ぼうけんのそのいち・どらごんをみにいこう

■ショートシナリオ


担当:深白流乃

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:7 G 2 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月27日〜12月05日

リプレイ公開日:2006年12月06日

●オープニング

「冒険者さんたちの事をもっと知りたいんです‥‥」
 冒険者ギルドの受付に相談しに来た女性は、もじもじとうつむきながら受付係の女性職員にそう話した。
「なら一緒に依頼に付いて行ってみたらどうでしょう?」
 足を組んで椅子に座っている受付係の女性職員がストレートに言い放つ。
 この女性職員、相談しに来た女性と顔をあわせるのは二度目なのだが、それとは別にいつもこんな調子である。
「そうですね、それがいいです」
 晴れやかな表情でうつむいていた顔を上げ、ポンと胸の辺りで両手を合わせると、相談をしに来た女性はそんな適当な提案に首を縦に振る。‥‥割とおおらかな性格のようだった。
「でも他人の依頼に余計な足かせを付ける訳にはいかないですから、自分で何か適当に依頼をして下さい。で、どんな冒険者が見てみたいですか?」
 この流れは結果としてギルドへの依頼を増やす事になったのだが、受付のギルド職員がそこまで狙っていたのかどうかは不明である。
 それはさておき、
「冒険といえば、ドラゴン退治ですよね」
 相談をしに来た女性も、ポピュラーなサーガを耳にする事はある。だが、ドラゴン退治と言ってそう都合よくそこら辺にいるほどドラゴンはありふれていない。
「ならちょうどいい場所があります」
 ありふれていない‥‥はずだった。
「いつだったか、依頼に来た人からそんな話を聞いたことが」
「ならそこへ行きましょう、冒険者さん達とご一緒に」
 こうして、本来ならありえないような内容の依頼が、ありえない速度で作成されたのだった。


「それで、今回の依頼は依頼人を連れてドラゴンを『見に行く』という内容よ」
 ‥‥妙な依頼である。特に『見に行く』というのはいったい?
「別にドラゴンを探し出して、その後ドラゴンをどうするこうするって言うのは依頼に含まれていないのよ。ま、見つける事が出来たらその後は好きにしたら?」
 「一目見て帰ってくるなり戦うなりお友達になるなり」そう続けて女性職員は肩をすくめる。
「言うまでもなく、依頼人の安全が第一よ。もしかすり傷一つでも負わせたら‥‥」
 あえてその続きは語らない女性職員である。
「依頼人はメリアリンスシュ‥‥長いわね。メリア・ベレンテレールという女の人よ。ちょっと変な夢があるみたいだけど‥‥それは今は関係ないわね。私見だけど、運動神経は鈍そうだったわ。それなりにお嬢様で、冒険なんて当然初めてだから色々とフォローしてあげてちょうだい。これも依頼の内よ」
 それでドラゴンのいる地へ向かうというのだから‥‥
「それで、行ってもらう場所なんだけど、ここから少し離れた場所にある洞窟よ。その奥の方にドラゴンがいるらしいわ」
 『らしい』とはつまり、そういう事である。
「信憑性はそれなり、としか言えないわ。ギルド側で正式に確認出来ていない以上はね」
 『噂話』と言ったレベルの情報でないのは確かである。
「洞窟に他に何がいてどのくらいの深さにドラゴンらしきモノがいるのかはまったく分らないから、準備は念入りにね。それじゃ、よろしく」

●今回の参加者

 ea2970 シシルフィアリス・ウィゼア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb5763 ジュラ・オ・コネル(23歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5885 ルンルン・フレール(24歳・♀・忍者・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb6853 エリヴィラ・アルトゥール(18歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

