ぼうけんのそのいち・ようせいをみにいこう

■ショートシナリオ


担当:深白流乃

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月11日〜03月18日

リプレイ公開日:2007年03月19日

●オープニング

 冒険者ギルド。さまざまな事情を抱えるさまざまな人々がすれ違うこの場所。
 持ち寄られる依頼の内容も、人の人生の岐路に関わるもの‥‥歴史にそのものに影響を与えるもの‥‥そして‥‥
 そして今日も、依頼は持ち込まれる。
「今度は雪の妖精さんに会いに行きたいと思うんです〜」
 どこか気の抜けた、のんびりな口調でギルド職員と話をしている一人の女性。とある貴族の娘で名を、メリア・ベレンテレールという。
「あぁ‥‥そろそろ見つけるのが難しくなりますからね」
 そのメリアの話を聞いているギルドの女性職員。二人が顔を合わせるのは、もう何度目かになる。
「そうなんです、私はまだ一度も見たことがなくて‥‥」
 メリアの言う『雪の妖精』というのは、冬場の雪が降る間だけに現れる羽を持った小さな人型の精霊である。エレメンタラーフェアリーの親戚のような存在だ。
「ですけれどフロストフェアリー、私の方からは特に場所の提案は出来ませんけれど、どこかあてはありますか?」
 雪の妖精、フロストフェアリー。寒さの厳しいこの地では見たという話を聞くことはあるが、そう簡単に見れるという訳ではない。
「はい、先日お父様のお知り合いから『見た事がある』という場所を教えていただけて」
 メリアの父、やはり独自の情報網があるのか、それともたまたまか。それはともかくとして、
「ここからだと少し離れていますですけれど‥‥丘のような小さな山があって、その頂上で見ることが出来るらしいです」
 デフォルトののんびりした笑みに楽しみの笑みをプラスし、楽しそうに話すメリア。
「山、ですか。山ではまだ雪も深いですし、気をつけて行って来て下さいね。雪のある所でないと見れないと思いますから仕方ないですが」
「ありがとうございます。それでは、よろしくお願いしますね」
 女性職員の言葉に、やんわりとお辞儀をするメリアだった。

●今回の参加者

 eb2205 メアリ・テューダー(31歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3232 シャリン・シャラン(24歳・♀・志士・シフール・エジプト)
 eb5634 磧 箭(29歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 eb5669 アナスタシア・オリヴァーレス(39歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb9405 クロエ・アズナヴール(33歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb9925 アルーシュ・エジンスキー(32歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec1023 ヤグラ・マーガッヅ(27歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ec1523 レミア・エルダー(18歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

