空白の探求

■イベントシナリオ


担当:深白流乃

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 27 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月30日〜03月30日

リプレイ公開日:2009年04月06日

●オープニング

 ―――我、氷と炎の神から奪いし片腕をこの地に封印せん。

 其れは土より生まれ土に帰る。
 炎は朽ちた木より生まれ、氷は水より生まれる。

 封印すべきはその力。
 我、その力の源を絶つ。
 
 春は覚醒、しかし、その眠りを妨げてはならぬ。
 夏は生命、その生命を絶やしてはならぬ。
 秋は変化、しかし、その変化は在ってはならぬ。
 冬は眠り、眠りへの誘いを失ってはならぬ。

 神々の僕はそれに従い、従わぬは我が力となる。
 我を助けるは、氷と炎の片腕を従える資格を得ん。

 氷と炎の片腕を従えるこそ、真の封印なり――――



 それは、ディーテ砦の内部、主要な建物が立ち並ぶ場所からは遠い、ディーテ砦内の外れ、とも言うべき場所にあった。
 何の装飾も無い、外に剥き出しになった地下への階段‥‥。
 あるいはその昔、その階段の上にはそれと関係する何らかの建造物が有ったのかもしれないが、それは推測ですらなく、想像でしかない。
 その階段は長く真っ直ぐな一本道となっており、下りると四角い部屋へと繋がっていた。
 部屋は地下にしてはそれなりの広さがあるが、それはその部屋に物が何も無いから余計にそう感じるのかもしれない。
 部屋の四方の壁には、一面に対し一つずつ、計四つの鉄の扉が存在していた。
 扉の位置は、ちょうど東西南北に存在するらしい。
 扉には鍵が付いているが、古く朽ちかけたそれは本来の役割をほとんど果たしていないようである。
 試しに扉に耳を当ててみると、中からかすかな音が聞き取れる。
 北の扉からは水音。
 東の扉からは小石の転がる音。
 南の扉からはカサカサと生き物の蠢く音。
 西の扉からは歯車が回るような音。
 耳を澄ます際、何気なく部屋の天井に目を向けると、そこにはその部屋の事が書かれた文字が連なっていた‥‥。
 

●今回の参加者

オラース・カノーヴァ(ea3486)/ 三輪 由利子(eb4626)/ ルースアン・テイルストン(ec4179)/ ウェンディ・リンスノエル(ec4531)/ アクア・リンスノエル(ec4567)/ 楼 桜麗(ec6127

●リプレイ本文

「難しいな‥‥」
 階段を下り、地下へとやって来たオラースは、どうにも行動を決めかねていた。
「神の力の源があるのは、北と東、か?」
 となれば、南と西は封印をするための部屋なのか。
 そんな事を考えながら、まずは西の扉に手をかけるオラース。
 部屋に入ると、そこは行き止まりの部屋で、広さは階段の有る中央の部屋とほぼ同じ。
 その部屋には中央の部屋同様物が何もなく、がらんとしている。
 不審に思いながらも、部屋の奥まで移動するオラース。すると、部屋全体に歯車の回るような音が響き始めた。
「‥‥ベタな罠だな」
 部屋を押しつぶさんと迫って来る天井、その天井を見上げながら、オラースは呟くのだった。


「この封印は未完成なのかしら」
 ルースアンは、天井の文字からそう予想をしていた。
「片腕を従える事が、真の封印‥‥? 片腕の力の源というのは、木と水よね」
 そう考えると、片腕のある場所は北と東と予想できる。
 そして、その予想を元に行動を決断すると、ルースアンは南の扉へと向かった。
「‥‥あまり、気持ちの良いものではありませんね」
 南の部屋へと入ったルースアンの目に入ったのは、部屋の隅にうごめく大量のサソリ。
 その部屋も行き止まりで、中央の部屋とほぼ同じ広さと、西の部屋と同じ造り。おそらく、他の二部屋も同じなのだろう。
「まずは、これを排除しなくては」
 そう呟いて取り出した鞭を空へ投げると、ルースアンは呪文を唱えてサソリを排除しにかかった。