ガンド・ビアンキ(eb5850

●リプレイ本文

「メリアリンスシュリメリエーゼ・リストリリーベレンテレールさん」
「わ〜、すごいです、私でも生まれてこれまで一度も自分のフルネームがすらすらと言えたことないですのに」
 依頼人と待ち合わせた場で、面識のあるシシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)が依頼人のメリアに声をかけるとメリアはぱちぱちと軽い音の拍手をシシルへと送る。
「い、一度も?」
 シシル共にその場に来たエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)が若干引きつった笑みを浮かべ、
「はい、そうなんです」
 メリアは晴れやかな笑顔で肯定した。
「そう‥‥」
「あまり長すぎる名前って言うのも困っちゃいますね」
 エリヴィラが一人で疲れているのをよそに、同じくこの場にやって来たルンルン・フレール(eb5885)も、
「ええ、覚えるのも大変で」
「‥‥今は覚えちゃってるんですよね?」
 頬に手をやり呟くメリア、その呟きに疑問を覚える。
「はい? ‥‥あぁ、ええ、もちろん覚えてます。言い間違える事もありません」
 コクコクと地面と直角に首を縦に振りながらメリア。
「アヤシイな‥‥」
 そんなメリアを見てぽつりと漏らすのはジュラ・オ・コネル(eb5763)、今回の依頼を引き受けたのはシシル、エリヴィラ、ルンルンを合わせた以上の四名である。
「そ、そんな事はありませんっ」
 ジュラの言葉に両の拳をぐっと握ってメリアが抗議。
「そうですよ、この前もきちんと言えてましたから。一回言い終えるのに三、四回舌を噛んでましたけど」
「うわぁ、それは痛そうですね‥‥」
 以前に会った時の事を思い出しながらシシルがフォローを入れ、ルンルンがその様子を想像したのか顔をしかめた。
「自分の名前で噛んでる時点でダメだってば」
「そうだな」
 エリヴィラの主張にはジュラも異論はないらしく。
「でも! 言い間違える回数は三回中二回くらいに減ったんですよ?」
『‥‥‥‥‥‥』
「立ち話もなんですから、どこかお店に入りましょうか」
「そうだな」
「メリアさんに話しておかなければいけない事もたくさんありますし」
「心配事は出来るだけ減らしておかないとね」
「あの‥‥皆さん?」
 メリア呟きを残し、四人は手近な飲食店へと入っていった。