「あれが目的の山なんですねー!」
 手をパチパチと叩きながら眼前の山を見上げるメリア・ベレンテレール(ez1116)
「聞いてた通り、そんなに高くない山なのね」
 メリアの横で、同じようにアナスタシア・オリヴァーレス(eb5669)が山の頂上を見上げる。
「助かります。標高が高いとこれを運ぶのも大変ですから」
 言って引っ張っているソリに目をやるレミア・エルダー(ec1523)、
「‥‥ところで出発した時から気になっていたんですが、そのソリは?」
「アイスコフィンで凍らされた人の運搬用らしいです」
 いまさらなヤグラ・マーガッヅ(ec1023)の質問に、クロエ・アズナヴール(eb9405)が横から代わりに答える。
「世話にはなりたくないで御座るな」
「同感です」
 磧箭(eb5634)の呟きに、メアリ・テューダー(eb2205)も同意。
「私は氷づけになってもお世話にならなくて大丈夫かな♪」
 と、体の小さなシフールのシャリン・シャラン(eb3232)
「‥‥喜べることではないと思いますぞ」
 そしてシャリンにツッコミを入れるアルーシュ・エジンスキー(eb9925)だった。
「あんたら、あの山に登るのかい?」
 目的地を前に若干テンションを上げ目立っていたのか、一人の村人が一同に声をかけてくる。
 今冒険者達がいるのは山の麓にある小さな村。
 雪山登山を前に、最終準備をするために立ち寄ったのである。
「はい、雪の妖精を見に行くんです♪」
 その村人にニコニコ笑顔で答えるメリア。
「そうかそうか‥‥」
 そう言ってこの村に寄る人間は他にもたまにいるのだろう、それ自体には特別な反応はなかった村人だが、
「気をつけなよ。ついこの間、同じ山に登ってそのまま帰ってこなかった一行がいてね」
「そ、そうなんですか?」
 村人の言葉を聞いてわずかに緊張の走る冒険者達だったが、
「はっはっはっ、まあ、私が知る限りあの山に行って帰って来なかったのはその一行一組だけだがね」
 見ての通りそう険しくも高くもない山、単に山の反対側から下山したんだろう。そう続け笑い飛ばす村人。
「あまり脅かさないでほしいのね‥‥」
 それを聞いて、アナスタシアがほっと胸をなでおろす。
「すまんすまん、もう出発するのかい?」
「いえ、今日は村で一晩ゆっくり休みます」
「明日の朝から出発するで御座るよ」
 村人の問いにメアリと磧が順に答える。
「それが良い、まあせっかく来たんだ、無事に妖精に会える事を祈ってるよ」
 言って軽く手を振ると村人は冒険者達から離れていった。
「さて、それでは宿を探しましょうか」
 クロエに促され、皆が止めていた足を動かし始める。
 明日の出発に備え、今日はゆっくり休むのみ‥‥。


「さっそくですが、山頂に到着です♪」
「やはり、それほど時間はかかりませんでしたね」
 翌日、準備を整えた一同はさっそく登山開始。早くに出発したため、山頂についた今でもまだ昼前である。
 ちなみに朝の集合時にメリアが着ていたのはいかにも質の良さそうなモコモコで毛皮のロングコートであり、『それで雪山登山は無理』との過半数を超える意見があったため、今はアナスタシアの用意していた予備の防寒服を着ている。
「しかし本番はこれからですぞ」
 アルーシェの言葉通り、今回は登山が目的ではない。
「場所はこの辺りでよろしいのでしょうか?」
「はい、私が聞いた話によると、雪の妖精を見かけたのは山頂の付近だそうです〜」
 ヤグラがメリアに確認すると、やはり目撃証言のある場所はこの辺りで間違いないらしい。
「なら早速準備を始めるで御座るよ」
 そう言って磧が取り出したのはテント、他にもテントを持参した者の分も組み合わせて二重に張った人数分のテントを山頂へと設営していく。
 テントを張り終えるとテント群の風上に雪を固めて積み、即席の風除けを作った。
 それらが終わる頃には程よく昼食の時間にもなり、起こした焚き火を囲んで皆で昼食を取る。
「暖かい物を飲むと落ち着きますね‥‥」
 食後にヤグラが作ったスープをすすり、内側からも体を温め一息をつく。
「体も温まったことですし、シャリンさん、そろそろお願いします」
「了解よ♪」
 シャリンが羽ばたき宙に舞う。
 空を見上げれば、空には雲がかかっているものの、雪が降りそうな空模様ではない。
 しかしフロストフェアリーが現れるのは雪の降る間だけである。
「いくわよ〜、シャランラ〜☆」
 謎の掛け声とともに空中でくるりと回りポーズを決めると、同時にウェザーコントロールの魔法を発動。
 少しずつ、雲の厚みが増してくる。
「あ、降ってきたのね」
 アナスタシアが手を平を広げるとそこに一粒の雪が降り、小さな雫へと変わる。
「すぐ本格的な雪になるでしょうから、冷えない内にテントに入りましょう」
「そうで御座るな、せっかく温まったことで御座るし」
 クロエの言葉に、フロストフェアリーを見つけるための探索役以外はテントの中へと退避。
 探索役を交代しながら、フロストフェアリーが現れるまでしばしの時を過ごすのだった。

