに三筋の木剣が噛みあい――刹那、唸る。司の脚が。
空を灼く蹴りは、咄嗟に飛び退った紅緒の腹をかすめて過ぎた。
「それまで」
紅緒が地に降り立つのを見定め、静香が制した。
「水霊よ、我が手に集い氷の刃と成れ。氷輪」
鉢金と法衣を纏ったみなもの手に渦巻いた蒼光は、一層の煌きとともに刃円と変じた。
「神皇様に御仕えする身とはいえ、私はまだまだ未熟。良い機会ですし、一つ腕試しをさせて頂きます」
言葉の終わらぬうち、みなもの手から氷輪が飛んだ。蒼い疾風と化したそれを、しかし紅緒は左に飛んでかわした。
常ならば、それで勝負は決する。射者が己の投擲武器を失ったのだから。
が、氷輪は常の武器ならず。それは弧を描きつつ、射者の元へと還りつく。
なんで、それを許そうか。一気に間合いを詰めた紅緒の木剣が真一文字にみなもを貫いた。
反射的に後方に飛んだみなもであるが。飛び来った氷輪はむなしく空を流れすぎる。
ぴた、と。
紅緒の剣尖がみなもの胸の前でとまった。
「それでは最後の方」
「は、はっ」
呼ばれ、庄司八郎は立ちあがった。ぎくしゃくした動きは糸の切れた人形のようであり、その面は今にも泣き出しそうに強張っている。
「庄司殿、気を楽に」
たまりかねた京一朗が声援を送るも、耳にすら届いていない様子だ。
「き、紀州浪人、庄司八郎。ま、参る!」
声を裏返らせて、八郎がへっぴり腰で構えた。
やれやれというように。紅緒もまた木剣を青眼に――
と、突如、むっとする殺気が満ちた。
はじかれたように身構える冒険者達は見た。木立の陰から飛び出し、殺到する浪人者らしき十数人の姿を。
「なんだ、てめえらは〜!?」
叫ぶ大樹の傍ら。
する、と宗風が滑り出た。それは死角を防ぐ陣形の創出。
宗風はアルディナルから最近土方が襲われたという噂を聞いていた。おそらく此奴らも――
同じ時、司と早姫も互いに距離をたもちつつ散開していた。それもまた死角の潰滅。
されど、それではまだ足りぬ。
「時が勝負の別れめぞ」
京一朗の絶叫に応じ、敵陣穿つ。陽平の、為朝の、みなもの空飛ぶ一撃が。
しかし――
する。すると。
一人、防御の輪から後退し、土方の駕籠に忍び寄る者があった。
庄司八郎!
剣戟の響きに気をとられていた宗風がその不審な動きに気づいた時はすでに遅く――先ほどと同一人物とは思えぬほどの鋭さを込めた八郎の刃が駕籠を貫いた!
「あっ!」
うめき声は、ふたつ上がった。
ひとつは当然冒険者のものであり――
もうひとつは八郎自身の口を裂いて迸り出ている。何故なら、土方を貫いたはずの刃には何の手応えもなく、のみならず、駕籠の中からは凄絶の殺気が吹きつけてくる。
「かかりやがったな」
低く笑う声とともに駕籠の中から現れた者は――平手造酒!
「おのれ!」
八郎が再び刃を疾らせた。が、それより迅く、平手の抜き打ちが八郎の腕を薙ぐ。
「てめえをとっ捕まえる為の算段だ。逃さねえぞ」
峰を返した平手の剣が、陽光をはねつつ八郎の首に叩きこまれた。
「‥‥これで、良かったのでしょうか」
「土方さんを狙う人斬りをつりだす仕掛けだが‥‥まあ、仕方あるめえ」
紅緒の前で、やや苦そうに平手が酒をあおった。
「表で斬れぬ奴は、裏からたたっ斬る。それが十一番隊だ。覚悟してもらうには、ちょうど良かったのかも知れねえな。それに――」
一升徳利をおき、平手は続ける。
「深編笠の内から、ちゃんと土方さんは見分してるんだ。あながち嘘ってわけでもなかろうよ」
「でも‥‥」
何故か釈然としない。
「ところで合格者は決まったのですか」
「ああ。まずは静守。腕がたつ上に、奴は斬る痛みも、斬られる痛みも知っている。そういう奴は強靭い。それと日下部。存念の色も間違っちゃいねえし、腕もたつ。ちょっと頭のかたいところが玉に瑕だがな。それから朱鳳。――あのはねっ返り野郎には、あやうく算段が狂わされるところだったが‥‥合格だ」
口調は忌々しげだが、その眼に揺蕩う光は思いの外優しい。ああ、よほど気に入っているのだなと思い、紅緒は小さな微笑を頬にはく。
「あとは見習として合格となった為朝だけだ」
「それだけですか――」
他の四人の冒険者が見劣りするとは思われぬ。そのことを告げると、平手はゆったりと笑った。
「まあ、いろいろあるのさ。――竜造寺は自分から断ってきやがったし、みなもは志士ってことで見送られた」
「では、眞薙さんは?」
「奴か‥‥」
平手が薬を口に含んだような顔になった。怪訝に思った紅緒が眼を転じれば、静香が肩を竦めて見せる。
「技量が未熟とはねられたそうよ。眞薙は頭が切れると、組長も随分土方さんにねじこんだらしいのだけど」
「では、将門さんは? 彼なら技量も十分だと思うのですが」
「奴は‥‥俺がはねた」
「組長が!? なぜ?」
「その方が奴にとって良いと思ったからだ。新撰組に入れば、優しすぎる奴は、いつか必ず闇の辻に立つことになる。そんな目に遭わせたくはねえ」
「でも――」
一度目を伏せ、紅緒はすぐに瞳を煌かせた。
「そういう将門さんであるからこそ、十一番隊には必要なんじゃないでしょうか」
「ふん」
ややあって。
胸をぼりぼりと掻きながら、平手はニンガリと笑った。
「よかろう。これで合格者は五名だ」