舞い散る蝶
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■ショートシナリオ
担当:深白流乃
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:5人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月15日〜08月20日
リプレイ公開日:2007年08月20日
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●オープニング
青空の下、とある街道。
異変はそこで起きていた。
木々の間を縫うように細々と繋がる街道、その途中でパピヨンが大量発生した。
理由は不明だが、何かしらパピヨンが成長するのに都合の良い条件が揃ってしまったのだろう。
外見は蝶のようだが、それが振りまく燐粉には毒がある。人を死に至らしめるほど強い毒ではないが、毒は毒。
一匹一匹ではわざわざギルドに退治を依頼することもないようなモンスターだが、二十匹も三十匹も局所に大量発生するとそうもいかない。現に、その街道は現在通行止めだ。
人通りの多い街道ではないが、全くない訳ではなく速やかな退治が望まれる。
現場は濃度は低いものの常にパピヨンの毒が漂っている。おそらく、近づくだけでも多少は毒の影響を受けるだろう。
報告されているパピヨンの数は三十弱ほどとあるが、詳細な数は不明。もっと少ないかもしれないし、もっとずっと多いかもしれない。これら一匹一匹を全てを退治する必要はなく、常に辺りに漂っているパピヨンの毒を払い、通行人に影響がない事が確認できればそれで依頼は完了だ。
見た目のきれいさに惑わされる事のないよう―――
●リプレイ本文
太陽の下、パピオンが目撃された場所を目指し街道を進む‥‥『三人』の冒険者。
『‥‥‥』
誰一人口を開くことなくもくもくと街道を進む三人、一人は金色の髪をリボンで左右二箇所をまとめた気丈そうな少女、マリオン・ブラッドレイ(ec1500)。もう一人は目立った武器を持たず体一つの簡素な装備の少女、何静花(ec3554)。最後の一人は馬に跨り二人の少女とは視線高く先頭を進むイリューシャ・グリフ(ec1876)。
道を進んでいると、突然、何も無いところで静花がぺちゃっと地面に突っ伏した。
‥‥単に転んだだけのようである。
「大丈夫か?」
転んだ静花にイリューシャが声をかける。馬の上なので手を差し伸べる、という訳にはいかなかったが。しかし静花はイリューシャの言葉に特に反応を返すわけでもなく、むくりと立ち上がりパタパタと服に着いた土ぼこりを払った。
「大丈夫‥‥か?」
再び同じ言葉をつぶやくイリューシャ。だがその言葉の対象は静花ではなく『自分たち』を指している。その、ゲルマン語でつぶやかれて言葉は、
「どうしたのだ?」
立ち止まっている二人に目をやり、口にする静花には届いていないらしく、その口にした言葉は華国語。
「あなたの事を待っていたのよ‥‥」
そして最後につぶやくマリオン。その言葉はイギリス語。
『‥‥‥』
三者三様、違う言語を扱う三人は互いに場の雰囲気を適当に読み、誰ともなくまた街道を進み始める。
実際のところ、現代語全般を簡単にだが扱えるマリオンはゲルマン語も華国語も理解できるのだが、マリオンはイリューシャと静花から口に出た言葉を逐一通訳するほど親切な性格ではないようだった。
そして、それやこれやと不安を抱えながら進む三人は、ほどなくして報告にあった場所にたどり着き、出会うべくして、『それ』に出会ったのだった。
「虫、ムシ、蟲‥‥まったく、嫌になる光景ね」
「いくら一匹一匹がキレイつっても、あれだけ群れるとキモイな」
違う言葉で話すマリオンとイリューシャの台詞が繋がったのは偶然か‥‥いや、その光景を目にした者が持つ感想が、誰しもそう変わらないからであろう。
街道の真ん中を埋め尽くす、蝶、蝶、蝶‥‥街道の先が蝶の隙間から覗けているような状態である。
「さっさと終わらせるわよ」
「何? をわっと」
ゲルマン語で口に出したマリオンの言葉を聞き、視線を隣に向けたイリューシャ、そこに映ったのはいきなり魔法を唱えているマリオンの姿。
「ファイヤーボム!」
「おーおー、びっくりするなぁ」
放たれたファイヤーボムはパピヨンの群れのド真ん中に命中し、その爆発は多数のパピヨンを地に落とす。その衝撃におどけるように驚いたような声を上げるイリューシャだが、その実は落ち着いているようである。
ファイヤーボムは一度で多数のパピオンを撃ち落とすが、その爆発の衝撃は群れているパピオンを散らしてしまう。それはファイヤーボムを使うにはマイナスだが、静香とイリューシャはその散ったパピオンを狙って少しずつ数を減らしていく。
ナックルをはめた拳でパピオンを叩き落す静花、少ない数で固まっているパピオンに向けて剣を構え突撃し串刺しにするイリューシャ。
だがしかし、静花やイリューシャが一匹を仕留める間にパピヨンは周りに二匹、三匹と増えていき‥‥三匹も仕留める頃には周りを囲まれ、身を引き距離を置くしかない。
その状況は、時間が経つ毎にマリオンにも近づいてくる。すでに冒険者たちの事を敵と認識したパピオンの群れは、積極的に冒険者たちに攻撃を仕掛け始めたのだ。
パピオンに追われ魔法を放つ隙の無いマリオン、そのフォローをすべく間に入る静花とイリューシャ、その二人のフォローも先の状況の通りで、マリオンが魔法を放つ隙を作れたとしても、そのわずかな隙にファイヤーボムを放とうものなら近くを舞うパピオンに触れて三人の至近距離でファイヤーボムが爆発し、三人をも巻き込んでしまうだろう。
静香とイリューシャがうまく連携をとる事が出来たとしたら、パピオンの群れを引き離しファイヤーボムを放てるだけの距離を取る事もできる‥‥可能性も無くは無いのかもしれないが、そこは言葉の通じない二人、それは、仮にマリオンが二人の言葉を正確に通訳したとしても、実戦では通訳にかかるわずかなタイムラグが大きく影響し‥‥とどのつまり、今の三人では実践する事は難しい事であった。
「これ以上は無理だ、引こう」
イリューシャの静かな声がマリオンに向けられる。
現状は一点を除き、必要なモノが決定的に足りていなかった。
「一匹見つけたら三十匹はいるとはよく言ったものね」
マリオンはその提案を苦々しい表情で聞き入れ、それを静香にも華国語で伝える。
「仕方が無い、な」
静花も手近なパピオンを潰しながら身を引く体勢をとる。
三人は攻撃を身を守る最低限のみに絞り、残りの力はパピオンの群れから離れるために使う。
パピオンが追ってこなくなるまで逃げ‥‥三人は、不本意ながらも依頼の失敗を冒険者ギルドへと報告するのだった。