「妖精さん、なかなか現れませんね〜」
 テントの中、クロエにせつせつとうとうと冒険者について話を聞かされていたメリアが、話の切れ目にテントの出入り口から外をのぞく。
 外はシャリンの魔法を連続して使用し天候を維持しているため、変わらず雪が降り続いている。
「そ、そうですね‥‥」
 なぜか幾分ぐったりとしているクロエが、疲れた声で答える。
「あ、戻ってきました。皆さんどうでしたかぁ〜?」
 テントに近づく幾つかの人影を見つけると、メリアが声を上げる。
「いないのね」
「見つけられませんでした」
 今回探索に出ていたアナスタシアとレミアがそろって首を横に振る。
 冷えた体を温めるため、ひとまずテントの中へと入る。
「そうですか〜、やっぱり、そんな簡単には会えないんでしょうか‥‥」
「条件はそろっているはずなんですけど」
 次の探索チームが出発する前に簡単に作戦会議。皆で軽く踊り誘ってみたりもしたが成果はなく、雪山の雪の中で踊る奇妙な集団で終わってしまった。踊り終わった後は余計に寒さが身にしみた。
「あ、見つけたー♪」
 それぞれが頭を悩ませていると、突然テントの外から声が響いた。シャリンの声である。
 この状況で『見つけた』と言えば一つしかない。慌てて全員がテントの外に出る。
「あそこあそこ!」
 テントから出てきたのを見てシャリンが指を刺す。
 そこには木の陰に隠れてこちらを伺っている小さな人型がいくつか。フロストフェアリーに間違いなさそうである。
「わぁ、あれが雪の妖精さんなんですね〜」
 メリアが嬉しそうにフロストフェアリーを眺めるが、当のフロストフェアリーたちは見つかってしまった事に慌てている様子である。
「我々が全員テントの中に入ったと思って顔を出したんでしょうか?」
「そうかもしれませんね、それでいて体の小さなシャリンさんに気がつかなかったんでしょう」
 ヤグラとクロエの推測、それが正しいのかは確認しようもないが、そう遠くはないだろう。
「とりあえず、もう少し近づいてみるで御座るか?」
 この距離ではどうしようもないと磧が一歩踏み出すと、フロストフェアリー達はピクリと体をすくませ、
「ノ〜!?」
 全員が突然の吹雪を正面から浴びる。
「フロストフェアリーの魔法!?」
 アイスブリザードと思われる吹雪を浴び、視界がゼロになる。
 吹雪が止むと、そこには‥‥
「磧さん!?」
 氷づけになった磧の姿が。辺りを見回すが、そこにはもうフロストフェアリーの姿はない。
「フェアリーたちも逃げてしまったようなのね」
「き、記録を取る間もありませんでした‥‥」
 筆記具を構えたメアリはがっくりと肩を落とす。
「ふむ。少々イメージが違いますな」
「というか、ちょっと怯えていたような感じが‥‥」
 想像していた印象との食い違いに、多少混乱する冒険者一同。
 その一同を我に返すように、一筋の強風が雪とともに横から吹き付ける。今度は魔法によるものではなく、自然に発生したものである。
「そろそろ下山した方がいいみたいですね」
 空を見ると、さっきよりも雲が暗く厚くなってきている。もうシャリンの魔法の効果時間が過ぎようとしているにもかかわらず、だ。
「そうですね、メリアさんは満足しているようですし」
 冒険者たちの横でメリアはと言うと、フロストフェアリーの魔法も何のその、「妖精さんかわいかったですね〜♪」と無邪気にはしゃいでいる。
「それに、磧さんをこのままにしておく訳にもいきませんから‥‥」
「ソリ、持って来ておいてよかったわね♪」

 テントを片付け、氷づけになった磧をソリに乗せると天候が悪化しないうちに山を降りた冒険者たち。
 満足する結果を得られたかはそれぞれの目的によるが、少なくとも依頼人であるメリアはこの依頼を満足して終えたようだった。