「いいですか? メリアさん」
「はい‥‥」
「洞窟の中では、第一に私達の指示には従う事。第二に私達の側から離れない事」
「‥‥はい‥‥」
「第三に洞窟内の物に勝手に触れな‥‥」
「はい‥‥」
「あの、ちゃんと聞いてます?」
「え? はい、聞いてますよ?」
 店のテーブルに着き、シシルが冒険中の注意を言い出している途中、一度言葉を止めメリアの目を覗き込む。
「では第一は何だったでしょうか?」
「えーと、私の指示に洞窟の中の側から離れない? ‥‥私が皆さんに指示を出すんですか?」
「う〜ん、それは命がいくつあっても足りなさそうだから勘弁して欲しいです」
「って言うかやっぱり聞いてない」
 メリアの回答に横で聞いていたエリヴィラが頭を抱える。
「はぁ‥‥」
 などと言っている間にもメリアは悩ましげな吐息を吐きぼんやりと上の空。その視線の先はシシルの頭。
「シシルさん、頭のそれ取った方が」
 とエリヴィラが指を指すのはシシルが頭に付けている『獣耳ヘアバンド』、
「‥‥そうですね」
 仕方なく、シシルが獣耳を外して懐にしまう。その様子を見てメリアが、
「あぁ‥‥外しちゃうんですかぁ‥‥」
 おもちゃを取り上げられた子供のような表情で悲惨な声を上げる。
「母さんに聞いたとおり、本当にそれが好きなんだね‥‥」
「エリヴィラさんのそれも外した方がいいかもしれません」
 そう言ってシシルが今度はエリヴィラの頭の帽子を指差す。
「じぃーーー」
「‥‥‥」
 メリアの視線が自分の被っている『猫の耳の形に見える、とがった飾りのついた毛糸の帽子』に向けられているのを確認し、エリヴィラは「はぁ‥‥」とため息をついてその帽子を脱いだ。それを見たメリアの反応は先とほぼ同じだったために割愛。
「ため息なんかついてどうしたんです?」
「何か問題でも出てきたのか?」
 やって来たのはメリア達の座っているテーブルに姿を見なかったルンルンとジュラ。
「いや、大丈夫‥‥たぶん」
 出発前から既に弱気なエリヴィラだった。それはともかく、
「何か情報は得られましたか? 遅かったですけれど」
 尋ねるシシルにルンルンとジェラは首を横に振る。
「今お店にいるお客さんには一通り聞いてみましたけど、洞窟の事を知っている人はいませんでした」
「遅かったのは話を聞き終わるたびに引き止められていたからだ」
 「主に男のいるテーブルに話を聞きに行った後」とジェラが続けた辺りでルンルンが頬を赤らめて身体を小さく丸める。
「お、ナンパですかぁ〜?」
 シシルがからかい、ますます小さくなるルンルン。実際の所はからかうシシルを含め、美少女(たぶん)五人で集まっているこのテーブル自体が熱い視線を向けられているのだが。
「そ、それはともかく!」 
「洞窟のある辺りは近くに町や村は無く、道からもやや外れているという話だ」
「なので皆さんの話をまとめると『そんな場所には誰も行かない、だから誰も知らない』という感じです」
 気を取り直して二人が店で聞き込みをしてきた結果を報告。
「なんでギルドの職員さんはそんな場所を知ってたんだろ」
「ギルドには色々な情報が集まりはしますけど」
 そんな疑問に「あ、そういえば‥‥」と獣耳や帽子といった注意を乱す物が無くなって今は意識のハッキリしているメリアが、
「以前ギルドに依頼に来た人から個人的に教えてもらった、みたいな事を言っていました」
 ギルドでの職員とのやり取りを思い出す。
「その『以前ギルドに依頼に来た人』に話を聞ければいいんですけれど」
「今からだと時間が足りないな」
「つまり、実際に行ってみるしかないと」
「そうですね!」
 話を締めくくり、
「では冒険の注意を‥‥もう一度最初から」

 しばらく後、アレな状態でなければ聞き分けの良いメリアへ諸注意を終え、明日の予定を確認すると後は個人の準備に当てる事となった。
「念のため、道具は余分には持って行きますけれど」
「準備はしっかりして下さいね」
 別れ際に念を押す。冒険に必要な物もメリアに伝えてある。
「あたしはこの子を預けて来ないと」
 言ってエリヴィラが見るのは自分の足元にいる首の長い不思議な生き物。エリヴィラが飼っているペットである。
「え? その子連れて行かないんですか?」
 と、それに反応したのはなぜかメリアであった。
「うん、足遅いし‥‥どうして?」
 疑問に思い、素直に聞き返す。
「だって、連れて行かないと意味がないじゃないですか」
「意味?」
「意味‥‥見ていて和む?」
「かわいくはあるんですけど」
 メリアのいまいち理解できない科白に対し他の三人も口々に。
「冒険者さん達って、モンスターを食べるんですよね?」
『は?』
 更に意味不明なことを言ってくるメリア。『冒険者さん達』の声が重なる。
「た、確かに一部ではそういう事も、たま〜にありますけど‥‥」
「私の聞いた話だと、冒険中は退治したモンスターを主食にしているとか」
「主食とまでは‥‥主食になるほどモンスターがたくさんいたら大変ですよ?」
 どうやらメリアは間違った認識をどこからか得ているらしい。
 ‥‥おそらく、メリア限定の認識だ。世の一般人がメリアと同じような考えを持っているということは無いだろう、たぶん、きっと。ここではそう思っておく事にする。
「それで、冒険者さん達がよく飼ったり連れたりしているモンスターは、冒険中どうしても食料が得られなかった時の非常しょ」
『違いますっ!』
 言い終わる前に、さすがに全力で否定する。
「‥‥そうなんですか?」
「そうなんです」
「そうなんですか‥‥町の噂って、やっぱり噂なんですね‥‥」
 「町で噂になってるの?」とは怖くて聞けなかった。
「じぃーーー‥‥」
 と、メリアがしゃがみ込んでエリヴィラの後ろに隠れ首だけをメリアの方へ伸ばしているその生物をみつめる。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥残念です」
「すいませ〜ん! ピロシキ五‥‥十個お持ち帰りするんで包んで下さーい!」
 何がどう『残念』なのかはあえて無視したが、食料は多めに持っていこう、そう決心するエリヴィラだった。