「ウェンディ姉はここで待っててね」
「はいはい、早く行ってらっしゃい」
 東の扉の前では、双子であるリンスノエル姉妹の二人がそんなやり取りをしていた。
「それじゃあ行ってくるね」
 扉の中に入るのは妹のアクアだけで、姉のウェンディは扉の前で待機するようだ。
「(まったく、自分で呼んでおいて‥‥仕方のない子)」
 アクアに呼ばれてこんな所まで来たのに、いざ部屋に入るときは待たされる、そんな状況に多少呆れつつも、そこは生まれた日を同じとしても姉は姉、仕方無しに扉の前で待つ事とする。
 一方、部屋に入ったアクアはというと。
「う〜ん、いかにも怪しいよね、これ」
 東の部屋の中央には、悪魔の姿を象った石像が存在していた。
「とりあえず、調べてみるしかないかな」
 そう考え石像へと近づくが、石像に触れられる距離までもう後一歩と言う所、突然その石像が動き始めた。
「‥‥こうなるよね、やっぱり」
 突然動き始めた石像に動ずる事無く、後ろへ大きく下がるアクア。
「こういう硬いの、苦手なんだよね、ボク」
 動き始めた石像‥‥ガーゴイルを警戒しながら、アクアがポツリと呟いた。
「手伝う?」
「いや、いいよ。一人で大丈夫」
 扉から顔を覗かせた姉がたずねて来るが、とりあえず自分一人でも大丈夫そうだ――アクアはそう判断すると、自分の持つ鞭と刀を両手に構えた。

「そう、気をつけなさいね」
 妹が自分の武器を構えるのを見送ると、ウェンディは再び視線を中央の部屋、その天井へと移した。
 そこには例の文字が並んでいる。
「(炎の神、そして氷の神、これは何を指しているのか‥‥)」
 炎、そして氷と来ればまず想像するのは精霊の存在だ。高位の精霊を人が『神』と表現する事はある。
「(けれど、悪魔がそれをするでしょうか)」
 ウェンディがそんな事を考えながらぼんやりと天井を見上げていると、突然、天井がガタン、と音を立てて四角い穴を開いた。次いでその穴から大量の植物の蔦が落ちてくる。
「何‥‥?」
 突然の事に身を構えるウェンディだが‥‥何も起こらない。
 警戒を解いて蔦に手を伸ばすウェンディ。二、三度引っ張ってみるが、その蔦はかなり丈夫で、束となっているため簡単に千切れる事もない。
「もしかして‥‥上へ?」
 そう思い至り、蔦を上って天井の穴へと身を滑り込ませる。
 そこは、他の部屋と比べれば小さな、細長い部屋となっている。
 その部屋の最奥には台座があり、その正面にはこう、言葉が刻まれていた。
 〜〜土の部屋より土に生まれし道をたどりし者よ、汝に我が封印を託す〜〜
 〜〜我が封じし氷の神の力、この力に、真なる封印を施さん事を願う〜〜
 そして、その台座の上には蒼く輝く篭手が、幾重もの鎖によって固定されていた。
 ウェンディがその篭手へと手を伸ばすと、その鎖は独りでに砕け散る。
 驚いて一度手を引くものの、何事もないと判断すると、ウェンディはその篭手を手に取った。


「ん〜、天井の文字だけだと、いまいち決め手に欠けるわねぇ」
 そんな事を呟きながら、中央の部屋を歩き回る桜麗。
「東が木、南が火、西が金、北が水、ってくるとぉ、この真ん中の部屋は土、って事よね?」
 天井の文字の冒頭に、こんな言葉がある。
 〜〜其れは土より生まれ土に帰る〜〜
「一番初めにこんな言葉があるって事はぁ、まだこの部屋にヒントが眠ってる、って事だと思うのだけど」
 そう考えてまずはそのヒント探し‥‥と思ったのだが、まったくと断言出来るほど、何も見つからない。
「ん〜、どうしようかしらぁん」
 どうしようかと首をひねっている最中、桜麗のすぐ近くでガタン、という音が聞こえた。
「ふぇ?」
 その音は、とても‥‥とても、桜麗のすぐ近くで聞こえた。
 そう、まるで自分の足元から聞こえたような‥‥。
 もしや、と思って自分の足元に目をやろうとするが、それは適わない。なぜなら、自分の体が真っ直ぐ下へと自由落下し始めたからだ。
「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁ――――」
 中央の部屋に響いた桜麗の悲鳴は、すぐに小さくなって消えていった。

「きゃう!?」
 しばしの自由落下の後、桜麗が悲鳴を上げながら尻餅をつく。
「いたたたた‥‥」
 まあ、実際の所大した高さではなかったので、軽くお尻がヒリヒリするくらいだ。
 そのお尻を擦りつつ立ち上がると、そこは細長い部屋となっていた。
 その最奥には台座があり、その正面にはこう言葉が刻まれている。
 〜〜土の部屋より土に帰りし道をたどりし者よ、汝に我が封印を託す〜〜
 〜〜我が封じし炎の神の力、この力に、真なる封印を施さん事を願う〜〜
 台座の上には紅く輝く篭手が、幾重もの鎖によって固定されている。
 桜麗がその篭手へと手を伸ばすと、その鎖は独りでに砕け散り、桜麗はその篭手を手に取った。