 次の日、冒険出発日。色々あった。
 
 更に次の日、冒険の二日目。とっても色々な事があった。
 
 そして『更に次の日』の次の日。
「わぁ〜、ありましたね、洞窟。思ったよりも近かったです」
 パチパチと喜びの拍手をどこかに送り、目の前に大きく口を開ける洞窟にはしゃぐメリア。
「近かった、かな?」
 両手両膝を地に着いて力ない声でエリヴィラが返事をする。
「げ、元気ですね、メリアさん」
 その横でルンルンも足を伸ばして地面に座っている。
「‥‥‥」
 ジュラは静かに立っていた。指で突いたらそのまま後ろに倒れそうなくらい、静かに立っている。
「天然って、すごいですね‥‥」
 シシルは木にもたれかかって座り、感慨深そうに呟いていた。
「振り回す方と振り回される方の違いだね」
 ここまでの道中、完全な冒険初心者で世間に疎いお嬢様、さらにどこか他人とずれた所のあるメリアにさんざん振り回された四人。洞窟を前にして、疲労困憊である。
「ではさっそく中へ‥‥」
「ま、待って、メリアさんっ」
「もう少し休憩‥‥じゃなくて、色々と準備が必要ですから」
「そうです、これだけ大きな洞窟ですから、ゆ〜っくり、じ〜っくり、準備しましょう」
 ぐったりしたまま、洞窟に入る用意を始めたのはもうしばらく時間が経ってからだった。

「本当に大きな洞窟ですね」
 いよいよメインである洞窟の中へと入った一行。高い天井をメリアが見上げる。メリアの装備はジュラの意見を参考にして丈夫な手袋に靴、寒くない程度に動きやすい服装となっている。
「足元に気を付けて下さいね」
「あまりきょろきょろしないで前を‥‥」
 気楽なメリアをよそに、冒険者達はというとメリアを前後で挟むようにして完全警戒態勢である。
 そしてメリアの行動を逐一チャックし、何かやらかす前に釘を刺す(この辺りはこれまでの経験による)
「あ、コウモリ」
 メリアが手に持ったランタンを上に掲げる。メリアがランタンを持っているのは、冒険者がすぐに武器を構えられるよう手を開けるためでもある。
「洞窟ですから、コウモリくらいは」
「でもやっぱり話に聞くのと実際に見るのとでは違いますね」
 この時点で、何か直感めいたものが冒険者たちの頭をよぎる。
「思っていたよりも、ずっと大きいです」
頭の片隅で『あぁ、やっぱり』的な事を考えるが、ひとまずそれを頭の外に追いやり、
「‥‥ラージバットだ」
 天井を見上げたジュラがこちらへと急降下してくる物体を確認する。
「真上!?」
 叫びつつも、冷静に剣を抜き放つエリヴィラ、
「絶対に私から離れないで下さいね!」
 改めてメリアに注意を促し、まずはルンルンが素早く弓を放つ。放たれた矢はラージバットの羽を突き破り、羽に傷を受けたその一匹は羽をばたつかせながら地面へと落ちる。
「三匹か」
「ラージバットにしては数が少ないかな」
 ジュラの言葉に答えつつ、エリヴィラが近くに下りてきた一匹に豪快に剣を振り、その一撃でその一匹も地へ落ちた。
「アイスブリザード!」
 落ちた一匹を巻き込み、最後に空中へ残っていたラージバットへシシルの放つ攻撃魔法が吹き荒れ、
「これで!」
 魔法の一撃でダメージを受けふらふらと宙を舞うラージバットへ、ルンルンがトドメの矢を命中させた。
「終わったか」
 最初にルンルンが撃ち落としたラージバットへトドメを刺しに行っていたジュラが戻ってくる。
「怪我はありませんか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
 メリアが証明するように笑顔を浮かべる。怪我と言えば、メリアどころか冒険者四人にもかすり傷一つ無い。
「まだ他にもいるかもしれないから、上にも気をつけて進もう」
「そうだな」
 武器をしまい、洞窟探索を続行する。洞窟はまだまだ入り口である。

「‥‥何も出ませんね」
「入り口近くのラージバット三匹だけ?」
 奥深く‥‥とまでは行かないが、それなりの時間を歩いてきた一行。
「これは‥‥本当にドラゴンがいるかもしれません」
「どういう事でしょう‥‥?」
 メリアがその意味が分らずに冒険者たちへと尋ねる。
「ドラゴンのような生物が住んでいるなら、他の生物はドラゴンを恐れて洞窟に住もうとしない」
「なるほど、そういう事ですか」
 ジェラの解説に納得するメリア。
「まだドラゴンだと決まった訳ではないですけど」
「ドラゴンじゃないにしても、凶悪な何かがいるのかも」
「何がいるんでしょう‥‥ジュラさんどうしました?」
 先頭を歩くジュラが突然無言で立ち止まったので、何事かと一行が足を止める。
「あ、広い空間に出まし」
 ジュラの身体の横から首を出したシシルの言葉が途中で止まる。
「えーと‥‥」
「あー‥‥」
 続くルンルンとエリヴィラも似たような反応。
「あっ、見つけました! ドラゴンですの♪」
「ちょ、メリアさんしーしー!!」
 人差し指を口の前に立て、はしゃぐメリアを注意。
 洞窟の中にある開けた空間。
「ド、ドラゴン? 本物?」
 そこにいたのは正真正銘、『本物のドラゴン』だった。

「黒い鱗に赤い肌。ボォルケイドドラゴン、という種類でしょうか」
 ドラゴンの姿はルンルンの表現する通りであり、体長は十メートルほどだろう。
「今は眠っているみたいです」
 閉じられたまぶたを見て取りシシル。
「好都合だな」
「そうですね、昔から寝たドラは起こすなと言いますし」
「そうだっけ? それはともかく、ドラゴンも見たし起こさずこのまま帰ろう」
 ジェルの言葉にルンルンが古語(かどうかは定かではないが)を持ち出すが、エリヴィラの提案には状況の分っていないメリアを除き揃って首を縦に振る。
「メリアさんも、もう満足でしょう?」
「はい、とっても」
 メリアは本当に満足したといった笑顔である。
「でもあのドラゴン、どうしてこんな所で寝てるんでしょう」
「え? 冬眠じゃないんですか?」
「ボォルケイドドラゴンは寒さには弱そうだからな」
「というかトカゲだから?」
「ドラゴンって冬眠するの?」
 ふとした発言からやんややんやと雑談に突入。
 ‥‥その時、ドラゴンがゆっくりと首をもたげた。
『―――――』
 一斉に静まる一同。
 静かにこちらを見ているドラゴン。
 あ、口を開いた。
「に、逃げ‥‥!!」
「キャーーー!!」
「わぁ、あれがドラゴンの吐くブレスというやつなんですね」
 感嘆するメリアの手を引き、全速力で逃げる冒険者たち。幸いドラゴンが追って来る事は無かったが、この冒険が少しでもメリアの為になってくれればと、過程の苦労を思い返しそうせつに願う冒険者達だった。